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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第五章 フェリーと戦争
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8話 お土産配りと契約

 南方都市に到着して、船を係留所に停泊する。


「ワタルさん、ありがとうございました。ワタルさんの御蔭で、行きたかった大聖堂に行く事が出来ました」


「あはは、クラレッタさん、もともと、パレルモに行こうと思ってたんです。気にしないでください」


「はい、でも、ありがとうございました」


 リムとふうちゃんが、別れの挨拶をしていたのに少し感動する。あと可愛い。


 ジラソーレと別れて、リムを頭の上に乗せて、商業ギルドに向かう。


「ご主人様、今回は、男性にも女性にも同じワインを配るんですか?」


「ええ、他にお土産に使える名産品も見つからなかったし。それにお土産を渡す女性はカミーユさんだけだから。プリンとアイスで勝負だね」


「とっても美味しいから、気に入って貰えるわ」


「そうだよね。でも溶けちゃうから、カミーユさんが居てくれると良いんだけど……少し急ごうか」


「「はい」」


 急いで商業ギルドに向かい、カミーユさんを探す。


「カミーユさん、お久しぶりです」


「まあ、ワタルさん、お帰りなさい」


「ただいまです。カミーユさん、たいした話ではないのですが、少しお時間を頂いて良いですか?」


「はい、今の時間なら大丈夫です。お部屋へお通ししますか?」


「そうして頂けると助かります」


 カミーユさんと応接室に入り、紅茶を出して貰う。


「それでワタルさん、どのようなご用件でしょうか?」


「ええ、まずはこれです。前にミルクの話をして、シエーナ村を教えて貰ったんですが覚えていますか?」


「はい、作りたい物があると仰ってましたね。これがそうなんですか?」


「そうなんです。時間が経つと、アイスの方が溶けてしまいますので、まずは食べてみて貰えますか?」


「ミルクの食べ物ですか……頂きます」


 そんなに不安な表情をされると、なんか申し訳なくなるな……スプーンを手に取り、アイスをすくう。少し戸惑った後に口に入れて、固まった……


 再起動した後は、何も言わず、じっくりとアイスを味わっている……アイスを食べ終わると、紅茶を飲み、無言でプリンを食べ始める……


 なんだ? 凄い緊張感なんだけど……プリンとアイスを食べた時は、イネスもフェリシアもジラソーレも全員笑顔になって、美味しいって喜んでくれたのに。何か失敗した?


「ワタルさん」


「は、はい」


 静かだけど迫力のある声にビビる……あれ? ここは、笑顔で、ワタルさん美味しいですって言って褒めてくれるんじゃないの? やっぱり失敗してた?


 目が鋭く、キリッとして迫力がある。いつもの優しいカミーユさんじゃない。


「この食べ物は大変素晴らしいです……なんと言う食べ物なんですか?」


「あ、アイスクリームとプリンです」


 失敗してなかった? 素晴らしいのなら笑顔で褒めて欲しいんだけど。


「アイスクリームとプリンですか。この2つはワタルさんが開発した物ですか?」


「いえ、故郷のデザートを作ってみただけなんですが……何か問題がありましたか?」


「いえ、初めて食べる物で、とても美味しかったです。それでこのレシピを知っている人はどの位いますか?」


 ああ、ピンと来た。この顔はカミーユさんの商売の時の顔なんだ。出来れば見たくなかったな、優しいカミーユさん戻って来て。


「僕達と、ジラソーレのクラレッタさんと、カーラさん位だと思います」


「そうですか、商業ギルドと契約して、レシピを広めるつもりはありませんか?」


 やっぱり商売の顔なんだな、しかし、どうしよう?


