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異世界イルストラシオン  作者: 黒糖猫
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プロローグ

 主人公:描真と、異世界の神様:ロキリ君の、出会いと始まりの日話となっております。

 突然ではありますが。皆さんは思いもよらない出来事が、自分の目の前で起きた事がありますでしょうか?

 そうです。今、僕が置かれている状況が、正にコレです!

 何故こんな事になってしまったんだろうか………



 高卒した後、進学する為に実家を出て、上京する事になった。初めて目にした都会の光景は、僕にとっては衝撃的であった。特に人混みの多さや、気温等の温度差ときたら尋常じゃなかった。

 建造物が少ない、夏は風がヒンヤリと心地良い、ほぼ大自然に囲まれた田舎で育った僕は、それだけで目を回しそうになった。

 あの頃の僕は、慣れない気温差、人ごみにもまれる過酷な環境の中。寮での一人暮らしは大変だったけど、何とかやって来れた。



 進学先に選んだ所は、美術科のある大学だ。僕は昔から絵を描くのが好きで、中高共に美術部に所属していた。いろんな所のコンクールやコンテストに応募したり、”高文連”と言う高等の美術大会にも出展した。ちなみに、野球で言うところの”甲子園”みたいなものだ。

 そして僕は今、漫画・イラストサークルに所属している。所属してから早数ヶ月、現在サークル仲間と共に夏のコミケに向けて打ち合わせをする為、日曜の午後1時に待ち合わせ場所のファミレスへと、今向かっている。

 こんな歳にもなって時間にルーズって言うのは、流石に不味いので待ち合わせ時間を確かめる為、一旦その場で止まり、ポケットにしまっていたスマートフォンを取り出した。

 そんな時、一人の男の子が道の端で身体を小さくしながら、シクシクと背を向けたまま泣いていた。




「………君、どうかしたの?」




 僕は、思わず男の子の斜め後ろにしゃがみ込んで声を掛けてしまった。大まかに善意だけど、流石に目の前で泣いている子供を”他の誰かが何とかしてくれるだろう”なんて言う理由で、完全にスルーしてしまう程、そこまで落ちぶれちゃーいない。




「………むぁむぁが………むぁむぁがっ」




 僕の声でこちらに築いた男の子は、顔をくしゃくしゃにして、目を赤くしながらも振り向いて答えてくれた。

 如何やら、母親と逸れてしまった様だ。困ったことに、こっちは約束の時間に遅れる訳にはいかない。別に少し遅れたからと言って罰則的なものは無いが、それを理由に今回の話し合いで不利になる可能性がある。それだけ僕にとっては重要な事で、何としてもソレだけは避けたい!と思うのが本音だ。

 取り敢えず、近場の交番に届けてからでも遅くない。うん、それが良い!そうしよう。




「君、お母さんと逸れてしまった様だけど? この近くに、こうば………お巡りさんが居る所があるから良ければ、お兄ちゃんがそこまで送ってって上げるよ」




 男の子が怖がらない様に、その場でしゃがみ込みながら、口調を柔らかくして、優しく接して言う。勿論、最後にスマイルも浮かべてみる。

 しかし、それでも男の子は泣き止むどころか、徐々に悪化している。もうコレは、完全に頭の中”ママ何所!”とパニック状態になっていて、こちらの話が全く聞けない状況にある。



 困った事になった。

 どうしたら、落ち着いて聞いてくれるのだろうか?

 ………いや待てよ。ふと思うのだが、コレって考え様には傍から見て、僕が男の子を泣かした様な構図になってしまっているのではないか?



 ………あれっ?

 えーと………

 んっ!!?



 不味い!これは断じて不味い事になってる!

 このままでは男の子を届けるどころか、僕までお巡りさんの所へ厄介に!

 しかも!悪い意味で………(汗)

 うおぉぉぉぉぉ!

 何ちゅーもんに築いてしまったんだ僕!

 ヤバイ!マジでヤバイ!

 なんで僕は、こうも余計な事まで、つい考えてしまうのだろう?

 そのせいで、変な事を意識してしまって、全く違う意味でこっちもパニック状態に!

