表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第五章 フェリーと戦争
96/570

12話 演技と海戦

 目が覚めると、太陽の位置が随分高くなっている。昼過ぎまで寝てしまったようだ。何時もの日課をイネス、フェリシアと済ませて。サロンに行く。


 こんにちは、と違和感がある挨拶をして、朝食代わりの昼食を取る。なんか混乱するな。


 ジラソーレのメンバーは夜中の戦に気合が入っているし。フェリシアもいつもよりテンションが高い気がする。緊張で吐きそうなのは僕だけみたいだ。


 そうだ、ルト号とガレット号の形を変えておこう。木材の色も変えてこれで別物にみえるだろう。


「あれ、ご主人様、船の外観を変えたの?」


「うん、違う船に見えるよね? ルッカに僕の船を知ってる人が居るかもしれないし。イネスから見ても違う船に見える?」


「ええ、まったく別の船に見えるわ。……そういえば、私達ローブをきるのよね? なんて呼び合えば良いのかしら? あとリムちゃんも目立つわ」


「そういえばそうだね。リムは鞄の中に居て貰うとして。ジラソーレのメンバーは僕の事を魔導士様、イネス、フェリシアを従者と呼ぶつもりみたいだね。従者がご主人様と呼ぶのは、問題が無いから、問題はイネスとフェリシアの呼び方だね。何かある?」


「私の場合は、シアでしょうか? あまり違う名前だと呼ばれても気が付かなそうですし」


「なら私は、ネスになるのかしら? あまり変わってないわね。ご主人様はどう思いますか?」


「うーん、殆どそのままだけど、大丈夫かな?」


「そうですね。基本的に人が居る時に私達はあまり会話をしませんし、どうしても呼びかけが必要な時だけ使えば良いのではないでしょうか?」


「そんなもんかな? うーん、でも全く違う名前だと、対応を誤りそうだし、ネス、シアで行こうか」


「後はイネスがご主人様に敬語を使えば問題はなくなると思います」


「あー、確かに従者が魔導士にタメ口は、相手に強い印象を残しそうだね。イネスは大丈夫?」


「ええ、たぶん大丈夫よ」


 なんか不安な返事だな……まあ、殆ど喋らない予定だから大丈夫か。


「イネス、しっかり敬語を使ってくださいね。ご主人様、イネス、今からルッカに入った時の状況で慣れておきませんか?」


「そうした方が良さそうだね。じゃあ、ネス、シア、今からルッカの中だと思って行動するよ」


「「はい」」


 これからの事を決めて、作戦開始までの時間が空いた。僕は待機組なのに緊張している、なんであの人達は平気なんだろう。精神を安定させる為にリムを抱きしめる。


『わたる?』


「何でもないよ。リムは可愛いね」


『りむかわいい?』


「うん、凄く可愛いよ」


『りむうれしい』


「リム、ごめんね、ルッカでは鞄の中に居て貰わないと駄目なんだ、我慢できる?」


『りむだいじょうぶ』


「ありがとう。今日は沢山遊ぼうね」


『りむうれしい』


 なんか和むなー、こう、戦争とかじゃなくて。豪華客船で、メイドさんを沢山雇って。スライムとも沢山契約をして。自堕落に暮らしたいなー


 意味のない事を考えたり、リムと遊んだり、訓練をしたり。緊張を誤魔化しながら1日を過ごす。やっと夕食の時間か。時間の進みが遅い気がする。さっさと食べて時間まで無理やり仮眠を取ろう。


