病
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「して、この「光のオーブ」をどう扱いますかな」
「王都だけに光のオーブの恩恵を与えることになると、他の都市の民が嫉妬し、争いの原因になりかねぬ。使うなら、セントバーナード王国すべてに恩恵を与えるようなやり方が望ましい」
国王は冷静な判断を下す。
「それなら、一つ提案があります」
公爵の提案に、王は納得した。
「ヒラガ公爵の提案を是とする。さっそく研究予算を組もう」
こうして、使者がライトの元に派遣されるのだった。
グローリー王国の玉座では、国王が血走った目で政務をこなしてた。
「陛下、お体をいたわってください。お部屋でお休みになってください」
宮廷医師からそういたわられても、国王は執務を続けていた。もう何日も徹夜しており、側に控えている騎士や官僚たちも、王が休まないので強制的に働かされている。
「いや……休んでいる暇はない。ただでさえ治安が悪化して政務が滞っているのに、ロックウェルめ。風邪でねこんでしまうとは」
国王は必死になって、慣れない政務をこなす。王宮内では風邪が流行し、何人も出仕できず人手が足りなかった。
必死に書類と格闘する国王の横で、執事長が咳をする。
「ゴホッ!ゴホッ!」
「貴様も風邪か。ええい!いつからグローリー王国はこんなに軟弱になったのだ。それでも栄光ある勇者の国か!」
(その勇者の一族を追放したのは、陛下だろ)
騎士たちは心の中でツッコむが、誰も表立って逆らえない。
王宮は誰もがうらやむ憧れの職場から、超ブラック企業となってしまい、倒れる者が続出した。
その時、急に国王の胸が苦しくなる。
「ゴホッ!ゴホッ!」
「陛下!もしやお風邪を召されたのでは?お休みください」
これ幸いと休養を進めるが、責任感が強い国王は言う事を聞かない。
「今夜も徹夜じゃ!」
王宮では、デスマーチが延々と続き、どんどん人が倒れていくのだった。
そして、風邪は王都にも蔓延していた。
「ゴホッ!ゴホッ!」
「お、おい。大丈夫か?ほら、水だ」
とある父親は、必死になって雪を溶かして作った水を飲ます。
「苦しい……」
「待っていろ。医者を呼んでくる」
家を飛び出し雪が積もった外に飛び出すも、病院の前では人があふれていた。
「ごほごほ……助けてくれ!」
「薬を……」
助けをもとめる市民たちに、看護婦が必死に弁解していた。
「もううちでは無理です。これ以上患者を診る事はできません」
「そんな!俺たちはどうすればいいんだ!」
怒りの声をあげる市民に、看護婦は告げる。
「とにかく安静に。あとは栄養をつけて、温かい場所で安静にしていれば……」
「無理に決まっているだろう。ただでさえ食糧も薪もないんだぞ。俺たちに死ねっていうのか!」
絶望した市民は、病院に突撃する。またたくまに病院は火に包まれた。
その様子を茫然として見ていた父親は、家に逃げ帰る。
「お父さん……」
「お医者様に聞いてきたよ。温かくして安静にしていれば治るそうだ。さあ、一緒に寝よう」
子供の熱い体温を感じながら、同じベットで抱いてねる。ゴホゴホという子供の咳の音が痛々しかった。
「苦しい……なんでこんな目にあうんだろう。去年まで風邪を引いてもこんなに長引くことはなかったのに」
子供の言葉を聞きながら、父親は絶望的な気分になる。
(やはり、シャイン伯爵様がおっしゃっていたことは正しかったのか。光のオーブが放つ『聖光』が目に見えない風邪の元を殺していたから、俺たちは健康にいきていけたのか)
今更後悔しても、彼らに石を投げた事実は消せない。自分たちの知らないところで、必死に国を民を守っていた一族を切り捨てた現実は変わらない。
「ゴホゴホ……」
いつしか、父親も苦しそうに咳をするのだった。
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