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異世界イルストラシオン  作者: 黒糖猫
9/10

№8 マグマの申し子

 溶岩により、発生した煙が立ち上がる。

 そして煙は、段々此方へ近付いているのが、分かる距離まで来ていた。

 するとヴァースが、歯を噛み締め「此処は、俺が食い止める!お前は他のやつを手助けしてやれ!」と突然言い出し、そのまま煙が見てる方角へ走り出す。




「ヴァース!?」




 そう叫んだ時には、既に立ち去った後だった。

 僕は、ヴァースが言った通りに取り掛かる。

 今の僕に出来る事は、コレしか無いのだ。

 僕は直様、近くに居た兵士に避難誘導の手伝いを願い出た。

 緊急事態が故「ああ、助かるよ!」と、直ぐに承諾して貰った。

 その後、兵士達の指示に従って、来た道を戻る。

 麓に居る人達に、危険を伝える為に…





           ◇◇◇





 麓に到着した一行は、この危機的状況を逸早く全員に告げるべく、緊急避難警報を発令された。




 非常事態発生!ここから後方、数キロメートル先に、大型の魔物モンスターが出現! 至急、各地に近くに居るに兵士の誘導に従って行動してください。繰り返す! 非常事態発生……………




 放送と共に、非常ベルが辺り一面に鳴り響く。

 それから何時間が過ぎただろうか?

 麓に居た人達は、先の放送で大混乱が巻き起こる。人々は、我先にと街へ逃げ出していた。そして、その後の避難対応は、本当に大変だった。

 でも漸く、殆どの避難誘導が終わった。

 後は、逃げ遅れた人がいないか?を探すだけだ。

 僕は上から周囲の状況を確認するべく、再び見学者用の道へ向かって登ぼった。



 頂上へ到着すると、奥から爆発音が響き渡る。

 当たりを見渡すと、向かえ側の岩山が溶け崩していた。

 そして、崩れた先に見えたのは…




「何だよぉ…あれ!」



 

 夕暮れ色の鱗から発生する、熱気に覆われた大蜥蜴バケモノだった。

 進む度、地面が赤く溶け出し…大きさは、パッと見では、多分アフリカゾウ並は有る。

 異様に動く大きな目玉は、進路を阻む者へ視線を向けられていた。

 そして、その進路に立って居たのは………




「!?」




 ボロボロに成りながらも、必死に戦うヴァースの姿だった。

 所々に無数の切り傷が有り、そこから血が流れ出ている。

 しかし、それ以上に尋常じゃないぐらいの汗が流れ出ていた。

 槍を振る度、汗が飛び散る。徐々に体力は削られ、息が荒々しくなっていく。

 よく見ると、ヴァースの右肩が変色している。内出血した上に、酷く黒ずんだ火傷。

 通常…サラマンドラと戦う際は、C~Bランクの冒険者パーティーが数名で向かい打つのが王道。

 例え…Bランクの冒険者であるヴァースでも、一人で立ち向かうには荷が重過ぎる。

 目は霞み、身体がフラ付くが、下唇を噛み締める。槍を使って全身を支えて、踏ん張るヴァース。

 最早…彼の体力は、もう問うに限界を超えていた。

 だが…それでもヴァースは、攻撃が来る前に体勢を立て直し、透かさず構える。

 その目に宿る闘志は、まだ死んではいなかった。

 その光景を、目の当たりにした僕は言葉を失い。避難誘導の事等、頭から抜け落ちていた。



 嗚呼………僕は何で、此処に居るんだろう?

 ヴァースは、事の危機の大きさを察知して、自ら飛び出して行った。

 相手は”マグマの申し子”とまで呼ばれる魔物。

 幾らヴァースが強くても、一人で立ち向かうなんて……無茶だ!

 けど…それでも立ち向かって行ったのは、この状況で、立ち向かえれる者が……自分ヴァースしか居なかったからだ。

 先程出会った騎士団達は、もう街に戻って入る頃だろう。

 知らせて行くにも、時間が掛かり過ぎる。

 恐らくヴァースは、冒険者としての経験から、直感的に察して対応した。

 それに比べて……僕は何だ? 冒険者になって……ヴァースと一緒にパーティーを組んだんじゃないのか?