 暗くなり、昨日隠れた陸地の陰に向かう。


「2人とも大丈夫?」


「ご主人様、心配しないでも大丈夫です。それより、ローブに着替えないといけませんよ」


「そうだった。忘れてた。シア、ありがとう」


 うーん、緊張感と演技で訳が分からなくなって来た。人の心配するより、自分の心配だな。ローブに着替えフードを目深に被る。


「顔は見えてない?」


「大丈夫です。殆ど隠れてます」


 うーん、なんか右腕が疼きそうな格好だな。視界も良くない。ルッカではこの格好で生活するのか……面倒だけど顔がバレるよりましだ。


「あっ、シア、出発前に、ご主人様に結界を掛けておいてね」


「そうですね。もうそろそろですから、今掛けておきます」


 結界を掛けて貰いサロンに戻る。


「魔導士様、そろそろ、船の召喚をお願いします」


「アレシアさんに様を付けられると違和感がありますね」


「ふふ、そうですか?」


「ええ、では、召喚します。みなさん気を付けてくださいね」


 気合の入った7人の返事が来る……暴走しそうで不安なんだが、さすがにこんな場面では暴走しないよね。


 爆音を轟かせガレット号、ガレット2号、ガレット3号がカッ飛んで行く……本当に大丈夫かな?


「ご主人様、お茶をお入れしましょうか?」


「ネス、ありがとう」


 違和感のある会話をしながら、彼女達の帰還を待つ。リムとふうちゃんを抱えながらお茶を飲み、落ち着こうと努力するが……無理だ。


 戦争になってるんだから、殺し合いはしょうがない。人としてどうなのかとも思うが、どうしようも無いので無理やり納得する。


 女性陣が心配して、僕をこの場に待機させてくれたのは、正直有難い。戦争の場に直接いないから、戦争に加担していないとは考えていないが。直接、戦闘を見て余計なトラウマを抱えたくないのも事実だ。


 恨まれるんだろうが、精一杯供養をしたいと思うので勘弁して欲しい。特に異世界だから、ゾンビやスケルトンになって襲ってくる可能性がある分、本気で怖い。


 何とか言い訳をして心の平穏を保っていると、港の方で光が見えた。始まった……デッキに出て、港を見つめる。ポツポツと明かりが増えていく、軍船の光かな? 偶に混じる大きな光と、音は皆の攻撃だろう。


「始まりましたね。ご主人様、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」


「うん、大丈夫だとは思っているんだけど、気になるよね。イネスは気にならない?」


「少しは気になりますが、ご主人様の船で負ける方が難しいですよ。それより名前が本名になっていますよ」


「ああ、そうだった。ネス、ありがとう」


 こんな時まで演技は辛いが、非常時にきちんと演技出来るのかが重要だと言われたら、頑張るしかない。


 緊張でどの位の時間が経ったのかも分からないが、上空に魔法が連続して打ち上げられた。合流の合図だ。


「皆さん大丈夫ですか?」


 見た感じ大丈夫そうだけど、一応礼儀だ。でも、岸に何隻か軍船が泊まっているのと帆船、ガレー船がルッカ側に10艘程集められている位で、他に軍船が1艘も見あたらない……ルッカも帝国の陣地も魔法の光が灯され、騒めいている。


「ええ、大丈夫です。そちらに移っても構いませんか?」


「ええ、構いませんが、ルッカに向かった方が良いのでは?」


「ルッカ側も気が付いてると思いますが、幸い降伏した軍船以外は全て排除できました。今だと混乱しているでしょうし、言付けだけ門に届けて、明るくなってから向かった方が面倒が少ないと思います」


 本当に全滅させちゃったんだ、もしかしてっと思ったんだけど……


「そうですか? あっ、サロンで話しましょうか。今お茶をいれます」


「ありがとうございます」


 サロンに集まり、話を聞く。


「魔導士様、ドロテアとマリーナに門に言付けに行って貰おうと思うのですが、構いませんか?」


「えっ? はい構いません、お願いします」


 しかし、こんな場面で魔導士様って呼ばれて、違和感が凄い。もう止めたい気がするけど、こういう場面での慣れが大事だって言われるだけだろうな。ドロテアさんとマリーナさんを見送り、話を聞く事にする。


「アレシアさん、まずは、降伏した軍船はどうするんですか?」


「あの場所から動かないようにと言っています。日が登ったらルッカ側で対応すると思います」


「そうですか。それでは、戦闘の事を聞かせてもらえますか?」


「はい、まず、作戦通りに、大型船に横付けして、一斉に攻撃しました。結界は破れたんですが船体自体に掛かっている保護の魔法で弾かれました。その後、2回目で傷をつけ、3回目で大穴を開けました」


