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恋愛の神様に嫌われてるくせにアクシデントの神様に好かれてしまっているんですが、それは

こんにちは、みち木遊です。

とにかく、書きたい物を書いた感じです。

最初は短編寄せ集めにしようかなと考えましたが、二回練り直しを行い、こういう感じになりました。

最後まで読んでくれると、ありがたいです。

  プロロ-グ(瑞葉の前語り)



 私には姉がいる。

 その姉がある日、山に遊びに行くといってから、忽然と姿を絶った。

 そして、数年後、姉がいなくなった時と変わらない姿で、発見された。

 私は社会人で、姉は中学生ぐらい。

 姉曰く、気付いたら山にいた。

 それだけだった。

 私は年金暮らしの母が姉の面倒を見れるかどうか不安だったので、姉を引き取ることにした。

 百歳近くなのにまだ元気なおばあちゃんに姉の事を話すと、『お前の姉は神隠しにあって、帰ってこれないはずのものを、奇跡的に帰って来ることができた』、そういった。

 姉も姉で、行方不明に数年間の記憶はなく、気付けば山にいたとしか、記憶にないらしい。

 私は姉の分の食費を稼ぎにいつもより仕事の日数を増やし、姉には私がいない間の家事をさせた。

 姉は容量が良く、彼女がいない間に発展した家電機器をすぐマスターし、今となっては私より、家電の使い方が上手いかもしれない。

 なんせ炊飯器で煮込みハンバーグを作ってたぐらいなのだ。

 そんな姉が私の家に生活し始めて、少したってある時、私はふと、何か思い立ったかのように、この毎日に日記をつけ始めた。

 そんな日記に記されたとある一日を。

 私はここで語ろう。

 私こと、葵瑞葉あおい みずはが記した日記を、姉である葵蓮花あおい れんげが読み解く様に。

 私ではなく、姉の目線から、私は語ろう。




  七月二十五日 天気:晴れ(日記)



 とりあえず私、瑞葉は姉の蓮花との生活を今日からこの日記に記したいと思う。

 今日はいつも通り、私が仕事に言っている間、お姉ちゃんは留守番をしていた。

 その間、お姉ちゃんはかなり暇だたらしく、家で私が密かに買い、進めていたゲームを見つけ勝手にプレイしていたらしい。

 始めたやったゲームの癖に何故、私がクリア出来ず、詰んでいたステージをクリアしてその先のステージまで進めてしまえるのか。

 甚だ、疑問だった。

 それにしても、姉はやはり家事に長けていて、私が帰って来た時には、割と豪華な夕飯を用意してくれていた。

 一応、もうちょっとは手を抜いてもいいんだ、と伝えたがお姉ちゃんは、「瑞葉にいいもの食べて、健康でいてもらわないといけないから」、と笑って言っていた。

 もしかすると、私より、お姉ちゃんはしっかり者なのかもしれない。

 食後、私と姉で、例のゲームで対戦したのだが、本当にプレイ時間百時間の私より、プレイ時間二時間のお姉ちゃんのほうが操作が上手く、立場がかなり危うくなってしまった。

 今週の休日は姉に操作のコツでも教えてもらおうか。




  七月二十五日 天気:晴れ(蓮花の一日)



    *



 私こと、葵蓮花は数日前から、妹の瑞葉の元で生活を始めた。

 別にそれはどうでもいい。

 だが、私は一つ悩みを抱えている。

 それは私がいなかった間、瑞葉が寂しい思いをしていたんじゃないだろうか、そんなことに私は頭を抱えていた。

 私も、何年もいなかったという、自覚も、記憶もない。

 ただなんの理由か覚えてはいないが、当時私が住んでいた実家の近くの山に用があり、そこで道に迷い、夜を明かそうと眠りについたら、数年がたっていたのだ。

 目を覚ますといつも通りの朝で、昨日まで来ていた服で、姿も顔も全く変わっていないのに、知っているはずの街が知らぬ顔をしているし、知らない内に数年の時が立っていて、私のお墓があって。

