9話 ダークエルフの島と村の様子
船に戻り、昼食を済ませる。
「ふー、ご馳走様でした。この後の予定は、ダークエルフの島に顔を出そうと思ってるんだけど、どう?」
「ご主人様、父は半年は大丈夫だと言っていましたので。まだ大丈夫かと思います」
「フェリシアの言う通りだけど、村を作り始めたばかりだから。何か必要な物があるかもしれないし。それに、何処かに旅に出たら、中々戻って来れないかもしれないし、顔を出せる時に出しておこうよ」
「そうね。何があるのかなんて分かんないんですもの。行ける時に行った方がいいわね」
「ご主人様、イネス、ありがとうございます。お願いしてもいいでしょうか?」
「うん、契約の内なんだから気にしないで。じゃあ、この後は食料集めと、村作りに必要そうな物を買いに行こうか」
「「はい」」
市場やお店で日持ちがしそうな食料と、薬、食器、衣服、大工道具等、思いついた物を買い集めて、船に届けてもらうように頼む。
「他に何か必要そうな物はあるかな?」
「どうかしら? 私は十分だと思うのだけど。フェリシア、ダークエルフって何か特別必要な物とかあるのかしら?」
「いえ、元々森の中で殆ど自給自足でしたから。これだけの支援を頂ければ、十分に生活していく事が出来ると思います」
「じゃあ、大丈夫だね。自動操縦だし、この後出発してもいいけど、1日位休もうか?」
「私はどちらでも問題無いわ。ご主人様の楽な方で大丈夫よ」
「私もです」
「じゃあ、出発しようか。商業ギルドとジラソーレには、一応伝えておいた方が良いよね。商業ギルドに寄って、海猫の宿屋に行こう」
「「はい」」
商業ギルドでカミーユさんに10日程出かける事を伝える。よく考えたら、今日、商業ギルドに来たの3回目だったな。
ドニーノさんと来たのは予想外だったけど。予定をきちんと立てていれば、今回は行かなくて良かったんだよね。先の事をきちんと考えて行動しないと。
海猫の宿屋に着いて、女将さんに取り次いで貰う。もうすでに、ジラソーレが宿に戻った事が広まっているのか、前にも見た事ある男達が食堂に座っている。
ずっと泊まっていたのか? それとも情報網が構築されてる? なんかどっちでも怖い気がするな。
「ワタルさん、どうかしたの?」
「いえアレシアさん、ちょっと10日程南方都市を出るので、お伝えしておこうかと思いまして」
「あら、そうなの? わざわざありがとう。私達はドロテアが張り切ってるから、暫く情報収集ね」
「あはははは、ドロテアさんもテイムスキル覚えたんですから、早くスライムをテイムしたいんでしょうね」
「ふふ、そうなのよ。リムちゃんとふうちゃんみたいな、可愛い子をテイムしたいって言ってるわ。今もギルドの資料室よ、何だか目的が変わっている気がするの」
「ドロテアさん、リムとふうちゃんを可愛がってくれてますからね。リムにも友達が増えると嬉しいですね」
「その時はお願いしますね」
「あっ、そうだった、クラレッタさんとカーラさんはいますか?」
「ごめんなさい。クラレッタは教会に行ってるの。カーラも出かけていて居ないし。何か用事があったのかしら? 伝言なら伝えるわよ?」
「そうですか、では伝言をお願いします。プリンとアイスなんですが、商業ギルドと契約しましたので、作るのは構いませんが、人には教えないようにと伝えておいて貰えますか?」
「分かったわ。2つとも美味しいから、人気でるでしょうね。2人には必ず伝えておくわ」
「ありがとうございます」
軽く雑談してから宿を出る。女将さんにジラソーレファンの事を聞いてみたら。ずっと泊まってる人と、ジラソーレが戻って来た後に戻って来た人、両方いるそうだ。
海猫の宿屋に泊まらなくて良かった。居心地の悪さが保証されてるようなものだ。船に戻り、届けられた荷物を積み込む。
「じゃあ、出発するね。外海に出てからフォートレス号に乗り換えるね」
「「はい」」
のんびりルト号の船縁に座る。輝く太陽に青い空、白い雲に青い海、開放感のある景色と潮風を浴びながら、買っておいた缶ビールを飲む。うん、美味いなー。
「ご主人様、凄く嬉しそうだけど、どうしたの?」
「ああ、イネス。こうやって海でクルーザーに乗って、缶ビールを飲んでみたかったんだ」
「うふふ、それで、とっても嬉しそうだったのね。美味しかった?」
「うん、とても美味しかった」
なんかクルーザーと缶ビールはセットのイメージがずっとあった。テレビの影響力は凄いよね。一本を飲み干してから満足してサロンに戻る。
「そろそろ、フォートレス号に乗り換えるね」
「「はい」」
フォートレス号に乗りかえて展望浴場に入る。イネス、フェリシアとイチャイチャしながら体を洗いお湯に浸かる。
ぷかぷか浮かぶリムと戯れ、十分満喫してお風呂を上がる。この日2本目のビールを飲んで、浴衣を着てマッサージチェアでウトウトする。なんか幸せだなー。
