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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

召喚聖女は、カエルで喪女でSM女王様

作者: どんC

 この世界は私に厳しかった。

 私は私生児として産まれた。

 母は父に捨てられたと言っていたが……

 母は本当の所私の父が誰なのか分からないのではないか?

 母はいつも男をとっかえひっかえしていたし、一人の男では我慢できない人だった。

 言ってしまえばふしだら。

 ハッキリ言えば色情狂だった。

 確かに母は美しく儚げだったが、中身はゲロカス。

 そして母が連れて来る男は塵ばかり。


「お前なんか産まれて来なければ良かったのよ!!」


「お前のせいで私は不幸だわ!!」


「お前が産まれたからあの人は去っていった!!」


 私の頬をぶちながらそう喚いた。


「鬱陶しい」


 母の男はそう言って煙草の火を私の腕でもみ消した。


 二人は私を置いて居なくなった。

 五歳の時だ

 アパートの家賃を取り立てに来た大家さんが、餓死寸前の私を見つけて大騒ぎになった。


 結局二人は見つからず私は施設に入った。


 施設に入って私はほっとした。

 施設には私を殴る女も、私の髪を掴んで引きずり回す男もいない。

 しかも!!ここの料理は美味しかった。

 しかもお代わり自由だ‼

 お風呂にだって入れる。

 一週間以上臭い服を着なくていい。

 最高だ‼


 (ひろし)くんに出会ったのは小学生の時だ。

 宏くんのお母さんは施設に勤めていて。

 宏くんは小さい子とよく遊んでいた。


 小学校、中学校、高校と同じ学校に通い。

 宏くんは東京の大学に進学し、私は地元の小さい会計事務所に勤める事になった。

 宏くんは大学に行く前に大学を卒業したら結婚しようってプロポーズしてくれた。

 私は喜んで頷いた。

 遠距離恋愛だ。

 私は将来の為に貯金をした。

 そんなある日。事務所からの帰り道で踞ってる人がいた。

 慌てて救急車を呼んだ。

 それがSMクラブのオーナー明恵さんだった。

「貴女SM女王の才能がある‼」

 とスカウトされた。

 どうも私は、押しに弱い。

 それがきっかけで、宏くんに内緒でバイトすることになった。

 SM女王様だ。

 えっ?ボッチで喪女じゃ、SM女王様は敷居が高いんじゃないかって?

 大丈夫です。

 女は皆女優よ。

 わたしは仮面を付けて生きてきた。

 昼間の真面目な事務員に夜のSM女王様。

 もう バッチリです。

 それに鞭使いとしての才能が開花してしまいました。

 開花させちゃいけない才能ですか?



 兎に角、貯金も六百万貯まって。

 そろそろ宏くんと結婚かなって時。


 貯金の残高が0になってた。


 慌てて東京の宏くんのアパートに行ったの。

 宏くんのアパートはもぬけの殻だ。

 慌てて隣の人に聞いたの。


「結婚資金が貯まったからいい所に引っ越すっていてたな~すっごい美人と出ていった。そうそうあんた千花(ちか)さん?手紙預かってるんだけど」


 と言って手紙を差し出したの。

 ああ…なんだ…女の人は引越しの手伝いに来てた人なんだ。

 馬鹿だな宏くんを疑うなんて。


 でも…違った。


『千花へ俺お前じゃない女と結婚する。メンゴ。それから六百万は俺達の結婚祝いとしてもらっとくよ。ついでにお前名義で三千万借金したからソープで返すなり内蔵売るなりしてくれ』


 うん…目の前が暗くなったよ。


 あれ?でも…


 宏くんってこんな頭の悪い手紙を書く人だったっけ?


 ガシッ!!


 いきなりお隣さんに腕を捕まえられた。


「俺も宏に金貸してたんだ。三十万ほど。であんたを好きにして良いってさ。よく見たらあんた美人だね~」


 私は思わずお隣さんの急所を蹴り上げた。


 痴漢対策に園長先生が護身術を教えてくれたの。

 私は闇雲に走った。

 気がつけば公園のトイレの裏に隠れてた。


 ああ…もうこの世から消え去りたい。


 そんなことを思ったせいでしょうか?


