緊急事態発生?!
もう少しで初クエスト回は終了です。
突如倒れたジェシーさんに、混乱する店内。スティングさんは大慌てで火も付けっ放しだったので、とりあえず火を消して、ジェシーさんのそばに駆け寄った。
ポーン
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緊急クエストが発生しました。
【お産婆さんを見つけて連れて行こう】
ジェシーが産気づいてしまった!急いで産婆さんを連れてこよう。
発生条件:皿洗いとフロア求む受注中、ジェシーの安心度が基準に満ちた場合
達成条件:40分以内に産婆さんを見つけて連れて来る
失敗条件:制限時間内に産婆を連れてこれなかった場合
報酬:見習い料理セット
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ジェシーさんのそばに駆け寄ったら、緊急クエストなるものが発生したらしい。
緊急クエストとは特定の条件を満たした時に発生するもので、今回は私が一定以上の仕事ができたことで、クエストが発生したらしい。
私にレストランでのホール経験がなければ、発生しなかったかもしれないということか!
クエストの報酬を見ると見習い料理セットとあるので、これはスティングさんからのお礼ということにもなるのだろう。
なんにせよ、産気づいた女性がいるなら手伝わないという選択肢はない訳で、急いで産婆を探しにいくことにした。
「スティングさん、私が産婆さんを探しにいくので、ジェシーさんについてて上げてください。」
「あぁ…ありがとう!」
「ついでに、産婆さんがきたらすぐに大量のお湯と、綺麗な布が必要になると思うので、準備できるようならしといてください!」
「それくらいなら俺たちがしとくよ、嬢ちゃん!」
「ありがとうございます!確かコメットさん…でしたよね?」
「あぁ!産婆のばあさんはここ最近忙しいって言っていてね、念のため婆さんの家と、俺が知ってる妊婦の家をマップにつけておくよ。」
「ありがとうございます!」
「俺も知ってる家をマッピングしとくよ!」
「ありがとうございます!」
合計5人のひとからマッピングしてもらい、まずは産婆さんの家へ直行した。お店を出た瞬間に視界の端にカウントダウンするタイマーが現れたので、このタイマーがクエストのリミットを示すものなのはすぐにわかった。
幸い今はクエスト中だったこともあり、楽器もウエストバッグも全てインベントリの中なので、速さも段違いで、肩に止まるパンジーに道を間違えかけた時は注意してもらい走った。
しかし、ついた産婆さんの家は真っ暗で、簡単にクリアできないようになっていたんだろう。
とりあえずマークがついているところ片っ端から調べることにして、一番遠いところから行くことにした。
「パンジー!この遠いお宅から行くとして、大体どれくらいでつきそう?」
「マスターのAGIから考えると15分くらいです!」
「だいぶ時間がないね、途中で産婆さんを見つけたら教えてもらうことはできる?」
「すみません、条件を満たしていないのでお伝えできません!」
「あー!!やっぱ無理か!条件が途中で解除されたら教えてちょうだい!」
「わかりました。」
運営はそこまで甘くなかったようで、きちんとロックがかけられていた。持てる限りの速さで必死に走っていると、一番遠い家の途中にあった、妊婦さんのいる家から、ちょうど妊婦さんが出てきたところだった。思わず急ブレーキをかけたため、妊婦さんの前に盛大にスライディングを決めてしまいびっくりさせた挙句に心配されてしまった。
「きゃっ!…あ、あなた大丈夫?」
「すみません、驚かしてしまって面目ないです…。」
「とても急いでいたみたいだけど何かあったの?」
「そうなんです!三毛猫の憩い亭のジェシーさんが突如産気づきまして、今産婆さんを探しているところだったんです。」
「まぁ!そうなの?!大変だわ、私の知っている妊婦友達の家に連絡して見るわね。もし、産婆さんがいたらジェシーさんのところに向かうよう伝えるわ。」
「ありがとうございます、助かります!」
「あ!待って。あなた産婆のおばあちゃんの容姿は知っているの?」
「…しまった!聞き忘れてました!」
「産婆のおばあちゃんは羊の獣人で、白いくるくるした髪型が特徴よ。白い割烹着を必ず着ているわ。」
「わかりました!ありがとうございます!」
「気をつけてね!」
産婆の容姿を教えてもらい、急いで遠い家へ向かう。予定より2分ほどオーバーしてたどり着き、産婆さんがいないか尋ねたがいなかったため、次のお宅に向けて走り出す。3件ほど回ると先ほど連絡を回してくれると言っていた人から、話は聞いたと教えてもらいさらなる情報をゲットした。
「産婆のおばあちゃんは今日、夜に八百屋のミッシェルさんのところに行くと言っていたわ。あと今日はいつもの割烹着の下に、ピンクのシャツと藍色のパンツを履いていたわ。」
「情報ありがとうございます!その付近を探してみます。」
八百屋のミッシェルさんの家に向かって走り、ミッシェルさんの家にたどり着いた。話し声が聞こえていたので、ドアを大きく叩いた。
「ごめんください!こちらに産婆のおばあさんはいらっしゃいませんか?!」
「なんだい?今家内が見てもらってんだ。」
