吟遊詩人ギルド
お久しぶりでございます。ようやく次話投稿しました。
もう忘れ去られているような気がしてヒヤヒヤしています。
体調を崩し回復したと思ったら仕事が忙しくなり、また体調を崩すのルーティンでした。。。
徐々に更新速度を戻して行きたいと思います。
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。
その後、24時間体制でやっている冒険者ギルドへ行き、クエスト達成の報告をしようとなった。しかし私は思い出してしまった、スティングさんにクエスト達成の承認をしてもらっていないことに。
良い感じに立ち去ったはずなのにすぐに戻り、スティングさんを叩き起こさなくてはいけない現実はなかなか残念な空気が漂っていた。
朝ごはんもご馳走になり、ステイシーちゃんの顔を再度見せてもらい、ほっぺたのモチモチを堪能した。…生まれたてってあんまり潤ってないのね。カサカサしてた…。
無事承認も貰って改めて冒険者ギルドへ向かい、達成報告をした。
「ララバイ様、3件のお使いクエストの達成、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「報酬5,050Fになります。」
報酬を無事受け取り、未だに行ったことのない吟遊詩人ギルドに行くことにした。5,000Fあるならクエスト用の曲も買えるだろうからだ。それに吟遊詩人としてのレベルを上げないといつまで経っても旅に出れない。
吟遊詩人ギルドは新緑のような明るい緑色の屋根に、ペールグリーンの様な薄い緑の壁をした建物だった。3階建の建物の外装からすでに繊細な細工が施された窓枠や、ドアがあり芸術性を強調するような外観になっていた。
後々わかったことだが、芸術性が関わるギルドは内外装が気合の入った仕立てになっているらしく、特に工芸ギルド-アクセサリーを主に作成できる彫金師や宝石師、細工師が登録するギルド-白地の壁に金細工の意匠を入れて黒い屋根には銀細工を入れたりと、キンキラしているらしい。βの細工師が思わず有名なあのフレーズを口ずさむほどだったらしい。
中に入ると、3階にある天窓から光を直線的に取り込むような採光をしているのか、2〜3階部分は薄暗いのに1階が明るいという不思議な明るさになっていた。そして人が話すのに邪魔にならない程度の音楽が流れていて、ジャズとクラシックを融合したような音楽が流れている。真ん中にあるカウンターの左右には2階に繋がる階段が用意されていて、さながら格式の高いオペラハウスのようだった。
カウンターに立つ受付嬢もオペラ歌手のように、豪華なドレスを着ていて少々どころかかなり気後れをする。黄金に波打つ髪を高い位置で結い上げたあと前に垂らした髪の毛は、バーのカウンターでグラスを傾ける大人の女っぽい雰囲気が出ているし、豊満な体は黒のドレスに身を包んでいて、アシンメトリーなデザイン。オフショルダーで露わになった鎖骨がとっても艶めかしい。
ニッコリと艶やかに笑い、気だるげな手つきで手招きされて、恐る恐る近寄った。
「いらっしゃい、かわいい小鳥ちゃん。」
「こ、こんにちわ。ギルド登録に来たんですが…。」
「まぁ、新人ちゃんね。楽器は決まっているかしら?」
「はい、琵琶を利用する予定です。」
「楽器は持っているかしら?持っていなければ紹介やレンタルもできるけれど。」
「持っています。これです。」
「あら?これは…アールの知り合いだったのかしら?」
「いえ、パンジー…私の守護妖精に案内してもらいました。」
「あら、じゃあアールのところに行けるわね。あそこはね、本来ならこのギルドでのランクをある程度あげないと利用できないのよ。」
「え?!」
