CASE.8 色々予想外のギルド協会
さて、新キャラ登場ですよ\(°Д° )/
……え? 門番は、って?
あ、アハハ( ̄▽ ̄;)笑
「おぉ……」
初めて自身の目で見る街の光景に、俺は無意識に感嘆が漏れてしまっていた。
神様が見せてくれた中世ヨーロッパの街の資料のように、石を敷き詰め舗装した地面に煉瓦造りの一軒家が立ち並び、大通り沿いでは露店を開いている者も居る。
この街はどうやらかなり繁栄しているらしく、大通りを行き交う人の数がそれを示していた。
「っと、取り敢えず宿を探そう」
立ち止まってばかりいては不審に思われるかもしれない、そう思い人の流れに合わせて歩く事にした。
街は、俺の知らない物ばかりで溢れていた。露店に売られている商品は勉強した事の中に無かったし、街行く人達が身に着けている珍しい柄のポーチも気になった。看板に書かれている文字なんてサッパリ読めやしない。
逆に、知っている事も多かった。人の中には所謂エルフや犬人、猫人や狐人などの獣人、珍しい者でドワーフなどが歩いていたりする。特にエルフや狐人は一際目立つ美しさだった。
(すげぇ……本当にファンタジー、異世界に来てるんだな……)
極めて異質、なのに世界に馴染む彼ら彼女らに感動しながらも、目的である宿屋を探す。だけど──────
(──────いやいや、どれなんだよ……)
店だと思われる建物の殆ど全ての看板には、俺の読めない文字が表記されていたのだ。一つや二つぐらい記号表記があるだろうと思っていた俺が甘かったようだ。
と、途方に暮れそうになる俺だったが、それよりも先に大通りを通り切ってしまったらしく、目の前に巨大な建物が聳え立っていた。
(これは一体……!?)
他の建物とは醸し出す雰囲気がまるで違う。だけど、何故だか俺はその建物に惹かれていた。
そんな建物の前で立ち止っていると、中から武装した数名の男女がゾロゾロと出てくる。見た所冒険者なのだろうか。
(……てことは、ここが冒険者ギルド?)
宿には着けなかったものの、当初の目的である"身分の確立"が達成出来そうな事に、俺は零れそうになる笑みを噛み締める。
意を決してその建物の中に入ると、中は外観から想像出来るよりずっと、広く感じられた。
「……すっげ」
入口付近の左右には上に登るための螺旋階段が取り付けられ、異常に広い一階の中央部分には天井を貫く巨大な柱がある。
その柱を囲むようにしてカウンターがぐるりと設置され、それらの間では同じ緋色の制服に身を包んだ、職員らしき女性達が武装した人達の相手をしていた。
(……とりあえず、真ん中の職員に話し掛ければいいかな)
場の雰囲気や人の多さに呑み込まれ、気後れしそうになる。
それを必死に押し殺し、俺は丁度手の空いたエルフ職員の所へと向かった。
「あの、すいません」
「はい。本日はどのような用件でしょうか?」
にこやかに対応してくれるエルフ職員に、俺は少したどたどしく冒険者登録の件を伝えた。
すると、職員は困った表情で頬に手を当て呟いた。
「冒険者登録、ですか……」
「えっと、何か問題が?」
「あ、いえ。登録は受け付けているんですが、生憎審査員となるAランク以上の冒険者が全員出払っていまして……」
職員の話によると、冒険者登録をする為にはAランク以上の冒険者監修の元、実技テストと面談をする必要があるらしい。
「なるほど、でしたらまた明日出直してきましょうか?」
「あ、それなら一人Aランクの冒険者が空いていますので、登録可能だと思います」
「なら、それでお願いします」
「分かりました。
では明日の昼12時にここに──────」
職員が日時の連絡をしようとしたその時だった。
「────待った待った、フィルナ待ってくれ」
俺の後ろから、太い男性の声が聞こえてきた。
振り返るとそこには俺より頭一つ分程背の高い、右頬に切り傷のついた40代ぐらいの男性が立っていた。
「ギルドマスター、起きていらしたんですね」
「おいおい、そんな人を寝ぼすけみたいに言うなよ?」
「……昨日、起きたの昼の2時でしたよね?」
「スイマセンでした」
切り替え早っ!?
貫禄を見せるのかと思えば、一瞬にして頭を下げていた男性に、苦笑するしかなかった。こんな人が、本当にギルドマスターなのか……?
「……コホン。それでギルドマスター、待てとはどういう意味で?」
「あ、あぁ……俺が、審査員をしようと思ってな」
「なっ……!?」
ギルドマスターのその言葉に、フィルナと呼ばれた目の前の職員が目を見開いていた。
いや、それだけではない。他の職員や、冒険者達までもがこちらに驚愕の視線を向けてきたのだ。
「ギルドマスター、本当なのですか……?」
「何だよ、別にいけない事では無いだろ?」
「そ、それはそうですが……」
ギルドマスターと話し合っている間も、フィルナさんはずっと目を見開いたままだった。
と言うか、今冒険者達の方から「ギルドマスターが働くなんて……」と聞こえたような……
「……ジェスト、お前後で覚えてろよ」
「す、すいませんでしたァ!?」
少し奥のテーブルに座っていた金髪の男性に睨みを聞かせ、ギルドマスターがそう脅し文句を口にした途端にボロが出た。この人、恐ろしく地獄耳らしい。
「で、コイツの審査をしてもいいんだよな?」
「は、はい問題ありませんが……やり過ぎないでくださいよ?」
「分かってるって」
思いっきり場を掻き荒らしつつも話が纏まったらしく、ギルドマスターは俺を見て、ニカッと笑いかけた。
「て事で、今からお前を審査するギルドマスターのラドーガだ。宜しくな」
ラドーガさんのその笑顔が、俺には別の感情が見え隠れしているように見えて仕方なかった。
面白いと思ったらブクマ、感想等よろしくお願いしますm(_ _)m