CASE.3 彼の、彼による彼女のための世界制覇
序章はここまで。読んで見て面白かったら何かコメントお願いしますm(__)m
「えっと……どういう事ですか?」
話の詳細が全く見えてこなかったので、そう聞き返すと神様は真剣な表情で話し始めた。
「私は、君が元居た世界ともう一つの世界に関わっているんだけど、そのもう一つの世界で少し異常な事が起きたの」
「異常な事、ですか」
「そう。総人口約30億人のその世界で、一人の女の子が病気に罹った。それも、世界でまだ誰も罹った事の無い難病に、ね」
「……それは」
「その病気の名前は”透過病”。生まれて時間が経つにつれて身体そのものが透明になり消えていき、最終的には声を出しても誰にも届かず、誰にも視認されなくなる」
「…………」
どうして神様がこの話を俺にしたのかが、少しわかった気がした。神様らしい、優しい理由だった。
「彼女を救う方法を必死に探した所、一つだけあったの。どんな病気でも根治する秘薬中の秘薬、”虹の泉水”。
これを手に入れて彼女に振り掛ければ、彼女の病気は完治する」
「……もし、既に透明になっていたら?」
「それでも、彼女に向けて掛ければいいわ。
……というより、既に彼女は世界から認知されていないの」
「っ……それって、そう言う意味、ですよね?」
「…………」
俺の疑問に、神様は黙って頷いていた。
「……因みに、その”虹の泉水”はどうしたら手に入るんですか?」
「私が調べた所、何かしらのモンスターのドロップ素材だって事だけしか分からなかったわ」
「……そうですか」
神様なら作れる、なんて野暮な事は絶対に言わない。もし作れるならわざわざこんな話をする必要が無い。
確かに、俺は神様に莫大なまでの恩がある。自分に出来るなら期待に応えたい、そう思い俺は神様に己の意思を伝えた。
「……分かりました。神様、行かせてください」
「っ……ありがとう、君ならそう言ってくれると信じていたよ」
俺のその言葉に優しく微笑んでくれた神様は、何処からともなく大きな袋を一つ取り出した。
「……本当は、こういうのは神様の仕事なの。だけど私にはどうしても彼女を助けられない。助けるには世界中のモンスターを沢山狩って、ドロップ素材を手に入れるしかない」
「神様……」
「だから、これは私からの餞別。この後君を向こうの世界に君を送りこむ。その時に役に立つアイテムを思い付くだけ入れておいたから」
「ありがとうございます、神様。
……送り込む、いわゆる”異世界転移”って事ですか?」
「その認識で間違って無いわ」
その言葉に、俺は少し疑問を抱いた。向こうの世界に行くのは良い、寧ろ色んな知識を得たお陰で楽しみなまである。
だが、俺は一度六つの難病で死んでいるのだ、もし肉体を持って行ったとしても、向こうでまた再発して死んでしまうのではないだろうか。そうであれば無駄死ににも程があるというもの。
重大な問題について神様に尋ねると、神様は今度は愉快そうに口元を緩ませた。
「ふふっ、良い所に気が付いたね君!!」
「え、えっと……?」
「君が心配した事は、私も一度考えた。そして、とある結論に達したの」
「結論……?」
「そう、君を蝕む六つの病気、それらの構造をちょちょいっと改変して、逆に君を大幅に強化する能力に変えたのよっ!!」
両手を腰に当てて堂々と胸を張る神様。だけど、俺には何を言ってるのかさっぱりで首を傾げる事しか出来ない。
「……あんまりピンと来てないみたいね。
まぁ、簡単に言えば君の病気をチートスキルに変えてあげたって話よ」
「って事は、チートスキル六つも貰えるんですか!?」
「そう、それぐらい無いと寧ろすぐに死んじゃうからね」
「そ、それは……」
「大丈夫だよ、君なら十分にやっていけるさ。
……っと、名残惜しいけどどうやら時間が来たみたいだね」
「え────っ!?」
寂しそうに呟いた神様の言いたい事は、嫌にでも分からされた。足元に人一人分の魔法陣が突如として現れると、怪しく回転し紫の光を放ち始めたのだ。
「その魔法陣が君の頭上にまで登り切った時、君は向こうの世界に転移する。
そうなれば、君とはしばしのお別れね」
「……また、会えますよね」
「勿論よ。でないと君を向こうの世界に飛ばす訳無いじゃない?」
「ははっ、神様は過保護ですね」
「過保護ぐらいが丁度いいのよ。それに────」
途中まで言いかけると、神様はふわりと宙に浮かび、俺の額に唇を押し当てる。
「──君の事を愛しているんだもの」
「それは嬉しいです。俺も愛していますよ、神様」
「ふふっ、まだ君が愛を語るのは十年早いわよ。
……行ってらっしゃい。彼女の事、お願いね」
「はい。行ってきま────」
神様に全てを言い終える前に、魔法陣が頭上まで辿りついてしまった。直後、視界が奪われてしまった────
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