夜
死にたいという思いは特別な気がする。でもそんなの違うってことを、今までに自殺した人々が否定する。一人一人が特別だよって言葉にはもう飽きたんだ。本当にそうなら、世界はもっとましに見えるはずだよ。そう見えないのは、世界が特別を求めている証拠だと思う。
特別になれない不安。死にたいけど、死ぬ意味もない。そんな不安。
この世界に絶望したと言う君、自殺すればいいよ。
産んでくれたことに感謝はするけど、産まれてしまったことを憎悪すると言う君、呪えばいいよ。
世界がゆがんで見えると言う君、正しさなんてないよ。
人は嘘でできていると言う君、今頃気づいたの。
この街に奇跡なんてものはないし、運命なんてものもない。あるのは偶然だけだよ。
むなしさも、愛も値段がついているんだ。
そんな世界が、君はいやかな。でもさ、人は生きているよ。死んでいくよ。君だけが特別なわけないよ。
私だけが特別なわけないよ。
僕の苦しみを世界は理解できないと言う君、そんなの君が初めてじゃないよ。
だから、死ねばいいよ。私も死ぬよ。
そうやってなぐさめ合って、そのうち夜が明けるよ。
死にたいと言うけれど、本当は生きたいくせに。
明日まで眠ろう。眠ることで今日をやり過ごそう。
暁だけは中立だよ。