「保護魔法ですか?」


「はい、発見された時には既に掛かっている魔法で、劣化や衝撃から船を守る魔法だと言われています」


「言われている? よく分かってないんですか?」


「はい、何分魔導船自体の仕組みも解明されていません。保護魔法も同様だと思います」


「そうですか、3回も攻撃したそうですが、反撃は無かったんですか?」


「ありましたが、海上での魔物の戦闘で強力な結界だと知っていましたから、攻撃を続行しました。弓もバリスタも、魔法も、全部あっさり弾き返してくれましたので、よく狙って攻撃出来ました」


 確かにドラゴンブレスも弾き返すって言ったし、戦闘でも効果は実感してたんだろうけど。そのまま攻撃を受け続ける必要も無いと思うんだが……


「そ、そうですか、続きをお願いします」


「はい、大型魔導船を大破させ、その後中型魔導船、小型魔導船の1艘目までは全員で攻撃しました。小型魔導船は分かれても沈める事が可能だったので、そこからは分散して、小型魔導船、小舟の魔導船を狙い、次に帆船、ガレー船を攻撃しました」


「そうですか、他の軍船はどんな対応でしたか?」


「爆音を響かせて突っ込んだので、周りの軍船も直ぐに気が付いて魔法や弓、バリスタで攻撃してきました。全て弾き返しましたので、防御の事は考えずに、船に横付けしては攻撃して大穴を開けました」


「そうですか、降伏した船以外は全て沈めたんですか?」


「何艘かの船が、陸地に寄せて、走って帝国軍の陣地に逃げ込みましたが、それ以外は1艘も逃しませんでした。外海に逃げようとした軍船もいましたが、速度が圧倒的に違ったので、降伏を勧め、降伏を拒んだ船は全て沈めました」


 うわー、本当にチートだったな。途中から凄いスキルを貰ったんだなって感謝してたんだけど。海戦に使うと圧倒的だな。顔を知られたら、和船の時の比じゃない騒動になりそうだ。全力で魔導士様になろう。


「分かりました。ありがとうございます。シャワーを浴びてから、日が登るまで少しですが休んで下さい。捕虜の船は僕とネスで見張っておきますし。ドロテアさんとマリーナさんも僕達が出迎えます。お疲れ様でした」


 順番にシャワーを浴びて、軽く軽食を取る。


「シアも先に休んでいいよ」


「いえ、私は大丈夫です」


「いや、魔力も使ったし、朝から忙しくなりそうだから、今のうちに少しでも休んでおいて」


「分かりました。少し休ませて頂きます」


「うん」


 しかしドロテアさんとマリーナさん遅いな、少し心配になって来た。


「ネス、ドロテアさんとマリーナさん、遅くない?」


「あれだけの騒ぎです、聞かれる事が多くて、時間は掛かると思います」


「あー、そうだね」


 それもそうか、聞きたい事は沢山あるよな。暫く待つとガレット号が戻って来た。


「ドロテアさん、マリーナさんお疲れ様でした。大丈夫でしたか?」


「はい、私達と魔導士様の事、捕虜の事を伝えて、戻ろうとしたのですが、引き止められました。あと魔導士様が身分を一切明かさない事、駄目なら戻る事も伝えてあります。朝、門に行けば結果が分かると思います」


「ありがとうございます。門で手間取らないで済むのなら助かります」


「いえ」


「では、見張りは僕達がしますので、ドロテアさん、マリーナさんもシャワーを浴びて休んで下さい」


「「はい、ありがとうございます」」


 明日の朝にはルッカか……何事も無く終わってくれたら良いんだけど……無理だろうな。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どうせ殺るならば白色彗星帝国のパイプオルガンのテーマを大音量で鳴らしてフォートレス号の灯りを全部点灯してガレット号3隻と共に蹂躙した方が絵的にはカッコいいだけどな!! 定番のワーグナーでもカッコいいの…
[一言] コミック3巻の続きが気になって読みに来てるけど、結局船召喚を使って大量虐殺したのか・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