17話 サブマスターの頑張りと群生地への案内
ワタル達が商業ギルドの部屋に通されて以降。
~商業ギルドサブマスター視点~
私が部屋を出されてから暫くして、ギルドマスターから呼びだされた。国を巻き込んだ大騒動になると言った話の顛末だろう。
まあ、少し重要な事を、大げさに話を膨らませて手柄にしようとする商人もいる。今回もその手合いだろう。
「エンツォです」
「入り給え」
「失礼します」
「エンツォ、先ほどの話は大げさではなく、国を巻き込む処か大陸を巻き込む話だった。重要な話なので今日中にアドルフォ枢機卿と薬師ギルドのギルドマスターを、此処に招いて話し合いたい」
「今日中にですか? 幾らなんでも無茶ではありませんか?」
いきなりとんでもない事を言い出したな、無意味な事をなさる方ではないので、Fランクの商人が持ち込んだ内容は、それほどの重大事だったのだろう。
「うむ、だがこの話が漏れる前に手を打たねば、大混乱に陥る。後手に回れば各国が人を送り込んでくるだろう。サブマスターに頼むのは気が引けるが、君1人ですべての段取りを組んでくれたまえ」
「内容をお聞かせ願えますか?」
「うむ、詳しい事は省くが、これらの薬草の群生地が見つかった。しかも側には龍の鱗が埋まっていたそうだ」
「龍ですか?」
これらの薬草の群生地でも騒動になるのに、龍の鱗? 洒落にならんな。
「そうだ、私には龍か竜かの判断は出来んが、冒険者は1枚を大聖堂に献上するそうだ。その確認の為に枢機卿においで頂きたい。本来なら私達が出向くのが筋なんだが目立ちすぎる」
「かしこまりました」
「言うまでもない事だが、決して口外せず、君自身で薬師ギルドのマスターとアドルフォ枢機卿だけに話を通すように」
「はい」
もし本当に龍の鱗なら、わずかな国しか持っていない物だ。手に入れるチャンスがあるのなら全力で取りに来るだろう。情報が拡散したら確かに大陸中が騒ぎ出すな。神経質になるはずだ。
ふう、まずは薬師ギルドに向かうか。
「これは、商業ギルドのサブマスターが突然どうされたんですか?」
「申し訳ないのですが、緊急事態です。薬師ギルドマスターにお取次ぎ願えますか。お人払いをお願いして、1対1でお会いしたいとお伝えください」
「ただ事ではありませんな、分かりました。お伝えしますので少々お待ちください」
「はい」
薬師ギルドのマスターには群生地の情報だけで、龍の鱗の事はボカシて話そう。
「お待たせ致しました。お会いになるそうです、ご案内致します」
案内に続いて部屋に入る。
「お久しぶりです、突然の訪問、申し訳ありません」
「うん、久しぶり。手順を大事にする君が珍しいね。そんなに重大な話なのかな?」
「はい、1つは、これらの薬草の群生地が発見されました」
発見された薬草のリストを渡す……リストを見た薬師ギルドマスターの目の色が変わる。
「ねえ、エンツォ君、これって本当なのかな?」
「はい、その群生地には、それらの薬草の亜種も確認されているそうです」
「詳しい話を聞かせてくれるかな?」
「いえ、この群生地で更に問題になる物が発見されました。詳しい内容は今日中に商業ギルドにお越し頂いて、商業ギルドマスターとお願い出来ますか?」
「今日中? これより重要な話なの? なんか怖いなー、ちょっとだけ教えてよ」
「申し訳ないのですが、無理です。今日中に、出来るだけ早くお越し頂けますか? この後、アドルフォ枢機卿にもお越し頂けるように交渉に参りますので」
「枢機卿を呼ぶような話なのかい? 何が起こればそんな事になるんだろうね。分かったよこの後、商業ギルドに向かうよ」
「お願い致します。では失礼します」
「うん、またあとでね」
なんとかなったな……次は大聖堂か、こちらの方が難問だな。
「お約束はおありでしょうか?」
「いえ、ありません」
「では、お取次ぎできません。商業ギルドのサブマスターが、手順を無視するのは問題になりますよ」
「分かっています、しかし緊急事態なのです。この国に関する重要な要件です、1対1でお会いしたいと、お伝えください」
