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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ホラーまとめ

視線

作者: あじふらい

ホラー三作目。

グロ注意です。今回もまた短いですが、楽しんでいただけると幸いです。

最近、視線を感じる。


シャワーを浴びている時。

勉強している時。

スマホをいじっている時。

料理をしている時が特に顕著。


そう友人に話したら、視線を感じるという感覚がわからないという。

なんとなくふっと後ろを振り返りたくなるように、背中がむず痒くなって、そわそわするのだ。


そして、振り返ると誰もいない。


幽霊はもちろん信じてはいない。

心当たりはストーカーくらいだろうか?でも、そこまであからさまではない。


私は家に帰ると、ガランとして冷え切った部屋に暖房を入れて、冷蔵庫を開けた。

今日はカツレツにしよう。たっぷりソースをかけて、キャベツを山盛りに添えたやつ。


ふと、視線を感じる。

振り返っても、誰もいない。


私は包丁を取り出すと、肉を大きめに切り始める。分厚い肉から、肉汁が溢れ出してくるのがたまらない。塩胡椒をしっかり振って、薄力粉をつけて叩いて、それから卵にくぐらせてパン粉をぎっしりという表現がぴったりなほどつける。


揚げている間は感じることはなかった。が、しばらくして食べ始めるとまた、そのチリチリとした感覚が蘇ってくる。

私はカーテンをしゃあっと閉めて、そのままテレビの音を大きくしてもぐもぐと食べ続けた。


カツレツは美味しかった。


三日後くらいに、そうだと思い立つ。

今日はあら汁にしよう。


そのままだと大きい頭を半分にかち割りながら、鼻歌を歌っているとまたも視線を感じる。チリチリとした視線。

私は鼻歌を歌い続ける。感じていない。私は視線なんて感じていない。


あら汁の他にミートボールも作ってみた。

肉からミンチまでを全部包丁でやってみた。大変だったけれど、非常に面白かった。

けれど、二度とやるまいと誓い、明日はすき焼きにしようと思いながらその日の料理は完食した。


ごちそうさま。美味しかった。


そして、冷蔵庫に残っているお肉が残り少なくなったある日のことだった。視線を感じた。今までにないほど強く。

チリチリとした感じではなくジリジリとしたそれは、非常に不愉快で、気持ち悪いほど。


私はカーテンを閉めてテレビの音を大きくすると、イヤホンをさして音楽機器を再生する。そのまま、学習した私は購入したミンサーで肉を挽き、それからつなぎを入れて、玉ねぎも入れる。


そして良くねってから焼く。


火加減を見ながら焼けるのを待った。


チャイムの音が響く。


チャイムが。


ドアを叩く音。


聞こえない。


ハンバーグを。


食べなければ。


私は震える手でプレートにハンバーグをよそい、そしてナイフとフォークを持って、笑顔で言った。

「いただきます」


その瞬間、人が部屋になだれ込んできて、私は目を丸くした。


……ああ、間に合わなかったか。


私は小首を傾げて、微笑みながら突き出された令状を無視して、ナイフとフォークをハンバーグに入れる。

あふれるような肉汁。フォークに引っかかる髪。ゼラチン質の何かがでろりと出た。ちょっと残っていたらしい軟骨の抵抗感。誰かが吐いたような音がしたが、私はそれを口へと運ぶ。

人の食事中に吐かないでいてほしい、せっかくのお料理なのだから。


「今日も美味しくできたなあ」


この一皿で、証拠は消えたのになあ。残念だ。

一口食べたところで、正気を取り戻した警察の人が、私を押さえつけた。


「宮野 ゆり、あなたを殺人事件の被疑者として拘束いたします」

間に合わなかったか。


私は笑いながら両手を差し出して、ふふっと笑う。まるで化け物でも見たような警察の男の人の表情が、たまらなく面白かった。

ハンバーグに眼球が入ってたっていいじゃない、ジョークがわからないと人達だなあ。


でも、まあいいかな。

こんなにいっぱい来てくれた。若い男の人は初めてだ。精一杯おもてなししよう。


「いただきます」


今日はお刺身、決定だ。

なぜこのネタが浮かんだかといえば、家に親もいないはずなのに背後から視線を感じたり、呼ばれてないのに呼ばれた気がしたりしたからですね。

これほんとのことなんですよねえ……。


ここまでお読みくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] あら汁を作るとき、頭をぶつぎりにきったと書かれていて、いったいなんの魚なんだろうときになっていたら、最後の最後に人の頭とわかりました・・・とっても面白かったです!
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