「申し訳ありません!三毛猫の憩い亭のジェシーさんが産気づいて、すぐにも生まれそうなんです!」
「なんだって?!ちょっと待ってろ!」
少しして出てきたのは二足歩行する熊のような人で、ミッシェルさんの旦那さんらしい。状況を話したらすぐに家に引き返し、どうやら話を通しに言ってくれたらしい。視界の端に映るタイマーは残り8分弱になっていて、ここから走っても正直間に合わない可能性が高かった。けれど連れて行かないっていう選択肢はないので、今はおばあさんをどう連れて行くかが問題である。
「ジェシーが産気づいただって?」
「はい、今から大体30分程前に産気づいて、すぐに私が呼びに出た次第です。」
「破水は?」
「していなかったと思います。」
「ふむ…なんにせよ急ぐ必要があるね。」
「おばば様仕入れの時の荷車で申し訳ないが、これに乗れば引いて行ける分早く着くと思う。」
ミッシェルさんの旦那さんが持って着たのはリアカーで、確かにこれに乗ればおばあさんが歩くよりは早く移動できる。しかし、どう見ても私が引ける重さではないのが問題だ。
「すみません。このリアカーだと私が重くて引けないかと思います…。」
「あぁ〜そうか、確かにこいつはおもいからなぁ…。」
「マスター、まだ4回お手伝いが可能です!」
「パンジー!そうか、またブーストしてもらえば、押しながら移動できるかも!」
「じゃあ頼むかの。」
「こいつを返すのは明日でもいいからな、頑張ってくれ。」
「ご協力ありがとうございます!」
産婆のおばあさんをリアカーに乗せてもらい、自身はいつでも走れるようにスタンバイした。ミッシェルさんご本人も出てきて、清潔なタオルもいくつか持たせてくれた。パンジーとアイコンタクトを決めて大地を踏みしめる。
「『大地と火の理よ!エンチャントフィジカルブースト』重ねて『大地と火の理よ!エンチャントフィジカルブースト』もう一回、『大地と火の理よ!エンチャントフィジカルブースト』!」
「行きます!」
足元からみしっという音を立てて走り出した私は、パンジーのブーストのおかげで、だいぶ早く走れるようになっていた。夜だけれどそこそこ人が歩いてるので、緊急だと言いながら走り抜けること6分、三毛猫の憩い亭が見えてきた。店の前に急停車し、若干目を回し気味な産婆のおばあさんを担ぎ上げて中に入ると、コメットさんが代わりに迎え入れてくれた。
「おお!帰ってきたか。婆さんジェシーたちは寝室に移動させたよ。」
「わかった、湯をありったけ沸かしな。綺麗な布もね。」
「湯は沸かしてるよ。女衆が綺麗な布をかき集めてくれた。今はジェシーと一緒にいる。」
「用意がいいね、すぐに行こう。」
産婆のおばあちゃんはすぐにジェシーさんのところに移動した。私はというとクエストクリアには5秒ほど時間が足りなかった。クエストクリアできなかったのは残念だけど、お産自体には間に合ったようなので、心の底からホッとした。
「ララバイちゃんというんだよね?スティングさんから聞いたよ。」
「はい、ララバイと言います。ご挨拶が遅くなりました。」
「いやいや、よく走ってくれたよ。ジェシーさんが移動してすぐだったしね。それに君が指示を出してくれたおかげですぐにお産にも移れた。」
「そんな、聞きかじった知識程度だったので、必要で良かったです。」
「冒険者ギルドのお手伝いクエストできてくれていたんだろう?ジェシーも産気づいたから、明日から1週間は休みにするらしい。産婆のばあさんを迎えに行ってくれたから、報酬は5日分のまま支払うと聞いているよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「いやいや、僕は聞いたことを伝えただけだからね。」
「いえ、知らなければそのまま来ていたと思いますから、ありがとうございます。」
「あとは、無事に生まれてくるのを祈るだけだねぇ。」
「本当に、元気に産まれるといいですね。」
ポーン
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クエスト【皿洗いとフロア求む】をクリアしました。
経験値を獲得。
行動によりSTRが3アップしました。
行動によりAGIが5アップしました。
生活魔法がレベルアップしました。
料理がレベルアップしました。
報酬は冒険者ギルドにてお受け取りください。
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名前:ララバイ
種族:鳥人族 モデル オオルリ
LV:1
メインJOB:吟遊詩人 <バード>
サブJOB:生産者
【ステータス】
STR:20 up!
VIT:10
AGI:52 up!
DEX:36
INT:25
CHA:45
LUK:50
STp:0
【スキル】
メインジョブスキル
作詞 / 作曲 / 演奏 / 調律 / 歌唱 / 伝承
サブジョブスキル
木工 Lv.2/ 細工 / 料理Lv.2 up! / 伐採
通常スキル
白魔法 / 黒魔法 / 生活魔法Lv.2 up! / 従魔術 / 裁縫 / 採取 / 売買 / 錬金術 / 精霊術 / 言語
SKp:0
【称号】
アメトリンが庇護する者
称号初取得者




