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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第一章 手漕ぎボートの上手な活用方法!!
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6話 生活魔法と大工さん

 朝だ……今日はギルドで初依頼を探すんだったな。洗濯物を取り込み身支度を済ませてギルドに向かう。


 えーっと、Fランクだから、Fと1つ上のEランクまでの依頼が受けられるんだな。Fと書かれたクエストボードを見てみる。草むしり、引越しの手伝い、猫探し……うーん、角兎の方が効率いいな。


 Eランクのクエストボード……ゴブリン関連は無理だし、うーん、Eランクだと討伐依頼も結構あるんだな。おっ、角兎の依頼があった、傷が少なくきちんと血抜きされた、状態がいい角兎が5羽欲しい。1羽10銅貨で8羽までなら買い取る。この依頼がよさそうだな。いつもやってる事で、失敗しそうにない。


 クエストを剥がして受付カウンターに、あっ、キツネミミさんだ。


「おはようございます、これをお願いします」


「おはようございます、装備を整えられたんですね」


「はい何とか揃える事ができました」


「ふふ、ちゃんとした冒険者に見えますね。そういえば、初依頼になるんですよね。これは少し難しいかもしれませんが大丈夫ですか?」


「難しいんですか?」


「角兎をいい状態でとありますので、傷が少なく血抜きもきちんとされていなければいけません。ただ倒すだけでは駄目な依頼ですね」


「……いつも買い取りカウンターの人にはきちんと処理されてるねと言われて、1羽8銅貨で引き取ってもらってますが、それでは駄目でしょうか?」


 あれ以上に高品質な角兎が必要なら、たしかに難しいだろうな。技術の上達と道具の品質アップが必要だ。


「あら、角兎1羽8銅貨での買い取りは高評価ですので、大丈夫ですね。では、この依頼を受理しますから、ギルドカードをお願いします」


「お願いします。あっ、あと知りたいことがあるんですが」


「なんでしょう?」


「生活魔法が使いたいんですが、魔力の認識が上手くできないんです。どこか習えるところありませんか?」


「生活魔法ですか? 子供の頃に習うはずですが、その時にはできなかったんですか?」


「子供の頃は事情があって習えなかったんです。今更ですが便利そうなので覚えられるのなら覚えてみたいなと思いまして」


 実際には数日前まで、魔法がない世界にいたんだけどね。


「失礼しました。そうですね……魔力の認識は魔力を体に通して動かしてもらうのが一般的です。医務室の先生方ならできると思います。お願いしてみてはどうでしょう?」


「医務室の先生ですか。分かりました、お願いしてみます。ありがとうございました」


「いえいえ、初依頼頑張ってくださいね」


「はい、頑張ります」


 キツネミミのお姉さん、優しいなー。義理だろうけど応援してもらったら張り切っちゃうよ。おっと、依頼前に医務室に寄ろう。魔力認識ができるようになれば、いいんだけどね。


「失礼します」


「どうされましたか?」


 うわっ、すごい美人の白衣の女医先生だ。しかも眼鏡……眼鏡があるんだ。一瞬コスプレにも、見えたけど、冒険者ギルドの職員採用にかける熱意がハンパないな。美人をスカウトする部署とかありそうだ。


「うん? これが気になるのかい? これは魔道具でね、視力が悪いのを補助してくれるんだよ。それより君は何処か悪いんじゃないのかい?」


「あっ、いえ、あのー……子供の頃、生活魔法の講義を受け損ねてまして。生活魔法を覚えられないかと受付で相談したら、医務室の先生に相談するように言われたんです。お願いできますか?」


「ああ、そういう事か。それくらいなら構わないよ。ただし覚えられるかどうかは君次第だ。5分ほど君に魔力を通すから認識できるか試してみるといい。おっと、診察料は10銅貨だが、受けるかい?」


「はい、よろしくお願いします。10銅貨です」


「では手を出して、目をつぶってリラックスしたまえ。今から君に魔力を流す、その感覚を覚えて、自分の中に似たような力がないか探したまえ」


 美人女医さんと握手してる、ドキドキするね。……いかん、魔力を認識する事に集中しないと。


「体の中に魔力が通っている感覚は分かるかい?」


「はい、先生の手から、じんわりと暖かい力が全身を巡っています」


「その魔力の側に君の魔力があるはずだ。じっくりと探してみなさい」


「はい」


 じっと目をつむり集中する。自分の中を暖かい魔力が血液の流れに沿うように全身を巡っているように感じる。この流れの側に自分の魔力が流れているらしい。落ち着いて探るんだ…………これ……かな?


