22話 閑話 創造神の危機とギルドマスターのその後
「最近の異世界人君はいい感じだよね」
「娯楽神、突然どうしたんだ?」
「だから、異世界人君がいい感じだねって言ってるの」
「そうか? なんか変わったか? 魔神、分かるか?」
「うむ、娯楽神が喜んでいるんだ、リバーシと、ジェンガの事だろう」
「ああ、なるほどな。俺が見てない間に戦闘狂にでもなったのかと思ったぜ」
「そうなんだ、リバーシとジェンガ、シンプルなのに面白いんだ。間違いなく世界中に広がるよ。でも異世界人君が、教えるだけ教えて旅立っちゃったから……あの船大工も異世界人君に許可を取るまでは売り出さないし、早く広まって欲しいな」
「まあ、まだ時間は掛かるだろうな。しかし異世界人はレベルも上がってんのに戦闘しねえな」
「うむ、魔力も上がっておるし魔法も覚えられるんだがな……もうすっかり商人になってしまったのか?」
「ありえるな、戦闘以外の金儲けを見つけちまったしな」
「そうだね、でもジェンガとリバーシみたいな娯楽をもっと広めてくれたら、僕は嬉しいな。あと美食神がピザにプリンにアイス、大喜びだったよ。やっとミルクとチーズに光が当たるって」
「本当に今回の異世界人は地味だな……」
「まあまて、異世界人は女に釣られて、徐々に行動が派手になっている。派手な行動もこれから期待できるかもしれん」
「そう願いたいもんだな」
「おっ? 創造神が異世界人を呼び出したな。覗くか?」
「そうだな、創造神がまたくだらん事を言い出しそうだ。様子を見ておこう」
「じゃあ、早く行こうよ」
「ん? 光の神か、異世界人はどうだ?」
「ええ、たわいもない話をしています。問題はありませんね」
「本当にくだらん話をしてるな」
「ああ、創造神の神像の話なぞどうでもいいだろうに」
「あはははは、まあしょうがないよ、異世界人君の立場から見れば気になるのも分かるね」
「ああ、なるほどな。仮にも創造神が自分の神像を、修正してるんだからな」
「ああ、こっちの方がカッコいいでしょ、って理由以外にも訳があれば、俺達も嬉しいな」
「まあ、ないんだけどね」
「光の神、創造神が……もう行ったか。あいつも苦労してるな」
「ああ、しかし、あんなに簡単に情報を洩らすとはな……」
「うむ、情けない限りだな」
「あははははは、今夜は徹夜でお説教だね」
……………
「創造神様、何か仰りたい事はおありですか?」
「うん、えーっとね、わざとじゃないんだよ? 話のついでにぽろっと喋っちゃっただけなんだ」
「創造神様、そこに座ってください」
「えっ? うん」
「座り方が違いますね、こういう場合は正座が基本ですよね? 創造神様ともあろうお方が分からないなんて言いませんよね?」
「う、うん」
「それでは、なんで下界に干渉してはいけないのかを、一から説明してください」
「えっ? そんなの長くなっちゃうし、航君も居るんだからそれはまた今度で……」
「そうでしたね、航さんを送って来ます。創造神様は正座のままです、動いたら……」
「分かってるよ、反省してるから逃げないよ」
「では、直ぐに戻ってまいりますので」
「う、うん」
「創造神様、航さんを送る際に、創造神様の洩らした情報で、これからの行動を変えた時の事を聞かれました。幸い変えても、変えなくても、ほぼ同じでしたから答えましたが、どう思われますか?」
「う、うん、うっかり洩らしちゃったから、危なかったけどほぼ変わらないのなら良かったよ」
「ほぼ変わらないという事は、少しは変化が起きるという事です。では、なぜ下界に干渉してはいけないのかを、心に刻み付けるまで何度も復唱してください」
「えっ? なんで増えたの?」
「直接体に刻みましょうか?」
「だ、大丈夫、心に刻み付けるまで復唱するよ」
……………
「ふむ、戦神、心に刻み付けたら、少しはまともになると思うか?」
「魔神、分かっている事をいちいち聞くな」
「あはははは、なる訳ないよね」
……………
「おっ、フェリーを買ったか、まあ豪華客船の前に買うのも悪い選択肢じゃねえな」
「うむ、龍の鱗を見つけたし、行動が派手にはなっているな」
「ああ、洞窟で船召喚が役に立つとはな、驚いたぜ」
「うむ、あそこは、探索に来る者もおらず、数百年変わる事が無かったからな。龍の素材が勿体ないと思っていたのだ。偶には船召喚も役に立つのだな」
「ああ、しかし、弓を新調したのに結局ゴブリンしか倒してねえ、いいのか? あれで?」
「もう、そこは気にするな、動きがあるだけで満足しておこう」
「そうだね、それに美食神も異世界人君にスキルか加護を与えたいって言ってたよ。ラザニアとチーズフォンデュを大絶賛してた。しかもお店にレシピを教えてたからね。大喜びだよ。フェリーの料理も興味津々だしね」
「今の所、異世界人の影響は料理と娯楽か、今後に期待だな」
「そうだな、そう言えば、創造神はどうしたんだ? 異世界人が活躍すると、ウザい位に自慢しに来るんだが」
「あはははは、まだ下界に干渉してはいけない理由を繰り返してるよ。目がいい感じに死んでた」
