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日々  作者: 笹十三
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花火

大人になるにつれて、大人になったことによって、僕らは多くを知った。でも、もしかしたら、知りすぎたのかもしれない。大人にならなければ分からないことはたくさんあるけれど、子供の頃にしか分からないものもたくさんあった。失うものも多かった。

だから、失われた感情は、決して手に入れることのできない宝物のように輝いていて、手に入れることができないからこそ大切にしたいと思うんだ。

皆で集まって、河原で花火をする。笑い合う。

満たされたように見える。

僕から見たって、僕は満たされているように見える。

けれど、友情じゃあ満たされない不安がある。


平和な日常に薄められて、

ほとんど見えない、けれど無くならない小さな不安。

それは僕が過去に無くしてきた小さな忘れものたち。

無くしたり、捨ててしまったかもしれないものたち。


昔はあんなに自然に笑えたのにね。


燃える手持ち花火の匂いが、形の無い暑い夜をふちどる。


不安が虚無に変わる前の一瞬、

花火が燃え尽きたあとの黒い静寂が、

次の光に飲まれるまでの一瞬。


その一瞬の暗闇の間だけ、煙の向こうで、

語り手を無くしたはずの過去が、

無力感と哀愁を背負って現れる。

永遠につかみ取ることができないとわかっているけれど、

少しだけでいいから、

もう一度姿を見せてくれないかと願う。


次の花火に火をつける。


偶然のように、その煙のような過去をつかめるかもしれない、

なんて幻想を夢見て、火をつける。

一時の闇に期待して、花火に濡れた空白を保存しようとする。


でも、

それができないから、

花火は、

永遠に帰ってこない、

永遠の青春なんだ。

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