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恋愛の神様に相変わらず嫌われてるくせに、それでも愛はここにあると思ってます

 こんにちは、みち木遊です。

 最終話です。

 前回との空気感や作風の乖離が見られます。

 読まなくても前作のみで楽しむことができるので、別に真相とかどうでもいいという方は読まなくても大丈夫だと思います。

 拙く読みにくい文章ですが最後まで読んでくれると嬉しいです。

   プロローグ(瑞葉の前語り)



 私こと、葵瑞葉あおい みずははある日、忽然と行方不明になり、数年後にいなくなった年齢姿のまま発見された姉、葵蓮花あおい れんげと共に暮らしている。

 ついでに付き合っている。

 姉と妹のカップルというのはかなり違和感というか、これではない感じがあるようだが、私は姉を兄妹としてもそうだが、恋愛対象として、愛している。

 そんな私たちは今日も妹はお金を稼ぎに、姉は家事を励みと大忙しだ。

 それでも幸せで幸せに満ちていて、永遠にこんな毎日がずっと続けばいいと思っていた。

 だが、そうはいかないらしい。

 これは全てが終る始まりのお話。

 幸せに向かって走っていくための、スタートラインに立つための、そんなお話。




   葵蓮花の夢



 気付けば、あの神社にいた。

 目の前にはあの二人の女性。

 確か片方は神様だった気がする。

 でも、あの時の光景と何か違和感を覚え、ふと空を見上げると、空の色が真紅に染まっていた。

 不思議に感じたは感じたが、それに恐怖や戸惑いを覚えることは、何故だかなかった。

 私は再び二人の女性の方へ顔を向けると、二人の女性の姿がどうしてか少女の姿に見えた。

 まるで、曖昧なものから確定したものに変わるように、見え方が変わった。

 それでも、どっちがどっちなのかの区別がつくあたり、根本から変わっているものではなさそうだ。

 ふと、何がある訳でもなくあの時と同じように片方の少女が私の近寄って来た。

 しかし、今回はそれを追うように前は立ちどまったままだった少女もこちらにやって来た。

 神様といっていた少女は私のすぐ目の前まで近づいた。

 それこそ花と花がちょくちょく触れてしまうような、直ぐの位置に。

 神様といっていない方は私の十五歩ほど離れて後ろに立ち、なにか唱え始めた。

 まるで経典のような、そんな歌にも似つかない何かを歌うように唱えた。

 それに合わせるように、神様はニヤリと笑って、


 「ちょいと失礼」


 そう小さく断ると、私を押し倒した。

 小さな力だったが巨石に押されるような強さで体は崩れて、いつの間にかに後頭部に回された手でひんやりとした柔らかい感覚と共に地面に頭が落ちた感触を知って、ゆっくりと回された手は離される。

 視界には四つん這いになって私の上に覆いかぶさる神様。

 私はただ茫然としていた。

 感じている様々な感情や感触が頭の中を乱雑に思考させる。

 『どうなるんだろう』、乱雑な思考でまず出てきたのは簡単で空っぽなものだった。

 耳にはまだもう一人が唱える何かが耳に入り続けている。

 それだけで、相当シュールで訳が分からないのに、まだ物事は起こった。

 覆いかぶさっていた神様が私に体を預けた。

 向かい合って体がぴったりと合わさり、唯一、首元で交差された頭が耳元に息遣いと共に降りるくらい。

 両手は指を絡めるように握られ、私hが衝動的に軽い力で握り返してしまう。


 「…ふふふ、お前、今、本当に幸せそうじゃな」


 神様は耳元でそう囁いて、


 「でもな、お前は私と同じ道を辿る」


 嘲笑うようないやらしい声で、


 「お前は決して、できない」


 一間、開けて繰り返す。


 「幸せになれない」

 「幸せになれない」

 「幸せになれない」

 「幸せになれない」

 「幸せになれない」


 耳元で、ずっと、握る手を強めながら、ずっとずっと、


 「幸せになれない」


 そう、粘着質で、甘い、嫌悪感を掻き立てる、そんな声色で悪意のある笑顔を浮かべながら、


 「幸せになれない」


 そう、囁き続ける。

 引きはがせるような神様のから蛾はまるでどきようにもないほどに重くぴったりと体を固定していて唯一動かせる眼球を回し、神様では二何かを唱え続ける少女の方へ眼を向けると、

 木に囚われ涙を流し同じ何かを唱える私の姿がそこにあった。

 その光景に異常な恐怖を抱き、目の前が暗くなった。




   葵蓮花の朝



 がばっ。

 勢いよく、それこそ飛び上がるように私は目を覚ました。

 汗がびっしょりとパジャマについた不快感が挨拶のように第一の感触として私を苛んだ。

 またあの夢だ。

 あの光景、何だったんだろう。

 とにかく気持ち悪いそれは…、それは?

 何だっただろうか。

 それにあの光景が思い出せない。

 単純に神様に押し倒されて、『幸せになれない』って言われ続けて。

 それだけしか思い出せない。

 でも、ここ一週間程、同じ夢を見ている。

 今日で正確に言えば、六日目だっただろうか。

 それなりに連続して見てはいるのに、気持ち悪い、気味が悪い、怖い、そんな感想はすぐ出てくるのに、肝心な光景だけは思い出せないままだ。

 どちらにせよ、隣で寝てる瑞葉には心配は掛けさせたくはない。

 だから私は額にたまった汗を腕でぬぐい、寝汗を流すためのシャワーを浴びるべく、ゆっくりとベットから降り、通りすがりで今日に日付を確認した。

 十月二十五日。

 付き合い始めて三カ月丁度で、瑞葉は今日から四連休。

 楽しみにしていた避難だから、私も夢のことは忘れて、遊ばなきゃ。

 そんなことを思いつつ私は付き合い始めてから供用になった寝室を後にした。




   十月二十五日 天気:大雨(日記)



 お姉ちゃんと付き合い始めた三カ月記念の日だ。

 今日から有休消化で休日とぶつけ、四連休にすることができた。

 四連休一日目である今日は大雨が降ってしまったが、問題はない。

 昨日こんなこともあろうかとパーティーゲームを買ったのだ。

 そのゲームで一日をつぶすのは容易いことで、昼前に始めて、気付けば夕飯の時間になっていた。

 明日の天気予報は晴れという事らしいので明日こそは出かけたい。

 でも、お風呂でお姉ちゃんの話が気になって、二人で調べものをしたから、昼間で寝てしまうかもしれない。

 とりあえず、今日はお姉ちゃんと一緒に寝れるという事でいつもより若干早く寝ることにする。




  十月二十五日 天気:大雨(蓮花の一日)



   *



 私こと、葵蓮花は実の妹である瑞葉と付き合っている。

 もちろん恋人として。

 今日は私と瑞葉が結ばれてちょうど三カ月の日で、今、私は家にいます。

 その理由は簡単。

 今日は大雨。

 ふざけんな、ちくしょう。

 朝食を終え、若干ふてくされ気味で面白くもないテレビを見ていると、今日から四連休の瑞葉が、


 「お姉ちゃん、ゲームしない?」


 と、自分の部屋から戻って来たらしく片手に初めて見るパッケージのゲームソフトを持って提案してきた。

 私はナイスアイディアと思いつつも、


 「…それ、いつ買ったの?」


 と、財政的なツッコミを入れる。

 どれに瑞葉は目をそらしながら、


 「おほほ、おほほほほほ」


 と変な笑いをしながらゲームをセットしだした。

 それを見て何となく最近買ったというのを察した私は溜め息だけ月言及を取りやめることにした。

 どうやら、みづ派が買って気買ってきたテレビゲームのジャンルは家庭用パーティーゲームらしく見知ったキャラクターたちがゴールの無い双六をしつつ勝敗のカギとなる星を集め、その合計を競うというものらしい。