 全く、理解も、納得もいかない現実がそこにはあった。

 だけど、私は仕方がないと片付けるしかない。

 現実がそうなのだから、そうとしか理由をつけることができない。

 だから、私は、そういうことを気にしないことにした。

 でも、それでもだ、私は瑞葉が私がいない間どんな思いをしていたのかが見当もつかなかった。

 多分、寂しかっただろうし、悲しかったのだと思う。

 言葉に表すと簡単かもしれないけど、ただそう言葉に表していいものではないくらいのことを感じていたのかもしれない。

 私はまだ、中学生のままなのだ。

 身も、心も、考え方も、全部全部。

 いくら過去のこと気にしないといえど、辿ってもいない過去を過去と呼べるほど、私は大人にはなれない。

 なんで私だけ、時間を飛び越えてきたかのようなことになっているのだろうか。

 わからなかった。

 なんで、私だけがこんなことになって、知らないことに頭を抱えなければならないのか。

 でも、やっぱり、そんなことを言っていても、考えていても仕方がない。

 私は今日をできる限り生きていかなければならないのだ。

 そう、心で自分に言い聞かせながら、私は、今日も留守番の間、家事に勤しんでいる。

 それにしても…、


 「まだまだ、瑞葉は整理整頓ができないのかぁ…」


 と、瑞葉の部屋でその惨状を見ながら、溜め息交じりに私は呟いた。

 下着や上着はそこら中に投げ捨てるように置いてあり、ごみはそこら中にゴミ箱という存在を無視して、散乱していた。

 なぜかベッドはきちんと直されているのが目に留まり、寝ること以外は無頓着なのかと少し呆れてしまった。

 そういえばそうだ、昔から瑞葉は整理整頓が苦手なくせにベッドやら、布団はきちんと直していた記憶がある。

 知らないうちに社会人になって、変に立派に感じ、少し置いて行かれた気分があったが、昔変わらない、そんなところが私を安堵させた。

 だが、いくら安堵で来たところで、部屋が汚いのはさすがにダメだろうという事で、私は無断で申し訳ないと感じながら、部屋の片付けを敢行した。

 さすがに夏で暑さが増してきたこの頃にカップラーメンの容器が放置されていたら、臭いもそうだが虫が湧いてしまう。

 私は取り敢えず、山のように積み上げられたごみを処理すべくゴミ袋を取りに行ったのだった。


 

   **



 三十分は経っただろうか、やっと、ごみの山は消滅し、散乱した衣服やら書類、本などの捨てなくてもいいものだけとなった。

 使用したごみ袋は二袋。

 なんで瑞葉はこうなるまで掃除できないのか、本当に謎だ。

 リビングとか、そういうところの掃除は行き届いているのに、自分の部屋になるとごみ屋敷みたいになってしまう。

 これは少し叱ったほうが良いなと、ため息を私は一つ吐いた。

 姉の癖に五年以上の年下な私なりにどう叱ればいいかな、なんて野暮なことを考えながら、取り敢えず、散乱した書類をまとめていると。

 あまり見覚えのないポップなキャラクターが書かれた箱が出てきた。

 それを手に取り、なんだなんだと確認すると、この箱ははどうやら、ゲームの初回限定版とかいう、代物らしく、気になって、中身を拝見すると、ゲームのパッケージと、ポップなキャラクターの絵が描かれた画集のような本が出てきた。