マッサージが終わり、夕食はバイキングを堪能する。映画を観て、イチャイチャして眠りにつく。やっぱり洞窟とかに冒険に行くより、こんな感じの生活が好きだな。
朝、日課をしっかりと熟し、朝食は作り置きで済ませて、予定を立てる。
「んー、今日は昼過ぎまでフォートレス号で過ごして、その後、ルト号に乗り換えて、そのままダークエルフの島までだね」
「「はい」」
「僕は、自販機コーナーで漫画を読んでるから。イネスとフェリシアは自由にしていて」
「「ありがとうございます」」
「あっ、僕はあまり動かないから、またリムもお願いね」
「「はい」」
1人で自販機コーナーに行き、読みたい漫画を机に並べる。ポテトと唐揚げとコーラを買って準備万端、漫画に没頭する。
「ご主人様、そろそろお昼ですが、どうしますか?」
「ん? もう?」
「はい」
机の上には読み終わった漫画が積み重なっている……これだけ読んだら時間も経つよね。大好きな漫画を読んだから夢中になっちゃったよ。
「昼食は何が食べたい?」
「ご主人様、カレーが食べたいわ」
「じゃあ、レストランで食べようか」
「「はい」」
レストランで、カレーとパスタ、コーヒーゼリーを堪能して。まだまだ食べるリムを見守る。
『わたる、かれーほしい』
「ん? 分かった、お野菜ものせるよ?」
『うん』
時間いっぱいまでカレーやハヤシライス、パスタを堪能したリムを頭に乗せて。新たに発見したタラップを操作して降ろす。タラップは外付けだと思ってたから、船側にもあるって知らなかったな。これでルト号に乗り移りやすくなったな。
ルト号に移りフォートレス号を送還する。フォートレス号の周りにいた魔物がルト号に集まって来る。
「やっぱり、魔物は来るけど。最初の時みたいに大群にはなってないね」
「そうね、あの時は5日間魔物を引き連れていたから、あの量になったのだと思うわ」
「そうだね、1日なら魔物の群れにでも見つからなければ、数匹で済むんだ」
「ご主人様、操船しても構わない?」
「うん、僕はサロンに居るから、2人に任せるね」
「「はい」」
リムを抱っこしてサロンに戻る。フェリシアも操船は好きだし。まあ、楽しみがあった方がストレス解消にもなるし、久しぶりに、2人に楽しんで貰おう。
やっぱり機嫌が良いと、夜のイチャイチャもサービスが良くなる気がするしね。
南方都市を出発して3日目の昼過ぎ、ダークエルフの島に到着した。
「ワタルさん、お久しぶりです」
「村長さん、お久しぶりです。困った事はありませんか?」
「お陰様で順調に村の形が出来上がっております」
うん、元気そうだし、本当に問題は起こってなさそうだね。周りの人達も笑顔だし、順調にいってるみたいだ。頑張って貰わないと、フェリシアと最後まで出来ないからね。
「そうですか、良かったです。色々買って来たので、運んでもらえますか?」
「何度もありがとうございます。感謝致します」
「気にしないでください、船から下ろしますから、後はお願いしますね」
「「「「「「はい」」」」」」
買って来た食料や道具、お土産のワインを下ろし。村長さん達に運んでもらう。最後の荷物を担ぎ、村長さんと、丘の上の村に行く。
「うわー、本当に順調ですね。家もずいぶん増えてますし。あの木材は森から切り出したものですか?」
「はい、家はまだまだ内装などは手を加えないといけませんが。半数以上は家を持てました。あの木材は、数人に森の手入れと、木材の切り出しをやって貰ってます。川から流せば労力が掛かりませんので、木材が安定して手に入り助かります。まあ、まだ乾燥させないと使えないのですが」
「凄いですね、もう半数も家が完成したのですか。森に入っている人達は大丈夫なんですか?」
「ええ、前の村でも狩人を専門にしていた者達です。話によると、豊かな森で強い魔物も今の所見つかっておりません」
「良かったです。何とかなりそうですね」
「はい、村の者達も元気に働き。人目を気にしないで生活出来ると喜んでいます。ワタルさんの御蔭です。本当にありがとうございます」
「フェリシアに感謝してください。僕は僕の都合で援助しているだけですから」
本当に自分の欲望の為の援助だから。真剣に感謝されると照れる以上に申し訳なくなってくるな。
そうだ、区切りとして家が全員分建ったら、お祭りとかどうだろう。そして、フェリシアと最後まで……良いかも、すごく良いかも。
「村長さん、全員分の家が建ったら、区切りとしてお祭りをしませんか? 今のペースならそんなに先の事じゃないですよね?」
「お祭りですか、村の者も喜ぶでしょうな。今の調子なら6ヶ月もあれば全員分の家は建つでしょうし、考えておきますか」
「良いですね。じゃあ、その頃に合わせて来られたら、お酒とご馳走を沢山持って来ますよ。大いに騒ぎましょう」
「いやいや、そこまでお世話になる訳にはいきませんよ」
「移住に関わったんです、どうせなら大騒ぎしたいじゃないですか。お酒とご馳走はお祝い事なんですから気にしないでください」