 なんか面白そうだ。 

 と言う訳で私と瑞葉は対戦プレイで遊ぶことにした。

 二つ座布団を用意し、瑞葉の隣に私は座る。

 画面にはすでにタイトル画面を終えステージ選択画面になっていた。


 「やりながら説明していくから、とりあえずやってみよう」


 画面を見ながら瑞葉は適当なことをいった。

 昔から適当さは変わってないなと日々感じていることを改めて実感し、それも瑞葉のいいところの一つなんだ、そう思った。

 無言で私と瑞葉はコントローラーを操作し、ステージ選択、キャラクター選択を終え、スタートした。


 「よし、このゲームではお姉ちゃんに勝つぞ」

 「このゲームで負けたら私が合計十三本ものゲームでイキれると言う訳か」

 「さっそくイキってるね!?」

 「負けたくないからね」


 そん言葉を交わして、先攻の私はサイコロを振るために、コントローラーのボタンを少しだけ強めに押し込んだ。


 

   **



 三時間過ぎた。

 結果はまた私の圧勝だった。

 横で瑞葉がまた白目で泣いている。

 見慣れた光景ではあるが、何度見ても可哀そうという言葉より面白いという言葉が優先してしまう。

 ある意味、瑞葉の才能の一つなのかもしれない。

 そもそも普通、白目で泣かないし、どうやったら無表情で白目作りながら泣けるのかわからない。

 解釈のしようによっては器用なのかもしれないが、いらない器用さではあった。

 無言で眺めているのもいいが、


 「どうする?十戦十敗して、まだやる…?」

 「…無理っす」


 恐る恐る連戦の有無を確かめると、瑞葉は即答で白旗を挙げた。

 私はソレに苦笑いし、ハード含めゲームを片付けた。

 時間を要することはなく、三、四分で仕舞い終わり、私は後ろから瑞葉に抱き着いた。

 実家にいたころ、というか私からすればちょっと前のコトなのだが、母親にこうやって抱き着くとなんだかんだで安心というか、なんというか、落ち着いた。

 今は母親がいないから、当時の母親と同じくらいの大きさになった妹に抱き着いて同じ効果を狙っている。

 瑞葉にとってはこの行為は結構、しあわsで鳴者らしく、顔真っ赤にしてそのうち鼻血とか垂らすんじゃないかと思うほどの鼻の下が伸びたとろっとろのニヤケ顔をしている。

 かく言う私のなんだかんだで安心しきってダラっとしてしまっているのだが。

 ふと目に入った時計は二本の針で五時五十分を指す。

 ついでに基本的に気にもしなくなった秒針は後半戦だと言わんばかりに百八十度を超え二百七十度を通り過ぎようとしていた。

 いやいやで体を離し、


 「瑞葉、今から夕飯作るけど、何がいい?」


 そう訊くと、ニヤケ顔そのまま、瑞葉はすぐに、


 「カレー!カレーがいい!!」

 「瑞葉は何歳なのかな?」


 子供セレクトをした。

 私は其れにすぐに突っ込むと、ゆっくりと立ち上がり、食卓の椅子の背もたれに掛けてあったエプロンを付け、


 「それじゃ、お姉ちゃんがパパっとおいしいの作るから、待っててね」




  七月二十五日 天気:晴れ(瑞葉の観察)



   *



 コト。

 

