第1話 終わりの始まり
上演時間:20分~25分
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―利用規約―
・ツイキャス、ニコニコ、リスポンなどで上演する際は、作者に断わりの必要はございませんが、連絡やツイッタ―通知を出していただけますと、録画や上演枠に顔を出させて頂きます。
・上演する際はこの台本のタイトルとURL、作者(協力は不要)、配役表をコメント欄にのせていただきますようお願いいたします。また、mojibanなど補助ツールの使用は可能としますが、台本のURLの代わりにするのはやめてください。
・過度のアドリブ(世界観の改変)、性転換は一切しないようにお願いします。また、適度なアドリブや読みにくい個所の語尾改変は、世界観の変わらない程度ならOKといたします。
・無断転載はしないでください。もし、発見や連絡があった場合、作者が確認したのち法的処置を行いますのでよろしくお願いします。
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ラーク・ウィッシャー:15歳。第一次グランハルト帝国戦争を戦い抜いたクラッチ・ウィッシャーの息子。職業は魔法剣士。剣の技術に秀でているが、魔法に関してはてんでダメ。下級魔法でも最弱の威力しか出せない。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っているが、うまく自分の力を理解していない。熱い性格で常にポジティブな考えを持っている。
ミカエル:15歳(人間年齢)。ラークの夢の中に現れた天使。容姿はかなりの美女。彼女の歌う歌には癒しの効果があり、支援要因として主人公パーティーを支える。なにかわけがありそうだが……
クラッチ・ウィッシャー:35歳。第一次グランハルト帝国戦争を戦い抜いた英雄でラークの父親。第一次グランハルト帝国戦争時の年齢は25歳。職業はラークの魔法剣士よりランクが上の魔法騎士。彼の功績により、敵国を蹴散らした。「表面は熱く、中身は冷静」をモットーにしているが、周りからはそう見えない言動が多い。帝国騎士統括騎士隊長の称号を持つグランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っている。
ティア・ウィッシャー:35歳。第一次グランハルト帝国戦争を戦い抜いた英雄でラークの母親。第一次グランハルト帝国戦争時の年齢は25歳。職業は聖母。支援戦闘に長けており、最大10人を一気に支援することもできる。支援魔法のすべての詠唱を覚えており、宣戦を離れた今でも、街中の人の医療機関の院長として活躍している。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っている。
業魔神ガベル:長年生き続けている業魔神。その性格は残忍。第一次グランハルト帝国戦争のときに乱入してきたが、クラッチ、ティアを合わせた四人の英雄「グランハルトブレイバー」に封印されていた。しかし、この度、誰かが封印を解き、復活してしまった。
帝国兵A:被り。クラッチ以外推奨
帝国兵B:被り。ティア以外推奨
≪メイン≫
ラーク(不問):
クラッチ(♂):
ガベル(♂):
ミカエル(♀):
ティア(♀):
≪サブ≫
帝国兵A:
帝国兵B:
ミカエルM「第一次グランハルト帝国戦争。広大な領地を持っていたグランハルト帝国に、隣国4か国が同盟を組んで攻めてきた戦いがありました。その4か国にはそれぞれ特徴がありました。商業の街アートリオン、工業の街グラサージュ、芸能の街アクトリー、そして農業の街ファームリット。それぞれ強大な国が集まった連合軍の戦い方は、じわりじわりと帝国の資源や兵隊をすり減らす作戦を取ろうとしました。一方帝国は、10以上もの軍隊を用い、すさまじい陣形戦を展開しようとしていました。しかし、まもなく開戦というとき、いきなり空が黒く染まり、雷が両陣営の間に落ちました。」
帝国兵A「な……なんだ!?」
帝国兵B「おい、見ろ!!」
ミカエルM「グランハルト帝国の兵隊たちは、天から降りてくる黒い羽根のついた業魔におびえていました。逃げ去るもの、腰を抜かすもの、泣き叫ぶもの。各々、恐怖の味をかみしめながら、天空から降りて来る業魔を眺めていました。」
ガベル「…………」
帝国兵A「誰だお前は!」
ガベル「…………」
帝国兵B「誰だと言っている———」
ガベル「シャドウ・ファイヤー」
帝国兵A・帝国兵B「ぐぁぁぁ」
ガベル「あぁ……弱い、弱すぎる!!余が本気を出さずとも、ひねりつぶせるほど人の子は弱いのか。信じられぬ……」