 この状況、ド・ウ・ス・レ・バ・!?



 ………いや待て待て!

 落ち着け、僕!

 落ち着くんだ!

 良い大人(まだ成人してない)が、子供の目の前で取り乱しちゃーあきまへんで!

 例え、顔がスマイル状態のままフリーズしたかの様に全身固まったとしても、堂々としていれば大丈夫。

 そう!

 堂々としていれば………



 いかんいかん、また妙にテンパって、変なスイッチが入ってしまった。

 普段の僕は、こうもハイテンション気味にはならないのだが、どうも昔から取り乱してしまう度に、このような有様になってしまう。それも自分自身でも驚く程、正に”キャラ崩壊”と言う言葉がしっくりくるのでは無いでしょうか?

 いつもの僕は、少々マイペースと言いますか。口数も少なく、余り顔に出さないので、周りからは結構大人しい性格だと認識されている様で。ちなみに口数が少ないのは、余り話す人がいないからであって、専門的な事や興味がある事に関しては、結構しゃべりますよ。まぁ、若干人見知りするのもあるけど………



 そんなことよりもまず、今この状況を打破するには、一旦どうしたら良いかを考えるべきだ!

 内心、自分で自分にツッコミを入れたお陰で頭中が冷え、何とか冷静さを取り戻せた。

 しかし我に返ったものの、男の子は一向に泣き止む気配すら無いまま。

 僕に出来る事と言えば、絵を描く事ぐらいしか無いのだ。

 そう、絵を描く事ぐらいしか。

 ………

 ………絵?

 あっ!良い事を思いついたぞ。




「ねぇ君、今お兄ちゃんが良い物を見せてあげる!」




 僕がそう言うと、その言葉に反応してピタッと泣くのを止めた。




「………良い物?」




 目から零れ出た涙目を両袖で拭いながら、こちらを見て聞き返してきた。

 おっ!喰い付いてる喰い付いてる!これは、期待出来るかもしれないな。




「そう、良い物!今出すから、ちょっと待ってね」




 そう言った後、直ぐに少し大き目のショルダーバッグから、ある物を取り出した。それは、一冊の分厚いファイル本だった。

 男の子に本を見せると、その分厚さに少し驚いている様だった。

 そんな男の子に微笑みながら、それを手渡し「開いて見てごらん」と言うと、男の子は躊躇いもなくページを開く。すると、泣きじゃくっていた男の子の表情が一変した。




「うわぁ~~~!」




 そこにあったのは、色とりどりの色彩を使った何十枚もの挿絵イラストだった。

 そう、これ等全て僕が描いたイラスト。主なジャンルは、人間から人外、ファンタジー系からSF系、武器から乗り物まで様々なイラストがある。

 時間をフル活用し、いろんなイラストを抜かりなく描き続けた結果。気が付けば、大量のイラストが出来上がっていた。



 まぁ、何はともあれ、泣き止んでくれて何よりだ………

 僕は、額に掻いた冷や汗を拭き、一つ溜息を吐いた。

 手渡した後、さっきまで泣いていたのが噓みたいに、満面の笑顔へと変わっていた。僕が描いたイラストを気に入った様で、一枚一枚捲る度「すご~い!カッコいい!」と、目をキラキラと輝かせ、夢中になりながら言っていた。

 少し照れ臭かったが、僕が描いたイラストを見て、喜んだり褒めたりしてくれるのは、正直に言うと悪い気はしない。

 それに何より、男の子が元気になってくれて良かった。

 僕は男の子の笑顔を見て、その光景に満足しながら心の底から、そう思ったのだった………



 それから暫く経って、男の子が満足そうに「お兄ちゃん!見せてくれて、ありがとー!」と、これまた丁寧に御礼を言いながら、貸し出したファイルを返してくれた。

 僕もまた「どういたしまして」と言いながら、渡されたファイルをショルダーバッグの中へと戻した。

 そして、落ち着きを取り戻していった後、お互いに色々と話し合ってからは、すっかり打ち解ける事が出来た。こちらの話をちゃんと聞いてくれて、そこから先の話は、スムーズに進んでいった。男の子は、しっかり話を理解した上で同意してくれた。



 そう言えば、この男の子………

 見たところ、園児………いや、小学一年生になる手前ぐらいかな?

