王都のデート
感想と評価、ブックマークをお願いします。面白くなければ★一個。まあまあなら★三個、面白かったら五個お願いします。
入れていただけるとモチベーションがあがります
「兄上。宝石屋がある。何か買って」
ホリーに袖をひっぱられ、とある高級店に入る。中には女の子でいっぱいだった。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「い、いや、その……」
美形のエルフ店員に笑顔で迎えられ、ライトは困ってしまう。そんな彼を放っておいて、ホリーとエレキテルは目を輝かせて物色していた。
「これ。キラキラして綺麗」
「まってホリーちゃん。それはただのガラス玉だよ。こっちの指輪が本物のダイヤモンド」
何やら不穏な単語が聞こえてくる。
「わかった。兄上、これ買って!」
「ボクはこれが欲しい」
二人はダイヤモンドとトパーズの指輪を差し出してきた。
「これはお目が高い。この宝石は魔石になっているので、魔力を蓄積することも可能ですよ」
上客と見たのか、エルフの店員が勧めてくる。
「ちなみに、いくら?」
「ダイヤモンドが1000万マリス、トパーズが600万マリスです」
さらっと、とんでもない金額をふっかけてくる。
「ち、ちょっと待って。もっと安いモノを……」
そう言いかけて、悲しそうなホリーの目と合ってしまう。
(うっ……100億マリス入ってくるんだ。ホリーには苦労かけているし、エレキテルには命を救ってもらった恩があるし……えい)
観念して、袋から1600万マリスを差し出した。
「え?え?げ、現金でのお支払いですか?ち、ちょっと待ってください。おい、みんな手伝ってくれ」
慌てて店員が集められ、慎重に金貨を確認する。それをみていた女の子たちは、ヒソヒソ互いに話し始めた。
「ねえ……彼ってお金持ち?」
「なんか擦れてなさそう。お近づきになったら……」
女の子たちの目が、獲物を狙う獣みたいになる。
ライトはそんな彼女たちに気付かず、店員から指輪を受け取った。
「はい。これ」
「兄上、ありがとう」
「ふふ。さすが勇者君だね。ふとっぱら!」
ホリーとエレキテルがお礼を言う。『勇者』という単語を聞いた女の子たちは、ハッとなった。
「そういえば、パパがいっていたけど、グローリー王国から勇者の一族の亡命者がやってきたそうよ。なんでもダンジョンを制覇したんだって」
「だとすると、彼が……?」
女の子は頷き合うと、ライトたちを取り囲んだ。
「あ、あれ?何か用ですか?」
「初めまして。勇者様。私はバイエルライン子爵家の娘、アリスです」
「ホーウッド男爵家のエリザベスですわ。王都は初めてですか?よかったら、私たちと回りませんか?」
貴族令嬢はにこやかな笑みを浮かべて誘ってくる。
「……うーっ」
「ぐるるるる……」
ライトに近寄る女の子を見て、ホリーとイズナが唸り声をあげる。
「い、いいです。それじゃさよなら!」
慌ててホリーとエリキテルの手を引いて、店から出るのだった。
「もう!なんなのあの子たち」
「ぐるるるるる」
ホリーとイズナはプンスカと怒っている。
「あはは。怒らない怒らない。彼女たちは優秀な婿をとらないといけない立場だから、いい男の子がいたらつながりをもちたがるんだよ」
エレキテルは苦笑してホリーを宥めていた。
「俺なんかに言い寄ったって、良い事何もないだろうに。男爵位といっても、領地ももたない役職も決まってないただの法衣貴族だよ」
「あー、それはね……」
笑いながらセントバーナード王国の事情を話す。それによると、この国は女性が家に残り、男性が婿にいくような風習らしい。
「だから、女性は優秀なお婿さんを探す事が求められているんだ」
「優秀な婿ねぇ」
「そう。婿入りした人って、冒険者をして活躍したり、国に仕えて俸給をもらったり、商会を経営するなどして稼ぐことが求められているんだ。お父様も男爵家の出身」
貴族として最高位にあるヒラガ家に婿入りした公爵も、もともとは男爵家の三男で高名な冒険者兼商人だったらしい。
「そうか。だからか……」
「うん。各家ごとに自由競争が厳しいから、多種多様な品物が開発され、国の発展につながっているの。少なくとも男性の結婚については、身分より実力がモノをいう国」
どうやらこの国は、国家の身分による締め付けが厳しいグローリー王国とは違い、かなり自由な気風らしい。
「そんな国に勇者様の血を引く人が来たとなれば、大人気になるのも当然だよねー。ほら」
エレキテルは町で紙を配っている人を指さす。
「号外!号外!『漆黒の穴』のダンジョンが、新たな勇者様によって制覇されたぞ!勇者様はその功績により、男爵位に叙せられたらしい」
「なんだって?」
人々は先を争うように紙を受け取る。ライトたちも見たら、かなり美化された絵がかいてあった。
「これ、どうみても別人なんだけど」
「実物の兄上のほうがかっこいい」
ライトは真っ赤になり、ホリーは鼻で笑った。
「これから君は大変だねー。若くお金持ちで勇者様。国中の令嬢から交際を申し込まれるかも」
「受けて立つ。どっからでもかかってこい」
「きゅい」
ぴったりと身を摺り寄せるホリーとイズナ。面白がっているエレキテルだったが、すぐに他人事ではなくなるのだった。
感想と評価、ブックマークをお願いします。面白くなければ★一個。まあまあなら★三個、面白かったら五個お願いします。
入れていただけるとモチベーションがあがります