「分かりました、お伝えいたします」
なんとか会えると良いんだが。横紙破りは苦手だ。胃が痛い。
「お会いになるそうです、こちらにお越しください」
「ありがとうございます」
枢機卿の部屋に案内される。
「突然の訪問、申し訳ありません」
「ふむ、これでも私は忙しくてね、君の訪問で待たされている者もいる。それだけ重要な話なんだろうね?」
「はい、この国に混乱が起こる可能性があると判断しました」
「ほう、話を聞こうか」
「今日、貴重な薬草の群生地の発見が報告されました。問題はそのそばで龍の物と思われる鱗が発見された事です。鱗の魔力を感じ取れる者の話では、鱗の魔力に神聖な力が混じっていたそうです」
「ふむ、龍か……確かに問題になるな。発見した者の言葉は信頼出来るのかな?」
「はい、Aランクの冒険者ですので信憑性はあります。ギルドマスターも確認されたそうですが、龍か竜の判断は出来ないが、素晴らしい物だと申していました。1枚は冒険者が大聖堂に献上するそうなので、ご確認をお願いしたいとの事です」
「ふむ、確認の為に商業ギルドに出向けと?」
「申し訳ありませんが、大聖堂では人目が多く、情報が洩れ騒ぎになると判断しました。また緊急で人を派遣し、その地を保護しないと、貴重な財産が荒らされる可能性があります」
「分かった、確認せねば話にならんか。この後1つ外せぬ案件がある。その後、商業ギルドに向かう。君は戻って出来る準備をしておきたまえ」
「はい、ありがとうございます」
「ふう」何とかなった。後はギルドマスターに報告して……まだまだ忙しくなりそうだな。
~商業ギルドサブマスター視点終了~
結構な時間を待たされて、暇なのでリムとふうちゃんと遊ぶ。僕には見えないが、リムが僕の頭の上に乗ると、ふうちゃんが追いかけてリムの上に乗っているらしい。これが女性陣に大うけしている……僕も見たい。
リムとふうちゃんと遊んだり、女性陣と雑談したりで時間を潰していると夕方になった……まだかな? 夕食の心配をしていると、ついに呼び出され、ギルドマスターの部屋に案内された。
「待たせたな、こちらがアドルフォ枢機卿で、あちらが薬師ギルドのマスターだ、挨拶を」
「挨拶はよい、時間が無いのであろう? さっそく龍の鱗を見せなさい」
「は、はい」
布を取り外し枢機卿の前に鱗を運ぶ。
「確かに、神聖な力を感じる、凄いな、これが龍の鱗か……君達はこれを大聖堂に献上してくれるのかね?」
「はい」
「ふむ、これだけの物だ、献上の際には教皇様にお受け取り頂くべきだな。大々的にやらねばならんな」
おうふ、枢機卿が不穏なお言葉を発しておられる……何とか逃れないと。
「アドルフォ枢機卿、その前に群生地の保護をしなくてはなりません」
「そうだったな。貴重な薬草がある地だったな……薬師ギルドから詳しい者を派遣させよ。大聖堂からも騎士を派遣しよう。まだ鱗が埋まっている可能性はあるのか?」
「表面上は全部探索したそうですので、後は深い場所に埋まっている可能性ですが……貴重な薬草の群生地ですので、慎重な行動が必要になります」
「そうか、騎士達が休める場所はあるのか?」
「いえ、洞窟の前には小さなスペースがありますが。群生地に下りる大穴は、崖の中腹ですので、殆どスペースはありません。大穴の中で光が届かない場所は、広いスペースがあるそうですが。強風と暗闇で野営には向かないかと」
「ふむ、騎士達には外で野営をさせるとして……身軽な者達も必要だな。ん? そういえば冒険者ギルドのマスターは来ていないのか?」
「はい、冒険者ギルドのマスターは、あの者達と揉めたそうなので、呼んでいません」
「そうか、では、明日の早朝に群生地に出発するように手配しておく。お前達は案内を頼むぞ。日の出前に大聖堂に来るように」
「はい」
何のために長時間待たされたの? 殆ど僕達の意見を聞かないし、なんか明日の朝から案内する事になっちゃったし。もう面倒だな。でも逃げるともっと面倒になるんだろうな……
そのまま、商業ギルドに泊まる事になった。逃げたいと思ってるのがバレたか?