 「お待たせ、今日はポークカレーでーす。どや」


 声に出した通りにどや顔をするお姉ちゃんを見て私は笑顔をつくり、


 「ありがと」


 そんな当たり前の一言を言う。


 「偉いぞー、お礼言えて。とってもうれしい」


 そう言いながら私の頭をお姉ちゃんはこれでもかというほど撫でて、ふやけた笑いを見せる。

 昔から、嬉しかったり幸せだったりするとこんな表情をする。

 私はその表情が昔から好きだった。

 それは今も変わってない。

 私より小さな手で撫でられているはずなのに、とても暖かく、大きく感じた。

 だから、お返しに何も言わず抱き締めた。


 「わわわ、いきなり瑞葉どうしたの?」


 驚いたようにお姉ちゃんは慌てたような声を出したが、直ぐに何かを察したらしく


 「えへへ、ご飯だけでこんなにされるなんて、お姉ちゃん冥利に尽きるなぁ」


 そう言うと、力を抜き、体を私に少し委ねた。

 単純に私はこの瞬間に私自身の声が不必要だと感じ声を発さなかったが、必要とであれば鳥の鳴き声と聞き違うほどの発狂ボイスをお届けすることになっていただろう。

 気持ち悪いことこの上なしのムーブは一旦置いて置き、この私が抱き締めている可愛いが過ぎている生物の体温を感じていたかった。

 こうしていると、最近、付き合い始めてから…、だろうか。

 お姉ちゃんがいなくなるような気がしてならなかった。

 いや、よくよく考えれば、それもあり得ない話ではない。

 そもそもの話がお姉ちゃんが行方不明になりその当時の姿、中身そのままで彼女から言う未来で発見されている。

 簡単に言えばお姉ちゃんはタイムスリップで過去から未来に来たタイムトラベラーという事になる。

 そして、お姉ちゃんからいつぞやに聞いた『夢の中で思い出した神様と名乗る少女との記憶』。

 それが本当であれば、おばあちゃんが言っていた地元の神社に伝わる神隠しの伝説は本当になる。

 そして、それらの仮定が事実であれば、お姉ちゃんの存在も何か不確定で不安定なものなのではないのだろうか。

 ならば、明日、いや、もしかしたら次の瞬間にお姉ちゃんの姿が無くなって、存在までも消えてしまうかもしれない。

 だから、だから、それが怖くなってさらに抱き締めた。


 「ん…、苦しいよ、瑞葉」


 その声で、力がどんどん強くなって、抱きしめるからサバ折りに移行しかけていることに気付きなんでこんなに力を入れてんだ、そう思って手を離した。

 若干、お姉ちゃんは物寂しそうな顔をしていたが、ここは心を鬼にして、というよりはさらに抱き締めからのサバ折りをの進行を食い止めるべく見てないことにする。


 「ごめん、お姉ちゃん。…ご飯食べようよ」


 話を切り替えるように強引にそう言うと、お姉ちゃんはどこか寂しげに笑いながら、


 「うん、そうするね。さ、じゃあ、夕飯にしよう」


 私の正面の椅子に座って、両手を合わせた。



  **



 夕飯を食べ終え、最近一緒に入っている浴室で私はこんな話をした。

 体を洗いながら私は湯船でまったりとしているお姉ちゃんに何気なく、


 「ちょっと前に、お姉ちゃんの言ってた神社?の夢の話なんだけどさ」


 前に訊いた話を聞いてみた。

 すると、お姉ちゃんは小さく肩を跳ねさせて、


 「…あんまり聞かないで、ほしいかな」


 ほんの少し呼吸を繰り返した後に苦笑いをしながらそう返した。

 その苦笑いは何か隠す様で、でもバレたくはなくて、でも誰かに話したい事を我慢しているような、なにかが隠れていた。

 私は身体の泡をシャワーで流しながら、それを見て、思った。

 何か話せない事、それか、心配させたくないことがあるんじゃないか。

 お姉ちゃんはこんな関係になっても私に心配かけまいと頑張る癖がある。

 それはお姉ちゃんが私のお姉ちゃんだから。

 それはお姉ちゃんが私の最愛の人だからで。

 理由ははっきりしている。

 でも、それは嫌だ。

 暖かいシャワーを浴びているのに、指先が冷えて来た。

 一人で何かをかくして頑張っているお姉ちゃんの姿なんていくら好きでも見たくはない。

 私は身体を流し終えると湯船につかり、膝の上にお姉ちゃんを乗せた。

 何時ものように一緒にお風呂に入っている私達だが、こうするのお姉ちゃんがいつも嫌がっているからしなかった。

 でも、顔は見せなくてもいいから話だけ聞きたい、そん考えからわつぃからは後頭部と小さな背中しか見えないが話せるだけで良いように膝に乗せた。


 「お姉ちゃん、なにかあった?」


 静かに、優しく、そう意識しながら私は単刀直入に聞いてみた。

 今までされたこの内圧化に戸惑ったような表情を見せながらもお姉ちゃんは顔を伏せて、話し始めた。


 「…あのね、最近、気にはしないようにはしてたけど、神社の変な夢を見るようになったんだ」


 その声は震えている。

 その震えに手を添えるように、


 「神社の変な夢?」


 聞き返す様に私は復唱した。

 お姉ちゃんはそれに小さく頷くと話を続ける。


 「私が前に行った小さい神様に押し倒されて、ピッタリ体をくっつけられて、耳元で『幸せになれない』って言われ続ける夢なんだ」


 怖がるように教えてくれたその話に私は少し考えた。

 神様がお姉ちゃんを押し倒す意味。

 体を密着させる理由。

 幸せになれないの理由。

 それを繰り返す意味。

 それらを行う一連としての意味。

 私の考えれる範囲で考えて、考えて、疎い知識でも引っ張りだして。

 考えたが答えは出ず終いだった。

 だから私はこう提案する。


 「お風呂あがった後でその夢について調べてみない?神社についてとか、そういう行為の理由とか、そういうの調べればなんかわかるかもしれないし」


 その提案にお姉ちゃんは顔を見せないまま、ゆっくりと頷いた。

 そして私はお姉ちゃんを抱き締めた。


 「やわらか(大丈夫だよ)」

 「ねぇ、瑞葉、心の声が漏れてない?」


 感触が余りにも心地よかったせいで、『大丈夫だよ』といって安心させようと思ったのに、心に隠すつもりだった感想の方が口に出てしまったようだ。


 「漏れてないよ」


 すぐツッコミを入れたお姉ちゃんに私は最大のごまかし無反応を決め込んで返した。

 そして、取り敢えず弁解することにした。


 「お姉ちゃんって、本当にあったかくて、安心するよ。ずっとこうしてたいくらいだしね(お姉ちゃんのこと、本当に心配してるんだよ?そんな言葉言えないはずだから聞き間違いだって)」

 「う、うわぁぁあああ!?へんたいだぁ!!」


 お姉ちゃんはそんあ叫びを上げながら、ばちゃばちゃと私の腕を振り解こうと暴れ、抱きしめた腕はあっけなく離れてしまった。

 確かにさっきのは口に出してしまった自覚があるし心の中にヤバい自分が露見していた。

 本当に申し訳ないと思う。

 だが、最愛の人の感触が心地よ過ぎるのは当たり前だろうという自論は多分、合っているから謝らない。

 だが、ドン引きしてしまって湯船の端に身を縮めるように逃げてしまったので、


 「本当に申し訳ございません。何なりと罰してください」


 水面すれすれまで頭を下げて、謝った。



  ***



 お風呂から上がり、ドン引きの件は某高級感が凄まじいカップアイスのイチゴ味二つで丸く収まった。

 今、私とお姉ちゃんはパソコンを使って調べものしていた。

 もちろん、神社やお姉ちゃんの見た夢に関わっていそうなことすべてを調べている。

 調べ始めてから二時間。

 その神社には『結糸魂姫常御霊むすびいとたまひめのつねみたま』という神様とその妹である『よしな』と呼ばれる女性が祭られていること。

 その神様と女性が祭られるまでの伝承が存在することとその内容。

 伝承内で結糸魂姫常御霊として祭られる前の名前が『蓮華れんげ』だということ。

 その位だ。

 一応、それ以上の情報はないかと印刷できるものは印刷してお姉ちゃんに読んでもらって私はネット上にあるモノを片っ端から調べていた。

 それにしても、事の核心に今日一日で大きく近づいている気がする。

 それも何か明日起こると知っているかのような速さで。

 何か今までは待っていないのが普通だった歯車が急にハマり、高速で回り始めたようにも感じる。

 得体のしれない何かが目の前で起こっているのだけはわかった。

 だがそれに及ぶほどに、伝承の内容が気になった。

 それも相まって、歯車が、回転して運命を決めた歯車が。

 目の前にあるように感じた。




 結糸魂姫常御霊の伝承(伝承と神様の追憶の混合)




 私は、蓮華は巫女として生まれた。

 妹のよしなはまるで私の代用品のような扱いで育ったが、それに異常を覚えた私はよしなと大人の目を欺く様に隠れながら、兄妹の愛情を深めた。

 その愛情は何時しか恋情に変わり、いつからか、自然に私はよしなと契りを隠れて交わした。

 大好きなよしなとずっといれると思っていた。

 だが、それは違った。

 私を巫女として扱う神社には、こんな儀式があった。

 『上の者、下の者がいる巫女はその一人に裂いた命を巫女に返納させ完全なるたまと化させる』と言うものだ。

 簡単に言ってしまえば兄弟のいる巫女は兄弟を生贄として殺し、私に捧げられる。

 その儀式は兄弟そろって齢が十三を越える頃に行われる。

 私には妹、よしながいるからそれを行うものとして当てはまってしまう。

 だから私は十三になる前の最後の十二でいる晩にまだ十のよしなと共に逃げた。

 ずっといたいから。

 二人でずっと。

 だが、小童には大人を越すほどの力はなかった。

 三日逃げ回り四日で捕まり、私とよしなは離された。

 四日目の朝日を忘れることはないだろう。

 盗むという事が頭になかった私達はとにかく飢えて、家と家の隙間にあるごみの吹き溜まりで棄てられた腐った食い物を貪った。

 腹を壊してそこで蹲り、夜を越した四日目、朝日を隠すように大人の顔が私の目の前に広がり、二人とも体調を崩しているのを見た大人はよしなを聞いたことのない薬屋に、私は家に戻され、名医と名高い者に診せられた。

 よしなと再会したのはそこから十日後のことだった。

 抱き合って二人で喜んだのも玉響の物で、出会って、話をしようとする前に大人にはばかられ離された。

 大人から聞くに、よしなは我が神社の離れに特別に作られた牢に住まわされているという事らしい。

 私は真夜中に大人の目を再び盗んで抜け出し、よしなに会いに行くと、慰め者にされた、いや、されている途中なのだろう、乱れた姿で暗い犬小屋よりも粗末な場所で一人、地を這うよしながそこにいた。