ミカエルM「人間の弱さを知ったガベル。天を仰ぎながら一呼吸置くと、魔術で作られた炎が、ガベルのほほをかすめました。彼は炎が飛んでくる方向を見やると、二人の人物が戦闘態勢になって立っていました。その二人は怒りをあらわにして、ガベルに言いました。二人の名は、クラッチ・ウィッシャーとティア・ウィッシャー……のちに英雄と謳われる2人でした。」
クラッチ「貴様が……貴様がこの惨状を作り出した元凶か!!」
ガベル「元凶?違うな……余はすべてを統べる唯一神。業魔神ガベル。貴様らゴミ共を潰しに来た」
ティア「唯一神?馬鹿言わないで。そんなにすごい神様が、人間の命を奪うなんてありえないわ」
ガベル「勘違いするでない。余は好き勝手に命を奪ったわけではない。」
クラッチ「ではなぜ!?」
ガベル「……彼奴らは余に名を聞いた」
クラッチ「……は?」
ガベル「余の高貴な名を腐った口をもって聞き出した。それだけだ」
クラッチ「なん……だと」
ティア「それだけ……たったそれだけのために彼らの命を奪ったというの?」
ガベル「何がおかしい?余は世界を統べる唯一神ぞ?自らの名は自らで名乗りを上げるわ」
クラッチ「きさまぁ!!許さない、絶対に許さないぞ!!地獄の業火をまとい出でよ!!神殺しの魔剣、ウロボロス!!」
ティア「少しお灸をすえる必要がありそうね。私たちに神のご加護を……古からの魔典、アポカリプス!」
ガベル「ほう……神に逆らうか……あぁ、愚かなりや愚かなりや……悠久の時を超えし剣よ!ここに集え、デュランダル!」
ティア「あれが……聖剣・デュランダル……」
クラッチ「だが、負けるわけにはいかない!うぉぉぉぉぉぉ!!」
ガベル「静寂の深淵……ダーク・シャドー」
クラッチ「効くかよ!吠えろ!爆炎・鬼滅斬!!」
ガベル「ぐぬぅぅ……なめるな!人間風情が!!」
クラッチ「大きい攻撃が来る!ティア!!」
ティア「まかせて。彼の者に鋼の鎧を……ディフェンド!」
ガベル「悪しき魂の饗宴!ダークネス・ウインド!」
クラッチ「ぐっ……ぐぁぁぁぁぁ!」
ティア「クラッチ!?」
クラッチ「俺は大丈夫だ!それよりできたんだろ?」
ティア「えぇ」
ガベル「なにができたというんだ?細腕の女魔導士に何ができる」
ティア「……聖なる母神よ、神をつかさどる聖域よ。」
ガベル「ぐ……なんだ、この頭の痛みは!?……割れる……割れてしまうぞ!?……か……体も重く……何をした!?女ぁ!!」
(ティアはガベルを無視して詠唱を続けてください)
ティア「悪の扉を開きしものに正義の鉄槌を。そして我ら人間には、神々による祝福を与えたまえ。その祝福をもって、我ら人間は、悪しき心に堕ちた神を封印する。……ピース・オブ・ハート!!」
ガベル「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ミカエルM「ティアの封印術は見事成功し、無事ガベルを封印することができました。それから何年もの間、ずっと平和は続いていました。これから先もこの平和が続いていければ……と思っていました。」
ー間ー
ラーク「……ん……んん……」
ティア「あら、起きたのね。おはよう。パパが待ってるわよ」
ラーク「パパ?え~と……あ、今日は訓練だ!!」
ティア「早くいってきなさい」
ラーク「わかった!!」
―間―
ラーク「ごめん、遅くなりました!!」
クラッチ「おい、敬語を整えろ……」
ラーク「す……すみません、騎士隊長……」
クラッチ「あぁ。さて、今日の訓練だが……の前に話しておきたいことがある。」
ラーク「話したい事?」
クラッチ「まぁ、そこの切り株に座れ」
ラーク「え?修業は?」
クラッチ「後だ。大事なことだからな」
ラーク「う……うん、わかった」
クラッチ「ラーク……第一次グランハルト帝国戦争を知っているか?」
ラーク「あぁ、父さんと母さんが活躍した戦いだろ?」
クラッチ「あぁ……その戦いでいきなり現れた業魔がいるんだ」
ラーク「業魔?」
クラッチ「名前はガベル。かなりの強さだった。父さんたちも体がボロボロだったが、母さんが最後の力を振り絞り、ガベルを祠に封じることができた。だが、最近その祠の封印が解かれた可能性がある。」
ラーク「なんだって!?」
クラッチ「そう……だからラーク……」
ティア「あなた!!」
クラッチ「ん?どうした?ティア……集会はどうした?」
ティア「それどころじゃないのよ!東の空から魔族の軍勢が攻めてきているの!!」
クラッチ「なんだって!?それはすぐにいかなければ……」
ラーク「父さん、俺も行く!!」
クラッチ「だめだ!!」
ラーク「どうして!?」
クラッチ「わかっているのか!?今までの修行ではない!実践だ!!もしものことがあったらどうする!」
ラーク「大丈夫だって!確かに俺は魔法はまだ使えない。だけど、父さんの戦いをみたいんだ」
クラッチ「ラーク……」
ティア「あなた!早く!」
クラッチ「わかった。ついてこい!ラーク!!」
ラーク「ありがとう!」
―間―