「大騒ぎですか……そうですな、もう人目を気にする事も無いのです。大いに騒ぐ事も可能なのですな。ワタルさん、図々しいですがよろしくお願いします」
「ええ、任せてください」
軽く雑談をして、村長さんと別れ。セシリアさんに会いに行く。
「まあ、ワタルさん、お久しぶりです。フェリシアはお役に立っていますでしょうか?」
「お久しぶりです。フェリシアには、とても助けて貰っていますよ」
「そうですか。ありがとうございます」
セシリアさん、久しぶりにフェリシアと会えて嬉しそうだな。フェリシアは恥ずかしそうにしてるけど。
「フェリシアは、セシリアさんのお手伝いをして貰って。イネス、散歩にでも行こうか?」
「まって、ご主人様、前にもこんな感じで散歩に出たら、揉め事があったわよね? 誰だったかしら?」
「え? ああ、確かロマーノさんって方に絡まれたね。セシリアさん、ロマーノさんはどうしてますか?」
「ロマーノですか? ロマーノはワタルさんにご迷惑を掛けたので、父親が教育として一緒に森で生活しています」
「森でですか?」
「はい、厳しく教育しなおすそうなので、ロマーノだけは一度も森から戻って来てません」
「そうですか、ありがとうございます」
それなら安心だよね。
「では、僕とイネスは村を散歩させて貰いますね」
「はい」
村を観て回ると、少ない人数なのに、そこかしこでトンカン金槌の音がする。家が増え、広場もある。今テントを張っている人達の家が完成すれば、小さな村になる。
でも人が足りないよね、ダークエルフと出会えたら良いんだけど。考えてみたら、隠れて生活しているダークエルフと、海で生活している僕が、出会う事ってあるのか?
「「「「「「あー、ワタル様だー」」」」」」」
「お? 久しぶりだね。元気だった?」
「「「「「「げんきー」」」」」」
「ねえ、ワタル様、お話聞かせて?」
「うん、いいけどワタルさんとか、ワタルにーちゃんとかにしてくれる?」
「なんでー? お母さん達はワタル様っていってるよ?」
いやまあ、美人にご主人様とか言われるのは、最高に嬉しいんだけど。子供とおじさんに様呼びされると、なんか引くんだよね。
「うーん、まあワタルさんとかワタルにーちゃんとか、言われる方が嬉しいからかな」
「「「「「「わかったー」」」」」」
うん、元気がいいな。でもお話なー。僕は基本的に子供が喜びそうな話の時には、後ろで隠れてるからな話すネタが無い。
しょうがないので洞窟の話を膨らまして話そう。
「ワタルにーちゃん、戦ってないじゃん」
「僕は商人だから戦わないの。でもイネスとフェリシア、ジラソーレが強いからいいでしょ?」
「そうだけどー」
「それにこれからが凄いんだよ?」
「戦うの?」
「戦わないよ」
「ぶー」
話が終わり、子供達と別れて村長の家に戻る。
「ご主人様も戦った事にすれば、子供達ももっと喜んだわよ?」
「そうかもしれないけど。そんな話を作ると、この村で一生語り継がれそうなので駄目だね」
「うふふ、そうね。きっと凄い英雄になってるわね」
「恥ずかしくてこの村に来れなくなるよ」
村長の家に戻り、夕食を共にして、船に戻る。
「村は問題無さそうだね。フェリシアは何か気になる事はあった?」
「いえ、父と母の話でも、村の様子を見ても問題は無さそうでした」
「良かった。それなら、村が落ち着いた頃に、ダークエルフの移住者を連れて来られれば良いんだけど……」
「そうですね。何処かで出会えれば良いんですが」
「隠れて住んでいるから、あまり派手にも探せないし、機会を見つけたら説得を頑張ろうか」
「はい」
「フェリシア、6ヶ月後のお祭りでこの村の移住計画の一つの区切りにしても良い? もちろん、ダークエルフの移住は今後も継続するんだけど」
「はい、ご主人様には十分に契約を果たして頂いていると思います。その、よろしくお願いします」
うはっ、恥ずかしそうに頷いてるフェリシア、可愛い。これで問題が起こらなければ6ヶ月後にはフェリシアと最後まで……異世界サイコー。
「あら、6ヶ月後までに豪華客船は流石に無理よね……フェリシアに先を越されちゃうのね。ご主人様、フェリシアで満足して、私を忘れたら駄目よ」
「大丈夫です。ここまで頑張ったのにイネスを諦める事は絶対にありません」
「ふふ、なら良いわ」
絶対に3人でムフフな事をするんだ。諦められるわけがない。
それから3日間、村作りのお手伝いをしたり、子供と遊んだり。島の探索をしたり。楽しく過ごした。お祭りの話も村中に広がり、6ヶ月後のお祭りを楽しみに更に村に活気が出て来た。
次にこの村に来る時には……いや、さすがに6ヶ月も放置は無いだろうから、あと1回か2回は来るな。そんな事を考えながら、たっぷりイチャイチャしながら南方都市に戻って来た。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。