詳しく聞くと、アールさんのお店は高ランク吟遊詩人御用達のお店らしく、駆け出しの人間が持てるような楽器は置いていないらしい。利用する吟遊詩人も、レベルで考えると街のバーで歌ったり弾いたりするようなレベルではなく、大劇場とかで演奏ができるレベルや王族たちにお呼ばれするくらい、高い技術とレベルを持った超一流のエリートたちが主に使用するお店らしい。
心の中でひぇ〜と叫び声をあげつつ、パンジーをチラチラ見ていると、クスリと笑った受付嬢が、ただし特定の条件にはまる人はアールさんのお店を利用できるのだと言っていた。
「特定の条件ですか?」
「そうよ。その条件に当てはまるから、私はあなたを紹介しようと思っていたの。」
「え?!私が当てはまるんですか?!」
「そうよ、オオルリ種族のお嬢さん。」
「なんで私の種族を…。」
「あなたの腕に少し生えている青い羽は、オオルリの一番の特徴よ。他にも青く素敵な羽を持った鳥人族はいるけれど、青い羽をして吟遊詩人になるとしたら、オオルリが一番の候補だしね。それに、守護妖精がギルド登録前に、すぐアールの店をあなたに紹介したのも、特定条件の大きな理由になるからね。」
「そうだったんですね…ちなみに、その条件をお伺いすることはできますか?」
「もちろん!」
特定条件はこんな感じだった。空を飛ぶ種族、もしくは種族的に腕力が高くない種族であること。声に関わるなんらかの種族スキルがあること。また、CHAが種族的に元来高い種族であること。
以上の3点が全て揃っているとアールさんのお店を紹介されるらしい、それは青田買いに近い意味合いもあるけれど、何よりもこの3点が揃ってしまう種族は、他の楽器だと重量制限などに引っかかって、持つことすら叶わない場合が多いのだそうだ。
それを回避できる楽器は、アールさんのところくらいでしか手に入らないらしく、はるか先にある芸術の都か、各国の王都くらいのものなのだそうだ。
パンジーが私をアールさんのところに連れて言った理由もわかり、最終的にアールさんのお店に行くのであれば、ズルをしたわけではないのかと思ったらホッとした。
ちなみに、鳥人族のオオルリ以外で初期から行けるのは同じ鳥人族からはガビチョウ、鶯、コマドリ、キビタキ、カナリア、アカハラシキチョウ、エトセトラ。鳥人族以外だと鈴虫などの虫人族やベルーガの獣人にも該当する。
ちなみに水中の種族が水中ではなく、陸で初めてギルド登録した時のみ紹介するらしく、自分の住処で登録した時は自力でレベルを上げなくては紹介してもらえないらしい。水中種族は陸ではSTRにマイナスがつくためだそうだ。
条件にはまるのが鳥人族に多いのは、美しい声を持つ種族は鳥が多いことと、元々一部を除いて、非戦闘種族が多いのも鳥人族の特徴らしい。他の動物は草食動物だろうとある程度の攻撃力があるし、鳥人族は華やかな容姿を持つものが多く、昔から女優やら歌手やらで活動してきたのも、鳥人族がほとんどなのだそうだ。
吟遊詩人ギルドと芸能ギルド-別名演劇ギルド-を作ったのも鳥人族なので、過去の偉人たちが芸術に貢献する鳥人たちのために、自分たちが苦労したところを緩和するために作った制度でもあるらしい。創業者に都合の良いシステムはどこにでもあるし、今それが周り回って自身に還元されているので、心から感謝をしておいた。
「では、とりあえず登録ね。」
「お願いします。」
冒険者登録と同じく板に手を乗せると、ポーンという音がなり、登録内容がポップアップした。
【吟遊詩人登録内容】
名前:ララバイ
種族:鳥人族 オオルリ
サブJOB:生産者
メイン楽器:琵琶
サブ楽器:なし
吟遊詩人ランク:アーチスト
他ギルド登録:冒険者ギルド Fランク
[受注クエスト]
なし
渡されたギルドカードはカードケースになっていて、私のやつは茶色の革製で、ギルドのマークが小さくワンポイントになっているものだった。常に中を紙で満たし、ギルドのマークを紙に焼き写す魔法がかかっているらしい。
