捕えられたホリー
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ライトとエレキテルは、地下41階まで上がってきていた。
「えいっ。『光線』」
視界に魔物が入った瞬間にライトの指がきらめき、光魔法が放たれる。現れた大きな虎は、一瞬で目に大穴が開いて絶命していた。
「これはワイルドタイガーだね。相当強い魔物なんだけど、一撃かぁ」
エレキテルはそれを見て呆れている。
「もったいないな。『勇者の袋』さえあれば素材をもっていけるのに」
「同感」
二人は立派な毛皮を見てため息をつく。すでにここまで上がってくるまでに多くの魔物をたおしていたが、素材をすべて置き去りにしてきたのである。
「しかし、君の『光線』の魔法って反則だと思う。距離とか関係なしに視界に入った瞬間に相手に穴をあけられるんだから」
「ああ。いかに初代勇者が強かったかよくわかるよな。おかげで楽にレベルアップできたよ」
「レーザー」は相手の強さに関係なく、一撃で身体の内部までダメージを与えることができる。たとえ相手が岩や金属の皮膚を持っていても、目を狙えば仕留められるのだ。
まさに勇者の魔法にふさわしい、最強の攻撃魔法だった。
その時、目にとまらぬ速さで白い塊が飛びついてくる。
「うわっ!」
「きゃっ!」
不意を突かれて、一瞬で間合いに入られてしまった。
「きゅい!きゅいきゅい!」
その塊は、嬉しそうにライトの顔を舐めまわした。
「えっ?イズナか?なんでこんな所にいるんだ?」
ホリーと一緒に宿屋で待っているはずのイズナが、地下41階にいることを疑問に思ってしまう。
「きゅい!!」
イズナはひとしきりライトの顔をなめたあと、袖をくわえて引っ張った。
「もしかして、何かあったのかも」
「いこう」
イズナについていく二人だった。
イズナが案内したのは、何の変哲もない通路だった。
「ここか?何もないぞ?」
「ぐるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
イズナは立ち止まり、いきなりうずくまる。しばらく見守っていると、その毛皮が剥がれ落ちて新しい皮膚が現れた。
「な、なんだ?脱皮したぞ」
「キツネって脱皮する生物だったっけ?」
二人が戸惑っている間にも、脱皮は続いていく、やがて一回り大きくなった体が現れた。
「なんだ?大きくなっただけか?」
「よく見て。しっぽが増えている」
エレキテルが言うように、今まで一本だったしっぽが二股に分かれていた。
「きゅい!」
脱皮を終えたイズナは立ち上がると、バンザイのポーズをとる。
「何が起こるんだ?」
見守っていると、天井に光の円ができる。
「これは……」
「なんなの?」
光の円は、分厚い石の天井を透過して、40階の出来事を映し出していた。
40階では、『魔滅の刃』と冒険者たちが、縛られたホリーを脅している。
「命がおしけりゃ、この袋を俺が使えるようにしろ」
ヨシュアはそう怒鳴りつけるが、ホリーから軽蔑の視線を受けた。
「その『勇者の袋』は勇者の血を継ぐものじゃないと使えない。あんたがいくら怒鳴り上げても無理」
「てめえ!」
激昂したヨシュアはホリーを切りつけようとするが、他の二人に止められる。
「こほん。なら仕方ないわ。ホリーちゃんって言ったわね。それならこの中に入っている財宝を取り出してくれない?」
「もし取り出したとして、どうやって持って帰るつもり?」
ホリーは鼻で笑う。
「そりゃ、ここの皆で協力して……」
「へえ……公平に分けられる自信があるんだ。ここはギルドの窓口じゃないから、『鑑定』も受けられないのに」
それを聞いて、マーリンは言葉に詰まる。
「あんた!いい加減にしな!いう事聞かないなら、命はないよ」
埒が明かないとおもったのか、魔術師のエレンが脅してきた。
「冒険者をする以上、死ぬ覚悟はできている。でも、あんたたちの思い通りにはならない。そもそも取り出した瞬間に殺されるとわかっていて、従う馬鹿はいない」
「てめえ!意地はってんじゃねえ」
強情なホリーに、ヨシュアの堪忍袋は切れそうになった。
「まあまあアニキ。こういう奴を屈服させるのは、俺たちに任せてくだせえ」
見ていたルドマンが、いやらしい目をして申し出てくる。
「何をする気だ?」
「ぐへへ。こいつは生意気な餓鬼だが綺麗な顔をしている。ちょっと男の怖さを教えてやれば、いう事を聞くようになるぜ」
ルドマンは着ていた服を脱ぎながらそういった。
「下品だね」
「あなた、ロリコンだったの?」
「趣味わるーい」
部屋にいた女性たちは顔をしかめるが、男たちは興奮する。
「みんな!やっちまえ!」
「おう!」
部屋にいた男たちは、ズボンを脱ぎ捨てた。
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