 いつの間にかにこんなものを買っていたのかと、疑問に感じながらも、いくつになっても、瑞葉はゲームが好きなんだなと思った。

 私に秘密でこれを遊んでいるのだろう。

 この部屋の掃除を終わらせたら、嫌がらせがてら、ステージを進めて、遊びずらくしてやろうじゃないか。

 私はそんな野望をいだきながら、一度その箱を置き、片付けの続きを始めた。



   ***



 そこからまた、二時間ほど経ち、やっと、部屋の掃除が終わった。

 始めは見えなかったフローリングの床もついでの雑巾がけで、日の目を見ることができる上に新築同様の輝きまで得ていた。

 なんというか、フローリングがきれいになるだけで、ここまで部屋が明るく見えるんだなと、無駄な知識をつけてしまった。

 まぁ、それはそうとして、掃除中に見つけた、例のゲーム。

 今日のご褒美ついでにそれを今からしようじゃないか。

 私は取り敢えず、例のゲームの箱を片手にリビングへと移動し、テレビにつなぎっぱなしのゲーム機の電源を入れた。

 そして、パッケージの中に入っていたソフトを挿入し、コントローラーを手に取った。

 画面内でパッケージのポップなキャラクターたちが阿波踊りみたいな動きでスタート画面を彩っていた。

 なんともごちゃごちゃした画面だな、と思いつつ、適当にスタートボタンを押し、瑞葉のセーブデータを選択した。

 と言う訳で、嫌がらせ開始である。

 適当にいじりながら、このゲームの操作を覚えて、とりあえず、恐らく瑞葉蛾詰んでいるであろう未クリアのステージを選択した。

 このゲームは横スクロールアクションで、某配管工を彷彿とさせるようなステージと操作法が特徴的なゲームだった。

 それにしても…、


 「ん、…うわぁっ!?なんだこれ、トラップが多いなこのステージ」


 アイテムブロックが敵に変貌したり、中間ポイントが見つけにくい所にあったりと、上級者向けと言っても過言ではない内容のステージになっていた。


 「まぁ、でも、慣れてきたから、問題は…ないな、クリアっと」


 と、無駄な独り言を口にしながら、私は現在遊んでいるステージをクリアした。

 確かに、このゲーム面白い。

 瑞葉が私に隠れて、密かに遊ぶのも納得がいく。

 だが、

 「お姉ちゃんに隠れて、こんな面白いことやるなんて、瑞葉は悪い子だなぁ」

 と、少し、私は意地悪な気分になり、その先のステージへと、どんどん進め始めたのだった。



   ****



 ゲームを始めて、二時間ほど過ぎ、私は気が済むところまでステージを進めたので、ゲームをやめた。

 当然、瑞葉に気付かれないように、元通りに、不自然のないように、片付けた。

 こういうのを隠蔽工作とか、言っただろうか。

 どうでもいいことだけど。

 いろいろと一段落が付き、私はボフン、と勢いよくソファーに座った。

 時刻は、お昼の三時。

 お菓子話食べてもいいころ合いではあるが、糖分を変に取ると体重が惨事になってしまうから、控えておこうか。

 そう考えた私を賛辞してほしい。

 などと、『さんじ』という言葉を使ったくだらない言葉遊びをしながら、私はぼーっと虚空を見つめていた。

 それにしても、やることが無い。

 家事という家事はほぼやり終えたし、夕飯をつくるか、外に干してある洗濯物を取り込むくらい市か、やることが無い。

 なんとも暇な時間だ。

 洗濯物は…、いま、取り込んでも、生乾きか。

 そう思って、やる事が何ことに憂いを感じながら、私は、静かに目を閉じた。

 瞼の裏には、ただ明るいわけでもなく暗いわけでもない、影が広がり、体がふわりと温かみを帯びたような感覚が包み込み、私の意識は自然と遠退いた。



  *****



 私は瑞葉に内緒で、裏山にある神社へと向かった。

 お父さんとお母さんは共働きで、休日もなければ、帰って来るのも遅い。

 この日も、例に漏れず、二人は仕事だった。

 だから、誰も探しに来る人はいない。

 この日は、瑞葉と喧嘩してしまったから、仲直りの為に、『縁結びの神様』が祭られている例の神社にきた。

 ここはどんな縁を結ぶ為の神様なのかは、わからないけど、それなりに有名な神様を祀った神社なのは知っている。

 とにかく、私は瑞葉と仲直りがしたくて、この神社にお参りしに来た。

 賽銭箱に五円玉を入れて、一回、鈴をならして、二礼、二拍、一礼。

 手順を正しく行い、境内を後にしようとした時、神社の中から、


 「おい、小娘、なんだその願いは」


 と、声がした。

 そして、神社の戸がぴしゃりと音を立て開くと、二人のとても綺麗な女性が現れた。

 片方の女性が一歩前に出て、私にこんなことを訊いた。


 「小娘、儂はなんの神様だと思っているんだ?」


 その問いに私は細々とした声で言う。


 「え、縁結び・・・」


 その声が彼女の耳に届いたらしく、彼女は、キッ、と眉を吊り上げながら、


 「そう、儂は縁結びの神様なんだ!なんだよ、妹と仲直りしたいって、知らねーよ!儂は恋愛の縁結びなんだ、内輪うちわ揉めなら自分で片を付けろって話だ!!」


 と、かなり声を荒げながら、私のそう言った。

 それにしてもさっきから言っていることが分からない。

 なんで願い事を知っているのだろう、一言も言った覚えがない。

 それになんだって?