 さっきもそうだ。ヴァースは「此処は、俺が食い止める!お前は他のやつを手助けしてやれ!」と言い残して行った。

 ヴァースは優しい。自分の仲間を傷付け無い為、敢えて戦いから遠ざけた。

 しかし、それとは裏腹に言えば、詰まり……今の僕じゃ戦えない。彼の足手纏いになるだけだと言う事を。

 ザックリ言えば、そう言う事になる。

 その意味は、僕自身が一番良く分かっている!

 だからこそ僕は、ヴァースの指示通りに動いた。今の僕に出来る事は、コレしか無いからだ。

 ………………

 ………………

 ………………

 ……其れで良いのか?

 ろくに戦え無いからって、本当に其れで良いのか?

 戦え無くたって、他にも何か遣れたかも知れない……それなのに僕は!

 ……ヴァース一人行かせてっ!

 いきなり、この世界に落とされ、右も左も分からず、途方に暮れていた時。初めて声を掛けてくれた。

 見ず知らずの僕に、色んな事を教えてくれた。こんな僕に、仲間になってくれと言ってくれた!

 僕にとってヴァースは、この世界で最初に出来た大切……仲間ともだちじゃないのか?!

 いつも、ヴァースに救われっぱなしで、何一つ返せてい無い。

 僕も何か……何でも良い。少しでも恩返しがしたい!

 彼の……ヴァースの役に立ちたい!

 その一心で、仲間になったんじゃ…無いのか!?

 もしも…この戦いで、ヴァースの身に何か有れば……何も返せれやし無い!



 しかし、事実げんじつは小説よりも奇なり……

 今となっては……何を喚こうが、状況は最悪のまま。

 僕は悔やんだ。何も出来ない、己の無力さに……

 僕は怒った。情けないてどうしようも無い、自分の無能さに……

 すると突如、大きな爆発音が鳴り響く。そして、時間差で来る強い爆風に煽られ、思わず目を閉じた。

 風が止み、目を見開くと……其処には、うつ伏せに倒れているヴァースの姿だった。




「あぁっ!……ヴァーーース!!」




 泣き叫んだ後、ヴァースの右手が、少し動いたのが見えた。




「あ!」


「ゲホーっ!!ゴホッゴホッ! ……し、死ぬかと思った。あの……蜥蜴野郎がっ!!」




 地面に爪を立て、右脇まで手を後ろへ引くながら悪態をついた。

 体を起こす際、腕は痛みで振るえていたが、何とか自力で体勢を立て直した。

 僕は、ヴァースが無事……いや、生きていた事に、少しホッとする。

 しかし、まだ危機は去っていない。

 この状況を打破しなければ、彼が命を落とすのも時間の問題。



 このままでは、ヴァースがっ……!

 そう思った瞬間、目から涙が溢れ、視界が歪んで見える。

 えーい泣くなっ!考えろ考えろ考えろ!

 僕にしか出来ない……僕だからこそ出来る事を!

 


 溢れ出した涙を両腕で拭き、両手で思いっ切りバンっと、柵を叩いて握り締める。

 そして、そのまま俯いた体制で、必死になりながら考える。



 もしも物語の主人公なら、この危機的状況をどう切り開く?

 僕には、物語の主人公みたいに、特別チートな力を持っている訳じゃない。

 僕が保有しているスキルは、たった一つ。然も、戦闘には全く役に立たない代物。

 後は、称号ぐらいか? 確か、二つあった筈だ。

 先ず、一つ目が『異世界からの来訪者』だったな。

 これに関しては、異世界モノでは定番だ。寧ろ、自分が異世界人だと言う証明になる。

 そして、二つ目が『現化挿絵主イルストラシオン・マスター』だ。

 ……待てよ。イルストラシオンって?

 そんな事を頭の中に過らせた瞬間、下から目元に光が差し込む。



「ヴぅ…眩しい!って、え?」

 


 辺りは、溶岩から発生した煙で、夜みたいに暗い。

 太陽の光も寄せ付けない暗闇に、一体何所から?

 下の方を当たりを見渡すと、其処に在ったのは、溶岩から発する光に反射する。怪しくも煌く刃だった。


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