 私の足元が光って魔法陣が浮かび上がり。



 私は異世界に召喚された。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『ふざけんじゃねえぞ!!このぼけが~~~~~~~!!!!』


 いきなりマジギレの女の人が現れた。


 見なかった事にしたいがそうもいかん。


 ここが何処だか知りたい。

 なんか青空とそれを写す鏡の様な床。

 有名な場所に似ている。


「あ…あの…」


『何度言えばわかるんじゃ~~~~~~~!!あの屑どもが!!!!』


 黙っていれば凄い美人さんだ。着物に似た衣装を纏っている。


『おお!!分かった!!そっちがその気なら戦争じゃ~~~~~~~!!女神の怒りとくと味わえ~~~~~~~!!!!』


 はっ!!


 女の人と目が合った。


 女の人の口がヒクリと動く。


『あらあらあらあらごめんなさいね~~~~ビックリした?そうよね~そうよね~ビックリするわよね~ホントごめんなさいね~』


 どこかのオバちゃんみたいな口ぶりだ。


 綺麗な女の人が手を叩くと椅子とテーブルが現れた。

 美味しそうなケーキと紅茶も一緒にテーブルの上にある。

 ああ…これは夢なんだ。


『いいえ。夢じゃないわよ。取り敢えず座って』


「私…ヘンゼルとグレーテルみたいに食べられるの?」


『いやいやいや!!私魔女じゃないから!!食べないよ!!お菓子の家は無いでしょう』


「あ…ご免なさい。私色々あって精神状態が、不安定で…」


『うん。知ってる。恋人の事も逃げてる途中に召喚された事も』


 綺麗な女の人は私の頭を撫でてくれた。


「召喚?召喚って施設の男の子が、読んでいた。あの異世界の召喚ですか?もしかして貴方は女神様?」


『そうよ。異世界の召喚。私は【女神エリセード】でも異世界に行く前に貴女に幾つかのスキルを授けるわ』


「スキル?」


『ええ。じゃないと魔力障害を起こして直ぐ死んじゃうから。宇宙空間に出るのに宇宙服は必要でしょう。スキルは、宇宙服みたいなものよ』


「良く分かりませんが、ありがとうございます」


『礼儀正しい子って好きよ』


 女神様はウィンクをした。本当に美人だ。


『良いのよ。貴女に頼みたい事もあるし』


「頼みたい事ですか?」


『これがなにか分かる?』


 女神様の手のひらにビー玉ぐらいの大きさの光りの玉が、浮かんだ。

 とても温かく癒される。


「祈り?感謝?」


『さすが聖女ね。ええそうよ。これは祈り玉。人々の信仰心や愛や感謝のエネルギー体』


「凄い物なんですね。えっ?聖女?」


『そう貴方は聖女として召喚された。祈り玉は神々の間ではお金がわりなの』


「私が聖女?(何かの間違いだな)じゃ一杯持ってたらお金持ちですね」


『ええそうよ。異世界から人や物を召喚する時にやり取りされるわ』


「私の場合も支払われたんですか?」


『ええそうよ。日本円にすれば二兆円ぐらいかしら』


「ええ‼ぼったくりの様な気もしますが‼私にそんな価値ありませんよ‼私喪女で馬鹿で孤児ですよ‼しかもSM女王のバイトしてましたし…」


『いいえ。貴女は聖女。安いぐらいだわ』


「ちなみに勇者は、おいくらですか?」


『ん~質にもよるし人数にもよるけど、一人五百万くらいかな?』


「安い‼」


『勇者は基本安いのよ。スキルの方が高くつくのよ』


 女神様はため息をつくと話を続けた。


『聖女や勇者召喚には、お金がかかるのよ。スキルだって信仰玉使って授けるし。その癖召喚国は、信仰心の欠片もない。つまり大赤字』


「なぜ召喚をやるんですか?」


『私だってあいつらに言ったわ。召喚は止めろって‼でもあいつら聞きやしない‼ほっといたら召喚された子供達が死んでしまう‼仕方なくスキルを授け、召喚した世界の神に信仰玉を払うのよ!!』