 神様とか言わなかった、この人。 


 「何だよ、儂が神様じゃねーとか思ったの?ばっかじゃねーの、儂は見ての通り神様なんだ!!」


 私が彼女の発言を疑問に思っていると、また声を荒げながら、私に彼女は言った。

 何か喧しいなと思い、目を細めながら、ふと考える。

 私が彼女に本当に神様なのかと疑問に思っただっけで、それを訊くようなことなど一切していない。

 それにだからなんで、私が思ったことが彼女に筒抜けになっているのか。

 顔にでも書いていたの?


 「顔になんて書いてない。だからさっきから言ってるだろ、儂が神様だって」


 彼女は、何度目だ、というような、面倒臭そうな顔で言った。

 私はこの突き付けられた現実に戸惑う。

 そして、出た言葉が、


 「神様って、案外すぐ会えるものなの?」


 だった。

 そんな、完全い思考が漏れ出した言葉をお訊き、神様は横いる女性と何か話し、こう言った。


 「お前、無礼が過ぎるから、異性に愛される運気なくしてやる、ついでに、変なことが起こる体質にもしておく。それじゃ…」


 と、訳の分からないことを突然、私に言いながら、近寄ってきた。

 そして、私のすぐ前までに着て、


 「数年後まで飛ばしてしまおうか、そっちの方が面白い」


 「へ?」


 また重ねるように言われた意味不明な言葉に素っ頓狂な声を私は上げた。

 そして、それと同時に、ひんやりと柔らかい彼女の手が私の額を撫で、私は意識が遠のいて、倒れた。



   *****



 「ん、ん~、んぁあああ…」


 どうやら私は寝てたらしく、目が自然に覚めた瞬間、とりあえず意味もなく声を上げた。

 そして、降ろし続けていた瞼を上げると、光が大量に入り込み、思わず目を細めた。

 それにしても、さっきは変な夢を見た。

 まるで実際に体験したかのような変な夢。

 訳が分からないのに、自分はこのことは知っているような、何を言っているかわからないだろうけど、とにかく不思議な夢。

 そんな夢を見た。

 夢の内容ははっきりと覚えていて、気持ちが悪いくらいに、その夢で味わった感覚が体に残っていた。

 変なこともあるモノだ、そう思いながら、体を起こすと、外二は夕日が見え、街も私がいるこのリビングも茜色に染まっていた。

 時計を見てみれば、五時過ぎ。

 ていじたいしゃ、とか言うやつで瑞葉が六時半に帰って来ることを思い出し、急いで洗濯物を取り込み、夕飯をつくることにした。




  七月二十五日 天気:晴れ(瑞葉の観察)