 「よしな!…なんてことになっているんだ…」

 「…姉上、…あはは、だいじょうぶだよ。ちょっと男の人と仲良くしているだけだから、心配しないで」


 嘆き私に気付いたよしなはすぐ死ぬのかと思えるほどのこけた顔で笑って私を慰めた。

 それが耐えられず、私は決意した。

 そして、よしなにこう話した。


 「よしな、私はどうやらすごく力が強い子らしい。巫女の力を明日の朝までに上げよう。だから、明日から私の代わりに、よしな、お前が巫女としてやれ」


 そう言って、笑顔を残し、私は牢から去った。

 神社に戻り儀式を執り行う大広間で私は短刀を置き、白装束に着替え、遺書を書き、腹を裂いた。

 命が途切れた私は再び、魂のかたとなり立ち上がり、牢に向かった。

 疲れで眠るよしなに私は入り込んだ。

 よしなの魂の中に入り込んだ私が見たものは、よしなの心象風景と記憶のすべてだった。

 そしてよしながなぜあんな粗末な場所で虐げられたのかが分かった。

 それは簡単で単純なもので、私を、この場合は巫女を誘拐した罪で、殺すはずだったが巫女に返すべき魂を持っているため最大の大赦として罪の清算をするために詰め込まれた。

 それだけだった。

 曲解であり的をとらえかけたその解釈と判断に私は涙を流した。

 そして、涙に気付いたのかのようによしなの魂に出会った私はよしなに現世うつしよにもう私がいない事、よしなに私の力を引き継がせたこと、私はよしなのもう一つの顔として共存するという事を伝えた。

 そして、謝った。

 頭をたれ、心象世界の砂で覆われた地面に頭を付け土下座をしてまで謝った。

 それでも足りない。

 多分、一生分を通り越し、人生を二回ほど暮らさなければ到底辿り着けないほどに謝った。

 『一人にさせてすまない』

 『一緒にいれなくて済まない』

 それだけを何度も繰り返して。

 その懺悔の間に時は流れ、よしなは不浄としての巫女になった。

 だが、よしなは我が家の神を信仰せず私を信仰した。

 結糸魂姫常御霊という私に神としての名を与え、私は神になり、縁結び、恋愛の縁をつかさどった。

 それが私とよしなのすべて。

 伝承にもなった物の全てだ。




   十月二十五日 天気:大雨(瑞葉の日記の外)



 気付けば十二時を過ぎていた。

 お姉ちゃんはいつしか寝てしまったらしく、テーブルに突っ伏して、寝息を立てている。

 私は静かにお姉ちゃんを寝室のベットに寝かせると、さっさと日記を書いて、お姉ちゃんの隣に寝ころがった。

 今日はもう寝よう。

 いろいろわかったことが多過ぎて徹夜したって整理できないから寝て整理する。

 電気が消えた暗い部屋、お姉ちゃんを優しく抱き締めた。

 起こさないくらい優しく。

 そこには体温があって、柔らかさがあって、存在する安心があった。


 「それでもここに愛があると思いたいよ、お姉ちゃん…」


 私はそうつぶやいて静かに目を閉ざした。




   十月二十六日 天気:快晴(日記)



 ここでいろいろ整理することにする。

 朝目が覚めると幼女が私とお姉ちゃんの寝室に立っていた。

 名前は結糸魂姫常御霊、言いたければ、蓮華と呼んでもいいらしい。

 彼女はお姉ちゃんに住み着いた縁結びの神様であり、昨日調べた伝承の少女らしい。

 ついでに私はお姉ちゃんと同じく彼女のことを神様と呼ぶことにした。

 それで、神様は実体をもって、現世に降りたらしく、神様曰く、お姉ちゃんの見た夢で告げたことを現実にすべく、降りて来たらしい。

 紆余曲折在って、今から三人で外に行く。

 だからこの先は、多分、明日の日記に書くと思う。



   十月二十六日 天気:快晴(蓮花の一日:前半)



  *



 目を覚ました。

 背中に瑞葉の感触がいつものように会って温かさが伝わる。

 昨日は確か、…そうだ、調べものをしてたら眠くなって、途中で寝てたんだ。

 申し訳ないことをしたな…。

 私は瑞葉を起こさないように寝がえりをうって、瑞葉の方を向いて、そっと頬を撫でる。

 起こさない為にも声は出さないけど。

 『昨日は先に寝ちゃってごめんね。私の為のことなのに』

 静かに謝った。

 一頻り頬を撫でた後、欠伸を一つし、抱き着くみづ派をほどきながら、体を起こす。

 そう言えば、今回はあの夢を見なかったな。

 そう思い、瑞葉を跨いでベッドから降りた。

 その時だった。


 「よぉ、見せつけてくれるのぉ、小童」


 夢の中で聞いたような声が耳に入ってハッと気づく。

 夢の中で見た神様が目の前に立っていた。


 「ひゃぁああああ!?」


 驚いて叫んで、思わずすぐ後ろで寝ている瑞葉のお腹に白もちをついた。


 「ぐぇ」


 瑞葉、起床。

 さすがに急な圧力に耐えかねているのか、瑞葉はお腹を押さえて蹲ってしまった。


 「あわわわわわ、大丈夫?」


 私は瑞葉を気にして、神様そっちのけで声をかけ始めると、


 「お前、神様をもうちょっとは畏れろ!!」


 神様はそれなりの勢いで怒った。



  **



 一通り驚きやら何やらが収まり、疑問と納得いかない点が残るも、とりあえず、朝食を摂ることにした。

 一応神様分も多めに作っておいたのだが、果たして食べるのだろうかという、目の前の疑問が気になるばかりだ。

 この不法侵入なのかどうかもわからない状況で客人なのかなと思ったのだろう瑞葉はいつも食事の時は対面に座るのを今回は私の隣に座り、対面の椅子に神様が座るこの構図。

 神様ってもうどういうモノなのかわからなくなってくる。

 神様って何だよ。

 そう思うと、


 「儂は神様なんだから何者でもない」


 神様に反論されてしまった。

 相変わらず頭の中を読んでくる。


 「それくらい造作もない」


 そろそろ神様は思考と会話しないでほしい。

 という事で、声を出して話すことにする。


 「あのさ、取り敢えず呼び方決めない?」

 「誰のじゃ」

 「貴方の」

 「は?神じゃぞ、こっちとら」

 「やけに高圧的な神様だなぁ、融通利かせてくださいよ」

 「まずなぁ、儂には結糸魂姫常御霊っていう神様の名前があるし、難なら小娘と漢字一文字違いの華蓮という名がある。それに儂のこととか、伝承を調べてるのは知っておる」

 「なら神様でいいじゃん」

 「…あー、もうそれでいい…」


 突如呼び方を決める提案に反発した神様との論争は私の面倒臭くなった私の提案で終わった。

 提案で始まり提案で終わる。

 まるで武道のような順序だとこの状況にも拘わらず思った。

 ふに落ちないけど納得できてしまった呼び名に神様は長い髪をかき上げるように頭を掻いた。

 普通にイライラしてるんだろうな、神様。

 でも、イライラ度で言えば、私の方が大きいし、ずっと睨んでいる瑞葉の方が大きいだろう。

 だから、私は訊いてみた。


 「ねぇ、神様、私、こんな感じになるようなレベルの悪いことした?」


 それに神様は怪訝そうに私を見て、言う。


 「伝承自体は本当のことじゃから、儂の生い立ちは代替知ってること前提で話すが、お前が儂の神社で願い事をしたその瞬間から腹立たしく思っていた。それで、ぶしつけな態度、見透かしたときに見えた幸せな姉妹ふたりの情景、その瞬間で許せなくなった。だから天罰を与えた」


