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CASE.27 VSマンイーター戦2 & その後の二人

前話から分かる様に、無双回です。というか、戦闘少な目です。









 全力で戦える状況になってからは、最早話にすらならなかった。

 折れた鉄の剣はそこら辺に捨て、肉弾戦で倒す事に決めた俺は天から叩きつけられる二本の蔦が地面に辿り着く前に本体に接近し、そして力一杯殴りつけてやった。




「うらぁっ!!」


「ォォォォッ!?!?」




 サンドバッグ並みに吹き飛んで行った。後ろがただの草原地帯だから良かったものの、もしこれが街中なら大惨事だろう。

 そんな関係のない事を考えながらも吹き飛んだマンイーターを追いかけ、身体が地面に着く前に上から追撃。威力が強すぎたせいか巨体は地面にめり込み、周囲に砂埃が立ってしまい視界が奪われてしまう。




「こほっこほっ……余計な追撃だったかな」




 どれだけステータスが異常でも、流石に目や口に砂が入れば相応の反応を示してしまう。

 手で目と口を覆いながら砂埃が収まるのを待ち、視界が良好になった辺りでマンイーターを発見した。触手がプルプル震えているのを見ると、辛うじて生きている、といった所なのだろう。




(流石にこのまま死ぬまで放置ってのは可哀想だろうな……)




 ここまで瀕死ならば死ぬのも時間の問題だと思った俺だが、放置するのも何だと思い本体にもう一撃殴りつける。するとマンイーターは動かなくなり、ゆっくりと溶けて消え去った。




「ふぅ……お、ドロップアイテムか」




 小隕石が降って来たのでは、と思わせる様なクレーターの中央辺りに転がっていた小岩の様な物を拾い上げた俺は、それを背負っていたリュックの中に放り込み、ボーっとしていたオルカちゃんの所まで戻った。




「……あ、アンタ本当にイスミ……?」




 手厳しく迎えられました。いやまぁ、こうなる事は想像していたけど。

 震える声でそう問いかけてくる彼女に首を振って返事をすると、さらに驚いた様子を見せていた。




「……もちろん、説明してくれるのよね?」


「ああ」




 未だ信じられない物を見る目で見つめるオルカちゃんに、俺は神様からチート級の能力を貰っている事、こちらの世界にやるべき事があってやって来た事を話した。

 チート能力の話は終始目を見開いていたオルカちゃんだったけど、神様からお願いされている事を話し始めた辺りからは真剣に聞いてくれていた。




「……と言う訳なんだけど」


「そう……ありがとう、そんな大事な事を話してくれて」


「アレを見られた以上は仕方ないと思ってるって。他言無用だからな?」


「分かっているわよっ。こんな話、誰にも出来る訳無いじゃないっ」




 変なタイミングでツンになるオルカちゃんに苦笑いを浮かべた俺は、今後の行動に話を切り替えた。




「それで、なんだけど。今日はもう引き上げて宿に戻らない?

……今後についての詳しい話はまた明日の朝にする、って事で」


「そうね。色々あったせいでアタシも疲れちゃったし、このままでいい判断が出せると思えないもの」


「じゃ、帰ろうか」




 互いに頷き合った俺達は、ツナレ村への帰路を歩み始めた。



















────────────────────────







 ツナレ村の宿屋に戻った俺達は、何かを話す訳でもなく同じベッドで死んだように眠った。疲労が溜まっている中でソファは遠慮したかったし、何よりベッドで寝る事を彼女も無言で了承していた。恐らく、文句を言う元気すら残っていなかったのだろう。


 そして次の日の朝早く。真っ先に目覚めた俺は未だ眠っているオルカちゃんを起こさない様に身支度を整えていた。と言っても、リュックに全て詰め込むだけなのだが。




(……仕方ない、よな。知られてしまった訳だし)




 昨夜話している間に、こうする事は決めていた。神様からのお願いは、どう考えても一般人を巻き込める規模の内容ではないからだ。

 オルカちゃんには申し訳ない事をしているのは分かっている。けどいつか、俺よりももっと優しく気の利いた、何より普通な人がパーティーを組んでくれる筈だ。何せ世界は広いのだから。




「…………」




 余り音を立てない為にリュックを片側の肩で背負い、足音に注意を払って部屋のドアの方に近付いていく。

 そしてドアノブに手を掛け、これも出来るだけ音が出ない様に慎重に押し開いた。


 だけど、今日の神様は少し意地悪なようだ。




「逃げるの……?」


「っ……」




 背中の方から、女の子の声が飛んで来た。気のせいだと淡い期待を抱きながら振り返るも、ベッドの上で上半身だけ起こしているオルカちゃんを見て、気のせいでは無かった事を嫌にでも理解させられる。




「え、えっとどういう事、かな……?」


「とぼけても無駄よ。その恰好が証拠じゃない」


「うっ……」




 どうやら言い逃れをさせて貰えそうには無さそうだ。彼女が起きていたのは、本当に予定外だ。

 冷や汗で手が気持ち悪い感触に襲われる俺に、ベッドから降りたオルカちゃんが近付いて来る。寝起きでボサボサの前髪が上手い具合に彼女の顔を隠しているせいで、今どんな顔をしているのかが分からない。


 怒っているのだろうか、そんな予想を立てつつ少し身を引いていた俺に、オルカちゃんは胸ぐらを掴むようにして、凭れ掛かった(・・・・・・)




「……置いていかないでよ」


「えっ?」


「どうせイスミの事だから、アタシを危険に晒すとか、自分の事が周囲にバレるとか、そんな理由でアタシの前から消えようとしてるんでしょ?」


「……」


「だったらイスミの奴隷になる。そうして命令で口封じをすればいいし、命令で安全な場所に居させるようにすればいい」


「……」




 思わず否定したくなるような内容だったけど、グッと堪える。最後まで聞かなければいけない気がしたからだ。




「……自分でも可笑しな事を言ってるのは分かってるの。でも、悔しいけどそれぐらいイスミと一緒に居たいと思ってるの。

今までで唯一、アタシを対等に扱ってくれたパーティーメンバーだから」


「……」


「だから、だからお願いっ……もうアタシを一人にしないでぇっ……」




 顔を合わせる事無く、オルカちゃんは肩を震わせていた。服を掴んでいる手にも力が入っているのが分かるし、何より胸元から嗚咽に近い声が聞こえてくる。


 これが彼女の本心なのだろう。心の底から、俺に居なくなって欲しくないと嘆願しているのだ。


 正直、ここまでとは思っていなかった。ありったけの怒りをぶつけられて、「アンタの顔なんて二度と見たくないっ!!」とでも言われた方が正直有難かった。

 そう言う意味では、彼女はズルい。こんな懇願のされ方をすれば、断れる訳無いじゃないか。




「……分かった、約束する。もう逃げるような真似はしない」




 彼女を包み込むように抱きしめて、そう言葉を掛ける。歯の浮くような言葉だけど、自然と口から零れていた。




「……本当?」


「ああ。約束する」


「……次は無いわよ」


「分かった」


「……もう少しだけ、このままでいさせて」


「分かった」




──────あぁ、俺は何て酷い奴なんだろう。

 俺はその日、初めて胸を締め付ける程の罪悪感に苛まれた。







何? オルカちゃんがデレ過ぎだって? はっはっは。

……正規ヒロインになりつつあるな、オルカちゃん(^-^;



面白いと思ったらブクマ、感想等待ってます(^-^)



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