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CASE.24 偽物って大体嗜虐的

※作者が長期的な風邪でダウン気味なので、他作品含めて更新がかなり遅くなります……


本当に申し訳ありませんm(_ _)m






「「…………」」




 唯一残っていた一室を借りた、借りるしかなかった俺達は従業員から鍵を受け取り、早速その部屋を訪れていた。


 ただ、その部屋を見た途端、俺もオルカちゃんも絶句した。




「……マジか」


「な、何でよ……何でダブルベッド(・・・・・・)なのよっ!?」




 部屋の隅に寄せて置かれていたダブルベッドを見て、オルカちゃんが真っ先に叫んでいた。




「どうするのよ……実質ベッド一つしか無いって事じゃない……」


「ま、まぁソファがあるから、俺はソファで寝るよ」


「と、当然よっ……(い、一緒に寝るなんてそんなハレンチな……)」


「ん? 何か「何も言って無いわ!!」そ、そう……」




 何もしてないのに、何故か突然オルカちゃんが顔を真っ赤にしていた。ううむ……何を考えているのか全く分からない。




「と、取り敢えずこの後どうする?」


「そ、そうね……情報収集しましょうか」




 ぎこちなく頷き合った俺達は部屋に鍵をかけ、再び宿屋の入り口辺りに戻って来る。従業員はまだ同じ場所で立っていた。

 すると、オルカちゃんがその従業員の所まで歩いていって話しかけた。




「ちょっといい?」


「はい。何か問題でもありましたか?」


「そうじゃないわ。最近、ここ周辺で夜紅花はどれぐらい出現してるか分かる?」


「ああ、夜紅花の依頼で来たんですね。それなら最近は良く取れるみたいですよ。冒険者さん達も良く来ますから」


「そう、助かったわ」


「いえいえ。また何かありましたら何でもお申し付けください」


「……(だったらダブルをツインに……)」


「? 何か言いました?」


「う、ううん何も言って無いわ!!」




 最後の方少し騒がしかったように思えたけど、従業員と話し終えたオルカちゃんが俺の所に戻って来た。




「聞いてきたわ。今の時期なら沢山取れるそうよ、良かったわ」


「そうだね。

……そう言えば、夜紅花ってどうやって摘むの?」


「ふふっ、それは行ってからのお楽しみよ」


「?」


















───────────────────────






 時間が余った俺達は村を見て回ったり、夕食を食べたりして夜になるのを待った。

 そして、また夜空に星が散乱し始めた頃。俺達は村の裏手に当たる草原エリアへと向かっていた。




「……意外と人いないものなんだな」


「そうね。皆取り終わったのかしら?」




 ざっと辺りを見回しても、自分達意外に人の気配が無い事にちょっと不安になりながらも、道なき道を進んで行く。

すると、少し先の草原の中に赤色が混じっているのが見えた。




「あ、もしかしてアレが夜紅花?」


「ええそうよ。いきなり見つけるとは、イスミも中々幸運ね」


「……あれ、引っこ抜けばいいのか?」


「試しに取って来たら?」




 オルカちゃんに催促され、俺は赤く染まっている花に近付いていく。

夜紅花は花弁が何枚も重なって開いていて、少し変わった見た目をしていた。大きさは至って普通だった。


 足元まで近づき、その場に屈んだ俺は花を摘み取ろうと茎の根元に手を伸ばす。




「摘むんだから、引き抜けばいいよな?」




 しっかりと茎を掴み、そのまま引っこ抜こうと力を入れた。だけど根が強いのか、まるで抜ける気配が無かった。


 これがただの子供なら力が足りなかった、で済む話だろう。しかし俺はカンストした能力を持っている。なのに抜けないなんて有り得るのだろうか。


 不可思議な事態に首を傾げていた俺だったが、異常が起きたのはその直後だった。




「あれ? 抜けな────うおぉっ!!?」




 少し目を離した隙に、花の部分が俺の腕に引っ付いていた(・・・・・・・)のだ。そして、そのまま腕に噛みついてきた(・・・・・・・)




「痛っ!? って何が刺さったんだ!?」




 腕から伝わる刺された痛みに混乱する俺は、自分の腕から血が流れていない事に気が付いた。




「も、もしかしてこの花、俺の血を吸ってるのか────」


「ふふっ、正解よ」


「────お、オルカちゃん!?」




──────騙された。

 振り返りざまに見えたオルカちゃんの満足げな表情で、大体の事情を察する事が出来た。恐らく、俺がパニックになるのを見て楽しみたかったのだろう。


 だけど、何より今は血を吸って来るこの花から脱出するのが先決だ。




「な、なぁオルカちゃん。これってどうやったら────え?」


「ふふっ、これ何だと思う?」




 怪しく目を光らせて疑問を投げかけてくるオルカちゃん。その小さな手に握られているのは、先の鋭利な枝切りばさみ(・・・・・・)の様な物だった。




「なっ、ま、待て一体何を────」


「何をって……分かっているんでしょ?」


「い、いや、待てって!!」


「ふふっ、待たないわ。この機会を待ってたもの」


「っ!!」




────ヤバい、殺されるっ!?

 ユラユラと奇怪に揺れながら近付いてくるオルカちゃんに、俺は全身の毛が逆立つ様な感覚に襲われる。本能が、命の危機を感じたのだ。


 確かに恨まれる明確な理由は存在する。だけど、あれは許してくれたんじゃ無かったのか!?


 鋭い枝切りばさみはリーチが長く、花に腕を取られて動けない状態の俺相手なら、体格の小さなオルカちゃんでも恐らく一撃で屠れる。

 そう思った俺は必死に花から逃げ出そうとするも、夜紅花は一向に離れる気配が無かった。




「ふふっ、抵抗しても無駄よ?

抵抗しないで────受け入れなさいっ!!」


「ま、まっ────」
















 俺の必死な抗いも虚しく、オルカちゃんの得物は赤い液体を浴びる事になった。




……オルカちゃん!?

い、いやいや、流石にねぇ!?



面白いと思ったらブクマ、感想等待ってます(*^^*)

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