11話 シガ〇ット46ライダーと作戦会議
ルッカに向かう船内の雰囲気は楽しいとは言えない。何か良い方法は無いのか? ルッカは大丈夫なのか? 等、焦りと不安が船内に漂っていた。
僕も色々考えた、脱出については何となく行けるかな? という案も思いついた。問題は実現可能なのか? 実現できても脱出した人達を何処に連れて行けば良いのか? 等、先が見えない。
ジラソーレのメンバーとも話し合うが、結局はルッカの状況を知らないと、話にならないと言う結論になる。
辛気臭い雰囲気を少しでも明るくしたい。港が包囲されているらしいので、役に立ちそうな船を新たに購入する事にした。役に立たなくても、ストレス解消にはなるだろう。
お値段81金貨、8100万円のパワーボート。シガ〇ット46ライダーを1艘購入する。上手に運転できそうなら、同じのをあと2艘購入しよう。違うのを買うとモメそうだし……
シガ〇ット46ライダーは水面を最高時速210キロで走る、パワーボートだ。他にもレース用で時速300キロとかあったんだけど、数字を見てビビッて止めた。時速210キロでも有り得ないと思ったのに、時速300キロとか無理だ。
ルッカの港は軍船で封鎖されてるんだし。軍船とか魔導船があるよね? 時速210キロ出せれば軍船でもぶっちぎれるだろうし、これがあれば最低でも引っ掻き回せる。間違ってないはずだ。
木造に偽装すれば、大きさ的には問題ないし、スピードで人目を引くが、フォートレス号で突っ込むよりマシだろう。
「皆さん、新しいボートを買ったので、練習します。出て来て貰えますか?」
「ご主人様、新しいボートですか?」
「うん、凄いボートだよ。ルッカの港は封鎖されているらしいけど。このボートを使いこなせれば、封鎖している軍船を散らせるよ」
「本当ですか? ワタルさん!!」
「おっ、落ち着いてください、アレシアさん」
「え? あっ、ごめんなさい、ワタルさん」
「いえ、大丈夫ですよ。召喚しますから試してみましょう」
アレシアさん達、やっぱり普段と違うな。不安でしょうがないんだろう。
「格好いいわね」
「僕もそう思うよ、イネス」
真っ白な船体、銀のライン。操船席もカッコいい、宇宙船みたい? 独特なカッコ良さがある。シートも白と黒の座席で、なんて言うか、レーシー? でも目立つので木造船風に船偽装をする。
「今までの船より断然速いですから、覚悟してくださいね」
2組に分けて、操船を教えながらシガ〇ット46ライダーを操船する。今までにないスピードにみんな驚いている。でも内心1番ビビってたのは僕だ。まじで怖い。
操船が好きな4人に操船方法を教えながら、シガ〇ット46ライダーを乗り回す。操船しない4人はスピードの中、攻撃をする練習をしている。
みんな帝国の軍船沈める気満々だよね。僕が召喚した船を使って攻撃した場合、僕も共犯になるのかな? なるんだろうな、まあ、しょうがないか。
大丈夫そうなので、あと2艘購入して、チケットも発行しなおした。ちなみに3艘買って、2白金貨43金貨だったけど。船召喚のレベルは上がらなかった。購入した金額もジラソーレからの報酬で賄えると思うし大丈夫だろう。
シガ〇ット46ライダーの名前は……もうラ〇ダー号が良いんだけど、なんだか危険な気がするので止めておく……うーん、名前……ガレットで良いか、美味しそうだし。ガレット号だね。
その日から普段、進む時はガレット号で、訓練しながらルッカに向かい。休憩する時や夜間の走行時にはルト号で進む。
ジラソーレの皆も、訓練してると気が紛れるのか、船内での雰囲気が少し柔らかくなった。ガレット号で爆走した結果、22日掛かる所を8日に短縮し、ルッカが見えて来た。
ルト号を召喚して、サロンで作戦会議だ。
「遠目で見ただけなので、ハッキリとは言えませんが、沢山の船で湾内を封鎖してましたよね?」
「ワタルさんの言う通りだったと思います。まだルッカは落ちていないという事ですね」
ジラソーレのメンバーにホッとした表情が浮かぶ。取り合えず、着いたら占領されて、間に合わなかったというのは無くなったな。
「間に合いましたが、これからどうしましょうか? あっ僕が仕切っても構いませんか?」
「はい、ワタルさんの方が、直接ルッカに関わりが無い分、冷静でしょうから、お願いします」
良かった。今のジラソーレのメンバーが仕切ったら、とんでもない特攻案が出て来そうだからな。嫌がる事は強制されない契約をしてるけど、まとめられた意見を否定するより、仕切りの立場で回避する方が精神的に楽だからな。
「ありがとうございます、アレシアさん。では、改めて、これからどうしましょうか?」