「えーっと、契約の内容はどんなものになるのでしょうか?」


「そうですね、この場合ですと、商売の神様の契約を、ワタルさんと商業ギルドで結びます。そしてレシピを使用したい店と商業ギルドが守秘義務を含めて商売の神様の契約を結びます。売り上げの3%がワタルさんに、2%が商業ギルドに入る事になると思います」


「あのーアイスはともかく、プリンは家庭で簡単に作れるデザートなんですが、問題になりませんか?」


「簡単に作れるのなら、沢山の店が、作れるようになりますね。問題はありません。広く大量に作られる事で、酪農家、店、商業ギルド、ワタルさんと沢山の人が潤います。そしてどこでも、プリンとアイスが食べられるようになれば、民衆も喜ぶ。いい事ずくめですね」


 プリンとアイスで金儲けは有りなのか? マヨネーズは成り行きで放棄したけど……しかしカミーユさんの話って宗教家とかねずみ講とかの話し方に聞こえるんだが……大丈夫か?


「売れなかったりした時の、罰みたいなものはあるんですか?」


「いえ、ありませんよ。そんな時は、見る目が無かった商業ギルドと、見る目が無かった店が泣くだけですね。ああ、お金が入って来ない事がワタルさんの罰ですか?」


「そうなんですか」


 どうしようかな? ……寝ててもお金が入る様になるならやるべきかな?


「ワタルさん、そう言えば、シエーナ村でピザと言うものが流行っているんですが……関わりはありますか?」


「ええ、僕が教えましたけど」


「ふー、ワタルさん。レシピも財産です、商業ギルドを通せばピザも契約出来ましたよ」


「あはは、ですが故郷の料理を僕が登録しても、問題にならないんですか?」


 実際は故郷とは別の国の料理なんだけど。


「既に登録されている物は契約の時に弾かれますので、契約出来れば問題ありません」


「そうなんですか。例えばプリンですが契約した後、自力でプリンを作った人が出たら、どうなるんですか?」


「そのような場合、個人で作るのなら問題はありませんね。商売にすると、商業ギルドに報告が来ますから問題ありません。またプリンの存在を知っていて、真似して作り、製法を拡散するような悪質行為は神罰が下ります」


 創造神様は、下界にあまり干渉できないって言ってたのに、商売の神様、結構干渉してるよね? どうなんだろう?


「ありがとうございます。理解出来ました」


「いえ、それではワタルさん、契約してくださいますか?」


「分かりました。お願いします」


 奴隷商館にもあった契約の間に行き、契約文を宣言して、プリンとアイスクリームのレシピを書いてカミーユさんに渡す。アイスクリームは冷凍庫が無いので、氷と塩で作るレシピにした。


「ありがとうございました。これから、ワタルさんの口座に契約分が振り込まれます。あとクラレッタさんと、カーラさんには契約の事を伝えて、広めない様に話しておいてください」


「分かりました」


 そういえば、クラレッタさんに教えた料理や、ジーノさんに教えた料理も、特許になるのか? カミーユさんに聞いたら怒られそうだから止めておくか。


 契約を済ませ、先ほどの部屋に戻る。


「それでですね、これはお土産です。パレルモの名産品のワイン、赤と白のセットですね。あとこれはギルドマスターにお願いします」


「いつもすいません、ありがとうございます。ギルドマスターも喜んでいました」


「いえ、お世話になっているのは僕ですから、これ位気にしないでください」


「ふふ、そうですか? でも感謝してます」


 暫くカミーユさんと雑談をして、ディーノさんとエンリコさんを呼んでもらって、お土産を渡す。グイドさん達は全員島の依頼に出ているそうなので、お土産をカミーユさんにお願いして、商業ギルドを出る。


 しかし、カミーユさんの商人の顔は見たくなかったな、キツネって肉食獣なんだねって分かったよ。ちょっと怖かった。


「ご主人様、この後はドニーノさんの所かしら?」


「うん。ドニーノさんで最後だね。終わったら、あの海産物の美味しいお店でお昼ご飯を食べようか?」


「良いわね」


「賛成です」


『りむもたべる』


「決まりだね。じゃあ、ドニーノさんの所に行きましょう」  


「「はい」」 


 ドニーノさんの所に向かう、レストランも自販機コーナーも美味しいけど、新鮮な魚介を網焼きにするのは、何処だって美味しいんだ。秘密兵器もあるしね。食べたくなって来た急ごう。


