CASE.26 VSマンイーター戦1
GW突入っと、さぁ頑張って執筆しましょう!!
……自分に言い聞かせているだけです、はい(笑)
あ、因みに今回はサブタイトル通りの話です。
昔、神様と一緒に植物図鑑を見た事があった。
あの時の俺はまだ全くの無知で、見るもの全てが新鮮で、それでいてとても興味を惹き付けられていた。
その中でも特に印象に残っているのが、形容しがたい容姿と、植物なのに虫を捕食するという独特な生命活動を行うウツボカズラだった。
そして今、俺の目の前にはそのウツボカズラが、俺の身長を容易く超えて姿を現していた。
「な、なんだよこれ……」
オルカちゃんをまるで置物の様に乱雑に扱う触手や、本体上部から漏れ出る白煙、そして薬品で何かを溶かしたような溶解音が、気持ち悪い位に鳥肌を煽り立ててくる。今まで見て来たどのモンスターより凶悪なのは、本能的に分からされていた。
「なっ、どうして”マンイーター”が……!?」
「マンイーター?」
「地中に隠れて花に擬態するモンスターよ!!
普通はこんな草原地帯に現われる様なモンスターじゃないのに……何よりコイツ、Cランクの冒険者がパーティーで倒す様な相手なのよ!?」
その言葉に、俺は思わず喉を鳴らしてしまう。
初心者用の依頼先に中級冒険者用の敵が出てくるなど、誰だって予想さえしない、それがこの依頼を何度も受けているオルカちゃんでさえも。
宙吊りながらも十分かつ最悪の情報を教えてくれるオルカちゃんの身に細心の注意を払いつつ、枝切りばさみを捨て鉄の剣に構えなおすと、もう片方の蔓が俺の方に薙ぎ払われた。
「っ……」
「イスミっ!!」
垂直に飛び上がり、足元でそれが過ぎ去るのを見届けて降り立つ。
躱せない速さではない、だがギリギリの速度で躱さなければオルカちゃんに感づかれてしまいそうになる、嫌なラインを突いて来る攻撃だった。
もう一撃、今度は上から振り下ろされる蔦を横目にしつつ、俺はまずオルカちゃんを締め付ける蔦の方へと駆けだす。
「な……何してるの!! 早く逃げなさいっ!!
イスミが勝てる相手じゃないわ!!」
「オルカちゃんを置いて行ける訳無いだろっ?」
「っ……だ、ダメよっ早く逃げなさいっ!!」
返事はしなかった。
背後から迫って来る蔦を屈んで躱し、オルカちゃんを掴む蔦の真下まで辿りついた俺は手に持つ得物を力一杯振り下ろす。しかし、思いの外肉厚だったのか、鉄の剣は蔦の中心部辺りまで食い込んで完全に止まってしまった。
「なっ……!?」
「ォォォォォォッ!!!!!!」
「きゃあぁぁっ!?」
「オルカちゃんっ!!」
ただ、食い込んだ鉄の剣はマンイーターに悲鳴を上げさせる程のダメージを与えたらしく、痛みからかオルカちゃんを離していた。空中で。
幸いな事に地面までの距離が低かった為、オルカちゃんは尻餅をつくだけの軽傷で済んだ。鉄剣を引き抜いて駆け寄った俺は、彼女に手を貸して立ち上がらせる。
「あ、アンタどうして」
「話は後だ、今は急いでここから逃げ────っ!!」
彼女の手を取りこの化け物から距離を取ろうとしたが、遅かった。オルカちゃんを離したために二本に増えたマンイーターの触手が、俺達目掛けて振り下ろされていた。
「っ──────ぐっ!?」
「イスミッ!?」
背後にオルカちゃんがいる以上、躱すことは出来ない。鉄の剣を盾にして触手の攻撃を防ぐ俺は、後退しない様にその場に踏み止まるべく足に力を入れる。
マンイーターの攻撃で、俺自身がダメージを受ける事は無い。それぐらいのステータス差があるのだけど、質量を伴う一撃を一歩も動かずに耐え凌ぐ事は想像以上に身体を酷使する。
そして、更に悪い事にマンイーターは交互に触手を打ち付けてくるのだ。
「ォォォォォォ!!!!」
「ぐっ、ふっ……」
「イスミ……」
反撃の機会を待ちながらただひたすらに攻撃を防ぎ続ける。そんな鉄の剣を酷使するだけのジリ貧な状況が続く中、俺の背中にぬくもりのある物がそっと触れた。
「イスミ……アタシの事は良いから、もう逃げなさいっ……」
「はぁ!? ぐっ、何言ってんだよっ!?」
「バカじゃないからアタシがお荷物になってる事なんて分かってるのよっ……!!
