国王
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「シャイン家とはグローリー王国の重鎮。なぜその嫡子が、冒険者などをしていたのかね?」
「実は……」
ライトはグローリー王国を追放された経緯を話す。それをきいた公爵は呆れてしまった。
「グローリー王国は阿呆としか言いようがないな。わずかな給金をけちって勇者の一族を追放するとは」
「まあ、確かに戦う力を持たなかった勇者の一族に何の価値もなかったのかもしれませんが……」
そう自嘲するライトに、公爵は首を振る。
「そんな事はないぞ。世の中に役立つことは戦いだけとは限らない。現に我らヒラガ家は、魔王との闘いが終わった後でも魔道具の開発業務で国に貢献しておる。卿らも光のオーブの管理をしていたではないか」
公爵はそういって、ライトを慰めた。
「そうだ。『光のオーブ』といえば、ダンジョンで新たに手に入れたんだよね」
「なに?本当か?」
エレキテルの言葉に、公爵は身を乗り出した。
「は、はい。これです」
勇者の袋から光のオーブを取り出して、テーブルに置く。あたりは真昼のように明るくなった。
「これが『光のオーブ』……」
公爵はオーブを感動の目で見ると、慌てて申し出てきた。
「ライト殿。済まぬがこのオーブを、ワシに預けてもらえぬか?オーブの存在は国家に関わる重要案件じゃ。今の段階でこれを個人の手にゆだねるには危険すぎるシロモノなのじゃ」
「え?そんな大事なの?わ、わかりました。公爵閣下にお預けします」
ライトは慌てて公爵に光のオーブを押し付ける。
「うむ。話がわかる御仁で助かった。決して悪いようにはしない。陛下のご裁可が下されるまで、ゆるりとこの屋敷で寛いでほしい」
こうして、ライトとホリーはヒラガ公爵家に滞在することになるのだった。
数日後
ヒラガ公爵は、セントバーナード国王に謁見を申し出ていた。
「ヒラガ公爵。話とは何かな?」
穏やかに聞いてくるのは、セイント・セントバーナード三世。エルフ族である。
セントバーナード王国はエルフ族とドワーフ族が協力して作り上げた国で、長命のエルフ族の長である彼は400年もこの国を平穏に治めていた
「はっ。実は冒険者ギルドで騒動があり……」
公爵は今まで調べたことを王に奏上する。話をきいた王は顔をしかめた。
「冒険者ギルドも相当腐っておるようじゃのう」
「ギルドマスターとそれに協力した冒険者たちは捕えておりますが……」
ドワーフ騎士隊に発見された冒険者たちは、魔物に襲われていてボロボロになっていたという。
『魔滅の刃』のヨシュア、エレン、マーリンは冒険者たちにも責任を追及され暴行を受けたようで、騎士隊につかまってすっかり大人しくなった。
そして冒険者ギルドを厳しく捜査したところ、賄賂の横行や一部の冒険者に対する不当な優遇措置が多々発見された。
「ギルドマスターと不正を行った冒険者たちは、奴隷に落として鉱山労働。冒険者ギルドはしばらく閉鎖し、王国の管理の元に置くとする」
「はっ。早速処置をいたします」
側に控えていた大臣がその意を受けて出ていく。
それを見送ると、ヒラガ公爵は次の話を始めた。
「実は、このことに関連して重要人物を当家で確保しておりまして……」
公爵は隣国グローリー王国の重鎮、シャイン家の嫡子が亡命してきているのを話す。
「シャイン家だと?懐かしい。余も幼少のころ勇者マサヨシと共に旅をした。そうか、彼の子孫なら、さぞかし勇猛な勇士であろうな」
「おっしゃる通りでございます。彼は我が娘と協力し、ダンジョンを制覇しました。これがその証拠でございます」
公爵はもってきた袋の中から『光のオーブ』を取り出す。謁見の間はまばゆい光に満たされた。
「こ、これは……国を挙げて守らねばならぬ秘宝。なぜこれがここに?」
「これはグローリー王国の光のオーブではなく、新しく発見されたオーブでございます」
娘から聞いたダンジョン最深奥の戦いを話す。それをきいた国王は喜んだ。
「おお。あの邪悪な『闇羽のドラグル』が力を取り戻す前に二代目勇者に倒されたのか。めでたい。余が自らダンジョンに封じながらも、いつ復活するものかとひやひやしておった」
セイント国王は、長年の心のつかえがとれたことを喜んでいた。
「二代目勇者とその一族を、我が国が囲わねばならぬの」
「はっ、現在我が屋敷にて丁重にもてなしております」
公爵の返答に、国王は満足の笑みをもらす。
「『光のオーブ』とその管理者を我が国に迎え入れたとなれば……ますます豊かになれる」
国王はにやりと笑うと、公爵に命じた。
「絶対に勇者の一族を逃がすでないぞ。厚遇して、この国に愛着を持ってもらうのじゃ。すぐに謁見の準備を整えよ」
「はっ」
こうして、セントバーナード王国は勇者を取り込もうとするのだった。
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