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異世界イルストラシオン  作者: 黒糖猫
6/10

№5 結成!Free colors

 冒険者ギルド内で、両者共に睨み合っていた。

 方や…リーダーらしき茶髪リーゼントが、アフロ二人を率いている。ガラの悪い冒険者3人組に対し、一人の男が居た。

 その男は、前に人が居るせいで、姿は見えない。

 しかし、その向こう側から声が聞こえる。それだけでも十分に、その存在は感じられる。

 僕は今…異世界に来て、最初の修羅場を迎えている。




「オイオイ…何だ〜?テメー。俺様は今、親切がてら…このクソガキに、世の中の厳しさってヤツを、その身を以て教えてやってる所なんだが」


「そうだ!部外者は黙ってろやコラー!」


「黙ってろやコラー!!」




 3人組がそう言うと、男は口元に笑みを浮かべる。

 そして僕は、彼らの間に出来た、ほんの僅かな隙間を覗き込むと、其処に居たのは…




「いや…部外者じゃないさー。何故なら…そいつは、の連れなんでな!」




 紛れも無く、ヴァースの姿だった。




「そいつに様って言うなら、先ずは…この俺を通して貰おうか」


「何だ〜と!」




 その時、茶髪リーゼントがヴァースの襟を掴み、前に寄せる。ヴァースも又…前に引っ張られる際、一歩を踏み出す。




「オイ…余り舐めた口叩くと、縛り上げるぞぉ!」


「ほぉ…ヤれらものならヤってみろ。ただし…ヤれるものならなぁ」


「デメー!上等じゃねーかコラ!!」


「ちょ…待って下さい兄貴!」




 その時、ヴァースに噛み掛かろうとする茶髪リーゼントに対し、その弟分で有るアフロの片割れがソレを止める。




「何故、止めやがる!この生意気な若僧に、お挙を添えないと気が済まない!」


「いっ…いいえ、そうではなく。そいつが持っている物を、よく見て下せぇ!」




 アフロが指差す方向の先には、ヴァースが肩に掛けていた一本の槍だった。

 そして、それを見たリーゼントの表情が一変した。




「お…おい、その赤い槍…お前、まっ…まさか〜!」


「「「赤槍のヴァース〜!!?」」」




 3人組は、驚きを隠せない様な声を上げ、ギルド内に響き渡る。いつの間にか、周りが騒めき始め、そしてヴァースに注目が集まった。




「そうだと言ったら…何か、問題でもあるのか?」




 ヴァースの問いに、ビクつき始める3人組。

 中には、悲鳴に似た声を出す者も居た。

 それもその筈、何故なら彼の顔は今…笑みを浮かべているが、まるでオオカミの如く、鋭い目で睨み付けているのだから…

 そして、そんな彼の威圧感に、周囲の場の空気を変わる。

 3人組は、徐々に顔色が悪くなっていき、青ざめていく。

 それもガタガタと震え、全身に滝の様な汗が流れ出るぐらいに…

 するとヴァースは、肩に掛けていた槍を下ろし、刃先を三人組に向けて告げる。




「おい…最後に、言い残す事は有るか?」




 3人組は、恐る恐る一歩…また一歩と、後ろに下がり、最終的には全力で逃げ去って行った。

 それも、去り際に「ヒィーーー!すみませんでした!!」と言い残して…

 それにしても、ヤられて居た僕が言うのも何だけど、チンピラらしい結末でしたねぇ。

 善が勝つ!的な感じで…

 まぁ、かなりベタなシチュエーションでしたが、何とか乗り切れました。これで、やっと一安心です…はぁ〜。



 しかしながら、先程のヴァースには、驚きました。

 普段は、彼と出会ってから一度たりとも、あんな顔を見せたのは初めてだ。

 もしかしたら、あれが前に言っていた。僕の知らない…会う前のヴァースかも知れない。

 そんな事を考えていたら、ヴァースが心配そうに近づいて来た。




「おい、大丈夫か!?」


「うん…ヴァースが来てくれて助かったよ。ありがとう」


「良いって事よ!それにしても、災難だったなぁ。よりにもよって、あんなのに絡まれるとは、もう少し、配慮するべきだった…何か酷い目に有って無いか?」


「うん、大丈夫…少しリーゼントとアフロに、攻められただけだから…」




 僕がそう言うとヴァースは、3人組が逃げて行った先を視詰め「チッ、あん野郎ー!やっぱ…あのヘンテコな髪、切りを落とせば良かったぜ!」と、腹の奥底から声を出す様に、ボソッと小さく呟く。



「…えっ?何か言った?」


「いっ…いや、何でもない! そんな事より、こっちは済んだから。早く登録済ませようぜ!」



 そんな事を言いながら、柔かに笑みを浮かべる。

 この爽やかな笑顔、いつものヴァースだ。

 しかし、さっき何か…はぐらかされた様な?

