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異世界イルストラシオン  作者: 黒糖猫
2/10

№1 I have fallen in the hole many times

 

とある者は、こう語る………

 ある日、王都周辺に位置する村々の村長達が不満そうな顔をして、城門へ押し掛けていた。

 対応に応じた門番の騎士達が話を聞いた所。皆、口をそろえて「昨日さくじつ、夜空に無数の明星きらぼしが降って来た!」と言った。



 詳しく書いた報告書によると、昨晩の事………

 空を見上げると、他の星々とは比べ物にならないぐらいに、輝いていた一星が合ったそうだ。

 しかし、その星は見る見るうちに大きく輝きを増し、光が近づいていく程に、ゴォォォォォォ!と言う大きな音が鳴り響かせていた。

 そして次の瞬間、輝きを増した星はドォーン!!と破裂したかの様な音と共に弾け飛んだ。

 散らばった星屑は、無数の流星の如く、各地に地平線の彼方へと姿を消したと言う。

 ある者は、まるで”王都の祭で観た”花火”を格段に大きく派手にした物を、上から降らしたかの様”だと例えていた。

 


 こう言った異変は、他の各地にも目撃情報が多発していた。

 この事態を逸早く知らせに来ていた村長達の中には、天災の前振りか何かでは?と、不安がる者達もいた。

 その後、噂が噂を呼び、翌日には世界各地へと、忽ち大騒ぎになるまで広まり、約一週間以上に渡って、その話題ねつは続いた。

 コレがのちに”流星群メテオーロ事件”と呼ばれる事になる………



 そして世界に衝撃と混乱の最中、地上の民達が騒いでいる所を、面白げに覗き込んでいる者が約一名・・・いた。




「………………………ギシシっ………」





**********************************************





 目が覚めると、全く見に覚えのない場所にいた。

 そこは、まるで中世ヨーロッパの遺跡を思わせる様な、建造物が立ち並んでいた。

 当たりを見渡すと、僕が寄り掛かっていた立派な柱は、よく見ると中々手のこった細工がされていた。

 美術科に専攻している身としても、とても興味深かった………

 その後、少しだけ辺りを探索してみる。

 身体を起こす際、軋む様な痛みが有ったが、動けない程では無かった。

 探索を続けて行く内に、解った事がある。

 色々見て回ると、建物のちょっとした隙間から、花や木々等といった植物が、周囲に巡って生やしていた。

 見た限り、差し詰め中庭ってところだろうか?

 そんな事を考えながら、直ぐに目に入った道を歩き続けている。気が付くと広い花壇所に着いていた。

 そこは、何百種類の鮮やかな花々が咲いていて、中には見た事の無い美しい花が合った。



 これは、クロッキーのし甲斐がありますね!

 思い立ったが吉日………

 僕は早速、スケッチブックとペンを取り出そうと、ショルダーバッグの中に手を入れると、ある事に気が付く。




「………あれ?………無い!?」




 僕は慌てる様に、辺り一面を何度も見渡す。

 すると、背後からギシシと聞き覚えのある笑い声がした。

 思わず振り向くと、そこに居たのは一人の男の子だった………




「きっ………君は!!」




 忘れる筈も無い………

 と言うか、忘れるところか。つい最近の事じゃありませんか………(汗)

 僕は愕然としている中、またギシシとニヤ付いた顔で笑う。

 君ね………全く状況が掴めていないあいてを、いきなり笑うかね~。

 然も、これまた一癖のある笑い方で………

 ねぇ~ロキリ君!

 僕は、そんな事を思いながらロキリ君を睨んだ。




「いや~、ごめんごめん! なかなか良い反応をするものだから、つい笑ってしまってね~」




 あの~~~すみません………

 さっきまでとは一転して、大分口調が変わってませんか?

 えっ?

 もしかして、それが素って事?

 えっ!

 それ、マジな話!?

 雰囲気とか全然違うし、全くもって別人じゃんか!

 それに、最初に出会った事とは違う服を着ている。

 何アレ?コスプレ?