 それにしても、えーと………なかなか表現し辛いのだが。どうも違和感があって仕方が無い。

 何故そう思うのかは、僕にも良く分からないが。

 近頃の子供って、もっと落ち着きが無いと言うか?

 別にそれが悪い訳じゃない。

 ただ………泣き止んだ後の態度に、何とも言えない、妙な感じがする。

 まるで、目に入る光景が全て、映画のスクリーンに映し出された映像を観ている様な………

 そして、目の前に居る男の子が、そこに出てくる登場人物の様な………



 ………アレ?

 何で僕、そんな事を思い浮かべたんだろう?

 何で僕、こんな事を想像したんだろう?

 ん?

 んーん?

 ん~~~………



 如何やら一昨日から、張り切って徹夜をしていたせいか、今日の僕………変と言うか、何か可笑しな方向に頭が回ってる気がする………

 まさか、ここまでガタが来るとはな………恐るべし睡眠不足!

 いかんな、コレは………

 念願のサークル活動からのコミケ参加の為とは言え、生活リズムを崩した生活を続けて、仮にもしもコミケ当日に身体を壊して、出れなくなったりでもしたならば、最早今日の話し合いで決まる、コミケでの出展内容の有無どころじゃない!

 そんな事はさせぬ。そんなフラグが立つ前に、この手で根元ごと粉砕してみせる!

 ………若干、中二病臭かった気もしますが。まぁー、いいでしょう。

 それに、先程も言ったと思いますが、僕はどうも余計な事までつい考えてしまう。

 完全に悪い癖ですねコレ………(棒読み)

 全く一体、何にぼやいていたんだ僕は………?

 単に普通に考えれば、他の子供より聞き分けの良い、素直で良い子なだけの話し。

 そう、それだけの話だ………

 


 その後、僕は男の子と一緒に交番の所へ向かって行った。

 歩いてから数分後、すれ違う人も徐々に多くなり、人通りの一番多い交差点に出た。ちょうど信号待ちをしていた時、ふと思った。

 そう言えば、まだ男の子の名前を、教えて貰ってなかったな。

 折角打ち解けたのに、流石に君呼ばわりで通すのもアレだしね………



 

「そう言えば君、お名前は何て言うのかな?」




 信号が切り替わり、横断歩道を渡る際に、逸れない様に男の子の手を繋ぎ、さり気無く聞いてみた。




「………ロキリ、ロキリって言うんだ!」




 ………ろきり?

 妙な名前だな。一体どんな字で書くのだろうか?

 アレか?一種のキラキラネーム的なやつか?。やたらと当て字しまくるやつか?

 例えば、きららとかすかいとか、普通は漢字で読まないのを、強引に読ますアレですか?

 正直に言うと、そんなキラキラネームを付けた人は、良いかも知れないが。

 付けられた人は、たまったもんじゃないですね。

 まぁ、そう言うのは個人差があるかもしれませんが。

 僕の個人的意見では、そう言った類は二次元に留めるべきかと思いますね。

 それにしても、ロキリですか。本当に、どんな字で書くのやら………

 露桐ろきり?それとも露貴李ろきり

 ………うむ、やはり分からん。

 と言うか今は、そんな事どうでも良かったですね(汗)




「そうか、ロキリ君って言うんだね」


「でね!ロキリって、よく悪戯をしたり、面白い事が大好きな神様の名前なんだよ!」




 ん?

 よく悪戯をかまして、おまけに面白い事に目かない神様?

 確かに神話には、いくつかの伝書がある。中には、悪戯や好意を持って行動を取った神々も一応存在する。僕もそう言った類の話は好きで、それなりに知っているが。そんな名前の神何て、聞いた事もない。

 そもそも、そんな神様いたかな?

