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弟子入りするには…?

きっと想像がついている方もいらっしゃるでしょう。

師匠候補の方のお名前が何度か出て来ます。

 私はギルドを出た後、師匠について考えていた。と言っても私が弟子入りするとしたらアールさん…アールクルドゥワさんしかいないだろう。産婆のおばあさんもアールさんに弟子入りしろと言っていた。


 ここで考えなくちゃいけないのは弟子入りの方法だ、けれど、流石にこの方法はパンジーも教えてはくれないだろう。現実で弟子入りする方法といえば、コネクションを利用する。支度金を用意する。誠意を見せるため、地道に関係性を作り弟子入りにこぎ着ける。と言ったことが挙げられるだろう。


 そもそも弟子を募集している人とかだったら、弟子入りもできるかもだがアールさんは弟子を求めているんだろうか?


 迷いに迷った私は、産婆のおばあさんのところへ行き、相談することにした。


「こんにちわ。」

「おや?昨日のオオルリの嬢ちゃんじゃないか。また急患かい?」

「いえ、弟子入りのことでちょっと相談があって…お手伝いできる範囲でするので相談に乗っていただけませんか?」

「ほう?……今日はクエストは受けてないのかい?」

「はい、受けてません。」

「いいだろう。相談に乗ってやる。まずは診察についておいで。」


おばあさんについて、診療所にやってくる人たちの相手をしていた。中には妊娠がわかったばかりみたいな人もいて、ふとここがゲームの世界なのを忘れてしまう。


 診察の合間で相談に乗ってくれた産婆のおばあさん-名前をジネブラさんというらしい-は、確かにアールさんは弟子を今まで取っていないし、取る様子もないと言っていた。しかし、アールさんの実力と経歴的にはそろそろ弟子取りをしないと、経歴的には外聞が悪くなる頃合いでもあるらしい。


「どんな世界でも技術の伝承というのはしないといけない。その為にはある程度の実績と名声が手に入ったなら、弟子を取る必要性がある。弟子を取らずに培って来た技術を絶えさせるのは、職人としても恥ずべきことなのさ。過去の偉人たちが連綿と伝えて来たからこそある技術だ、与えられた以上、未来に返していかなくちゃいけないんだよ。」

「考えさせられる言葉ですね。」

「年寄りの言葉さ。聞いといて損はないよ。」

「はい。わかりました。」


 その後、アールさんへ弟子入りするための方法を、一緒に考えてくれると言ってくれたおばあさん—名前よりおばあさんと言われる方が多いらしい—と、診療の合間で考えた。


 まず、アールさんに弟子入りするにはコネやら金やらは通用しないだろうとの事だった。なので、とにかく通い詰める事と、側でアールさんの作業風景を見れるくらいの位置まで自分を持っていくしかないだろうという事。あとはアールさんは根っからの芸術家肌で、習うより慣れろ。目で見て覚えろな職人肌でもあるらしく、とにかく曲がった事が嫌いなのだそうだ。


 そしてアールさんは、最初から私に優しく接してくれていたので知らなかったが、かなりの偏屈で通っているらしい。名だたる名声を持った奏者や吟遊詩人だろうと、アールさんに気に入られなければ楽器を買うことどころか、店にも入れないらしい。そして、ギルドの特殊条件に当てはまる種族以外の種族、特に人間種に関しては心の底から嫌っているらしく、ギルドの紹介と利用者の紹介があっても、楽器を売ってもらえない。なんてこともあったらしい。


 有名なのは、この世界で有名なヴァイオリン奏者—もちろん人間—が、吟遊詩人ギルドと芸能ギルドの双方から紹介状をもらい、なおかつ利用者からの紹介状があったが、お前に売る楽器はないと言われ、頼み込んでも売ってもらうこともできずに追い出されたという。


 初めはギルドも顔を潰されたような物なので、アールさんに色々苦言を零していたそうだが、後々にそのヴァイオリン奏者が、自身の弟子が書いた曲などを盗作していることがわかり、アールさんが楽器を売らなかった事情も考慮されることになったのだとか。


 天然の嘘発見器みたいなアールさんだが、この業界ではよくある事らしく、特に効果がついた曲などは、盗作されやすいらしい。それ以降、盗作されないように自動でギルド登録される作曲用紙などが発明されたりしたのだそうだ。


「あそこまで他種族を嫌悪するのは、アール自身盗作被害にあったんだろうさ。」

「そんな……でも、嫌ってしまうのは仕方ないんでしょうか?」

「結構な大事件になってね。というのも盗作防止楽譜ができてから、新しい曲を発明できたのは鳥人族や、虫族、昔から種族的に音楽に縁の深かった種族くらいで、今まで著名だった作曲家の他の種族は、一部を残して新作をあげられなくなったのさ。代わりにその弟子たちが新作を登録していってね。彼らが盗作を自分の曲だといっていた事が露見してしまったというわけなのさ。」

「大事件じゃないですか!!」

「そうさ。それ以降、吟遊詩人ギルドでは『入団試験』が導入されるようになったんだよ。」

「ん?『入団試験』?」

「そうだよ。…あぁ、あんたは受けてなさそうだね。多分アールんとこの楽器を持っていた時点で、試験クリアできたんだろう。『入団試験』は人となりを見るための試験だからね。出だしから才能があろうとも性根が腐ってる奴には、騒動を起こされちゃ困るから登録を拒否することにしたんだよ。」

「よくある話ですね…。私たちの世界でも騒動が起きると、その後のルールがどんどん厳しくなっていって、いろいろなことに支障が出るようになるんですよねぇ。」


 思わず会社であった騒動のことを思い出して、遠い目をしてしまった。かつていたお局がちょいちょい発注ミスをする人だったが、実は発注ミスではなくて、自宅で使うようにわざと多く発注し、持って帰っていたという事件があったのだ。

それのせいで、会社に今まで買い置きされていた自由に飲めるお茶やら、コーヒーの類は全て購入不可になり、各自で用意することになってしまった。

お客様に出すための飲み物も都度、買いに走らなければいけなかったり、地味に時間を取られたりして、面倒になったのだ。

因みに現在は改善されて、ネフカフェのポーションドリップを契約して置いている。機械のリース台とお客様分は経費で落ち、ポーション代は自分の分は自腹という風にしたのだ。

 最初はみんな使わないんじゃないかなどといった理由で、なかなか上層部が頷かなかったのだが、私がいる部署は来客数がそこそこ多く、それなりに忙しい部署だったため、いちいち誰かが抜けると微妙に業務に支障が出るというところを、成績ナンバー1の水口くんが社長視察時に実際の風景を見せた上で、残業時間の推移などを基にしたプレゼンテーションで、トップのハンコを勝ち取り、一気に申請が通ったのだ。


と、現実のことを思い出して一瞬ナーバスな気分になったけれど、とにかくアールさんの弟子になるためにもとにかく通い詰めるしかないという結果に行き着き、アールさんのお店に向かうことにした。


もちろん、今日1日—ゲーム内時間で—はおばあちゃんのお手伝いをすることにして。

次回は再びアールさんのお店へ行きます!

ネフカフェは某大手飲料メーカーさんのを想像してください。

作中の現実トークは実際にありそうな話を想像してみました。

あったら軽く横領事件なので、そういう方がいたら法務関連の部署、もしくは専門ダイヤルに相談しましょう。

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[一言] 再開待ってますッ
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