「先生、先生の魔力のそばに、ものすごく薄い魔力っぽいのが流れているんですが、これが自分の魔力なんですか?」


「うーん、確実とは言えないけれど、君は魔力が少ないのかな?」


 何で知ってるんだ?って、薄く感じるって言ったからだろうな。


「たしか、魔力は18だったと思います」


「私が流している魔力は君の魔力総量よりも多いから、その魔力量だと薄く感じるのも当然だろうね」


「魔力18では生活魔法は使えませんか?」


「いや、生活魔法なら十分に使えるよ。その流れている自分の魔力の感覚を覚えておきなさい。その魔力を指先に集められる様になれば、あとは資料室に生活魔法の本があったはずだから、それで魔法陣を覚えるといいだろう」


「はい、先生ありがとうございました」


「うん、できなかったらまたくるといい。まあ、魔力を流す事しかできないがね」


「はは、駄目だったらまたきます。それでは失礼します」


 魅力的な提案をされてしまった。そんな事を言われたら、訓練しないで毎日魔力を流してもらいにきたくなるよ。……さすがにそれは考えが危なすぎるか。残念だけど、真面目に頑張ろう。


 うん、まだ何とか魔力の流れは分かるぞ。とりあえず魔力の流れを意識しながら角兎狩りだ。あっ、屋台で朝食を買っていこう。


 南西の森に到着するまでに、魔力の流れを指先に集めようとしているが、なかなか上手くいかない。少しは動かす事ができるが、すぐ元の流れに戻ってしまう。宿に戻ったら落ち着いて練習するか。


 うーん、相変わらずのルーティンワーク。角兎発見→船召喚→殴打→血抜き→船送還。


 稼げているから間違ってないはずなんだが……本当にこれでいいのか? 異世界にきて、こんな生活で本当にいいのか?


 でもなー、テンプレが起こらないんだよな。馬車を襲う盗賊。冒険者ギルドの新人いびり。まったく気配がない。冷静に考えると、そんな場面に出くわしても対処できないから助かってるんだけど……なんかこのままでいい気がしてきた。


 今は無心に角兎を狩ろう。角兎発見→船召喚→殴打→血抜き→船送還が正解なんだ。


 何羽狩れたかな……22羽か、もう少し頑張るか。


 よし、これで25羽だ……ん? 森から誰か出てくる……5人か、冒険者かな? ……なんだか妙に小さくみえる。……あれってゴブリンだよな。どうするべきか……乗船拒否があるから、勝てるとは思うんだが……よし帰ろう。無理してもしょうがないし、変に目立っても困る。


 ゴブリンに挑戦するべきだったかとも思うが、どうしたら正解だったんだろう? ……悩みながら南門にたどりつく。一応門番さんにゴブリンが5匹草原に出てきたことを報告した。次は冒険者ギルドだな。


 まだ昼を少し過ぎた辺りなので、カウンターは空いている。キツネミミのお姉さんは……いないな。朝までの勤務だったのかもしれない。


 少し残念に思うが、人族のお姉さんのカウンターが空いていたのでいってみる。この人も美人だな。さすが冒険者ギルド。


「依頼の確認をお願いします」


「はい、ギルドカードをお願いします」


「はい、あっ、その前にですね、今まで南西の森の手前の草原で角兎を狩ってたんですが、ゴブリンが5匹、草原に出てきたので戻ってきました。こんな時はギルドに報告は必要ですか? 一応南門の門番さんには報告しておきました」


「ゴブリンですか? 報告ありがとうございます。討伐されていない魔物を見つけた場合には冒険者ギルドに報告してもらえると助かります」


「分かりました。はい、ギルドカードです」


「角兎の納品、最低5羽ですね。確認します」


「8羽まで納品できるんですよね。これもお願いします」


「はい……確認しました8羽すべて十分な品質です。依頼達成ですね。これは達成報酬の80銅貨です。依頼初達成おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 無事依頼達成か。いつもと同じ事なのに、依頼ってだけで少し緊張してた。残りの角兎17羽も買い取りカウンターに持っていこう。