   *



 「ただいまー」


 私こと、瑞葉は帰って来た時のテンプレの言葉を、玄関で言うとリビングから、たたたた、と落ち着きのない足音が聞こえ、


 「おかえり、瑞葉」


 と、エプロン姿のお姉ちゃんが出迎えてくれた。

 片手にはヘラが握られており、そのヘラの先端のはおそらく卵と思わしき黄色い物体が付着していた。

 それを見て晩御飯を作成している途中だったのか、と私は思い、一言訊いてみることにした。


 「お姉ちゃん、今日のご飯は何?」


 その問いに対しお姉ちゃんはとても楽し気に、


 「んー、秘密ー」


 と、ニコニコしながら答えた。

 何だ、この可愛い生き物。

 そして、守りたい、この笑顔。

 私は、お姉ちゃんの言動に打ちひしがれながら、


 「それじゃ、楽しみに待ってるね」


 そういって、私はお姉ちゃんと共に玄関を後にした。



   **



 先ほどまで来ていたスーツから、ダボダボのスウェット(上下)に着替え、リビングのソファに私はボフン、と座った。

 そして、思いっきり背伸びをする。


 「ん~~~~~~」


 声とは言えない声を上げ、肩が固まっていることを確信したことを語ってみる。

 まぁ、別に肩が固まってるという言葉が駄洒落っぽいから、ついでに語るの『かた』もかけてみただけだった。

 それはともかく、お姉ちゃんは楽しそうに何かを作っていた。


 「~~~~~♪」


 と鼻歌交じりで、何かを切っている。

 多分、少し瞬きの回数が多くなっているという事はネギとかそこら辺のやつだろう。

 そんな予想を立てつつも、私の思考の大半は『お姉ちゃん、可愛い』で埋め尽くされていた。

 どうにも私は、同性愛者になっていたのかどうかの話は置いておき、お姉ちゃんのことが好きらしい。

 事あるごとに、とても魅力的感じてしまう。

 もしかしたら、急にいなくなったお姉ちゃんへの寂しさがぶり返してきているだけなのかもしれないが。

 それでも、私は。お姉ちゃんのことが、好きだった。

 この感情は、姉妹愛的な意味も、恋愛対象としての意味も、どっちも持った、特殊な好きっていう感情なのだ。

 これはシスコンと言ったほうが良いのか、同性愛者と言ったほうが良いのか。

 どうしようもない感情なのはたしかのだけれども。

 それでも、とにかく、要するに、私はお姉ちゃんが好きだった。

 いや、大好きだ。

 そんな、お姉ちゃんが私が観察のために送り続けている視線い気付いたのか、お姉ちゃんはこっちを向き、ニコッと微笑みながら、


 「あとちょっと待ってね、ご飯出来るから」


 と、言った。

 恐らく、お姉ちゃんは、私がグーペコで獣の目線を送っていたと思ったのだろう。

 確かに、グーペコだけども、視線の意味は全く違います。

 むしろ、見てるだけで満足です。

 私からすれば、お姉ちゃんのほうが、顧客が本当に求めた物だと思う。

 まぁ、そんあ極論はさておき、お姉ちゃんの宣言通り、その言葉から十分もかからずして、食卓に料理の盛り付けられた皿を運んできた。

 どうやら、今日はオムライスとシーザーサラダらしい。

 だから、卵がついたヘラを持っていたわけか。

 納得がついたところで私はソファから食卓の椅子へと場所を変えた。

 そして、私が一人暮らしの時から見れば豪華な料理を見て、お姉ちゃんに


 「別に無理しなくてもいいのに」


 というと、お姉ちゃんは、


 「瑞葉にいいもの食べて、健康でいてもらわないといけないから」


 と、私に笑って言ってくれた。

 ホント、いつもありがとうございます。

 そう思いながら、私は「いただきます」、とテンプレートの言葉を口にするのであった。



   ***



 少し時間は過ぎ、夕飯はすでに食べて、お姉ちゃんが洗い物を終えた後、私はお姉ちゃんと共にソファで仲良くテレビを見ていた。

 そんな時、ふと、お姉ちゃんは私にこんなこと聞いてきた。


 「ねぇ、瑞葉、私に隠れて何か娯楽商品、買わなかった?」


 その一言に私は冷や汗が流れる。

 そう、最近、ゲームソフトを買ったのだ。

 それを、お姉ちゃんに秘密にしていて、寝ている合間にちまちまと進めている。

 現状、クリアできないステージに直面して、拘泥状態なのだが。


 「な、ナニモナイヨー、ゲームナンテカッテナイヨー」


 と、とりあえず嘘をついてみるが、


 「片言で信憑性ないし。というか、誰もゲーム、なんていってないよ、瑞葉」


 「は!?し、しまった、なんと巧みな話術。お姉ちゃん可愛い」


 「ありがとう。でも、話術も何もないんじゃないかなぁ…」


