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異世界イルストラシオン  作者: 黒糖猫
8/10

№7 迫り来る脅威

今回の話は、少し短めになっております。

 うう…しんどい。

 僕達は今、剣のある丘に続く通路とは別の…見学者通路を歩いていた。

 この道…剣のある丘に続く通路と比べて、こっちの方が少し大回りで険しい。

 只でさえ蒸し暑い中、動き歩いているから余計辛い。

 汗がダラダラと止まらないし…まだ目的地にも到着していないのに、もうヘトヘトだ。

 汗をかき過ぎて、服が湿って気持ち悪く感じる。

 ああ、風呂入りたい…

 そして、風呂上がりの一杯!

 特に、銭湯に入った後のラムネが又格別!

 あ〜…思い出したら、無性にラムネが飲みたくなって来た。

 そう思い出しながらも、飲む事すら叶わない現実に思わず、溜息を吐いた。

 そんな様子を見たヴァースが「おい…大丈夫か? 後もうちょいだから、頑張れ!」と声を掛けて来る。

 僕は、額と喉元の汗を拭きながら、ヴァースの方を向いて頷いた。



 それから数分後…僕達は要約、見学者用に設けられた、見晴らしの良い丘に到着した。

 其処には、僕の胸ぐらいはある、高さの木製の柵が張り巡らせていた。

 その柵の向こう側を見下ろすと、丁度肉眼越しでも、下の様子がはっきりと分かるぐらいの高さだ。

 ヴァースは、僕の隣で見下ろしながら「おぉ、やってるやってる!」と、片手を翳して言った。

 僕も下の様子を見てみようか。




「はい…では、次の方どうぞ!」


「おおぅ、やっと順番が回ってきたぜ! 俺様は、此処いらじゃ~名の知れた喧嘩屋よ! 腕っ節には、自信があるんだ。こんな剣なんざぁ…簡単に抜いてやるよ!」




 そう言うと顔のゴツイ男は、地面に刺さっている、剣の柄を両手でしっかり握りしめ、力強く引いた。

 しかし、剣は全く動く気配もしない。歯を鳴らしながら、力尽くに引っ張ってもピクリともしなかった。

 男の額には、太い血管が浮かび上がる程、頭に血が上り、大量の汗を流し、歯軋りしていた。

 男は思わず、柄から手を放し、両手を膝に付けて、息切れしていると「はい、其処まで!」と、声が聞こえて来た。

 そう…先程も、運営を担っていたスタッフの人達だ。

 見ている限り、どうやら時間制限が与えられているそう…

 そして、その時間が過ぎると、強制的に後退させられる訳だ。

 確かに…此処まで行列が作られているのに、先に来た者が何時までも居たら、言い争いの原因になり兼ねない。

 そう考えている内に、列に並んでいた人達は、次…また次へと挑戦するも、誰一人として抜く事が出来ていない。



 それにしても、矢張りと言うべきか…あの剣の外見、間違えなく僕が描いたイラスト

 つまり、現化挿絵者イルストラシオンだ。

 そして、僕が描いた絵の中で唯一、剣をモチーフにしたイラストが有る。

 それが正に、目の前にあるそれだ。

 正直…自分描いた物が、実物として存在している。それを嬉しいさの反面、恥ずかしくも感じる。

 何とも言えぬ、複雑な心境なのだ。

 そう言えば、何か腑に落ちない点が…

 それは、剣の色合いだ。

 そもそも、あの剣のデザインは…先程の騎士団達が持っていた剣の大きさは、ほぼ変わりはしないが、見栄えは日本刀その物だった。

 そして先程も言った、剣の色合いについてだが…

 この剣には、ある花をイメージにして描いた。それは華やかでありながらも、品のある美しさを兼ね備えていた…

 しかし…今の剣には華やかさ処か、全体が錆付いて見える。

 何故そんな風に、なってしまったのかは、良く分からない。

 コレは直接、調べる必要があるかも知れないなぁ…

 僕が、何かに気付いたのを察したのか?

 横に居たヴァースが「どうかしたか?」と言い寄る。

 僕は直ぐ様、返事を返した。




「いや、少し気になった事が有って。あれって、最も近くで観れないかな?」


「えぇ?それってもしかして………お前も、アレを受けてみたいって事か?」


「まぁ、ある意味…そうなるかな?」


「確かに此処に来てから、彼此1時間近くは経っているだろうし。見てても、あんまり面白みも無いから、暇だしな~」




 ヴァースが欠伸をしながら言った後、笑みを浮かべる。




「よし! それなら、早く並びに行った方が良いな。俺は槍使いだから、お前の付添だって言えば、一緒に並べれるしな。そうと決まれば善は急げだぜ! あっ、そうだ…どうせ長い時間待たされるんだ。何か…下の出店のもんを買ってから並ぼうぜ! その方が良いだろ?」


「うん!そうだ…」




 僕が最後の語尾を言い掛けた……………その時だった。





 ギイィェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!!!





 何処からか、腹の底から響く様な音が鳴り響き、地面をも揺らす。

 音?いや…そんなものじゃない。コレは鳴き声、それも途轍もなく大きな生き物の…

 そんな化物が、この世に実在するのも、此処が異世界だと言う事を物語っている。

 すると、後ろからガシャンっと言う音が鳴り響く。

 僕は思わず振り向くと、兵士の1人が、双眼鏡の様な道具を落とし、その際レンズが割れた音だった。

 その後、ヴァースが駆け寄り「おい!大丈夫か?」と声を掛けると、兵士は悲鳴を上げながら、尻餅をついた。

 兵士は、そのまま頭を抱えて「そんな、あり得ない!何故…あんなのが?」と震えながら小声で呟く。

 兵士の問いに、疑問を抱くヴァースだったが、再び謎の鳴き声…いや、咆哮が鳴り響く。

 先程のより、更に大きく聞こえてくる。

 僕は慌てて、柵越しに辺りを見渡した。

 そして、其処で見た物は…遠くの岩肌が溶け出し、溶岩化している光景…それは正に、火山帯その物だった。

 僕は余りの光景に、息を飲み込み、目を晒す事が出来なかった。

 何故なら、溶け出す溶岩の中に、怪物そいつは居たのだから。



 とある諺に"2度ある事は3度ある"と言う言葉がある。

 どうやら僕は、3度目のトラブルに巻き込まれてしまった様だ。

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