 気のせいかな?

 …まぁー良いかっ!

 別に重要なわけでも無いし…気にしても、仕方がない。

 今は…冒険者になって、ヴァースとパーティーを組むんだ。

 先ず手始めに、ギルドで冒険者登録をしないとね!

 僕達は、冒険者登録する為、受付の窓口へと向かった。





             ◇◇◇





 僕達は今、受付の窓口の手前に立っていた。

 それにしても、先程の騒ぎのせいで、周囲の人達からジロジロと見られている。

 周りの視線が、チクチクと刺さる様な感じがして、背筋が擽ったい。

 前の世界では、人前に出るのも…増しては、見られる事も苦手だった。

 なので、余り見ないで下さりませんか?

 絵を鑑賞してもらうのと、自分自身が見られるのでは、全く違う!

 うう…恥ずい!

 僕がそんな事を考えながら、周りをキョロめいて居ると、ヴァースが「あんまり、気にするなよ」と、微笑みながら言う。

 相変わらず、僕は何度も彼に助けられている。

 だからこそ、一刻も早く冒険者として、ヴァースに頼りになる心強い仲間になりたい!

 助け合いの精神ってヤツ?

 よし!頑張らないと!

 そんな感じで、気合い入れ直して、身を引き締めた。

 そして、僕は受付の窓口前に立つと、二十歳半ばぐらいの女性が居た。




「いらっしゃいませ!私は、受付人の”メルネ”と申します。本日のどの様なご要件ですか?」


「え…ええと!僕は、カイマと言います…」


「あ、君は先程の…」


「…えっ?」


「あら、ごめんなさい…先程の騒ぎを見ていた者で…大変だったわね…大丈夫でしたか?」


「はい…先程は、お騒がせして本当にすみませんでした」




 メルネさんに対し、僕は謝罪の意を示す為、丁寧に頭を下げる。

 すると、僕の行動を見ていた人達が、騒めき始める。

 どうやら僕の態度に、少し驚いた様子だった。




「いいえいいえ!そんな事…頭を下げてください! 貴方が謝る道理は無いのよ」


「いいえ…あれは、僕自身の不注意が招いた事なので!」


 僕がそう言うと、メルネさんが目を丸くして表情がポカンした後、クスクスと笑い始める。

 何がそんなに可笑しいのか、全く分からなかった為、僕は不思議そうに彼女を視詰める。




「これは失礼…ココでは、君みたいな礼儀正しい子は、珍しいから…つい。気に障ったんであれば、ごめんなさいね」


「いいえ!そんなに気にしていませんので…」


「本当に良い子ね~。お姉さん…嫌いじゃないわよ。それに…実を言うと、あの3人組。最近、迷惑行為をして来る連中で、此方も対処に困って居た所なのよ」


「そ…そう何ですか?」


「ええ、お陰で助かったわ。本当にありがとう!」


「いいえ…僕は何も!追い払ったのは、ヴァースですから…」




 メルネさんがそう言うと、僕の顔を見ながら微笑んでくる。

 なんだろう…この”良く可愛がってくれる近所のお姉さん”的な雰囲気は…

 こう見えて僕は、今年で19歳になるんだけど…

 そう思っていると、横に居たヴァースが僕に向けてゴホンと咳をつく。

 僕は、その声を聴きハッとなる。おっと、そうだった…と、本来の目的を思い出す。

 危ない危ない…危うく話が、逸れるところだった。

 よし…では、気を取り直して!