 と、一瞬でバレてしまった。

 という事で、


 「お詫びとして、一緒にやりましょうかー」


 と、私は、話の矛先を変えるために話題からそれない程度に論点をずらすことを試みた。

 すると、


 「ふーん、対戦もできたもんね、あのゲーム。多分、瑞葉は私に勝てないよ」


 と、小悪魔っぽい悪い笑みを浮かべ、お姉ちゃんは私を挑発してきた。

 それならば、と私も負けじと、


 「いいよ、なら、勝負しよ。私はプレイ時間、百時間なんだから!!」


 と、言って、ゲームのソフトを取りに自分の部屋に向かったのだった。



   ****



 そして、取りに行ってリビングに戻ってから、私は一言、


 「お姉ちゃん、もしかして、お部屋掃除した時に見つけちゃった?」


 その一言に対して、お姉ちゃんは、


 「うん」


 と、笑顔で返した。

 お姉ちゃんのことは大好きだけど、その笑顔怖いっす。

 私はそんなお姉ちゃんの笑顔に怯えながら、ゲームをセットし、本体の電源をつける。

 そして、ゲームのタイトルに移り、対戦モードを選択し、ステージを選ぼうとカーソルを動かし始めたのだが、そこで違和感に気付く。


 「…知らないステージが三十個以上、解放されてる?」


 全百ステージ中、五十ステージまでは開放していたはずだが、しらないうちに八十六ステージになっている。

 三十六ステージ分の謎を追え、と昔の某俳優がメインの謎探検隊番組を彷彿とさせるツッコミが出てきた。

もしやと思い、お姉ちゃんにこの惨状を訊いてみる。


 「お姉ちゃん、もしかして、嫌がらせで弄ったりした?」


 するとお姉ちゃんは、下手な口笛を吹き、目をそらして、


 「イ、イジッテナイヨ~」


 と、誤魔化した。

 まぁ、これで怒ったとしても、お姉ちゃんに隠して独り占めしてたのは私だし、お姉ちゃんが嫉妬して嫌がらせしようと考えるのも仕方がない事なのだろう。

 少なくとも私はそうする。

 そう思い、私はため息を一つ吐き、


 「それじゃゲームしようか」


 と、切り返した。



   *****


 

 私とお姉ちゃんのやっているゲームの対戦モードというのは、画面上下に分けられた選択したステージをどちらが先にクリアするか、というタイムアタック系の形式のプレイ法である。

 私のプレイ時間は百時間で、お姉ちゃん曰く彼女のプレイ時間は二時間ちょっとらしい。

 およそ九十八時間の経験の差で私が圧勝だと、思っていた。

 えぇ、思ってましたとも。

 ゲーム開始から数十分が立ち、早くも二十回戦目。

 二十対零のスコア。

 某野球の有名な得点差もビックリなワンサイドゲーム。

 そして、二十一回戦目で二十一連勝を更新した勝者が口を開く。


 「瑞葉、弱すぎ」


 「何で、なんでお姉ちゃんそんなに強いのぉ~!?」


 私は飽きれた様に私を見るお姉ちゃんにすがりつく様に行ってみた。

 それに対し、お姉ちゃんは、


 「時間は関係ない、センスの問題」


 と、簡単に答えた。

 私にはセンスがなかったというのか…。

 目頭が熱くなる。


 「わわわわわ、瑞葉なんで泣いてるのっ!?」


 と、お姉ちゃんの慌てた声が聞こえ、気付くと、私は涙を流していた。

 おそらく、勝てると思っていた戦いに完膚なきまでに打ちのめされたからだろう。

 って、私は、子供かっ!

 二十歳はたちにもなって、ゲームで泣くとか餓鬼かよ。

 私は、涙を拭い、お姉ちゃんに、


 「何でもない」


 と笑って言った。

 それにほっとしたような表情をお姉ちゃんはして、こう私の提言した。


 「瑞葉、もうこのゲームやめない?」


 「…うん」


 こうして、短い、姉妹喧嘩のような、ゲーム大会は幕を閉じたのだった。



   ******



 いろいろと時間が飛び、今日の日記を書き終わった私は、もう寝ようと自分のベットに座ったと同時に、部屋の扉から、控えめのノック音と、


 「瑞葉ー、ちょっといいー?」


 と言う、お姉ちゃんの声が耳に入った。

 私はそれに何も疑問を持たず、


 「んー、いいよ-」


 と、私は答えた。

 そして、お姉ちゃんが部屋に入ってきた訳なのだが、何故だろう。

 何故、お姉ちゃんは枕を持っているのだろう。

 お姉ちゃんのベッドは隣のお姉ちゃんの部屋にあるのだが…。

 そう思っているとお姉ちゃんはモジモジとしながら、小声で、


 「瑞葉ぁ、…一緒に寝よ…?」


 と、聞いてきた。

 あぁ、そういうかとか。

 添い寝しに来たのか。

 …、……。

 …ん?