イスミ一人なら逃げられるんでしょ? だったら早く逃げなさいよっ!!」
「ふっ……お前はどうするんだよっ!!」
「イスミがアタシの事なんて気にしなくていいわよっ!!
……アタシよりアンタが生きる方がよっぽど大事よっ……」
服越しに、オルカちゃんの震えが伝わって来る。本当は全身が震えるぐらいに怖いくせに、変なプライドが邪魔しているみたいだ。だから俺は、初めて彼女に怒りを感じた。
「…………よ」
「何、何か言った!?」
「ふざけんなよ!!」
「ォォォォォォッ!!?!?」
「い、イスミ……?」
怒りに身を任せ、振り下ろされる触手に合わせて鉄の剣を押し出した俺は、剣が折れる代償に敵を転倒させていた。
俺が叫んでいた事と目の前で起きた異常事態に困惑していたオルカちゃんだが、俺はお構いなしに彼女に詰め寄った。
「自分の命だろ!! 助かる可能性が0じゃない限りは諦めるなよ!!」
「でっ、でもアタシはお荷物だし……」
「俺が!! いつ!! オルカちゃんの事をお荷物だって言ったんだよ!!
無知な俺の代わりに色々してくれてる時点でお荷物なんかじゃねぇよ!!」
「で、でも……」
「あーもう!! 生きたいか死にたいかどっちなんだよっ!!」
「そっ、そんなの生きたいに決まってるじゃない!!
死にたくなんか、無いわよ……」
一瞬威勢良く言い返してきたと思ったら、すぐに弱々しい態度を見せる。さっきの恐怖がまだこびりついているみたいだ。
正直見ていていい気分にはならない。だから、俺は彼女に向かって言い放った。
「だったらもっと生きる事に必死になれよ!!
死んだら元も子もないんだから、どれだけダサくて見っとも無くても、死なない方法があるならそれに縋りつけよ!!
一つしかない自分の命を無駄にするな!!」
「っ……イスミ……」
「ふぅ……ゴメン、ちょっと言い過ぎたかな」
「ううん、そんな事無いわ。
……そうよね、アタシは全然お荷物じゃないし、何よりこんな所で死んでいい人間じゃないわ!!」
さっきの説教が効いたのか、握り拳を作っては自分の重要性を力説するオルカちゃん。うん、彼女はこれぐらい強気な方が似合っている。
「(……ありがと、イスミ)」
「…………」
コッソリ何か呟いていた気がしたけど、気のせいだろう。はっはっは……最近のオルカちゃんはデレ過ぎじゃないか?
と、丁度こちらの話が一段落着いたのを狙ったかのように、マンイーターが体勢を立て直し終えていた。
武器は壊れている。オルカちゃんに自分の異常なステータスの事を悟られない様に行動すれば、恐らくいつまで経ってもケリがつかないだろう。
「……オルカちゃん」
「どうかした?」
「いや……出来れば、今から見る事は他言無用でお願いしたい」
「わ、分かったわ……でも、何するつもりなの?」
「何するって、そりゃ──────」
他言無用の約束も取り付けたし、周囲に俺達以外の人がいない事はこの一瞬のうちにチート特性で把握してある。全力を出していい状況が出来上がっているんだから、やる事なんて一つしかない。
「──────狩りだよ」
それだけ告げると、俺はさっきの倍以上の速度でマンイーターの所へと駆け出していった。
良い感じで主人公らしさが出て来たところで!! 遂に!!
……特に何も無いですが、無双と呼べない無双します(^-^;
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