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日々  作者: 笹十三
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平和は戦争

私は本当に生きているのでしょうか。不安です。だってこの世界では私は誰にでもなれるし、誰かが私にとってかわることなんて容易い。「今ある居場所は私だけの居場所!」、なんて言い切ることは簡単なことじゃない。そんな私は、生きていると言えるのでしょうか。どうやったら世界に私だけの「私」を証明できるのでしょうか。そんな不安は狂気に変わり、死という特別を身につけることで何かを得られるんじゃないか、なんて思ってしまう。でもある日、死すら特別じゃないことを知ってしまった。だから死にもしないし、生きてもいない。そんな毎日を送る中で考えたこと。それは生きながら傷つけられることでやっと、自分に他者の目が向けられていたのだと、自分が生きていたのだと言うことを認識できるのではと思いました。

午前二時の静けさは、僕が死のうとした日のさびしさだ。


少し肌寒い大気が熱を奪っていく。


空の向こうは、熱のない静寂が広がり続けている。


夜空は甘くない。水晶だ。それでも時々幻想にゆらめく。


空の美しさは、血のぬくもりを際立たせる。ぬくもりが欲しかった。


だから僕は、死のうと思った。

美しい宇宙のまんなかで、その命を終えたなら、僕の死は宇宙の美しさと融和できる気がした。美しくなれれば、誰かがぬくもりをくれるような気がした。




死のうと決めた一瞬に、僕の生はかがやくと思った。


死のうと決めた一瞬に、僕は世界に平穏な死が満ちていることを感じた。


死のうと決めた一瞬に、僕は死が平凡なことを知った。


死のうと決めたことですら、平和なんだとわかった。


人が殺し合うのに比べたら、自殺なんて平和だ。そう言われた。


僕はどうやっても、平和な世界でしか生きられない。どうやっても特別には死ねない。


血のぬくもりだけが、最後にのこった僕の証。生きているって証拠。


全霊の憎悪を僕に向けてください。全身から血が出るほどに僕を傷付けてください。



死にたくなるような自己嫌悪の果てに、僕は僕が生きていることを確認する。

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