「おう、いいなそれ、魔神、見に行くか? 光の神に応援の差し入れ持って行こうぜ。そのまま殺してくれねえかな?」
「うむ、見に行こう。応援の差し入れは、精の付く物がよいな」
「おう、光の神、応援に来たぞ。これでも食って力付けろや。頑張れよ」
「うむ、いい感じに壊れておるな。まだまだ頼むぞ光の神」
「うはー逝っちゃってるねー、この前よりも更に逝っちゃってるねー。あはははは」
「戦神、魔神、娯楽神、ありがとうございます。しかし反応が鈍くなって来まして。そろそろ終了しようかと思ってたんです」
「あっ、光の神の言葉で、目に光が戻ったよ。まだまだいけるよ、頑張ってね光の神」
「そうですか? では、創造神様もう一度です」
「ウキャ、ウキャ、ウキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャ」
「あっ、壊れた」
「うむ、説教が終わりかけ、現状から抜け出せそうになった所で。再度始まる説教か。心が折れたな。戦神、今なら殺れるか?」
「いや、普段よりやべえ、逝っちゃってるからな。どんな攻撃してくるかもわからん。いきなり世界を壊しかねんぞ」
「それは不味いな……このまま光の神が説教を続ければ、自殺せぬかな?」
「おお、良い考えだな。頼むぞ光の神」
「好き勝手言わないでください。創造神様がいなくなったら大変なんですよ? 本当にそれでもいいんですか?」
「「いいぞ」」
「ふう、もういいです。あなた達がいると、創造神様が戻って来ません。もう戻りなさい」
「そうか? 今のままの方が楽かもしれんぞ?」
「そうだな、余計な事をしないだけでも、光の神は楽になるのではないか?」
「…………………そんな事はありません」
「大分考えたな」
「うむ」
「2人とも駄目だよ。光の神は大変なんだから、創造神を抑えてくれてるの、光の神なんだから感謝しないと」
「うむ、そうだな。すまんな光の神よ、創造神の相手、頑張ってくれ」
「おう、娯楽神の言う通りだな。悪かったな、頑張れよ」
「魔神と戦神の言葉は素直に受け取れませんが、娯楽神、ありがとうございます。あなたの言葉、とても嬉しいですよ」
「えへへ、じゃあまたね、頑張ってね、光の神」
「はい」
…………………
バルレッタの冒険者ギルドマスターのその後。
「ギルドマスター、Aランク冒険者が、龍の鱗と貴重な薬草の群生地を発見したのに、冒険者ギルドに何の情報も依頼も回って来ない事に、疑問の声があがっています」
「そうか、まさか龍の鱗なんて物が出て来るとはな、切れた事が完全に裏目に出たな」
「そもそも何で揉めたんですか?」
「ああ、受付嬢にも話せねえとか、部下を下がらせろとか、大げさに言ってんだろうと思ってな。ムカついたから、喧嘩を売った」
「はあ、そうしたら、高値で喧嘩を買われたんですか……重要な情報は、受付嬢等には話さない場合があるのは常識ですよね?」
「そんくらい知ってるよ、今までそんな事言ってきた奴の情報は、大げさに脚色して報酬を増やそうってやつばっかりだったからな。付き合うのにうんざりしてたんだよ」
「それでもAランク冒険者の情報なんですから、我慢して聞いてくださいよ」
「おう、薬草の群生地の話辺りから、重要な報告だとは分かってたんだが、引っ込みがつかなくなってな」
「それは、ジラソーレも怒りますよ。龍の鱗の情報なんて重要な報告をしに来たら、ギルドマスターに喧嘩を売られるとか訳が分かりませんよね」
「まったくもってその通りだな」
「それでどうするんですか?」
「そうだな……商業ギルドも、薬師ギルドも、枢機卿も、今回の事を聞いて冒険者ギルドを外してるからな」
「ふう、厳しいですね。あの洞窟で貴重な薬草が取れるのなら、護衛に、運搬、依頼も増えます、何とか関係を修復しないといけませんね」
「ああ、そうだな、気分は悪いが謝らんといかんだろうな」
「いや、今回の事は100%、ギルドマスターが悪いんですよ? 大袈裟でも報酬を吊り上げようともしていない。まっとうな冒険者の重要な情報を、喧嘩を売って台無しにしたのは、ギルドマスターなんですから」
「そうは言っても、話にならんとか言って帰る事は無いだろう?」
「いえ、話を聞いた限り、ジラソーレは十分我慢したと思います。群生地の情報まで出してくれたのに、態度が悪いままのギルドマスターが有り得ないんです」
「ふう、分かったよ、明日、詫びを入れに行ってくる」
「お願いしますね。あと商業ギルドと薬師ギルド、枢機卿にも挨拶が必要ですからね」
「はあ、分かったよ。各所に頭下げて来る」
「お願いします」
翌朝、ソレーヌの宿屋……
「ジラソーレの皆さんなら数時間前に出発なさいましたよ」
「なんだと? 昨日パレードが終わったばかりだぞ?」
「ええ、でも、目立ち過ぎたので、面倒事に巻き込まれそうだから、首都を出ると言ってました」
「そ、そうか、すまなかったな」
まずいな……どうする……
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