 身勝手じゃないか。

 私はそんな言葉が出かけたが、言えなかった。

 伝承が本当だった。

 たった、その事実がある事で何も言えなくなった。

 でも、瑞葉はあえてなのだろうか、口を開いた。


 「理由はわかったけど、残された人間の、それも最愛だと思っていた人間がいなくなった後の人間のことを考えたことがあるの?」


 口調は普通で、声色は静かで、内包されている感情は怒りの言葉。

 それに神様は憎しみや怒り、そんな敵意になり得る感情を織り交ぜ露わになった声色と表情で、


 「ならば、最愛の人間が畜生以下の扱いで地面を這いつくばることを余儀なくされているところを見たことがあるのか?己が死ぬことででしか助けられない事に直面したことがあるか?すべてが己に責任があるはずなのにそうではない者に押し付けられていたことがあるか?」


 それに瑞葉は言う。


 「なら、その痛みがわかる立場に立っといて、その痛みを他人に、それも腹いせのような形で与えたの?」


 神様は返す。


 「ならば、お前は妹の、よしなの痛みを味わったことがあるのか?」

 「分るよ、少なくとも神様よりは」


 即答だった。

 前に瑞葉はこんなことをいっていたのを私は思い出した。

 『私ね、お姉ちゃんがいなくなって凄く辛かったんだ。こうして生きてるから意味あったのかわからないお葬式にも出れなかったし、家からも長い間出れなかった。でも、お姉ちゃんだったらって思って、強くないのに強く生きようとして頑張ったんだ。でも、やっぱダメだった』

 それで、私は思った。

 多分、残された人として、先に消えてしまった人間への思いを神様にもわかってほしいのだと。

 だからこんなに怒ってるんだと。

 そして、私は神様に言った。


 「…神様、夢で言ってたこと何なの?」


 神様は表情を元に戻し、そっけなく言う。


 「お前に与えた天罰が意味がないと思ってな。私がこの現世うつしよに現れるまでの予告でもと思って、お前にかけている儂の力を夢の中で情景化させて見せていた」


 その言葉に私は戸惑った。

 最後に何時も見るあの情景は神様の力で何かされている私の情景の一部…、ってことは、どういう事になるのだろうか。

 その疑問は興味からではなく、恐怖からだった。


 「…お前が最後に面はいるようにしている物はお前の現状じゃ。お前は儂の力で現在いまに固定されている。儂の力から開放された瞬間にお前はこの時代から、現世にいたという事実から消える」


 恐らく疑問を読み取ったのだろう神様の口からさらっと語られた事実に私は戸惑い言葉を失った。

 そして、神様は続ける。


 「質問の本題の意味じゃが、その通りじゃ。現世ここに来たのは天罰の意味がなくなってしまったお前らから幸福を奪い消滅させるためじゃ」


 その言葉の瞬間、座っていた瑞葉が立ち上がった。

 小さい頃、はしゃぐか起こるかでしか見たことが無かったような勢いで、立ち上がった瑞葉は私の後ろを抜けて、神様の前に歩いて、そして――――――――、


 パシッ


 頬をぶった。

 神様はぶたれた方へ向いた顔をゆっくりともとに戻し、瑞葉の私からじゃ見えない顔を見て、眼を見開き、目尻に涙を浮かべた。

 瑞葉は何も言わない。

 叩いた手をタイからなく降ろし、その場にへなへなと座り込んだ。

 私はソレに驚き、駆け寄り、支えるように瑞葉を抱えると、瑞葉は言った。


 「ごめんね、こんなの見たくなかったよね」


 それに私は首を振った。

 顔は見れなかったが、瑞葉は申し訳ない顔をしていたのは確かだった。

 それでも、瑞葉は私に見せた表情は笑顔だった。

 

 「ゴメン、大丈夫。ちゃんとすぐ立つから」


 そう言って、私の手から離れ、立ち上がった。

 また表情が見えなくなった瑞葉の表情を見た神様は涙を零し、訊くように言う。


 「なんで、あの時のよしなと同じ表情をしているんじゃ。なんで、お前みたいな奴がそんあ表情ができるんじゃ」


 それに瑞葉は答えずこんな提案をした。


 「ねぇ、神様、納得できる理由を見せたり聞かせることができればお姉ちゃんのこと諦めてくれる?」


 それに神様は何も反応しない。

 だが瑞葉はそんな神様に詰めるように訊いた。


 「いつ、お姉ちゃんに天罰とやらを与えるの?」


 神様はその目に様々な感情を混ぜながらいう。


 「明日と今日の間のときじゃ…」


 要は今日の二十四時で、明日の零時って事だという事をすぐさま理解したのをはみなまで言うまいが、瑞葉はソレに小さく頷いて、


 「勝手にやってゴメンね。がんばろ、お姉ちゃん」


 笑顔を見せて私にそう言った。



  ***



 一波乱どころではなく修羅場を終えた朝食が済み、洗い物やら掃除やらの家事を終えた私はソファに座手小さく息をついた。

 私のソファの端には神様が膝を抱え拗ねるというか、閉じ籠るというか、周りとの関わりをシャットアウトして、小さくなっていた。


 「…ねぇ、神様、何かしない?」


 どうもそういうのが隣にいるのは好きではない私は漠然とした提案をするが、


 「…いい…。そもそも漠然としすぎて何が何だかわからないし…」


 やっぱり案の定な理由を添えて、弾かれた。

 瑞葉は瑞葉で申し訳そうに神様を見るばかりで、私の行き場がない。

 どうしたものか。

 難しい。

 私は仕方なく寝室へと向かい、そこにある漫画でも読むことにした。



   十月二十六日 天気:快晴(瑞葉の補完)



  *



 とうとうお姉ちゃんが行き場をなくして部屋から出て行ったのを確認して、私は神様に声をかけた。

 ずっと申し訳なさそうに見ていたのは直接的な意味合いもあったが、お姉ちゃんを居づらくさせるのが目的でもあった。

 心の中でお姉ちゃんにごめんね、と謝り、


 「ねぇ、神様、ちょっとお話しない?今回は朝と違う風にお互いの考えをちゃんと聞きあってさ。私もそういう話し合い位は出来るから」


 お姉ちゃんとは少し違う提案をした。

 それに神様は私の顔を見ながら、


 「…内容による」


 小さな声で言った。

 別に怯えているわけでもなく、単純に見せる顔がなだけなのはわかっている。

 だって、神様は私に似ているから。

 そして、私は神様の妹、よしなと少し立場が似ている。

 だから、


 「簡単な姉妹自慢とか、私のお姉ちゃんに与える天罰についてとか。別にケンカしようなんてもんじゃないからさ」


 大人げなかったな、私は朝の自分に対してそう思った。

 だから、今度は受け止めた側として、大人として、道を歩いたものとして私は神様の隣に移動して座る。


 「…なんじゃ」

 「お話するんだから、近いほうがいいかなって」


 神様の雑な質問に何気なく返すと、私はこんなことを訊いた。


 「神様の妹、よしなさんって、どんな人なの?」


 神様は少し考えて、ほんの少し表情を緩めて、誇らしげに語り始めた。


 「よしなはな、物静かで、でも優しくて、儂よりもしっかりしてて、頑張り屋で、頭が良くて、それでな、何よりもわしのことを愛していてくれた」


 話しているうちに表情がほころび、ほほ笑んでいる神様に私はそっと笑って言う。


 「そうなんだ」


 短く肯定的な一言。

 でもそれでよかった。

 大好きな人を語れるんだ、きっとわかってくれると思う。

 だが、神様の表情は一瞬で曇った。


 「でもな…、よしなに力を与え、儂が自ら命を絶ったあの日、よしなは力に縛られ、人格は霧散した。よしなの肉体を持った儂の力になり果てた。よしなの人格や魂はもう存在しない。神になって、よしなと出会った時にはもう儂の力の入れ物となっておった。多分、死んで、存在が消え、魂もろともおてんとさまへ召されたんだろうな。お前の姉の夢に出てきた儂の隣にいた女の事は知っておるのから言うが、あれはよしなの姿をした儂の力じゃ。儂が唱えるべき樹陰をよしなの声で唱えさせていただけじゃ。わしはただお前の姉に予告していただけ。だから、事実お前の姉が見た儂ともう一人の女の姿は実質一人、儂だけなんじゃ」