ケースがギルドカードの役割を果たすのは珍しいが、きちんと理由があるらしい。
「私たち吟遊詩人や、演劇をする者にとって、顔を覚えてもらうことがとにかく重要なの、人脈は力と言って良いわ。だから、他のギルドみたいに一回見せればいいギルドタグでは連絡がもらえず、”次”がなくなってしまう。よって、ギルドカードは名刺式になっていて、いつでも配り歩けるようにしているのよ。」
「なるほど、利にかなった形態ですね。」
「でしょ?だからカードケースが身分証の代わりになっていて、他の街に入るときなどはカードケースを見せるのよ。紙製の方だと配り歩いている物だから、信用度が低いので身分証として使うには力不足なの。」
「納得です。では、私の情報自体はこのカードケースに記録されているということですね。」
「そうよ。次はギルドの階級の説明をするわね。」
「はい。」
吟遊詩人ギルドの階級は10階級あるらしい。この階級は芸能ギルドと同じ名前になっていて、理由としては、芸能ギルドと吟遊詩人ギルドは切っても切れない関係らしい。
吟遊詩人ギルドは別名楽団ギルドとも呼ばれ、多くの奏者が登録しており、オーケストラなどもこの吟遊詩人ギルドの一部なのだそうだ。
オペラなどの場合吟遊詩人ギルドから、楽団が派遣されたりするそうだ。
階級は冒険者ギルドで言うところのランクを、階級と呼んでいて芸能ギルドと吟遊詩人ギルドが同じ階級制度なのは、その方が相手の力量を測りやすいと言うこともあるらしい。
【階級】
10.アーチスト
9.カドリーユ
8.ファーストアーティスト
7.コリフェ
6.ソリスト
5.スジェ
4.ファーストソリスト
3.プルミエ
2.プリンシパル
1.エトワール
アーチストは駆け出しのぺーぺーで見習い的な意味合いが強く、ギルドから成長に必要な色々な補助が受けられるが、カドリーユになると補助は一気に減る。
アーチストの間は練習室が2階より上にあるそうだが、無料で借りれるのに対して有料になるし、補充される名刺の紙もお金がかかる。
その他諸々に諸費用が多く発生し、とってもお金がかかるらしい。
また、吟遊詩人は仕事の場合きちんとドレスアップもしなくてはいけないらしく、その貸し出しにもお金がかかるらしい。アーチストの時は大幅な割引があるが、カドリーユになるとそこまで割引はなくなるらしい。大変世知辛いシステムだが、目に見える形として残らないものを提供する者として、最高のものを常に自分のオリジナルで提供できなくてはいけないと言うことらしい。
見習いが終わったら甘やかさないのよ♪とは受付嬢さんのお言葉だ。
「以上が階級の説明よ。ここからは見習いがすることを教えるわ。」
「よろしくお願いします。」
「師匠を見つけてとにかく練習して、基礎レベルを10まで上げること。以上よ。」
「それだけ…ですか?他にクエストなどをするわけではないんですか?」
「そうよ?基礎ステータスは基礎レベルが10になるまでは、とても上がりやすいの。でもそれは師匠がついているかついていないかで、だいぶ違いが出てくるわ。師匠がいなければどんなに独り立ちした後頑張っても、どこかで諦めるしかなくなるでしょうね。」
「なるほど、わかりました。師匠を探してきます!」
「は〜い、頑張ってね。一応練習室は師匠がいなくても使えるからね。」
「はい!ありがとうございました。」
私は意気揚々とギルドを出て行き、産婆のおばあさんに言われた通り、アールさんのところへ向かうことにした。
なので受付嬢の表情がすっと抜け落ち不穏な言葉を放っていたことを、私は知らない。
「…師匠選びが一番大変なんだけどね。師匠が選べないままレベルが10になり、階級アップ資格を失う子は多いもの。」
感想ありがとうございます!
いつの間にかブクマ数も3500を超えていました!
感謝感激でございます…!!!
これからもララバイの活躍をお楽しみください。