「買い取りお願いします。角兎17羽です」


「おっ、今日はくるの早いな」


「あはは、ゴブリンが出てきたので逃げてきました」


「おう、安全第一、いい判断だと思うぜ」


「品質よし、きちんと仕事してるな。1羽8銅貨、全部で1銀貨36銅貨だ。いいかい?」


「はい、お願いします」


 うーん、まだ宿に戻るには早いな……門から外に出て、目立たない場所でビッグ フィッシング ゴム ボートを1つ買って召喚を試してみるのもいいな。寸法通りで大丈夫そうなら、大工さんを探して小屋の相談をしてもいい。


 南門はなんか気まずいから、東門から外に出て城壁沿いを歩く。ここら辺でいいだろう。画面を開いて購入画面でビッグ フィッシング ゴム ボートを選択する……色選択もあるのか。草原で目立ちにくい深緑でいいか。……あれ? どうやってお金を払うんだ?


 ……硬貨を投入してくださいって、購買画面に硬貨投入口が出現した。スキルって不思議だな。2銀貨40銅貨を投入し、購入ボタンを押す……これでいいのか?


 おっ、船召喚のスキル画面にビッグ フィッシング ゴム ボートが載ってる。


 船召喚 レベル 1

 購入した船を召喚することができる。

 購入した船に限り最善の状態に保ち、自由に操船することができる。

 購入画面から新しく船を購入することができる。


 初期 手漕ぎボート(木製) 人数制限2


 特性 不沈・不壊 乗船拒否 



 購入 ビッグ フィッシング ゴム ボート(深緑) 人数制限4~5人


 特性 不沈・不壊 乗船拒否


 船召喚をしてみるか。「船召喚」……召喚する時に、どの船を召喚するのか選択できるようだな。魔法陣が現れ、ビッグ フィッシング ゴム ボートが召喚される。


 うん、船底が平なのは地面の上では相当なメリットだな。それに結構大きい。でも、外側と内側の広さがかなり違う。あっ、でも……寝っ転がると気持ちいい。


 大部屋は板のベッドに毛布だからな。それに比べるとゴムボートの底はかなり好感触だ。ここに毛布で十分眠れる。小屋が早くほしくなったな。


 おっ、オールの棒部分はアルミっぽい。先っぽはプラスチックみたいだな。不壊ではあるが、攻撃力は木のオールと比べたらどうなんだろう?


 ボートの大きさを調べてみよう。……寸法は購入画面通りだな。問題はオールをはめる部分が突起になっているところだな。きちんと寸法を測れば、上に乗せる小屋はなんとかなるかな?


 うーん、小屋の説明が難しい。紐を使って突起部分を説明すれば、ちゃんと説明できるか? どうやって説明するか考えながら街に戻り、宿屋にいく。


「いらっしゃい、今日は早いね。泊まるかい?」


「はい、1泊と夕食でお願いします」


「あいよ、15銅貨だよ」


 そうだ、宿屋の女将さんなら顔が広そうだし、大工の知り合いがいないか聞いてみよう。


「はい15銅貨です。それで女将さん、突然なんですが、大工さんの知り合いはいませんか?」


「大工かい? いるよ、家でも建てるのかい?」


「あはは、まさか、実は小さな小屋みたいな物がほしいんですが、いくらくらいかかるか知りたいんですよ」


「? まあいいさ。よく分からないけど、地図を書いてやるから行ってみな」


「ありがとうございます。荷物をおいてさっそく行ってみます」


 女将さんが知っていてくれてよかったな。やっぱり地元と結びつきが強い人は頼りになる。荷物をおいたあとに、女将さんからもらった地図を見ながら、大工さんの工房を探す。


「ここかな? すいませーん」


「なんだ? 客か?」


「えーっと、作ってほしい物はあるんですが、お金があまりないもので、まずはどのくらいかかるのか聞きにきました」


「おう、そうか。客の可能性があるんなら結構だ。話してみな」


「なんといったらいいのか……縦が300。横が140。高さが180の小さな箱形の小屋がほしいんです。床はいらないのですが、下の部分は縛り付けるので穴を等間隔に開けてもらって、あとはこの紐の印の部分に突起が4か所ありますので、ここだけ内側に凹ませてもらえると助かります」