 語ったことに私はしづかに受け止め、こんな受け答えをした。


 「よしなさんのことはとっても残念だと思う。多分、神様は自分の意志で死んだことも、よしなさんがいなくなったことも、悔やんでるんでしょ?でもさ、私、神様に言いたいことがあるんだ」


 間を開けて、私は言う。


 「どんなに辛い目に遭っていたとしても、生きている内は大好きな人はいなくならないでほしい。それが、お姉ちゃんならなおさら、年が離れていて近くて、もし頼りなくても、頼れて、笑い合える存在がいなくなるなんて、嫌なんだよ」


 自然に私は泣いていた。

 お姉ちゃんがいなくなった日々を思い出して。

 お姉ちゃんの入っていない棺桶に手を振って、お姉ちゃんの入っていない墓石に手を合わせた日々を思い出して。

 誰も使わない机にお姉ちゃんの面影を見た日々を思い出して。

 思い出して。

 思い出して。

 泣いていた。


 「ごめんね、なんか感情的に言って」


 笑ってごまかして、さりげなく涙をぬぐって、言った。

 私に神様は言う。


 「…儂もそうだった。神としてよしなに再会したあの日の空虚さを思い出した。それにお前の話を聞いてふと、思ったんじゃ。よしなの人格は儂の力に飲まれるほど弱かったのかと。それで少し考えて、なんとなく分かったんじゃ。儂がいなくなったことで、よしなが弱ったところに儂の力が暴れたのではないかと。もしそれが本当であれば、申し訳ないことをした。儂は取っり返しの無い事を…っ」


 神様はうつむいて涙を流した。

 涙を流して、続けて、


 「じゃが!!よしなも死ぬ運命にあって、何もしない姉もおらんだろう!!よしなも死にたくないと思っているはずなのに、なぜ儂ばかりが責められなければならんのだ!!それに儂はなんで縁結びの神になったのだと思う!!人々が儂の自害を神に見初められるためにやったことだと事実をでっちあげ、心が消えたよしなをその巫女に仕立て上げた!物の様に四品を扱っている事実をひた隠しにしてじゃ!!そのくせして、神になった途端、儂には姉妹がいないと謳い、儂を男女の円を結ぶ神として崇め始めた!儂の最愛の人は神楽で一日以上舞わせっぱなしにし、神事にも上げ、肉体はみこになって二年で滅びた!元通りの生活をしてれば十年は生きれたはずなのに!!そして、それを知らずに仲直りだか知らんがお前の姉が願いにやって来た!なんだこの女と視てみれば、しあわせそうなお前らの記憶が映った!!その瞬間、憎たらしくて、憎くって、憎たらしく思って!!」


 叫ぶように、吐き出すように、泣き叫ぶように、激昂するように、言った。

 その目には絶え間なく涙が流れていた。

 私はそれに何も言うとはできなかった――――、

 訳でもない。

 短く、端的に、それは言えた。


 「お姉ちゃんに天罰を与えた理由って八つ当たりってワケ?」


 文献で神様の言っていることはすべて知っている。

 さすがにお姉ちゃんが言っていた夢に出てきたもう一人の少女が髪様の妹の形を模した神様の力だったという件と事実は知らなかったが。

 だからこそ、私は言えた。


 「同じ思いを与えて何になるの?」


 単純で、だからこそ、真っすぐな質問。

 それに神様は言う。


 「幸せなこの世にないからだ!!幸せとは不幸が儂たちを食べる前の下ごしらえと変わりない!!」


 多分、神様の言っていることは本当だろう。

 昨日、私の感じた不安と同じだろう。

 今そこにある幸福ものが明日、いや、瞬きした瞬間に無くなるかもしれない。

 そんな恐ろしいことを神様は知って、先に与えようよしていた。

 多分いづれ死ぬなら今死んでも変わりないという論法と変わらない。

 自殺志願者ならぬ殺害志願者。

 皮肉な話だった。


 「ねぇ、神様、私神様の言ってることはわかるよ。でもさ、神様がそんなことをしちゃいけないよ」


 気付けば私は神様の頭を撫でていた。

 きっと、昔の私を見ていたからだ。

 昔の私によく似ていて、昔の私に見える。

 本当に過去の私を映した鏡のようで、だから、否定して、肯定して、否定したかった。

 ただ、別の答えが欲しい。

 それだけ。

 私はそれを知っていて、言う。


 「お姉ちゃんがいなくなって、私も神様みたいになってた時があってね」


 笑いながら、


 「幸せそうな人、みんな嫌だった。呪ってしまおうか、呪ってやろうか、消し去ってやろうか、そんなことばっかり考えて、全部嫌いになって、力があればすべてを不幸にしたやりたいって思ってた」


 昔の自分を顧みながら、


 「でも、それじゃダメなんだって思ったんだ」


 憎しみだけの答えとは別の答えを提示する。


 「痛みを知ってるから、痛みに寄り添えるし、痛みを知っているから、痛みをなくしたほうが、誰も悲しまない。痛みのない世界をつくるためには痛みを知ってる人間が必要なんだって」



 神様は行ったことに何を感じたのだろう。

 何を感じても良い。

 私の気持ちが伝わればそれでいい。

 だってそれが目的だから。

 そして、神様はこう聞いた。


 「…男女の縁を繋げて来た。でも、儂は憎むものではないもを仕方なく結んでいただけじゃ。儂は…」


 神様は私の元に縋るように近づき、言った。


 「儂はどうすればいい…?」


 その答えは、


 「どうすればいいかって言われてもなぁ…」


 私は、


 「神様なんだし、さ」


 人それぞれ、


 「私がこういうのもあれだけど、自分で見つけるといいよ」


 だから、


 「だから、私たちが手伝いをするよ」


 自分の力で見つけ出すものだから。

 自分の力でやらねきゃね。

 理由を離せばきっとお姉ちゃんはやってくれる。

 お姉ちゃんも知っているはずだから。

 私の過去を全部お姉ちゃんにもう、話しているから知らなくても見ている。

 だから、力だけは貸してくれる。

 私だって、力なら貸せるから、自分で見つけるといいかもしれない。

 神様と言っても、やっぱ、人間は人間なんだから。




   十月二十六日 天気:快晴(蓮花の一日:後半)



  *



 気付けば、漫画を片手に寝ていた。

 ずっと変な悪夢ばっかりで、寝た気がしない日々が続いていたためか、転寝をしていたらしい。

 壁に寄りかかって寝ていたせか、背中と腰が少し痛い。


 「ん~~~」


 体を大きく逸らして、背伸びをして、私はリビングへ向かった。



  **



 リビングには胡坐で座る瑞葉とその隙間のような空間のような、昨日、私が座った場所ていいちに神様が座っていて、二人で某キャラクターのレースゲームを楽しむ姿があった。


 「………、…………」


 何があった!

