急変
担当になり二日目の出来事。
昨日は採血をさせていただき、病室内は和気あいあいモードでした。
日勤で出勤するといつもとは違い戦闘態勢で慌ただしく看護師が動き医師の緊迫した声が響きわたる。出勤してきた私達日勤組に病棟師長が声をかけた。
「菜須さん、モジュールでも、あなたがメインで処置してあげた患者さまです、そばに行き看護できることがあれば行ってきなさい」
「はい」
「そして前原さん、勉強になると思います。傍で見て勉強させていただきなさい」
「はい」
戦闘態勢のなか様子を見て声をかける。
主治医「輸液の速度あげて」
よつ葉「輸液速度あげます。倍の速度で大丈夫ですか?」
主治医「全開で良いよ」
よつ葉「はい」
一進一退の危険な状態が続く。その間に看護師が家族に連絡を入れて直ぐに来てもらうように伝える。
【お詫び】
内容に関しては守秘義務もありますので割愛させていただきます。あくまで、新人看護師よつ葉を主体に書いていますので、ご了承ください。
ご両親が到着され主治医より急変とこれからの事が話される。
看護師長「菜須さんも同席してください」
よつ葉「はい」
指導看護師さんと主治医とカンファレンス室に向かう。ご家族が不安そうな表情で待機されていました。
主治医が淡々と事実を告げる。そして質疑応答のようにご家族の方からの質問に主治医が答える。このようなやり取りが数回続き主治医が重い言葉を告げる。
「延命治療はどうされますか?」
重い言葉に直ぐに答えは出ないご家族の皆様。全て看護記録にメモしていく。
「一度延命して持ち直しても、また危険な状態に陥るとお考えください。その時も延命を望まれますか?」
容赦ない言葉だとは思いますが、真実を告げて同意を取っておかないと後から裁判沙汰になることがあるとか、新人研修の時に色々と覚えさせられましたから、これだ!と思いました。
ご家族の決断は延命治療はしないと決められました。ご家族と主治医のやり取りのなかで必要な言葉を看護記録にメモしていく。「余後説明あり」「延命措置なし」などを書き込むよつ葉。指導看護師が首を縦に振るのを確認する。
明日、他科へ転科して手術予定でした。それも叶わず、ご家族に見守られ亡くなりました。
病院では、当たり前にあること。それは頭では理解しているけど、新人看護師は心がついてこないことが多々ある。
「昨日の採血がいけなかったのだろうか?」
「よつ葉が担当していなかったら急変しなかった?」
「なんで看護師になったんだろう?」
など、考えても仕方ないことが頭をよぎる。あの時にできうる看護に処置は指導看護師の元、行ってきた。でも、弱い心は自分を責める。
病棟看護師長と夜勤担当看護師と指導看護師とよつ葉、心療内科医とで行われた【デスカンファレンス】
きっと、よつ葉のために開かれたと思います。ウチの病棟では、こういうことも珍しくはないので。
まだまだ入院している患者様が待っています。明日から心を入れ換えて笑顔で看護してきます。
【デスカンファレンス】とは、
亡くなった患者様に関わってきた看護師たちが、心に溜め込んできたものを吐露するための看護師のためのカンファレンス。
よつ葉が担当でなかったら、違っていたのだろうか……。




