№3 To church
今回の話は、いつもより短めでお送り致します。
僕の目の前には、キリっとした眼差しで、見詰めて来るヴァースの姿が有った。
彼は、僕の返事が来るのを待って居るかの様に、目を見開いたまま一向に動かない。
そんな彼の額には、一滴の汗が流れたのが少し見える。
それ程までに、彼が真剣に向き合っているのが、此方にも伝わって来る。
考えてみれば…僕は、こんなにも誰かに必要とされた事が、今まで有っただろうか?
元の世界でも、こんな風に真っ直ぐ、自分の気持ちを伝えてくれた事が、一度でも有っただろうか?
………いや、僕が生きて来た中で、そんな事は一度たりとも無かった。
それに旅の間では、何度も助けて貰ってばかりだった。
寧ろ…こちらとしては、願ったり叶ったりなのでは無いだろうか?
これなら、当初の目的を実行しつつ、日頃から助けて貰った恩返しが出来る。
それに、こんな僕に此処まで言ってくれた彼に………
”赤槍のヴァース”と、名を知れた実力者で有る彼に…
断る理由なんて…有る筈が無い!
そして何より、彼の言葉が素直に嬉しかった。
だからこそ、気持ちには気持ちで返すべきだ!
僕は一度、深呼吸した後に、笑みを浮かばせながら、有りのままの気持ちを伝えた。
「分かりました。寧ろ、ヴァースみたいな人と一緒に居られて、とっても心強いよ!」
これが僕の答え…
彼との旅は、とても楽しく…有意義な物だった。
僕も又、これからも一緒に、旅が出来れば良いと考えていた。
だからこそ、同じ気持ちだった事が、何よりも嬉しかったんだ。
僕の返答にヴァースは「おぉ…そうか…」と、呟くと視線を逸らし、人差し指で赤み掛った頬を搔く。
如何やら、僕の返答が即急過ぎたか?
何だか、照れくさそうにしていた。
「これからも、宜しくお願いします…ヴァース!」
「あぁ!こっちこそ宜しくな…カイマ!」
こうして僕は、ヴァースと共にパーティーを組み、冒険者になる事を決めたのであった。
◇◇◇
僕らは今、街の中に入った所だった。
冒険者ギルドへ行く前に、先ずは僕のステータス鑑定をして貰いに、教会へ訪ねる事になった。
向かう道中、街並みの光景は正に、異世界ファンタジーモノで良く出てくる様な、中世ヨーロッパの街並みその物だった。
「そう言えば、教会絡みで思い出したんだが。カイマって…半年前の事件の事は、流石に知ってるよな?」
「それって…もしかして、流星群が落ちたって話?」
「そう、通称"流星事件"って言うだが…」
「その事件と教会が、一体…どの様な関係が?」
「それがよ…その事件が起きてから翌日、各地に在る教会から正式に発表が有ってな」
「…発表?」
「ああ、何でも…神託が降ったとかで…」
「えっ…神託?」
「確か〜こんな内容だった筈…」
"昨日の夜、天より数多ある流星が地上に降り注ぎし時、世界の理に変革を齎す。数多ある流星全てが自我を持ち、各々の意思により行動をする。それが後に、祝福を齎す物か…それとも、混沌を齎すか… それは彼らの心次第。
とある創造主により生み出されし、その者達の名は、現化挿絵者………"
「…てな感じだ」
なんじゃそりゃ~!
おーいっロキリ君!
そんな話…一言も言って無かったよね!?
何僕の知らない所で、バッチリ宣伝しちゃってる訳!?
そんな事したら、余計パニック状態なるだろう!
うう…
ロキリ君、君って奴は………(泣)
おまけに、僕も同伴者にされているし!
「後、此処だけの話だが… 丘にある剣も、そのイルストラシオンってヤツかも知れないって噂だ。そんな噂が立ったお陰で、街に訪れる者達が後を絶たないんだってさ。いや〜、そんな得体も知れない物に群がるとは…つくづく、人の欲は末恐ろしいな~本当」
「う…うん、そうだね」
「まぁ、俺も人に言えた義理じゃないけどなぁ」
そんな話が続いていると、いつの間にか目的地である教会に着いて居た。
近くで見ると、大きくて立派な建物で、高さはビル4~5階ぐらいある。入口付近に居たシスターに、ステータス鑑定を頼み、中を案内してもらった。中に入ると、奥まで続く廊下が在り。そして僕達一向はシスターと共に、その最深部に位置する、祈りの場である祭壇へ向かった。
ちなみにヴァースには、別室で待機してもらい、僕はそのまま祭壇に続く階段を登った。
祭壇の上には、神父さんらしき男性が立っており、魔法陣が書かれて在る。
神父さんからは、ステータス鑑定を行う際に必要な、注意事項を説明された。
先ず初めに、魔法陣のど真ん中に立ち、その場にしゃがみ込み、祈りを捧げる体制を取る。その際に、ステータス鑑定が行われるとの事。
僕は、説明を受けた通りに順序良く、事を進ませる。言われるがままに、祈りを捧げる体制に入ると、魔法陣が光り出す。
その後、辺りが光に包まれ、思わず目を閉じた瞬間、ゲーム機が鳴る様な音が聞こえて来る。
恐る恐る目を開くと、目の前に”ステータス・メニュー”と言う画面文字が現れていた。
その文字に触れ様と、人差し指で突くと、ステータス表示された。これで、自分のステータスが確認する事が出来る様になった。
ちなみにコレは、僕が「ステータス・メニュー」と言うと、画面文字が現れる仕組みの様だ。
それでは早速…再び、ステータス・チェック!
【ステータス・メニュー】
名前:カイマ(19)
レベル:1
性別:男
種族:人族
職業:---(サブ:---)
称号:『異世界からの来訪者』『現化挿絵主』
属性:???
スキル:『言語翻訳』
…………………
………………
…………
………
…ん?
何だコレ?
何か、ツッコミどころが有るが…今は置いておこう。
先ずは、表示内容だが…
まぁ、無い物は表示されないから”---”って書いているとは思うが、それだけならばまだ分かる。問題は属性の方だ。
………何コレ?
何で”???”何て物が付いているのか、今の所全く分からない。
僕は暫くの間、ステータス画面と睨めっこしながらも、考え込んでいたので有った。
ちなみに”To church”を翻訳すると「教会へ」となります。