 私が寝てた間に何があった!?

 だが…、まぁ、二人嗤って楽しく笑ってやってるのなら、それはそれでいいか。

 いや、だが、神様には説明してほしいことがそれなりにある。

 納得いくものだとしても、そうではないとしてもせちゅめいなしでは納得がいかない。

 なんせ睡眠を奪って嫌がらせしているのだから、それくらいはあたりまえの範疇だろう。

 だが、それよりも、まずは…。


 「ねぇ、瑞葉」


 浮気現場に立ち会ってしまった本妻さながら、


 「仲良さそうだね」


 冷ややかに呼びかけた。

 ビクリと肩を跳ねさせた瑞葉はゆっくりと真後ろに立つ私の方へ振り向き、


 「なんてこった、こりゃ修羅場…?」


 かわいく言ったつもりだろうが魚出るする言葉選びをした。

 だから韻を踏んで、


 「テラコッタ、こりゃ鈍器…?」


 殺意的な何かを伝えると、

 神様が私たちのやり取りに気付き、興味を示したらしく、


 「パンナコッタ、たるものはなんじゃ?」


 陰の踏み合いが発生した。

 だが、これは私が小言をいう前の前座であって、

 続きはない。


 「いくら仲良くしてると言えど、それはないでしょ?」


 嫉妬とというのは小さくてもあるにはある。

 

 「それにゲームするんだったら、起こして私にも声をかけてよ…」


 それなりに愚痴も言うが、それでも大切なことが一つ。


 「…次はないからね?」


 許すこと。

 なんか、神さまの朝に訊いた話から私がなんでこうなったのかは察している。

 多分、幸せな願い事をしたからなんだろう。

 だから、あえて意識した。

 いつもやってることだけど、小言はいつもよりは控えめに。

 

 「はぁ」


 ため息一つくらいは、免罪のしたおつりでいいだろう。

 後は切り替えて、こうするだけ。


 「まぁ、そのレースが終ったら、わたしも入れてね」

 「へい、姉御!」

 「誰が姉御じゃ」


 瑞葉と漫才を軽くして、私はそっと神様の隣に座る。


 「神様、瑞葉とどんな話したのか分からないけど、こうしているのは楽しいと思わない?」


 私はそう訊いて、神様は答える。


 「確かにこの時代の娯楽は面白いが、こうして相手がいるうえで楽しむのもまたさらに楽しいな」


 何気なく立ったが、多分、その時間に何か思っているのは目に見えた。


 「あのさ、神様」


 リザルトの画面になり、一息つく様にコントローラーを持っていた手を少し降ろしたとき、私は言った。


 「私は神様にこうされちゃって、神さまを怒りたい気持ちもあるけどさ、感謝もしてるんだ。確かに瑞葉に寂しい思いをさせたことは許せない。でも、こうして、変わらず私を思ってくれていた瑞葉がもっと好きになれたし、今じゃ、恋人でさ、とっても幸せなんだ。だから、そういう意味では私は神様に感謝してる」


 それに神様は私をいつしかポカンとした顔で見ていて、その後、込み上げるように涙をその表情で流し、


 「ごめんなさい、ありがとう」


 たったそれだけだったが、十分だった。

 十分というか十二分な答えで、私は返した。


 「こちらこそ」



  ***



 ゲームを楽しんで、時計を見れば夕飯時。

 天気なのに昨日と同じく、ゲームで過ごしてしまった。

 私はその事実に若干の難しさを覚えながら、ゲームの話から抜け、夕飯をつくり始めた。

 なんだかんだで、朝食も食べてたところを見ると、意外と神様は色に抵抗がないと見た。

 おいしければ何でも食べる人種なのはわかったところで、私は得意料理になりつつある、瑞葉の好物を作ることにした。

 別に隠すこともないが今晩はハンバーグとオムライスを作ることにする。

 なんだかんだで研究を重ねて辿り着いた味を秘めている二品を神様にぶつけてみたいと思う。


 「腕が鳴るなぁ」


 思わず、そういってしまうほどに、私は神様に恩返しをしたかった。




   十月二十六日 天気:快晴(瑞葉の観察)



  *



 「夕飯出来たからゲームやめなさい」


 お姉ちゃんの声が聞こえ、私は神様に、


 「ご飯の時間だから、もうやめようか」


 そう呼びかけた。


 「むぅ、仕方あるまいな」


 すると神様は年相応に頬を膨らませ、渋々ゲームをやめた。

 ゲームをさっさと片付け、私は神様を朝と同じ場所に座れ世私もお姉ちゃんも朝と同じ場所に座った。

 今日の夕飯はどうやら私の鉱物のpハンバーグとオムライスで固めて来たらしい。

 子供の時から好物として変わらないハンバーグと、お姉ちゃんと結ばれた日から特に好きになったオムライス。

 オムライスが好物になったのは、神様がお姉ちゃんにいろいろやらかしてくれたからで、なんか不思議な話だな。

 意外とこういう異常もアリだなって、私はお姉ちゃんがいなくなったあの日を遡って思った。

 お姉ちゃんが神様に言った、『神さまを怒りたい気持ちもあるけどさ、感謝もしてるんだ』という言葉の意味を改めて私は感じた。



  **



 三人仲良く食卓を囲み、『いただきます』と口にし、夕飯を食べ始めて、すぐ、


 「ねえ、神様、なんで私こうなったの?」


 お姉ちゃんがぶっきらぼうな言い方ではあったが優しい言い方で神さまに訊いた。

 神様は少し申し訳そうな顔をして、語り出した。


 「お前らが知っている伝承から遡るが――――――」


 そして、私が聞いた話を話した。


 「それがすべてだ」


 語り終えた神様にお姉ちゃんは簡単に返した。


 「でも今はそういう気持ちないんでしょ?ならいいよ、気にしないし」


 本当に懐が広いというか、抱え込むというか、なんというか。

 お姉ちゃんは強かった。

 そして、お姉ちゃんは訊いた。


 「でもさ、肝心の神様の力で私はここに存在してるって訳だけど、どうすれば私そういうのから解放されるの?」


 それに神様は答える。


 「内容は細かくは言えないが、星が見える場所で空を見るに開けた場所さえあれば、儂の力から解放というか、この世界に定着させることができる」


 私は怪訝な顔を見せながら、


 「内容、何で言えないの?」

 「神聖な行為の内容じゃからな、行為自体は見せることができるが、神の掟で言葉に記すことはできないのじゃ」


 質問したらすぐに即答された。

 私は、多分お姉ちゃんも、神様に起きてなんかあるのか、と思いながら納得することにした。

 だが、ちょっと待てよ。


 「それって十二時丁度までにというか儀式の長さ的にいいところ一時間前にそう言うところについてなきゃいけないし、条件に合うところ探さなきゃいけないし、結構つらいんじゃ…」