 「お姉ちゃん、ゴメン、少し聞こえなかったから、ワンモワプリーズ」


 そして、お姉ちゃんはさっきより大きな声で、


 「一緒に寝よ…」


 と言った。

 うん、これは聞き間違えじゃなかったみたいだ。

 添い寝とはまたこれは寝不足が懸念されることが舞い込んできた。

 でも、私はお姉ちゃんを見てふと、気付いたことがある。

 なんというか、とても不安そうに見えるのだ。

 何かに怯えているような、そんな感じに。

 だから、私の頭の中にあった煩悩がすっ飛ぶように消えた。

 そして、


 「うん、一緒に寝ようか」


 と、お姉ちゃんの頼みごとを聞いてあげることにした。



   *******



 二人でベッドの上に寝ころがり、何故、私にこんなことを頼んだのか聞いてみると、お姉ちゃんはお昼に見た夢の事を話し、それが本当かもしれない、そう考えて、不安になったらしい。

 中学生くらいの年齢とは思えないくらい幼稚な理由だが、よくよく考えてみれば、お姉ちゃんは強く頑張っていたのだと思う。

 いきなり目覚めれば、知っているはずのセカイなのに、知らないモノばっかりあって、妹には歳を越されてて、お母さんとお父さんは年をすごい取ってるし、挙句の果てには、自分のお墓が立っているし。

 私だったら発狂していたかもしれない。

 それでも、お姉ちゃんは必死にそんな状況にもかかわらず、しがみついて、今じゃ、私の代わりに家事をやってくれている。

 どんな辛く、寂しく、不安に思っても心の中に仕舞っていたのだろう。

 私はそんなお姉ちゃんに、こんなことを言った。


 「ねぇ、お姉ちゃん、辛かったり寂しかったりしたとき、私に言ってくれないかな」


 その言葉にお姉ちゃんは、


 「どうして?」


 と、とっくに明かりが消え真っ暗になった部屋でもわかるようなキョトン、とした仕草を見せる。

 それに私は答える。

 お姉ちゃんを抱き締めて。


 「私がお姉ちゃんのことが大好きで、気を使わせたくないからだよ」


 と、告白じみたことを言った。

 そして、少し、お姉ちゃんは間を開けて、


 「もしかしたら夢は本当で、恋愛の神様に嫌われちゃって、アクシデントの神様に愛されちゃったのかな、こんなことビックリものだもん」


 と、私の頭をそっと撫でた。




  七月二十六日 天気:不明(蓮花のあと語り)



 瑞葉が先に寝てしまった今、瑞葉が私を恋愛対象で見ていたことを知った。

 いや、結構前から知っていたかもしれない。

 あの夢が本当だったなら、

 男の子に好かれる運気が全くなく、女の子に好かれる運気だけが残っていて、それに加え、変なことが起こる体質にされた。

 そう考えると、この瑞葉が私のことが恋愛対象として好きだという考えは、もはや確信と言ってもいいのかもしれない。

 確かに姉妹で恋愛をするという事は変なのかもしれない。

 でも、私はそれでもかまわない。

 もう、瑞葉に寂しい思いをさせない為なら。

 だから、もう一回、皮肉を込めて呟く。


 「恋愛の神様に嫌われてるくせにアクシデントの神様に好かれてしまっているんですが、それは…」


 そして、さらに意味を付け加えて、言った。


 「別に私と瑞葉の場合、大して違いはないかも」


 なんて。

こんにちは、みち木遊です。

この作品いかがだったでしょうか。

実は後日譚かオマケ回で拾わないでスルーしてしまったネタを拾おうと思っています。

そして、気分次第で後日談のあとの話をつくろうかと思っています。

初めての百合なスト-リーなのですが、どうでしょうか。

このお話のテーマである『優しい愛情と和気藹々』というのも伝わってくると嬉しいです。

次回は未定ですが、投稿はすると思います。

では、今回はこれにて、閉めたいと思います。

またどこかで。 

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