 女神様は俯いてプルプル拳を震わせている。


『お陰で…お陰で…私はド貧乏‼』


「分かります‼貧乏って辛いですよね~‼結婚資金貯める楽しみでもなければ耐えられません‼」


『分かってくれる~分かってくれる~貧乏は辛い‼しかも働かない奴の借金肩代わりしてるようなもんだし』


「あ…だから怒ってたんですね」


『そうなのよ~で貴女に頼みたい事があるの』




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 女神エルセードの神殿の奥に隠し部屋がある。

 その中央の魔法陣が輝いた。


 そこに一人の女性が現れた。

 女性が、身に纏っているのは神官服で金色の縁飾りがある。

 彼女の顔は四角い帽子についたベールで隠されていた。


「召喚は成功したぞ!!」


「おおおおぉぉぉぉ…」


 神官と王と神殿騎士団達の声が漏れる。


 魔法陣の中から女性は静々と歩み出ると。


「皆さんこんにちは。私は女神エルセード様にこの世界を救うように仰せつかった千花と言います。何分不慣れなため皆様にご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します」


 と礼儀正しく頭を下げた。


「よくぞ来られた聖女様。ワシがこの国の王ピエトロじゃ」


 王様が挨拶をしますが固まった。

 聖女がベールを上げたのだ。


 私の顔を見て歓声を上げていた者たちも固まった。


 ざわざわ…


「えっ?カエル?」


「いやいやいや!!よく見ろ」


「人間だよなあ~?」


「カエルの魔物?」


「ただのカエルに似た人間だよな?」


 皆さん驚いておられます。

 特に前にいる美形五人が。


 そうこれが女神様が授けて下さったスキル【変身】です。


 今私は【カエルが人間に化けたらこんな顔】をしています。


 愛嬌があって可愛いと思うんだけど。


「取り敢えずお城に向かいましょうか」


 私の提案に皆さん頷き城に向かいました。


「あの顔どうする?」


「ベールでもかけとくしか無いだろう」


「あれを口説けって!!」


「無理無理無理無理」


「誰だよ!!聖女様は美人って言ったのは!!俺旅楽しみにしてたのに~」


 何やら後ろの方で見目麗しいお方たちが、囁いておられますが、筒抜けだよ。


「とつとと浄化の旅を終わらせて送り返そう」


「賛成~」


「でも体は人間だよな」


「乳さえあれば後はどうでもいいのか?」


「ゲテモノ好きだな」


 うん。聞こえてるよ。




 私が召喚された国の名はドリターズ。

 中央大陸で二番目に大きい国だ。

 本当なら第二王女が、聖女となり浄化の旅に出なければならなかったが…

 第二王女テレシアが、拒否した。

 表向きは病の為に仕方なく、異世界の聖女を召喚したことにしている。


 女神様に聞いているから知ってるよ。

 召喚聖女をたらしこむ為に見目麗しい野郎共をお供につけることも。

 この五人も騎士に剣士に魔導士に神官に弓使いのええとこのぼっちやん達だ。

 美形五人の名は、覚えるの面倒だから美形ズでいいや。


 だからカエル聖女なんだよな~(笑)


 カエルに惚れる奴は、いない。

 宏くんのこともあって今は恋愛はいいや。

 まして母親が連れてきた様な顔だけ男は反吐が出る。


 城の会議室で今後の事を話し合い明日出発する事に決めた。

 王様もお付きの騎士団も異存は無い。

 マジ一刻の猶予もないのだ。

 本来ならば一年前に出発していなければならなかった。


「ご免なさい。本来なら私が浄化の旅に出なければならないのに」


 ベッドの中で弱々しく王女様が、私の手を握る。

 後でこの女絶対手に浄化かけるだろう。


「おおなんとお優しい。さすが女王様。このような下民にもお声をかけて下さるとは…私感動致しました」


「流石、我らが王女様‼」


「一生付いていきます‼」


「頭撫でて撫でて~」


「相変わらず御美しい」


 美形ズが王女を褒め称える。


 こいつら太鼓持ちか?