 私とお姉ちゃんでぞっとしながら顔を見合わせ、


 「探すか」

 「そうだね」


 私の呼びかけに即応したお姉ちゃんは大急ぎで、夕飯に食らい付いた。

 神様はそれを見て、むしゃむしゃと夕飯をマイペースに貪っていた。

 現時刻は午後七時三十四分。



  ***



 都内ではないと言えど、都会は都会。

 空が見える所を探しまくっている最中だった。

 神様は難しい顔をしてお姉ちゃんと地図を知らべ、私はパソコン。

 一人、増えただけの昨日と変わらない作業。

 それでも、割と早く進むことにつながるらしく、食後から一時間と数分。

 車で一時間ほどの場所にある丘があり、そこは人気が少ない上に、広い場所で、星が見えて、空に対して阻害物がない。

 おそらく完璧な場所だろう。

 それを神様に紹介すると、


 「うん、そこがいい」


 そう言って、神様は頷いた。

 隠して、儀式?の会場が決まったわけだが、


 「ねぇ、神様、その行為ってどのくらい時間かかるの?」


 割と重要なことをお姉ちゃんが効くと神様は、


 「一時間ほどじゃ」


 何気なく想定内ではあったが割としんどいことを答えてくれた。


 「じゃ、私、夕飯のお皿洗っちゃうよ」


 と、それなりに急がなきゃ行けないタイミングでそんなことをいい出し、台所へと向かった。

 それを見て私も、ふぅと、と音も出ないため息を付いて日記を書くために事実へ向かった。

 それを見た神様はキョトンとしていた。




  十月二十六日 天気:快晴(瑞葉の日記の外側)



  *



 お姉ちゃんの荒い事と私の日記は十数分でほぼ同着で終わりその間、神様はぼーっとしていたらしい。

 そんなシュールが極まり滑稽な話は置いといて現時刻午後十時ちょうど。

 今、私たちは国道を走っていた。

 やはり都会、この時間は若干は混む。

 若干の渋滞を切り抜け、車は目的地へと走り続ける。

 神様は世界の発展を興味深そうに窓に顔を張り付けて眺め、それをお姉ちゃんが眺めていた。

 私は当然だが、前方の車両のムーブに毎度イラついていた。

 そういうもので、それが本来の年相応の反応なんだって、私は思う。


  **



 目的地について、神様はとにかく人気の少ない広い場所へと駆けて行った。

 そして神様の辿り着いた場所はその通りの場所で、そこで円を描く様に計算づくで揃えられた歩幅で一周し、二周目をまあわり始めると同時にその間に拾った小石を完璧に素人目からでもわかるほどの正確さで九十度づつの間隔で円周に置き、四方向配置した。


 「小娘、ここに立て」


 そう言って、円の中心にお姉ちゃんを立たせると、三周目、四周目とまた円上を歩き、五周目に差し掛かった瞬間。


 『――――――――――――――――――――――――――』


 声にならない声で、しかしそれは音となり耳に伝わっていて、とても奇妙なものが聞いたことのない呪文の様な経典のような、そんな何かになって唱えられるように詠われた。


 そして三十分ほど歩いたとき、神さまは園の中に入り、お姉ちゃんの眼の前に立った瞬間、信じられないことが起こった。

 円が突然まばゆい光を放ち、輝いた。

 まるで下からも上からも影ができるだけに様に照らされた水の中にいるような、そんな透明な優しい光。


 「…本当に起こってるんだ」


 人間ありえないことに出会うとそんな簡素な言葉しか出ない。

 いや、お姉ちゃんという異常を体験し日常として取り入れている分、尚更だった。

 そんな光りに包まれて、神様とお姉ちゃんを私は見ていた。

 神様は相変わらず、なにか唱えていて、お姉ちゃんはいつしか目を瞑っていた。

 そして光は一層強くなり、その光景は幻想的だった。

 気付けば、光の中に光が浮かんでいるのが見えた。

 それはすぐに夜空に映る星だという事が分かった。

 まるで水の中の気泡のようなその光に息をのみ、ふと時計を見ると、午後十一時五十九分五十八秒。

 そして私は時計と幻想的な光景を眺め見ながら、カウント弾を心の中で始めた。

 五。

 光は強さを増し始めた。

 四。

 スゥっと神様はお姉ちゃんの元に歩き出した。

 三。

 神さまがお姉ちゃんを抱き締めた。

 それと同時に私の口から、


 「お!?」


 と気持ち悪い驚きの声が漏れた。


 二。

 神様がお姉ちゃんの耳元で何かを呟き光りが増し、

 一。

 見えなくなった光りが最後の光と言わんばかりに輝き。

 零。

 そこに何もなかったようにお姉ちゃんが一人立っていた。


 

 

   十月二十七日 天気:?(二人の後語り)



 蓮花は最後に神様から、こんなことを言われた。


 「本当に長かった。それにやっと会えたしな。まぁ、お前のことはやっぱり嫌いなんじゃなって。ありがとう」


 最終的に嫌われたが、感謝されて、光と共に神様の姿は消えた。

 その瞬間、様々な情報が脳に流れて理解した。

 最後の言葉のちょっと不可解な点を。

 そして、光が止んで、蓮花は瑞葉の方を見てにこりと笑った。

 瑞葉はすぐに蓮花の元に抱き着いて、共に抱き合った。

 そして、


 「お姉ちゃん大好きだよ」

 「私もだよ。神様の姉妹よりも愛が深いんだ私たちは」


 まるで当てつけになるかのような言い方で、この一件は週末を迎えた。




   いつかの明日の二人より



 神様の一件から数年たった。

 いろんなこともあって瑞葉と何回もケンカして仲直りして、今日も一緒に寝ている。

 最後に縁結びの神様に嫌われたけど、それでも愛はここにあるって、私は言い続ける。

 だって、





 


 恋愛の神様に相変わらず嫌われてるくせに、それでも愛はここにあると思ってます。

 こんにちは、みち木遊です。

 前作から二年の時を経て、最終話は書きました。

 感想はいかがだったでしょうか。

 文章下手で全く分かんねぇよという方。

 ごめんなさい、まだ修行中なんです。

 コメントや感想などを残していただけると修正点の目安になって成長の糧としやすいのでそうしていただけると嬉しいです。

 今回は前回のほのぼのとした流れで、『好きなものに対して』をメインに書かせていただいたのですが、今回は作風をガラッと変え、『愛の在り方』をテーマに書きました。

 何かが伝わっていればうれしいです。

 では、この最終話をこんなスパンを開けて何故投稿したのかという経緯からお話いたします。

 もともと、一話目のお話で完結させるつもりだったのですが、下書きを読んだ友人がもし反響あれば続きを書いてほしいといううほどに食いつきがよく、ならそうしようかなと連載で登校したのが事の発端でした。

 事実、半年過ぎると半分くらい忘れていましたが、ある時、感想が一件入っているのを見つけました。 

 その内容を見て、なら次話書いてもいいんじゃないかなぁと思い、今年の冬に入るまで様子見をしたところ若干ポイントが伸び、ならやるしかないと思い書いたのが今回、最終話の生誕秘話です。

 では次になんでこんなになったのかと言いますと。

 前日譚と後日譚のネタがあったのですが、いっそのこと全部一つにすればよいのではと思いそうしたところ前回の二倍の分量かつ、内容が重くなってしまいました。

 実際、空気管はどちらかで帰る予定ではありましたが、『愛の在り方』というテーマの性質上、少し重い方が乗り込みやすさはあるのかなと思いそうしたという次第です。

 このネット上で投稿している連載作品初の完走作品となった「恋愛の神様に嫌われてるくせにアクシデントの神様に好かれてしまっているんですが、それは。」ですが、この作品の大目標である男性を一切出さない(モブ以外)を果たすことができたみち木にとっては最も挑戦的な作品でもありました。

 この作品を読んでくださった方に多大な感謝を。

 この作品に対して感想をいだいてくださった方に感謝を。

 全てに感謝を捧げ、あとがきを〆たいと思います。

 ここまで、読んでいただき、ありがとうございます。

 ではまた、どこかでお会いしましょう。

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