「す、すみません!冒険者登録をしたいのですが…」


「ウフフ…はい、分かりました。では、こちらに手を乗せてください…」




 メルネさんが手を添えて言うと、其処に在ったのは、結晶の板が埋め込まれた台だった。

 その中心面には、魔法陣の様な円が浮き出ている。

 僕は、メルネさんの指示通りに、円の中心に右手を添えた。

 すると乗せた時、板が光り始め、面から一筋の横線が浮かび上がり、ゆっくりと下がって行く。

 その光景は、まるでGPスキャンの如く…

 横線が下がり切った時、ピコーンと言う音が鳴り響く。

 如何やら、もう終わった様子だ。




「はい、お疲れ様でした…これで、登録は完了になります。こちらは、カイマ君のギルドカードとなります」


「あ…ありがとうございます!」




 僕は、手渡されたギルドカードを貰うと、両手でカードを掲げて、目をキラ付けて見上げる。

 その様子見て2人は、クスクスと笑っていた。

 だって…仕方が無いじゃないか!

 初めての事をすると、緊張もするし…こんな歳なっても、はしゃいだりする。

 でも…何はともあれ、これで僕も晴れて冒険者になったんだ。




「よしっ! じゃ~次は、パーティー登録を頼む!勿論…登録するのは、俺と此奴・・で…」




 背後から、肩に腕を乗せられ、割り込んで来たヴァースが、爽やかな笑顔で言った途端、周囲のざわめきが一気に増した。

 いやいや、それより・・・そんなに、ざわめく程かな?

 それとも…僕みたいな奴が、パーティーに加えられるのが、以外なのか?

 それにしても、ヴァースの方は周りを気にせず、話を進めていた。




「で…では、此方の用紙に、ご記入をお願いします…」


「おぉ! 了解した」




 そう言うとヴァースは、メルネさんから渡された記入用紙と羽ペンを手に取り、着々と書き始める。




「ええと…パーティーメンバーは、俺とカイマ。リーダーは…俺で良いっか! 後は、パーティー名だが、俺ってばどーも、こう言った事に関しては不向きなんだよな………お前も何か…パーティー名でアイディアとか有るか?」


「えっ!僕?」


「ああ!良い名前が有れば、遠慮なく言ってくれ!」


「うーん…そうだなぁ」




 突然、そんな事を言われてもなぁ…

 直ぐには、思い付かない。

 僕らのパーティー名か…何が良いかな?

 折角だから、シンプルでカッコイイ名前が良いな。

 ん~~~

 ………………

 ………………

 ………………

 ………………

 ………………




「自由な色彩達…”フリー・カラーズ”なんて、どうかな?」


「ほ~、フリー・カラーズか…なかなか良い響きじゃないか! しかし…自由ってのも悪くない発想だが、何故”色”なんだ?」


「え~と、それは…何と言いますか。人を色に表した…みたいな感じかな…え~と」




 こんな説明では、ヴァースに伝わる筈が…




「成る程…要するに、相手のイメージ…個人の個性とかを、色で例えられているんだな!」




 つっ…伝わっていた!

 何で、あんな説明で分かるの!?

 まぁ…それはそれで、説明が苦手な僕としては、何度も言わずに済むから、とても有難いけど。




「…う、うん! そんな感じです!」


「やっぱり、そうだろ? お前ってば、物賢そうに見えて、意外と感覚派なところが有るからな…」


「確かに…そうかも知れないね」


「まぁ…お前が、芸術家ってヤツの部類だと言うんだから、仕方が無い…」




 この反応は、この世界でも基…美術家や芸術家といった者達は、変わり者扱いされているのであろうか?




「それにしても、意味が解った途端、益々気に入った! なかなか面白い発想だ!」


「喜んで貰えて何よりだよ…」


「おぉとも! では早速、ええーと…”フリー・カラーズ”っと!」




 パーティー名の記入欄に名前を書き終えると、そのままメルネさんに、書き終えた記入用紙と羽ペンを返却する。




「よし、じゃーコレで頼む!」


「はい、承りました。 では…また此方の台に、今度はギルドカードを乗せてください」


「あっ…はい!」


「はいよ!」




 僕は、先程貰ったギルドカードを、再び結晶の板が埋め込まれた台に添える。

 すると、また光り出し、今度は一瞬にして終わった。

 続いてヴァースも、僕と同じ様にカードを台に添える。




「…はい、コレで登録の方は、全て終了致しました」


「はい、ありがとうございます!」


「ウフフ…では、又のご利用をお待ちしております」


「はい」




 コレで漸く、晴れて冒険者になれた。

 次はヴァースが、この街に来た目的である”剣が有る丘”に向かう。

 こうして僕達フリー・カラーズは、登録し終えて直ぐに、冒険者ギルドを後にした。



 それにしてもメルネさん、去り際に目を合われた時、僕の事をずっと手を振りながら、笑顔で見送られたが…

 もう一度、宣言させて頂く!