 それに何より、そんな神様の名前を自分の子供に付けるとか。

 聞く限りじゃ、有難い神様では無さそうだし。

 こう言うのもなんだけど、君のご両親は一体………(汗)




「僕もね!お兄ちゃんに、聞いてみたい事があるの!」




 そんな事を考えている内に、ロキリ君が僕に問いかけてきた。

 その表情は、子供らしいニコッとした無邪気な笑顔であった。

 それにしても、僕に聞きたい事って何だろう?




「あのねぇ!あのねぇ!さっきお兄ちゃんが見せてくれた絵、アレってお兄ちゃんが描いたんだよね?」


「うん、そうだけど」


「すご~いな!………でね!それで僕は思うんだ!」


「………思うって?」


「うんっとね!もしお兄ちゃんが描いた絵が、動き回ったり御喋りしたりしたら、面白いし素敵だなって!お兄ちゃんも、そう思うでしょ?」




 僕のイラストが動き回ったり御喋りしたりする?

 もしかして、アニメーションの事を言ってるのかな?

 ………アニメ化したイラストか。パラパラ漫画の原理で絵を動かしたり、声優さんの声でキャラクターに命を吹き込んで貰ったりする。………確かに、それは非常に興味深い事だ。

 ロキリ君の言う通り、そんな事が実現出来たのなら、面白いし素敵だと僕も思った。

 だからこそ、ロキリ君の問いに、そのまま思った事を伝えた。




「うん、そうだねぇ!そんな事が出来たなら見てみたいね!」

 

 



「……………………………ギシシっ」




 いきなり聞えて来た不器用な笑い声、まるで背筋が凍るかの様な感覚に襲われ、思わず後ろを振り向く。

 しかし後ろには、誰一人として見当たらなかった。

 そう、一緒に手を繋いでいた筈のロキリ君すら、見当たらなかった………




「………え?」




 さっきまで繋いでいた小さな手は、振り向いた一瞬の間に、僕の手元から消えていた。

 しかも”気が付けば”だ。

 まるで霧のように、はたまた、最初から手何ぞ握っていなかったかの様に………



 それよりもロキリ君は?

 一体、何時逸れてっ………!

 そんな事を考えていた時、僕はある異変ことに気が付いた。

 ………それは”沈黙”であった。

 確か此処は、人通りが一番多い交差点の筈だった。

 然も今の時間帯なら人が賑わいを見せる頃、ここまで周囲が無音だと、変えって気味が悪い。異常なまでに静か過ぎる!



 僕は思わず唾を飲み込み、恐る恐る顔を上げる。

 そして、目の前に広がる光景に、僕は啞然とした。

 それは目に付く全ての色が、逆転していたのだ。

 それだけでは無く、すれ違う周囲の人や動物、他にも乗り物や信号点滅等、様々な動きのある物は、全て止まって見える。

 ………いや、正しく言えば”フリーズしている様にも見える”と、言うべきか。

 最早、目の前に起きている光景に、僕は言葉を失っていた。



 何故?………如何してこんな事に!?

 僕は、震えている脚を、ゆっくりと後ろへ運んだ。

 すると足元から突如、大きな黒い穴が出現した。

 余りにも突然の出来事に、慌てるも時すでに遅し。

 僕は抵抗すら出来ず、あっけなく落ちて行った。

 そんな中、落ちていく際に、一瞬だけロキリ君らしき人影が見えた。

 しかしその表情には、先程まで見せていた子供らしい顔ではなく、小悪魔の様な不気味な笑みを浮かべていた。

 その瞬間、僕は少し前に感じていた、違和感の正体に合点した。

 それが、その日僕の身に起きた記憶の最後だった………




「いや~それにしても、只の暇潰しのつもりが。なかなか良い玩具ミツケモノをしちゃった❤ これから先、”僕の作った世界が”面白可笑しくなりそうで、僕チンとしては、非常に楽しみだ~! ねえー、お兄ーちゃん❤………いや、描真かいま君………ギシシっ!」

 


 どうも初めまして! この度、小説家になろうサイトで、投稿させて頂きました。黒糖猫と申します。

今回、初めて書いた小説「異世界イルストラシオン」。

まだ不慣れな部分も多いので、文章の間違いが多々あると思いますが、ご了承ください。

不束者では有りますが、よろしくお願いいたします。

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