「改めて自己紹介をしよう!僕チンの名は、ロキリ。この異世界せかいを作り上げし創造神かみである!取り敢えず宜しく!柏原 真………いや、描真君・・・




 そう言うとロキリ君は、ニタっとした笑みを浮かべた。

 その表情を見た瞬間、あの時の事を思い出す。

 それは大きな黒い穴に落ちな時の事………

 あの時見たロキリ君の笑みが、夢では無い事を確信した。

 と言うかロキリ君、今君とんでもない事を口走ってなかったか?

 今何て!?

 そんな事を思いながら、僕はロキリ君をじっと見詰めながら固まってしまっていた。




「………ん?どうかした?何をそんなに”信じられな~い!”って顔したまま固まってるんだ?お~~~い、戻ってこ~~~い! 可笑しいな~? 異世界の民は、皆こう言い状況に対して、耐性があるのでは無いのか? 異世界の”書店”とか言う所に在った無数の書物によれば、こう言った展開に陥った異世界の民は、前向きに検討するものだと書かれておった………筈なのじゃが? ムムム………僕チンとした事が、何処か解読ミスをしちまったのか?」




 そんな事をブツブツと言いながら、手元に魔法陣らしき物を転回させ、そこから一瞬にして、大量の本が現れた。

 その光景に再び愕然とする僕を置き去りに、出て来た大量の本を物凄い勢いで、次々と読み漁り始めた。

 何だか難しそうな顔をしながら読み続けるロキリ君。

 それを見て我に返った僕は、早速ロキリ君に話し掛ける。先ずはツッコミどころ満載の部分から………




「………………かっ!」




 僕の声に築いたロキリ君が”今何か言ったか?”と言わんばかりの顔しながら、こちらへ振り向く。

 そして僕は、さっきとは比べ物にならないぐらいに、感情を込めながら敢て低い声で言った。




「だ~か~ら~………」




 そう言った後、僕はギラリと睨み付けた。それを見たロキリ君は、少しビクッとした後、大量の冷や汗を掻いていた。




「えーーと………描真君?(汗)」




 ——— 問答無用である!




「そんな物語の主人公みたいなシチュエーションがホイホイと起きてたまるかーーー! どんな耐性だよソレーーー!!」




 こうして僕は、感情的になりながらも、そのままツッコミタイムに入ったのであった。





                             ◇◇◇





 それからしばらく経った頃、僕の目の前には神様を名乗るロキリ君に、正座・・をさせたまま、今置かれている現状を教えてもらっている。

 話の最中、ロキリ君が「ムムム、まさか神である僕チンをここまで言い抑えるとは………お主、中々やりおる!ギラリ………」とか言って、おまけに背景バックには漫画でお馴染みの”効果”までも使って、カッコ付けておられる。



 ちなみに、何故ロキリ君が僕の名前を知っていたのか。ロキリ君曰く「僕チンは神様だよ~。少し本気を出せば、君のプロフィールを調べるぐらい朝飯前さ!」との事。

 えーと、コレって個人情報保護法に適応されないだろうか………なんて事も考えたりしていた。

 


 けど流石に此処まで行くと、異世界に来てしまったと言う実感が湧いてくる。それに先程ロキリ君が見せた“魔法?“だけど、人間技じゃない。手品の線も疑ったが、実際この目で見た僕に言わせれば、流石に手品の類で出来る範囲を超えていた。まぁ、本人が神様だって言うのは胡散臭いが、言わないが花だ。

そんなやり取りをしていく内に、とんでもない事が判明した。



 先ず今僕が居る場所は、人の子が入る事も出来ない、神々の住まう聖域内に位置する社の一つ、つまりロキリ君の家との事。

 ………あの~すみませ~ん。

 人の子が入れないって………

 僕、思い切し入ってますけど………大丈夫なんでしょうか?

 しかし、冷や汗を掻いている暇は無い。何故なら本題は此処からだから!