「ドニーノさん、こんにちは。お土産を持って来ました」


「おうワタルか、待ってたぞ。お前が置いていった玩具、面白いな。うちの見習い達の小遣い稼ぎにもなるし、売り出したいんだが良いか?」


「ああ、リバーシとジェンガですか? 構いませんよ」


「よし、それじゃあ、商業ギルドに行くぞ」


「え? 何でですか?」


「ご主人様、商売の神様の契約を結ぶためですよ」


「ああ、なるほど、ありがとう、フェリシア。ドニーノさん、待ってください、お土産を受け取ってからにしてください」


「ん? ああ、そうだったな。ありがとう、ワタル」


 お土産を渡すと、若い衆に預けて、再び商業ギルドに戻る事になった。


 商業ギルドでカミーユさんに訳を話すと、呆れた視線を向けられて、契約の間に向かう。おかしいな、前は呆れた視線を向けられたらゾクゾクしたんだけどな……


 変態が治ったのかな? ……怖いカミーユさんを見たから、恐怖の方が勝った気がする。


 契約を済ませて、ドニーノさんは仕事に戻るそうなので、別れて、商業ギルドを出る。


「ふー、なんかよく分からないうちに契約が纏まったんだけど、いいのかな?」


 海産物の美味しいお店に向かいながら聞いてみる。


「大丈夫よ、まったく売れなくても、生活は今と変わらないわ。売れたら臨時収入が入って来る。位で考えておけばいいんじゃない?」


「基本的に今とあんまり変わらないんなら、問題無いか」


 難しい事を考えるのは止めて、魚介に集中しよう。お店で受付をして、魚介を焼く。


「じゃーん、これを持って来ましたー」


「それは、醤油ですか?」


「フェリシア、正解。売店で携帯用の調味料が売ってたので、買っておいたんだ。魚介の網焼きに醤油を垂らすと、最高に美味しいよね」


 焼けて口が開いた牡蠣に醤油とレモン汁を垂らす。アツアツの牡蠣のエキスと一緒に、身を殻から吸い出す。口の中に広がる牡蠣の風味と旨み、醤油とレモン汁が相まって、思わず震えてしまうぐらい美味しい。


 イネス、フェリシア、リムにも大好評で、辺りに魚介と醤油が焼けるいい匂いが立ち込める。


 気が付くと周りから注目されていた……いかん、アレシアさん達に、他の人に見せない様にと約束させたのに、自分で目立つことをしてしまった。


 素早く残りの魚介を平らげ、声を掛けられる前に立ち去る。危なかった、網焼きで、魚介に醤油が垂らせると思うと、それ以外を考えられなくなっていた。


「ごめん、あまり食べられなかったね、他の店に行くか、船に戻って食べるかどっちが良いい?」


「醤油の焦げた匂いって良い匂いだもの、とっても美味しかったし、目立つのもしょうがないわ。私は、昼食の続きは船で食べたいわ」


「私も船の方がいいですね」


『りむもおにぎり』


「そう、じゃあ戻ろうか。あとまたハイダウェイ号でバーベキューをしようか。調味料もお酒も増えたから、前よりも豪勢になるよ」


「うふふ、いいわね。楽しみだわ」


「ふふ、そうですね。ご主人様、沢山飲んでも構いませんか?」


「うーん、バーべキューだし、楽しもうか」


「「ありがとうございます」」


『りむもばーべきゅーする』


「うん、そうだねリム、今度一緒にバーベキューしようね」


『うん』


 昼食の続きをする為に船に戻ろう。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
商業ギルドのランクは上がらないのかしら
真似して作って焼きプリンが生まれたらそれも天罰対象なんかね? ちょっとづつ違うものが生まれてこそ発展しそうなもんだけど
[一言] 携帯用醤油てペットボトルだと思うんだけど、その素材の存在の方がやべーのに言及なしですん?
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