13話 ルッカの現状と侯爵様の要求
再開が遅く申し訳ありません。更新再開しました。修正しましたので、話に変更点が出てきています。
変更点は活動報告に上げていますので、お手数ですがよろしくお願い致します。
日が昇るまで交代で見張りを続けていると、ルッカの城壁の上に兵士が並びだした。それから暫くしてルッカの門が開き捕虜になった人達を回収している。
なんか小舟を運んで来て浮かべていたけど、そういえば港を封鎖された時、ルッカ側の船はどうなったんだろう?
暫く見ていたが、考えても分からないので、皆を起こして朝食にする。
「魔導士様、朝食が終わったら門に出発で良いですか?」
「ええ、ルッカ側はもう捕虜を回収に出てきてますから大丈夫だと思います。それと、僕はルッカでは殆ど話しませんので、交渉の方はお願いしますね」
「はい。契約通りに私が交渉を受け持ちます」
朝一で魔導士様って言われると、違和感が凄いな。まあ、ルッカに入ったらずっと魔導士様で通すんだからいずれ慣れるだろう。
朝食を済ませ、身支度を整えルト号でルッカに向かう。うわー凄いな、海のそこかしこに船の残骸が浮かんでいる。沈んでしまった船とかどうするんだ?
大型の魔導船とか価値がある物を積んでそうだけど……ああ、意外と魔法を使ったら簡単にサルベージ出来たりするかもね。
避けられる障害物は避けながら港に向かう。城壁の兵士もこちらを警戒しているみたいだ。まあそうだよね。名前を明かさない訳の分からない魔導士と名乗る、フードを被った男がやって来るんだもんね。警戒するよ。
僕がいなくて、ジラソーレだけだったら大歓声で迎え入れられそうだよね。申し訳ないです。
帝国の陣地もざわついているし、いきなり攻めて来たりしないで欲しい。まあ城壁の上の兵士が牽制してくれるはずだから大丈夫だろう。
港に停泊してルト号を送還……んーこんな大注目の中で送還するのは嫌だな。このまま置いておくか。そのままにして門に向かう。
「ご主人様、ルト号は送還しないのですか?」
「うん、注目の的だから、わざわざ目立つ事も無いよ。無理やり持って行かれたら送還すればいいだけだしね。シアは送還した方が良いと思う?」
「どうでしょう? ルト号を目的に帝国が攻めて来たら面倒かとも思いますが」
「あー、でも攻めて来たら城壁の上の兵士が撃退してくれるだろうし、問題無いよ」
「はい」
門に着くと少しだけ城門が開いて2人の騎士と10人以上の兵士が出て来た……人数が微妙に多い気がする。
「ブロンと申します。ジラソーレと魔導士殿ですね。ルッカの決定をお伝えします」
いきなりだな。まあこんな場所で世間話も無いか。僕はこれからは殆ど話さないから見学だな。アレシアさん、頑張って。
「はい」
「素晴らしい活躍であったが、名を名乗らぬ魔導士をいきなり城内に招く事は出来ない。先にジラソーレと話し合い、その後、魔導士殿の待遇を決定したい。との事です。魔導士殿には監視が付きますが部屋を用意致しますので、いらして頂けますか?」
え? 監視付きで部屋に待機って……軟禁とは違うのかな? どちらにしろ勘弁して欲しい。
(ご主人様、どうなさいますか?)
(ネス、これって断ったら不味いのかな?)
(どうなんでしょう? 私も元冒険者でしかないので分かりません。アレシアさんにお伝えしてみますか?)