 あの日、僕が大きな黒い穴に落ちた際、世界と世界の狭間には壁があり、この壁をおかけで世界の均衡は保たれていた。

 しかしロキリ君の企みにより、その壁に穴を空けてしまったと言う。

 詳しく聞くと、その穴は小さく、時間が経てば穴は塞がり、元に戻ると言う。だから、余り問題視する程の事では無いとの事。

 そして僕は、落ちていく際にその穴を通って、この異世界せかいにやって来た。

 だが、そこで問題が発生した。それは第二の壁の存在だった………

 その壁と言うのは”大気圏”。それも魔素が含まれている異常化した大気の壁。

 魔素により高度を強化された壁。おまけに、地上へ近付いた事により、重力圏内に入ってしなった僕は、成す術も無く、多大重力に逆らえないまま落ちて行くのみ。

 その結果、重力により落ちる速度が何倍にも加速し、身体表面は覆う様に発火して燃えて行く。そして、まるでソニックブームの様な音共に強い衝撃に襲われ、そのまま意識を失う。

 しかしながら、ロキリ君の神様パワーで保護されていた僕は、何とか九死に一生を得る事が出来た。

 無傷とは行かないが、この通り生きている。

 それに、強引に連れて来られた挙句の果て、ちょっとした事故により、殺されちゃー適わない。

 その話を聞いた時、だから身体を起こした際に軋む様な痛みが有った訳かと、その場で納得してしまった。



 えぇっ………………じゃー何がそんなに問題かだって?

 大有りだとも、とんでもない事って言うのが、その後………つもり僕が気絶した後の事。

 魔素を含む大気圏に衝突した際、その弾みで自作のイラストが入ったファイル本が飛び散ってしまったのだ。

 そうです。先程、僕がクロッキーを行う際に、無いと騒いでいたのが、自作のイラストが入ったファイル本なのです!

 然も普通なら燃え、消え去ってしまうところだが………

 何と!大気圏に含まれていた魔素を、大量に吸収する事により、消える事も無くそのまま留まり、更に地上に降り立つ際に実体化………つまり、自分の意思のまま、自由に動ける様になったと言う訳だ。

 そんな夢みたいな事が起きるなんて、誰が予想出来たか。



 しかし喜んでいるのも束の間、そのイラスト達が地上で問題を起こしていると言う。

 然も、半年前から………

 それって、とどのつまり………気絶した後、半年間も寝込んでいた事になる。

 何してんだ僕は………

 思わず、頭を抱えてから溜息をついてしまった。

 それにしても、僕には腑に落ちない事がある。

 それは、ロキリ君の様子だった。

 その説明をしたロキリ君が、余りにも楽しげに語りながら、笑みを浮かべている。

 僕はそんなロキリ君を見て思い起こす。

 それは、この異世界せかいにやってくる前、ロキリ君が言った言葉………「もしお兄ちゃんが描いた絵が、動き回ったり御喋りしたりしたら、面白いし素敵だなって!お兄ちゃんも、そう思うでしょ?」

 そう、あの時の問いの意味は、この事だったのか………

 ロキリ君………彼は、この事を良しとし、実行までして、事を起こしたのだ。

 彼の狙いをつい知らず、それを同意してしまったのは他でも無い、この僕だ………

 今更、後悔したところで、後の祭りだ。

 つまり、この一件は僕にも責任は有ると言う事だ。

 なら僕は、問題を起こしているイラスト達を止める義務が有る。




「………僕が止めないと」




 僕は、そう決意した表示に、つい呟いてしまった。

 それを聞いたロキリ君は、怪しげな笑みを浮かべた。

 それは正に、悪巧みをした人の顔そのものだった。




「良くぞ、言ってくれました!」




 いきなりロキリ君が、大声を出しながら、何時用意したのかも分からない、クラッカーを鳴らして言った。それに対し、僕は思わず「………はい?」と、返事を返した。

 気が付けば、ロキリ君の手元にはクラッカーの他に、何かのスイッチを持っていた。

 この状況は最早、嫌な予感しかしないのだが………




「それでは、早速レッツらゴ~~~!」




 冷汗が止まらぬ中、僕の心情もお構い無しに、置き去りにされたまま、根気良くスイッチを押す。

 すると次の瞬間、ガタンっという音と同時に、足元の底が抜けた。




「えっ?………ええええええええええええぇぇ!!!」




 余りにも、いきなりの事だった為、思わず叫びながら穴底まで落ちていった。

 落ちて行く際、上を見上げるとロキリ君が大きな声で「行ってらっしゃい!」と、手まで振って見送られた。

 そして僕はと言うと(またコレかよぉー!!!)と心中で叫びながら、返事を返す事しか出来なかったのだった………




ちなみに、I have fallen in the hole many times.を日本語で翻訳すると”僕は何度も穴に落ちている”になります。

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