「私達は早速明日旅に出ます」


「歓迎パーティーが、開かれるはずですが」


 病気のふりしてんだからパーティーは、出れんだろうが‼

 パーティー費用は、国民の血税だぞ‼

 魔物や障気で国が、荒れてんのにやれパーティーだパレードだ‼

 ふざけんな‼

 てめえらの見栄に構う暇は無いんだよ‼

 貧乏人視点だよ‼綺麗なドレス着て旨いもん食って城に住んでる奴に対してのひがみだよ‼悪いか‼

 と言う感情を微塵も出さず、女神様の使命に忠実な信徒の振りをする。


「姫様もどうかご自愛下さい」


 こいつ本当にゴミ王女だな。



 旅の準備は万端で、直ぐに私と美形ズと護衛騎士達は旅にでた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 この世界は、五十年から百年周期で障気が、溢れ出し魔物が、暴れだす。


 だから各国の姫が、聖女に選ばれ浄化の旅にでる。

 浄化の旅は厳しく幾人もの聖女が、倒れた。


 王族の姫が、全て亡くなった時。


 異世界から代わりの聖女が、召喚された。


 ただ一度とされるはずだった異世界からの聖女召喚は、ドリターズが破ることになった。


「取り敢えずどこから浄化するの?」


「女神様からどこまで聞きましたか?」


「うん。六つの神殿に祈りを捧げるって事だけ」


「そうです。まず地下の者どもの【土の神殿】獣人の国の【風の神殿】海の者どもの【水の神殿】ドワーフの国の【火の神殿】エルフの国の【月の神殿】最後にわれらの国にある【女神の神殿】です。大まかに神殿同士を繋ぐと五芒星になり世界規模の魔法陣が描かれていると言われています。」


「まるでゲームみたい」


「聖女様ゲームとは何ですか?」


「私の世界にある遊ぶ魔道具です」


 私はゲームについて説明する。

 魔導師が食いついてきたが私の説明が下手くそ過ぎたようで。


「よく分からないな~」


「聖女様の国は栄えているんですね」


「下民もその様な魔道具で遊べるなど豊かなんでしょうね」


 この貴族のぼっちやんは差別主義者だ。


「取り敢えず明日は【土の神殿】に向かいましょう」


 ガサリッ


 焚き火を囲んで会議をしていた、私はふと草むらに隠れている者に気が付いた。


「スライム?」


「下等な魔物だよ。殺す?」


 魔導師が杖を出す。


「ダメです。私がテムします」


「聖女様はテイマーなのか?」


 剣士がナイフを弄ぶ。

 私はうなずくと鞭を取り出した。

 乗馬に使う短い鞭だ。


「その鞭は?」


「女神さまにもらったの」


「ふ~ん」


 私はスライムに鞭を当てた。


「なんか手馴れてない?」


 神官のショタが怯えながら言う。

 続いてスライムを踏みつけた。


「私の下僕におなり!!」


 スライムは淡く光り鞭で叩いた所に契約の紋章が浮かび上がる。

 美形ズがドン引きした。

 私はスライムをテムした。

 女神様ありがとうございます。この鞭とってもいい具合です。

 ふふふ…



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 私達は五十人の騎士団と共に旅立った。

 各国の援助の元、苦しい旅ではあったが。

【土の神殿】【風の神殿】【水の神殿】【火の神殿】と浄化していった。

 最後は【女神の神殿】を残す所となった。

 旅の途中スライムのほかに豹に似た魔物もテムし、スライムを【ルス】豹を【ビエント】と名付けた。

 可愛い私の下僕だ。


「明日はいよいよ帰国か~二年もかかった」


「まず一旦城に向かいましょう。王に報告して休息と食材や物資の調達を済ましてから【女神の神殿】に向かいましょう」


「聖女様もそれで異存は無いですね」


「はい。それでいいです」


 私はルスとビエントの頭を撫でた。

 本当にこの子達はいい子で何度も危ない所を助けられた。

 美形ズがゴミに見えるほど。

 大体こいつら私の護衛せずに魔物に無暗に突っ込み。

 無駄な大怪我して私に回復魔法を使わせる。

 何のための護衛だよー!!

