やさしさ
やさしい人になりたかったのに、やさしいだけじゃ生きられないって悟ったのは、いつからだろう。そしてやさしさを犠牲にして生き始めたのは、いつの頃からだったんだろう。昔は冷たい人になってしまうくらいなら、死んでしまおうと思っていたのにね。
「命は平等だ」って言葉を理想に掲げて生きているような人間だから、私は最低なんだ。
この地球上では、一秒ごとに誰かが死んでいる。でも、私はそんなの気にしないで生きている。「命は平等じゃない」って言って、君の死だけを特別に悲しんでも、「命は平等だ」って言って、君の死を悲しまないでいても、優しい人間じゃなくなる。
優しくなんて生きられないんだ。優しく生きられないなら、死んでしまえよ、私。
虫や植物の死骸が土になって、僕はその上に平然と立っているから、
君の死骸の上にも平然と立っていられると思う。
「命は平等だ」と言う言葉は冷たくて。
だから僕はやさしい人になれそうもない。
やさしい人になりたかった。
人を傷つけない人になりたかった。
だから、
ごめんね。
僕は死にます。
やさしい人になれそうもないから、僕は死にます。
もし、君が泣いてくれるのなら、
その涙が僕をやさしい人にしてくれると思うんだ。
もし、君が涙を流してくれるのなら、
僕の死は、誰かに悲しんでもらえるものだったという証明になるよ。
誰かにとって意味のあるものだったという証明になるよ。
そして、
泣いている君が、
とってもうつくしいと思ってしまうから、
僕はやっぱりやさしい人になれない。
だから、
ごめんね。
僕は死にます。
その、
くりかえし……