クラッチ「全軍に次ぐ!いま魔族がこのグランハルト帝国に攻めてきている。先の第一次グランハルト帝国戦争で我が帝国は、業魔ガベルの封印に成功した。しかし、その封印が解かれ、いま我が帝国最大の危機が訪れようとしている。よいか……全力を持って戦え!国の存亡をかけた戦だ!全軍!身を引き締めろ!!」
―間―
ティア「クラッチ隊長」
クラッチ「ティア衛生兵長。どうした」
ティア「まさか、業魔ガベルの仕業ですか?」
クラッチ「わからない……確かめないと何とも言えないな」
ティア「私たちも『グラン』を開放する時が来るのかしら」
クラッチ「ただの魔族なら大丈夫だろうが、ガベル相手なら開放するときも来るだろうな」
ティア「そうですね……わかりました。『グラン』を使うための準備してまいります」
クラッチ「……ティア」
ティア「?どうしたの?」
クラッチ「俺がどうなろうとも……お前は絶対に死ぬな」
ティア「クラッチ……それって」
クラッチ「(遮るように)時間だ!行くぞ」
ティア「クラッチ!!……いっちゃった……まさか死ぬ気じゃ……そんなことないわよね」
―間―
ラーク「父さん……母さん……」
ミカエルの声「選ばれし子よ」
ラーク「だれ!?」
ミカエルの声「私とともに神に打ち勝つ覚悟はある?」
ラーク「誰だ!!出てこい!!グランハルト帝国騎士団、ラーク・ウィッシャーが相手だ!!」
ミカエル「……」
ラークM「女?羽が生えて……」
ミカエル「それで?」
ラーク「は?」
ミカエル「あなたにその覚悟はあるの?開けてはいけないパンドラの箱を開ける覚悟は」
ラーク「なに……いってんだ?わけわかんねぇよ……」
(SE:爆発音)
ラーク「な……なんだ!?」
ミカエル「時は移ろう……あなたとともに……」
ラーク「まて!!くそ!……なんなんだあいつは!こうしちゃいられない!父さん!母さん!」
―間―
クラッチ「やはり、貴様の仕業か……ガベル!!」
ガベル「いかにも……貴様ら人間が斯様に煩わしいことをしてくれたでなぁ」
ティア「わずらわしいこと?私たちが一体何をしたっていうのよ!!」
ガベル「貴様ら人間は、どうでもいい時に神に祈りを捧げ、真に必要な時には祈りを捧げなかった。それが煩わしいことのなにものでもないと思うが?」
クラッチ「そんなの人間だって毎日必要な時に神に祈りを捧げているわけではない!俺らの民族以外にも多種多様の民族が業魔神に祈りをささげているが、それぞれ周期や回数も違う……」
ガベル「それを言っているのだよ人間。人それぞれが違う考えだから、争いごとや何から何まで起こるのではないか?人の考え、行動などのすべてを時にて縛れば、より一層人がまとまり、より良い集団になるとは思わんかね?羽虫もあつまれば強大な力になるというやつだ」
クラッチ「羽虫……だと……?」
ガベル「羽虫だろう?細かいことでピーピー泣き叫ぶ、何か事が起こると群がって一人の相手を襲う。そういう行動をする人間風情が、なぜ羽虫に該当しない?余は羽虫でも良い名を与えたのではないかと自負しているのだぞ?」
クラッチ「貴様、黙って聞いていれば!!」
ティア「待ってクラッチ」
クラッチ「離せ!!ティア!!俺が守らなきゃ誰がやるってんだ!!」
ティア「だまって!向こうに戦意はないわ!!」
クラッチ「なに!?」
ガベル「そう……余に戦意はない……」
クラッチ「ならば貴様は何をしに来た!!それに、この惨状はなんだ!」
ガベル「余が話をしに来ただけだというのに、彼奴等が攻撃を加えてきたのでな……」
クラッチ「だからといってこのようなことをしていいわけがないだろう!」
ガベル「それは人間界の常識だろう?悪魔の世界では……あぁ、人間界でわかりやすいように言うとこうか?『やられたらやり返せ』と」
クラッチ「なん……だと……」
ティア「そんなことで……」
ガベル「そうだ……そんなことだ……それでは本題に入らせてもらおう」
クラッチ「……本題?」
ガベル「余は貴様らに……」
ミカエル「待ちなさい!」
ガベル「誰だ?……ほう……貴様は『出来損ないの天使』ではないか」
ミカエル「!?」
ラークM「出来損ない?なんのことだ?」
ミカエル「ここは退きなさいガベル……」
ガベル「ほう……『出来損ないの天使』が余に指図するか!!……まぁ、もとよりそのつもりさ……人間よ!貴様らの世界は崩壊を迎える!!」
クラッチ「なんだと!?」
ガベル「時は六月後。楽しみにしておれ」
ラーク「ま……まて!!」
ガベル「……ほう……羽虫の中でも期待できる羽虫がいたか……貴様、名は何という?」
ラーク「……ラーク・ウィッシャー」
ガベル「憶えておくとしよう……その名をな……」
ミカエルM「不穏な空気を残して去っていった魔族に、歴戦の英雄であるクラッチやティアは震えていた。ラークは初めて出会った業魔ガベルに驚きと恐怖を隠せずにいた。このガベルが国に来たことが、グランハルト帝国の悪夢の始まりであった。」