 いい加減引っ込んでろよ!!

 邪魔だよ!!


 ううう…


 ストレス貯まる。

 兎に角城に帰ったら風呂だな。

 いくら浄化が使えても日本人は風呂が一番だ。


「ひやぁぁ~いいお湯だった」


 ベランダに出て庭の花を眺めている千花を、木陰からじっと監視する黒装束の仮面の男が、いた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 私達は王に報告すると、三日後に旅立った。


 二十人の騎士団は、総入れ替えで美形ズ以外知らない顔となった。

 最後の【女神の神殿】は、国の真ん中の山にあり、結構な悪路である。


 魔物を倒すより神殿に行く迄が困難だった。


【女神の神殿】はピラミッドのような建物で回りに掘りがある。


 私はルスとビエントと一緒に中に入る。

 皆には神殿の前の階段の所で待ってもらう。

 私は祭壇の前で祈りを捧げた。

 神殿全体が光り浄化は成された。




 聖女が一人で神殿から出てきた。


 ヒュン‼


 聖女の胸に矢が突き刺さった‼


「ぐっ」


 聖女は倒れた。


「悪いな聖女様♪」


「僕カエルって嫌いなんだ」


「ご苦労様ゆっくり死んでくれ」


「美人ならお嫁さんにしたんだけどな」


「帰すにも魔力と金が、掛かるから王様手間なんだって」


 次々と聖女を攻撃する五人の男達。


「あっ‼王様もいらしたんですか?」


 神官が振り返る。


 いつの間にか王と騎士団二百人がいた。


「始末は、すんだか」


 王は、血塗れで倒れている聖女を見下ろしながらいった。


「………‼」


 聖女が何か言いたげに王の方に手を伸ばした。


「今止めさしますね」


 魔導師が聖女のベールを外す。


「「「「「 ‼ 」」」」」


 そこに居たのは王女だった‼


 王女の体をスライムが拘束しおまけに口を塞いでいた‼

 スライムは王女を盾にしたから無傷だ。


 ズルリッ


 スライムの触手が、口から外される。


「な…なぜ…おと…うさ…ま…」


「何故だ‼城に居るはずの王女が、ここに居る‼」


「ああ。私の指示で拐ってきました。なんか私が殺される所が見たいと言ってたから。親切に連れてきてあげたんです。城にはルスの分裂体が王女のベッドで寝ています」


「「「「「「「‼」」」」」」


「あ~王女死んじゃいました?」


 皆の後ろから呑気な声がする。

 いつの間にかビエントの背にのった千花がいる。


「貴様‼」


「可愛そうに王女様。取り巻きに殺されるなんてね~あっ‼命じたの王様でしたか」


 クスクスと笑う。


「ルスおいで」


 ルスは女王の拘束を解くと千花の元に戻る!


