勇者の目覚め
「あの……本当にダンジョンに入る気ですか?一人じゃ無謀ですよ」
ミリアは登録をしながらもホリーを心配していた。
それを見ていた冒険者たちが、親切心を装って近づいてくる。
「そうか、なら俺たちが協力してやるよ」
「ただじゃないけどな」
「その袋の中の金全部でどうだ?」
下卑た顔をする冒険者を、ホリーは冷たく切り捨てた。
「必要ない。信用できない仲間なんて不要」
「なんだと!この餓鬼!」
激高した冒険者が、ホリーに掴みかかってくる。
ホリーは素早く身をかわすと、腰に差していたナイフで切りつけた。
「ぐはっ!」
刃先が触れたとたん、屈強な冒険者たちが動けなくなる。
それを見たミリアが聞いてきた。
「それは?」
「勇者マサヨシが冒険の旅の序盤で使っていた『雷神のナイフ』。麻痺の魔法が掛かっていて、さわったらピリピリするの」
ホリーがナイフを振ると、キラキラした光が刀身にまとわりついた。
「わかりました。しかし、気をつけてくださいね」
「うん。無理はしない」
ミリアに挨拶して、ホリーはダンジョンの入り口に向かった。
「きゅい……」
「大丈夫。慎重にすすめば」
心配そうなイズナをなだめながら、ホリーは奥にはいっていく。
しばらく行くと、ホワイトラットの集団が現れた。
「えいっ!えいっ!」
ホリーは必死にナイフを振り回すが、ラットたちの動きは素早く、なかなか捕えられない。
「あっ!」
突き刺そうとしたナイフがかわされ、床に突き刺さってしまった。
「キィッ!」
慌てて引き抜こうとするホリーを、ホワイトラットが取り囲む。
「は、早く抜かなきゃ」
焦って力を込めても、ナイフはなかなか抜けない。そうしているうちに、ラットたちが集団で襲い掛かってきた。
「キィッ!」
「やだ!」
思わずホリーはナイフに光の魔力を込める。
それは雷に変換され、ピリピリする波動が辺り一帯に広がった。
「チューー!」
「いたっ!」
ホリーとラットたちは仲良く感電し、その場に倒れこむ。
しばらくして、ホリーだけがゆっくり立ち上がる。ラットたちはすべて感電死していた。
「ああ、びっくりした。でも、この魔法は新感覚。くせになりそう」
ホリーは危ない目をして。『雷神のナイフ』を引き抜く。
「このピリピリ魔法、攻撃に使えるかも。もっと試してもよう」
ナイフに光の魔力を通すと、稲光が巻き起こる。
ここにも、新たな勇者が目覚めようとしていた。
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