プロローグ
VRMMO初投稿となります。ゆっくり頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。
『おめでとうこざいまーす!特賞!!Another World Online、VRギアセットでーす!!!』
カランカラーンという大きなベル音の後に告げられた賞は、私が求めていたものとは全く違っていた。
私、小鳥遊瑠璃子は、特賞ではなく1等賞を狙っていた。なぜなら私は、自他共に認める旅好き、アウトドア好きで、1等が屋久島への旅3泊4日だったのだ。少々ガッカリしつつも景品を受け取り、福引コーナーを後にする。仕事帰りによく寄る商店街なので、また福引できる機会があるだろう。
仕事帰りに食料品も買っていたので、嵩張る、重たい、足に荷物が当たるの3重苦を必死に耐え、ちょっとおしゃれなリノベーションアパートの自室にたどり着いた。このアパートは2年も待って、やっと契約できたのだ。近くに繁盛している商店街もあるし、私はきっとこのアパートからは出られないだろう。
花金-これは死語だろうか-に定時上がりし、ちょっと小洒落た晩御飯を作ったので、食べながら特賞のゲームのBOX説明を読む。あ、アボカドグラタンうまい。
Another World Onlineとは
5つの大陸と7つの海を有する世界『オーシード』。未開の地も数多存在するこの世界は魔法や幻獣、精霊、神の存在が身近にあった。しかし、世界に存在する種族たちはやがて争いをするようになり、永きに亘り混沌、憎しみ、悲しみ、たくさんの負の感情が溢れるようになった。神々は嘆き、神の世界へ旅立ち、精霊や幻獣たちは隠れてしまった。そしてついに"厄災の獣"が生まれ、たくさんの命が失われてしまった。全ての種族は過去の己に失望し、再起を願った。その願いを聞き入れた神々は、すべての種族たちに告げた。
これより驕ることなく500年の時を生きれば、過去の安寧を蘇らせる渡来人が現れるだろう。
人々はその言葉を励みに手を取り合い、復興に励みつづけ、ついに約束の500年がたった。渡来人は時折自身の世界から抜け出し、オーシードに叡智をもたらす。それは魔法や剣か、はたまた生産技術でか。
一人一人の個性がオーシードを導いていくVRMMO、あなたもAnother World Onlineで自由なセカンドライフ、異世界旅行へ
設定はどうやらよくある中世ヨーロッパのようだが、とにかくグラフィックの美しさもさることながら自然がとにかく素晴らしかった。どうやらクリスタルでできた森や、キラキラ光る宝石のような花畑などがあるらしい。幼い頃からカラスと呼ばれるほど光ものに弱い私は、受け取った時の無関心なんて忘れて、開封したセットの中にあったVR機器の取り扱い説明書を読み始めた。現実にはあり得ないような風景が本物のように感じられて、見られるのであればそれ即ち旅行だろう。場合によっては森の中でサバイバルもできるらしい。控えめに言って最高かよ?
どうやらこのゲームセットは認知度をさらに高めるため、ユニークユーザー向けに出したオープンキャンペーンセットだったらしい。シリアルナンバー付きで装備特典なるものがつくらしい。レンコンもちを頬張りながら、サービス正式開始日前に遊べることも確認し、ゲームをやるために身支度を進めていく。残りの晩御飯を胃に収め、後片付け、風呂、体型維持のためにストレッチを行い、ギアの設定をする。時間の設定をするところで今が21:00過ぎなのに気が付いた。私はいい大人、30になって夜更かししたらシワができる-と、私は思っている-ので、アバター設定までしたら寝ようと決め、VRの世界にダイブした。