「貴様‼どう言うつもりだ‼」


「どうもこうも。私言いましたよね。女神様に言われて来たって(笑)」



「私女神様にこの国滅ぼせって言われたんですよ」


 ルスを撫でながら話す。


「女神様の怒りを買った上に私を殺そうとしたから、有罪~死刑決定です。」


「殺せ‼」


 王と美形ズが、軍隊を振り返ったが皆大地に倒れ伏していた。

 ルスの分裂体が毒で痺れさせたのだ。


 バシッ‼


 スライムのルスは、触手でナイフを弾いた。

 私は笑ってビエントを森の中に走らせる。


「13号‼殺せ‼」


 黒装束で仮面をつけた男が、千花の後を追う。


「わ~さすが~暗殺者。美形ズとは大違い」


 ビエントは、私を乗せていても早い。

 森の中を高速で駆け抜ける‼


「あいつらもここまで追って来れないよね」


 森を抜けて草原に出た。彼等の足では、3日は掛かるだろう。

 私は帽子を脱いだ。

 そしてスキルを解除する。

 私は気に食わないが、母に似ている。

 儚げな美人だ。射干玉の髪が、風に揺れる。

 そして母よりスタイルが良い。


 黒装束の暗殺者は、もう追い付いて来た。

 私はビエントから降りた。


「流石~早いね」


 男は、剣を抜き無言で襲いかかった。

 ビエントの前足が剣を弾く。

 ルスの触手が、暗殺者の足を払う。

 暗殺者は草むらの上を転がりながらビエントの攻撃を避ける。


 ビシッ‼


 私の鞭が、暗殺者の仮面を叩き壊す‼


「目を覚まして宏くん‼」


 仮面の下には大好きな宏くんの顔。

 私は宏くんの胸を踏む‼

 宏くんの胸に洗脳解除の魔方陣が、浮かび上がり‼


 バリン‼


「ぐわあぁぁぁぁ‼」


 宏くんは、絶叫を上げて気絶した。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「貴女の婚約者、たしか宏って言ったわよね」


 女神様は、美しい顔を悲しそうに歪め私に真実を告げた。


「彼ね。隣の住人に殺されたわ」


「えっ?嘘‼嘘‼嘘‼」


「お金目当てに宏くんは殺され、冷蔵庫に入れられ山の中に捨てられた」


「嫌だあぁぁぁ‼宏くん‼宏くん‼嘘だあぁぁぁ‼‼」


 泣き叫ぶ私を抱きしめて女神様は囁いた。


「私のお願いを聞いてくれるなら宏くんに会わせてあげる」


「生き…返らせて…くれるの?」


「彼は死んだからあっちの世界で生き返る事は出来ない。でもこつちなら可能よ。今彼は召喚され王に捕まり。洗脳され暗殺者としてこき使われている。彼を助けたい?さあ選んで浄化の旅が終わったら帰るか、宏くんと一緒にこの世界に残るか」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 パチパチと焚き火の火がはぜる。

 ルスとビエントがパトロールしてくれている。

 魔物はいないみたいだ。

 千花に膝枕されていた宏がめざめる。


「あ…気が付いた?どっか痛い所ない?一応回復かけておいたよ」


「ごめん。結婚資金取られた」


「そんなものより宏くんの命が大切だよ!!」


「あっちの世界に帰る事もできただろう」


 不機嫌そうに宏くんが言う。


「帰っても宏くんはいない」


 ポトポトと涙が人がの顔に落ちる。


「大好きな宏くんが、いない世界に価値はない!!魔物が、いる世界でも、障気がある世界でも‼宏くんがいる世界なら生きていける‼」


「馬鹿だな~ほんと千花は馬鹿だ」


 宏は起き上がり千花を抱き締めた。


「馬鹿でも良い‼宏くんと一緒に生きていきたい‼」


「うん。二人で生きていこう」


 女神と夜空の星と野に咲く花が二人をそっと祝福した。





                    ~ Fin ~








山崎千花やまざき・ちか

転移者。宏くんと結婚する為にお金を貯める。昼間は事務員で夜はSM女王様。

鞭の扱いは絶品です。


楠木宏くすのき・ひろし

千花の婚約者。金目当ての大学の友人に殺され冷蔵庫に入れられ山の中に捨てられる。


★女神エリセード

貧乏女神。ドリターズ国のせいで貧困に喘ぐ。


★ピエトロ王様

ドリターズ国国王。こいつのせいで女神様は貧乏(笑)


★テレシア王女

仮病女。傲慢。ねこかぶり。


★美形ズ

美形五人男。騎士、剣士、魔導士、神官、弓使い。面倒なんで名前すら付けて貰えなかった。

美形雑魚キャラ。


★ルス(スペイン語で光り)

ルスは分裂して王様の動向を監視したり。王女を攫ったり。王女に化けたり。物凄く有能。


★ビエント(スペイン語で風)

豹に似た魔物。もはや乗り物扱い。


小原敏夫こはら・としお

宏の隣の住人で、同じ大学生。宏を殺して金を奪う。

後程犯行がばれ刑務所入り。




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― 新着の感想 ―
[一言] 宏くん、なんてやつだ!って思ったけど、最後まで読んで見て安心しました。 ちょっと駆け足気味かな…?と思いましたが、テンポ良く結末まで読めてよかったです。 異世界生活になるけど、二人は幸せにな…
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