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ダンジョンの最深部。

二人はドラグルの部屋を探索していた。


「すごいすごい。宝の山だ!」


エレキテルが目を輝かせている。


「そんなにすごいのか?たたのガラクタにしか見えないけど」


ライトはエレキテルが確保した物品を見て首をかしげる。吸い取り口がついている棒や回転する水が入った箱など、わけのわからないものばかりだった。


「何言ってるんだよ、電球に水道に掃除機に洗濯機、冷蔵庫にクーラーもある。電化製品がこんなにあるなんて」

「電化製品?」


聞いたことがない単語である。


「いやー。ダンジョンの最下層に住んでいる奴って、どうやって日常生活しているのかとおもったけど、魔力でうごく電化製品、つまり魔道具を使っていたのか。これを解析すれば、この世界でも……」


なにやらブツブツつぶやいているエレキテルを放っておいて、ライトも最下層を探してみる。


「せっかくここまで来たんだ。何か宝がないかなーっと。あれ?これってもしかして?」


部屋の中央に、色がついてないオーブがあった。


「これがこのダンジョンのお宝か……え?」


ライトが触った瞬間、いきなり魔力が吸われ、オーブが輝きだした。


「あちゃー。やっちゃったね。オーブって最初に触れた人の魔力を吸って属性が決まるんだよ。そのオーブは光属性になっちゃったね」


「なるほど。まあ何かの役に立つだろう。持って帰ろう」


ライトは、光のオーブをリュックにいれる。


「ほら。帰ろう」


「ち、ちょっと待って。この魔道具を分解して必要な部品をリュックにいれるから」


ライトが見守っているあいだにすごい勢いで分解していく。あっという間にバラバラになった。


「そんなにバラして大丈夫なのか?」


「へーきへーき。核になる部品だけを選んでいるから。こうでもしないと持って帰れないもんね。さ、帰ろう」


荷物でパンパンに膨らんだリュックを背負い、ドラグルを倒すと同時に出現した階段を上る。二人は地上への帰途につくのだった。






冒険者ギルドでは、あるルーキー冒険者が大活躍していた。


「これ、買い取りお願い」


勇者の袋から大量に素材を出して、買い取りカウンターに置く。


「す、すごいですね。ほとんどの魔物が無傷で倒されています。肉も皮も牙も完全な状態なんて信じられません」


買い取り担当の職員は、目を丸くして驚いていた。


「ええと……全部で50万マリスです」

「そう」


その冒険者―ホリーは大して関心無さそうに無造作に金貨を袋に突っ込む。


それを見ていた冒険者たちは、小さな少女が大金を稼いでいるのを見て嫉妬した。


「おうおう、お嬢ちゃん。今日も稼いだねぇ」

「俺たちにおごってくれねえか?」


ムキムキの男たちが、ホリーに絡む、しかし彼女は冷たい目で見てそっぽを向いた。


「お断り。知らない人におごる理由なんてない」

「生意気ぬかすなゴラァ!fランクの分際で」


その中のリーダー格で禿げ頭の冒険者は、テーブルを蹴り上げて脅しつける。


「いいか?俺はBランク冒険者チーム『剛力の拳』のリーダー、ルドマン様だぜ。素直に言う事をきかないと……え?」


ルドマンの目が点になる。ホリーはまったく恐れげもなく、いきなり自分にナイフを突き立てていた。

もちろん、Bランク冒険者に少女のかよわい力でふるったナイフの刃など通るわけないが、プライドが傷付けられたことにはかわらない。


「こ、この餓鬼!もう勘弁ならねえ。奴隷にして売り飛ばして……ぎゃぁぁぁぁぁ」

次の瞬間、刃先から電流が伝わり、激痛と共に昏倒した。


「アニキ!」

「てめえ、何しやがる……ぶっ」


ホリーの手から放たれた雷光が残り二人を打つ。筋肉ムキムキの男たちは地べたに這いつくばった。


「ふむ……この『ピリピリ』の魔法にもだいぶん慣れてきた。『雷神のナイフ』がなくても使えそう」


両手をぐーぱーして、魔力の感覚を確かめるホリー。そのままギルドを出て行ってしまった。残された冒険者たちに沈黙が降りる。


「くそっ。なんだあの餓鬼!」

「Fランクのくせに調子に乗りやがって」

「あいつが傷のない素材を持ってくるから、俺たちの買取価格も三級品扱いされて下がっている。迷惑かけやがって」


口々にホリーに対して不満をもらす

その様子を、ヨシュア達は隠れてみていた。


「あの袋、あんなに大量の素材を取り出したぞ」

「あんな小娘にはもったいないね」

「なんとかして、袋の中の財宝を取り出させたら、私たちは一気に大金もちになれますわ」


彼らは欲望のこもった視線を袋にむける。


「だけど、あいつは妙な魔法を使うぜ。俺たちの後輩を襲わせてみたが、ことごとく返り討ちに遭ってしまった」


ただの小娘だと思って見くびり、ホリーに絡んだ冒険者たちは全員麻痺魔法をかけられて昏倒してしまい、袋を取り上げることはできなかった。


「いっそ、街中で襲う?」


エレルがそう提案してくるが、ヨシュアは首を振る。


「このギルド内でのトラブルはマスターがもみ消してくれるが、街中で襲うとなれば別問題だ。騎士隊につかまれば、やっかいなことになる」

「じゃあ、どうするのよ」


マーリンがヒステリックな声をあげる。


「こうなったら、ギルドマスターに相談してみよう」

三人はマスターの執務室に入った。



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