「まずは、偵察ですか?」
「そうですね。でも、明るい内に偵察は厳しいですから、行くなら夜中ですね」
「夜目が効くのはマリーナとイルマです」
「それなら、偵察組と待機組で分けて。偵察組はゴムボート2艘で近づき探りを入れます。マリーナさんとイルマさんと、あとは補助する人間ですね。待機組はガレット号で待機して、もしどちらかが発見されたら、両方を迎えに行きます」
「発見されていない方もですか?」
「はい、どっちにしろガレット号で迎えに行きますから、逃げ出さないといけません。置いていく訳にも行きませんからね」
「確かにそうですね」
「ゴムボートは置いてきて構わないです。遠くから送還出来ますから」
「分かりました」
「僕とイネスは待機しています。フェリシアは夜目が利くそうなので、連れて行ってください。残りの人選はお任せします」
「分かりました」
相談の結果、偵察組はアレシアさん、イルマさん、カーラさん組とドロテアさん、マリーナさん、フェリシア組に決まった。待機組は、僕とイネス、クラレッタさんの3人だ。
「大体決まりましたね。ちょっと早いですが、食事にしますか。仮眠を取って夜中に起きる事にしましょう」
みんなでドンドン料理を並べ、食事を開始する。取り合えず今の所ルッカが無事なので、ホッとしたからか、皆の食欲が戻った。カーラさんの食欲が無いとか、本気で大丈夫かと思ったよ。
十分に食事を食べて、シャワーを浴びて仮眠を取る。
「ご主人様、時間です」
「ん? あっ分かった、ありがとうフェリシア」
サロンに行くと、みんな集まっている。
「お待たせしました」
「いえ、大丈夫です。みんな待ちきれなかっただけですから」
「ありがとうございます。では、始めましょうか」
陸地の陰に隠れて、ゴムボート2艘とガレット号1艘を召喚。ルト号を送還して、ガレット2号を召喚する。制限いっぱいに召喚すると面倒だね。
「「では、行ってきます」」
「お気を付けて」
ゴムボートだから距離も結構あるし時間が掛かるだろうな。見つからずに戻って来てくれれば良いんだけど。
「ご主人様、大丈夫かしら?」
「どうだろう? 普段の偵察とは勝手が違うし、発見された時にしっかり迎えにいけるように見張ろうか」
「「はい」」
何時間待機しただろうか? リムとふうちゃんを抱きしめ、撫で繰り回しながら待つ。待ち疲れて来た頃、アレシアさん組が戻り、20分ほど後にドロテアさん組が戻って来た。
ゴムボートを送還してルト号を召喚する。サロンに集まり、偵察結果を聞く。
「アレシアさん達からお願いします。どうでしたか?」
「そうですね、魔導船は大型が1艘、中型が2艘と小型が10艘ですね。後はガレー船、帆船が多数ありました。夜でも全ての船で、幾つか明かりが動いていたので見張りは多いです。ゴムボートで見つからない様に通り抜けるのは難しそうですね」
「そうですか、ゴムボートでコッソリ通れたら良かったんですが、難しそうですか。ドロテアさん達の方はどうでしたか?」
「殆どがアレシア達と同じですね。後は、帝国も船での脱出、潜入を警戒していて、小舟の魔導船が数艘、港付近で巡回していました」
「そうですか、コッソリ入るのは無理そうですね」
「はい、泳いで侵入するのも、港に上がる時に発見されるでしょうし。難しいですね」
え? 泳ぐのは無理です、アレシアさん。レベルアップで体力が増えてたとしても、軍船を避けながら、あの距離を泳ぐとか、気が遠くなりそうです。
「コッソリ入れないのなら、船で強行突破ですか?」
コッソリ入れたら良かったんだけどな。荒事になりそうだ。
「そうですね、ワタルさんの船なら可能とは思います」
「ちょっと良いでしょうか?」
「何でしょうか? ドロテアさん」
「強行突破より、最初に帝国の船を沈めた方が良いと思います。強行突破した後は更に警戒が厳重になります。ルッカから船で出るのは、港を移動して船を召喚しないと駄目なので、発見されやすいですし。海側に居て、存在を知られていない1回目に軍船の数を減らすべきだと思います」
更に荒事な提案が出て来た。どうなんだろう? 戦争物、もっと読んでおけば良かったな。
「軍船って沈められますか? 結界とか張ってそうですが」
「魔導船は小舟型以外は試してみないと分かりません。ですが小舟の魔導船と帆船、ガレー船を沈められれば、包囲が出来なくなります。補充が来るかもしれませんが、時間は掛かるはずです」
「うーん、気になるのがガレー船ですね、帝国の船なんですから獣人の奴隷が漕がされてそうなんですが、どうなんでしょうか? ドロテアさん」
