罠
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「このままあの餓鬼をのさばらせておいて、いいのかよ!」
ヨシュアの訴えに、ギルドマスターは頷いた。
「たしかに、あいつのせいで多くの冒険者が迷惑している」
腕を組んでつぶやく。
「あいつが持ってくる魔物の素材は、ほとんど痛んでないから商人たちの評判もいい。だが、そのせいで他の冒険者たちがとってくる傷付いた素材の価値が下がってしまった。品質がいい素材など、ほんのちょっとでいいんだ。大量に出回ると困るんだ」
ギルドには、多くの冒険者たちから不満をもたらされていた。
「今は良い。だけど、いずれ商人たちに直接素材を持ち込むようになるかもしれない。このまま放置しておくと、ギルドの立場がなくなるんだ」
「それなら」
「ああ。あいつには消えて貰おう」
ギルドマスターは邪悪な顔で、にやりと笑うのだった。
ホリーは、少しずつ探索できる範囲を広く深くしていった。
「えいっ。『ピリピリ』」
「コケっ!」
ダンジョン40階では、コカトリスの集団が電流に打たれて黒焦げになる。あたりに肉の焼けるいい匂いが充満した。
「おいしそう」
「きゅい!」
ホリーとイズナは仲良くコカトリスの肉にかぶりつく。彼らはこのダンジョンで、たくましく生きていた。
「そろそろ休もうか。先は長いし」
「きゅい」
ホリーが休憩できる部屋を探した時、いきなり前から女冒険者がやってきた。
「ああ、やっと他の人を見つけた。お願いします。助けてください」
その冒険者はボロボロの服を着て、傷だらけの恰好だった。
「どうしたの?」
「この先で強いモンスターに遭遇して……必死で逃げて来たんです」
その女冒険者は、ホリーに縋りついて頼み込んできた。
「……私には関係ない」
冷たく言い捨てて去ろうとするが、女冒険者は涙を流してすがりついてきた。
「お願いします。お兄ちゃんを助けてください」
「……お兄ちゃん?」
「ええ、たった一人の兄なんです」
兄という単語を聞いて、ホリーの心が動いた。
「案内して」
「こっちです」
女冒険者は先頭に立って案内する。しかし、その口元はゆがんでいた。
ホリーと女冒険者は、大きな部屋の扉の前に立つ。
「ここです!この中にいます。早くしないと兄が……」
そういいながら、女冒険者は部屋に入ろうとしない。怯えた様に躊躇していた。
「わかった。私が入る」
ホリーが部屋に入ると、真っ暗だった。
「……なんで明りをつけてないの?」
ホリーがそう思ったとき、部屋のドアが閉まる。
次の瞬間たいまつの明りが照らされ、部屋の中が浮かび上がった。
「ふふ。また会ったなお嬢ちゃん」
「この間のお礼をしてやるぜ」
部屋の中にいたのは、ルドマンをはじめとするホリーに絡んで返り討ちにあった冒険者たちである。
「かかれ!」
ホリーが身構える前に、彼らは一斉に網を投げた。
「くっ!」
網をかぶせられ、ホリーの身動きが取れなくなる。そのまま、ロープで縛られてしまった。
ドアが開いて、『魔滅の刃』の三人が入ってくる。
「ご苦労だったな」
「へえ。アニキの言ったとおりにしたら、簡単にとらえることができましたぜ」
ルドマンたちは、卑屈に揉み手をしながら頭を下げた。
「さて……クソガキ。お仕置きの時間だ」
ヨシュアが下卑た笑みを浮かべたとき、いきなり何かがとびかかってきた。
「きゅう!」
「いてっ!」
顔をひっかかれて、ヨシュアが悲鳴をあげる。襲い掛かったのは、真っ白い子狐だった。
「ぐるるるるる!」
子狐はホリーを守るかのように、威嚇の声をあげる。
「この雑魚が!」
ヨシュアか剣を振り下ろすが、ちょこまと動き回るキツネは剣をかわし続けた。
「イズナ!逃げて!」
「きゅう?」
イズナは一瞬立ち止まり、ホリーの方を向く。
「助けを呼んできて!」
「きゅう!」
ホリーの言葉にうなずき、イズナは開いたドアから逃げ出していった。
「あっ!待て」
追いかけようとするヨシュアを、アレンとマーリンが止める。
「放っておけばいいよ。あんな雑魚」
「そうですよ。そもそも嫌われもののこの子に助けがくるとは思えませんし」
二人の言葉に、ヨシュアも冷静さを取り戻す。
「そうだな。まずはこいつにお仕置きをすることが先か」
部屋にいる冒険者たちは、それを聞いて嫌な笑みを浮かべるのだった。
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