(うん、監視付きとか勘弁して欲しいので、船で待ってるってアレシアさんに伝えて。でも断るのが不味い場合は我慢するって言っておいて)
(分かりました)
ネスがアレシアさんに耳打ちする。
「騎士様。魔導士様は監視付きは窮屈なので船で待つと仰っていますが構いませんか?」
「む、しかし危険ですよ? 確かに監視は窮屈でしょうが、安全は確約します」
「安全面しか問題が無いのなら大丈夫です。では魔導士様には船でお待ちいただきますね」
「……分かりました。では、ジラソーレの皆さんをご案内します」
別れてルト号に戻り、少し港から船を離し、オーナーズルームに入りフードを脱ぐ。リムもポヨンと鞄から飛び出して来た。
「ふー、アレシアさん達には悪いけど、帰って来れて良かったね」
「でもご主人様、帝国が襲ってきたら面倒よ?」
「ネス、きちんと敬語を使わないといけませんよ」
「そうね、ごめんなさい。ご主人様、帝国が襲ってきたらどうしますか?」
「襲って来ないかもしれないし。襲ってきても船に籠っていれば問題無いんだから、監視付きよりマシだよね。煩わしくなったらここを離れれば良いんだし、次の動きがあるまでのんびりしようか」
「「はい」」
~アレシア視点~
ワタルさん、フードで隠れて見えなかったけど、船に戻れるの絶対に喜んでたわよね。まあ、無理して付いて来て貰ったんだからしょうがないか。
ワタルさんの事も沢山聞かれるんだろうし、契約を盾に迷惑が掛からないようにしないと。騎士様の案内で馬車に乗り、城の中に入る。
馬車の中から見た都市は活気は無いが懐かしい光景だった。早く家族に会いたいのだけど、そういう訳にもいかないのよね。都市内が戦場になった訳じゃないから大丈夫でしょうし、後で必ず時間を貰いましょう。
扉で武器を預け奥に案内される。故郷のお城に初めて入るのに、全然楽しめないのが悲しいわね。
案内されて辿り着いた扉を開くと会議室だった。……こんな場合は謁見の間じゃないのかしら?
「私がジュスタン・ド・ルッカ、この都市の領主だ。帝国海軍の撃破、見事であった。本来なら謁見の間で報奨を与えるのだが、至急軍議をせねばならん。すまんな」
「いえ、勿体ないお言葉、ありがとうございます」
「うむ、褒美は後で渡す。さて質問があるのだが、あの海戦は魔導士の協力によって得た成果で間違いないか?」
「はい、魔導士様の協力が無ければあのような事は出来ませんでした」
「やはりか、ジラソーレの噂はある程度知っておる。優秀だが、海に関しての活躍は聞いた事が無かったからな。では魔導士の事を聞かせてくれ」
「申し訳ありません。魔導士様の事は契約で殆ど話す事が出来ません」
「ふむ……まずは話せる事を聞かせてくれ。契約に関しては後で確かめさせてもらうぞ」
ふー、なんで軍議に集まっている人達が沢山居るのに、領主様がずっと質問してくるのかしら。Aランクになってから、貴族の方達にお会いする機会は何度かあったけど、侯爵様ほどお偉い方は初めてなのよ。疲れるわね。
「畏まりました。争いがお嫌いで、目立つのも嫌がるお方です。ルッカが囲まれているとの話を聞いて、無理にお願いして来て頂きましたが、その時の契約で魔導士様の事を話す事は出来ません。
協力してくださる事は、ルッカの防衛では防御面でのお手伝い。もしルッカを脱出しなければならなくなった場合、出来る範囲内での脱出にご協力頂く契約になっております」
「ふむ、ルッカに対しての協力は望めるのか?」
「いえ、おそらくですが、契約以外の協力は望めないと思います。契約を結んだ内容に、交渉には出ない事と、無理強いはしない事も盛り込まれています」
「そうか……どのような事が出来るのだ?」
「申し訳ありませんが、話す事は出来ません」
「それでは何も分からんではないか! 侯爵様のご下問なのだぞ、誠心誠意お答えせんか!」
「デュムン、落ち着け。契約で魔導士の事は話せないと言っておっただろう」
「はっ、申し訳ありません」
「では、ルッカの現状を話しておこう。それで魔導士と話し合って出来る協力をせよ」
「はい」
「侯爵様、説明なら私がおこないます」
「ふむ、よかろう、しかし、先ほどのように声を荒げるのは許さん。よいなデュムン」
「はっ、畏まりました」
「では、現状を説明する。ルッカが帝国軍に囲まれている事は分かっておろう。お主達が海軍を撃破してくれたからな。海側は自由になった。しかしルッカの海軍は壊滅状態だ。僅かな船しか残っておらん。
ルッカ自体は、防衛体制が間に合いなんとか帝国軍を撃退は出来ている。しかし、備蓄してある食料では、いずれ限界が来るだろう。それまでに、帝国軍の撃退か食料の輸入をせねばならん状況だ」
「質問してもよろしいですか?」
「言ってみろ」