「妙なもん作るんだな、床がいらねえとか縛り付けるとか」


「お願いできませんか? あと、扉は引き戸にしてほしいです」


「それで使いもんになんのか? まあいい、素材は何を使うんだ?」


「極論ですが、雨漏りがしなくて、倒れなければいいので、安ければ安いほど嬉しいですね」


「うーん、そこに廃棄するボロボロの幌馬車がある。あの素材を流用すればかなり安くなるな。見た目は悪くなるが」


「見た目の方はこの際問題ありません。1番安くなる方法だと、どうなりますか?」


 すごく安く手に入りそうな予感が……。


「そうだな……とりあえず寸法通りの木枠を馬車の廃材で組んで、床以外に筋交いをいれて天井は板張り。四方は幌馬車の幌を解体して木枠に打ち付ければ、まあ形にはなる。出入りは片面を筋交い一本にして革を捲って出入りする感じだな」


「風雨がしのげるならそれで十分です。おいくらになりますか?」


「見習いにやらせていいなら、釘くらいしか材料費かかんねえし、1銀貨でいいぞ」


 もはや買うしか選択肢がないな。


「ぜひお願いします。期間はどのくらいかかりますか?」


「見習いにやらせるからな……3日見てもらえれば十分だろう」


「完成したら夕方6の鐘頃に、冒険者ギルドの隣の宿屋の、裏の道まで運んでもらう事は可能ですか? もちろん配送料は払います」


「おう、重量もたいしてない物だからな、10銅貨で運んでやるぞ」


「助かります、1銀貨10銅貨ですね」


「おう、毎度あり」


 見積もりを出してもらって考えるつもりだったのに、あまりの安さに注文してしまった。でも、最高の買い物ができた気がする。初依頼も成功したし、何だか順調だ。予定もバッチリと熟したし、そろそろ宿に戻るか。


 ***  


「あっ、女将さん、大工さん紹介してもらってありがとうございます。すごく安かったので注文してきちゃいました」


「そうかい、まあ、よかったね?」


 女将さん、よく分かってない顔をしている。合わせてくれるだけ優しいんだろうな。


「それでですね、3日後に完成して届けてくれるそうなんですよ。届いたらすぐ動かしますんで、宿の裏の道に少しだけ置かせてください」


「裏道にかい? ……次の日の朝方までにどかしてくれたら大丈夫だよ」


「ありがとうございます」


 交渉成立。女将さんに頼む前に勝手に運んでもらう約束をしちゃったから、駄目って言われたら大工さんのところに戻らなきゃいけないところだった。


 ふいー、これで一安心だな。さて、これからどうするか……晩御飯まで少し時間があるし、小屋が完成したら必要な物を考えるか。まず必要なのは、小屋用のボートだな。それに小屋を縛り付けるロープも必要だ。あとは小屋用の毛布に、カンテラ……カンテラは必要か?


 生活魔法のライトが使えるようになれば、いらない気がする。生活魔法の進歩しだいって事にしよう。夕食が終わったら、生活魔法の特訓を真剣にやらないとな。


 そういえば手漕ぎボート(木製)はどうしよう? 戦闘用のゴムボートと、小屋用のゴムボートで普段は十分だから、木箱をいくつか買って手漕ぎボート(木製)に置いて倉庫にしたらいいかもな。これから荷物も増えていくだろうし役に立つ気がする。


 考え事をしていると、鐘が鳴った。晩御飯を食べて生活魔法の特訓だな。


 ***


 食事を終えて部屋に戻り、楽な体勢で自分の魔力を探っていく。魔力は認識できるようになった。あとはこの魔力を指先に集める事ができれば、生活魔法の魔法陣は簡単なので、すぐに使えるようになるはずだ。


 指先に魔力を集めようとしては失敗を繰り返す。指先に集められる魔力は増えているが、無駄が多いように感じる。スムーズに意識しなくても魔力を動かせるようになりたいな。寝る前の魔力の特訓は習慣にしよう。


 眠くなってきたな、明日もギルドで依頼を受けたいし、ステータスチェックをして寝るか。


 レベルは上がってない……必要な経験値?が多くなっている可能性がある。まあ、必要な物を揃えて個室の宿屋に移るまでは、角兎狩りで稼ぐかな。お休みなさい。


 残高62銅貨

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。



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