「ワタルさんの仰る通りだとは思いますが、ルッカの事を第1に考えたいと思います。奴隷の方達には申し訳ないのですが、1人でも多くの方が陸地に辿り着ける事を願うしか出来ません」
「そうですか」
うーん、気にはなるけど、何ともしようが無いな。救助しようにもどんな命令を受けてるか分かんないし、ガレー船を攻撃しないってのも、駄目なんだろうな。次の時にはガレー船で揃えられてそうだし。
「今の所、強行突破で門に行くのと、軍船を攻撃して船の数を減らす。の2案ですね。他に何かありませんか?」
出来れば、すんなり入れるアイデアが出て来て欲しい。
「「「「「「「「………」」」」」」」」
ないかー。
「じゃあ、この2つの案ですね。僕としては突っ込むだけで良い分、強行突破が好みですが、皆さんの意見はどうですか?」
「私は、軍船を減らす方が良いと思います。ルッカを防衛するとしても、脱出するとしても、港が開いていればそれだけ動きやすいですし、強行突破で門に着いても。中に入るまでに時間が掛かると思います。帝国軍が追いかけて来たら面倒な事になります」
他のメンバーも船を減らす方に賛成みたいだ。嫌がる事は強制しないって契約したよね、だから強硬突破だけにします。で大丈夫なんだろうけど。でも門まで追いかけられるのも厄介だし。後が有利になるのなら沈める作戦の方が良いのかな?
でもなー船を沈めたら、領主様とかに絶対に目を付けられるよね。無理難題とか言われそうだし。それに気になるのがジラソーレの皆さん、全力でルッカを守るつもりじゃないのかな?
ジラソーレのメンバーのお願いは、僕としては叶えられる物なら叶えたいけど。どっぷり戦争に関わるのは嫌だ。きちんと話しておかないと。
「うーん、分かりました。軍船を減らす作戦で行きましょうか。ですが皆さんに聞いて頂きたい話があります。みなさんの目的がルッカを守る為に戦う事になっているように思えます」
「え? ワタルさん、私達はルッカを守りたいんだけど」
お? 普段のアレシアさんに戻った。ルッカの事があってから、みんな仕事モードみたいになってたからな。落ち着かないよね。
「アレシアさん達がルッカを守りたいのは分かります。ですが、約束では、防衛が出来そうなら、防御面での協力。駄目そうなら、ジラソーレのみなさんの、家族、友人の脱出の協力だったはずです。違いますか?」
「いえ、そうお願いしました」
「今回の作戦は確かに、防衛、脱出にも役に立ちますから納得はしましたが。本来の約束からは外れているようにも思います」
「はい」
「僕には大都市を守るというのは荷が重い話ですし。厳しい状況を引っ繰り返す事も出来ません。今回の作戦で、軍船を減らしたら、必ず領主様に目を付けられるでしょう。その時にルッカを守る為にと利用されるのは困るんです。きちんと契約を守ってくださいね」
「はい、ワタルさん、申し訳ありませんでした」
なんか嫌だなー、ジラソーレのメンバーのテンション下げちゃったし。でも言っておかないと、気が付いたら戦争から抜け出せなくなってそうだったし、しょうがないか。
「水を差すような話をして申し訳ありませんでした。作戦会議の続きをしましょうか。どうせ目を付けられるんです、最大限の効果を狙いましょう」
作戦は意外とアッサリ決まった。明日の深夜、3艘のガレット号にそれぞれ分乗。あいての攻撃が効かない事を利用して、船に急接近。船に至近距離からの攻撃で、大穴を開けて別の船に行くの繰り返しだそうだ。
最初に狙うのは大型魔導船に決まった。帆船やガレー船は後でも対処出来るので。倒せるか分からないが、3艘揃って大型魔導船に接近して最大火力を1点集中で打ち込むそうだ。
沈める事が出来そうなら続行。駄目そうなら中型の魔導船に目標を変更。大型、中型、小型、小舟の順で攻撃して、最後に帆船とガレー船だそうだ。
組分けは。
ワタル組……僕とイネス。ルト号で待機。
フェリシア組……フェリシア、カーラさん。
アレシア組……アレシアさん、クラレッタさん。
ドロテア組……ドロテアさん、マリーナさん、イルマさん。
僕としては、引っ掻き回せると思って、ガレット号を選んだんだけど。他の人達は全部沈めるつもりだ。異世界人と日本人の違いなのか、僕の考えが軟弱なだけなのか、どうなんだろう?
「作戦も決まりましたし、迂闊に見つからない為にも、ルッカから離れて休みましょうか」
移動した場所で停泊する頃には夜が明けだした。順番にシャワーに入り、戦いの不安を押し殺しながら眠りにつく。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。