「周りの帝国軍は何処から来たのですか? あれだけの数を船で運んで来たとは思えないのですが、あと王都が囲まれているとの噂も聞いたのですが」
「……」
「よい、デュムン、話してやれ。既に広まっている話だ」
「はっ。ジラソーレよ広まっている話とは言え軽々しく口外は許さん。よいな」
「はい」
「ルゥグホン砦が落ちたのだ」
「ルゥグホン砦が……」
「ルゥグホン砦が帝国軍を何度も撃退した重要な砦だという事は知っているな。帝国が兵を大量動員したために、こちらも北側に領地を持つ貴族が、まず援軍に向かったのだ。いままでなら国軍が援軍に向かうまで十分に持ち堪えるはずだった。
しかし、デュプイ子爵、ジュマ子爵が裏切った。夜半に2子爵家が協力し、砦内で騒ぎを起こし門を開いた。そこに待ち構えていた帝国軍が突入して来たらしい。内部に入りこまれてはどうしようもなく、ルゥグホン砦は落ちた。
そのまま帝国軍はブレシア王国内部に侵攻し、後手に回ったブレシア王国軍は帝国軍に対応できず撃破され、首都が囲まれた。同時期にルッカにも軍船が現れ周辺に援軍を求めたが、国内が荒れ騒ぎになっている状況でルッカに援軍は送られず都市に押し込まれた。話せる事はこの位だな」
「はい、ありがとうございます」
予想以上に状況が悪いわね。ルッカどころかブレシア王国全体の危機じゃない。どうすれば良いのかすら分からないわ。聞けるだけ聞いておきましょう。
「攻められていない地域の貴族様達が集まって帝国に対抗する。獣王国が援軍を出す等の可能性はありませんか?」
「無いとは言えん。貴族たちが集まらねば帝国軍に対抗出来ぬし、獣王国も今までの協力関係からいっても援軍は出そうとするだろう。
しかし集まるだけでも時間が掛かる。獣王国にも帝国以外の人間至上主義国家がチョッカイを出してくるだろう。それだけを頼みにただ耐えるだけでは先が無いのだ」
「分かりました。ありがとうございます」
「ジラソーレよ、冒険者に頼む事ではないのだが。解放された港はルッカの生命線だ。維持はできるか?」
「侯爵様。申し訳ありません。魔導士様の協力が無ければ、私達は海上では役立たずです。今はお答えしかねます」
「そうか……では、魔導士と話し合って、港の維持、食料の輸入の協力を私が求めている事を伝えてくれ。それと、強力な魔導士で名すら名乗らぬ者を監視を付けずに都市内に立ち入らせる訳にはいかん。監視を受け入れて貰えれば有難いともな」
「はい」
契約の有無の確認をして、褒美を貰う。私とドロテア以外は、家族の様子を見に行って貰う為に別れ、船に戻る。
門をでてルト号が見えると何だかホッとする。そこまで長く関わった訳でもないのに不思議ね。
~アレシア視点終了~
部屋でまったりしているとアレシアさんとドロテアさんが戻って来たのでフードを被り出迎える。
「お帰りなさい。他の方達はどうしました?」
「ただいま戻りました。他の者達は家族の様子を見て貰う為に別行動をしています」
「そうですか。じゃあ、サロンでお茶でも飲みながら話を聞かせてください」
「はい」
紅茶を飲みながら話し合いの内容を聞く。ルッカ自体は今の所は耐える事は出来るが、ブレシア王国自体がピンチで、結局最終的にはルッカもピンチになる……もう詰んでるような気がする。
港の維持と食料の輸入か……出来ない事は無い。船召喚は思った以上に戦いでもチートだった。攻撃力がある人が乗っていれば最高の移動砲台になる。港の維持と食料の輸入は出来るが、ドップリ戦争に浸かる事になる……どうしよう。とても面倒だ。
「うーん、港の維持と食料の輸入ですか。方法を考えてみます。監視が付くのは本当に嫌なので、よっぽど状況が悪くならない限り受け入れないと伝えてください」
「はい、分かりました。あとこれは取り敢えずの褒美だそうです」
中を見てみると白金貨が10枚……物凄い大金が来たな。
「これは……多すぎませんか?」
「どうなんでしょう? 帝国軍に全包囲されてた一角を解放しましたし、爵位、領地は断りましたので、妥当と言えば妥当だと思います」
「うーん、そうですか。では半分頂きますね」
「いえ、全部お受け取り下さい」
「えっ? 5白金貨でも貰い過ぎかなって思うのに全額は頂けませんよ」
「いえ、契約では無理のない範囲での金銭の支払いですから、最終的に魔導士様に渡る事は変わりません」
「あー、そうでしたね。では頂いておきます」
「はい」
なんか報酬独り占めって罪悪感があるな。まあ半分に固執しても結局戻って来るのなら、受け取らないのも面倒なだけか。
後は、食料の輸入と、港の維持か。面倒だけど頑張って考えるか。
資金 手持ち62金貨87銀貨66銅貨 ギルド口座33白金貨70金貨 貯金船60白金貨 胡椒船 485艘
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