 僕は、こう見えて今年で19歳になります。

 大事な事なので、更にもう一度…今年で19歳です!

 ………………

 ………………

 ちなみに僕らが去った後、冒険者ギルド内のざわめきは、暫くの間は続いていた。





**********************************************





 先程の冒険者ギルド内に居た、とある五人の冒険者が会話していた…

(*此方は混乱防止の為、冒険者に1~5の番号を振っておりますので、ご了承ください。)



1「…おい!さっきの見たか?」


2「ああ…まさが、あの”赤槍のヴァース”に、お見え出来るとはなぁ~」


3「噂通りの、恐ろしい目付きだったねぇ。ありゃ~絶対、何人かヤったって口だよ!」


4「うんだぁ! オラも、そう思うだよ」


5「………………」


1「どうした…そんな難しそうな顔をして?」


5「アレは本当に、赤槍のヴァースだったんだろうか?と思ってな…」


1234「「「「………はぁ~?」」」」


2「何言ってるんだ?お前も…奴を見たろ! あの凶悪な鋭い目…そして奴の象徴である、あの朱に成るとも思える、真っ赤な槍を!」


5「…実は俺、一度だけ奴を見かけた事が有る! 確かに…先程の目は、俺が知っている正にソレだったが…それは先程、絡まれていた若者を助ける様だった」


4「うんだぁ! 確かにオラも、そう見えたんだな!」


3「そうだねぇ…見た感じだと、随分と親しげだったねぇ。おまけに、瓜々しい顔をしてさぁ」


1「確かに、此処いらじゃー見掛けねぇ顔だ」


4「そう言えばオラ、さっきい…その若者が赤槍のヴァースと一緒に、パーティー名をどうするとか話して居る所をみたぞぅ!」


1235「「「「何!!!」」」」


2「オイオイ! それは何の冗談だ? 今の話の流れで言うとか、冗談でもマジで笑えねぇぞ!」


4「…そうなのか?」


3「当り前よ! このアンポンタン!良いかい!良く聞きな…赤槍のヴァースにはねぇ、もう一つ有名な噂が有るんだ。それは”仲間は作ら無い”って事さ。噂によれば、パーティーを作る処かスカウトすら応じない。此処まで言えば解るだろ?そんな一匹狼が仲間を得ようと言うだ。それも…あんな腕を握っただけで、バキッっといきそうな子を!」


4「な…成る程、確かにそれは、かなりヤバいっすね!」


3「だろ!」


5「しかし…何故よりにもよって、あんな若者を? 見る限りじゃ、ひ弱にしか見えなかったが…」


1「………………」


2「…おい!今度は、お前までどうした?」


1「いや!もしや……………」


2「だから、何だって言うだよ!」


1「コレ…かもしれねぇ」


2345「「「「ブフゥっ!!!」」」」


5「いやいや、それは流石に! 」


2「証明出来るのか? 俺としては、コレしか思い当たらねぇ」


5「そうっ…そう言われると、確かに…てかっ! そろそろお前は、その薬指を下ろせ!」


1「むむ…よくよく考えてみれば、あの赤槍のヴァースも、良い年だしな。色恋坂に目覚めても可笑しくわない…」


3「ちょっと待ちな! たっ大体…そいつが女だと言う事は、まだ分かっちゃい無いんだぞ!」


1245「「「「………………」」」」


5「確かに言われてみれば、男も女も似つかない顔立ちだったな…」


1「お前…そいつの事を見掛けたんだろ? 何か分かんねぇか? 声のトーンとか…」


4「オラにも、分からねぇだよ」


12345「「「「「………………」」」」」


2「なぁ、この話は此処いらで、お開きにしないか?」


135「「「………………異議なし!」」」


4「うんだぁ、うんだぁ…」


ロキリ君「如何やら、カイマ君達がいない間に、思わぬ一波乱が起こりそう………………ギシシっ!(起こると良いなぁ)」

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