「みなさん、すいません。明日の朝から案内する事になりました」
「ふふ、聞いてたから知ってるわよ。まあ、他の誰かに荒らされても困るし、しょうがないわよ」
「思った以上に大事になっちゃいましたね。なんか鱗を教皇様に直接献上するような事を言ってましたよ。その時はジラソーレの皆さんがお願いしますね」
「ふふ、さすがにしょうがないかしら? ワタルさんが献上したら目立ち過ぎるわね」
「ええ、Fランク商人が、教皇様に龍の鱗を献上なんて目立ち過ぎますよ。ジラソーレの皆さんが献上すれば華やかですし、Aランク冒険者なら納得してくれます」
「そうかしら? あっ、龍の鱗はどうするの? ワタルさんに送還してもらう事も出来ないし。商業ギルドで預かってもらうしかないのかしら?」
「そうですね、夕飯を持ってきてくれるそうですから、その時に頼んでみましょう」
夕食を食べ、その時に職員さんにギルドマスターへの言付けを頼むと、夕食後わざわざ会いに来てくれて、ギルドの専用保管庫で預かってくれる事になった。
翌朝、日の出の少し前に馬車で大聖堂に向かうと、もうすでに全員が揃っていて、挨拶もそこそこに出発する事になった。
先発隊なので、騎士20人、従者40人、薬師ギルド5人、と少人数だそうだ……65人って多いと思うけどね。全員が馬か馬車に乗り出発した。
薬師ギルドの5人が、貴重な薬草の群生地に行ける事が嬉しいのか、ハイテンションではしゃいでいたのが印象的だった。
2日間で小さな村に到達して、村に馬車と馬を預ける。村人は突然の騎士の訪問に大慌てだ。下手したら村人より多い馬を預かる事になって、大混乱だ。
大混乱の村を後に、まずは洞窟に向かう。ここで5人の騎士と10名の従者が分かれ。そのままマリーナさんの案内で崖に向かう。
騎士とか偉そうだし、面倒事になったら嫌だなっと思っていたら。穏やかで物腰の丁寧な人達で驚いた。薬師ギルドの職員の方が面倒だったのは予想外だ。
薬師ギルドの職員も悪い人達ではなく、ただひたすらに洞窟内の様子や、気温、どんな植物が生えてるのか? など暇さえあれば聞いてくる。もう直ぐ見れるのに我慢が出来ないらしい。
崖に着くと暗くなって来たので野営の準備をする。薬師ギルドの職員がチョットだけ中に入りたいと騒いで怒られている。
しかし集団行動だと船召喚のスキルが使えないので、かなり不便だ。気が付かない間に、かなりスキルに依存していたようだ。
特に食事が商業ギルドが用意してくれた携帯食ばかりで、目に見えて分かるぐらいにカーラさんがしおれていた。
リムとふうちゃんも携帯食が気に入らないみたいで。食事の時に思念で『きらい』と伝えて来た。人目をはばからずに、船召喚をしそうになった。
帰りに美味しいご飯を沢山出す事を条件に、リムとふうちゃんには我慢してもらったが、いつの間にかカーラさんも現れていて、カーラさんとも約束した。
翌朝、身軽な従者がさっさと崖を登り上から頑丈な縄梯子を垂らした。中に入るのは騎士5人、従者10人、薬師ギルドの5人で。他はこの周辺の整備をするそうだ。
崖の上に、従者が何度も縄梯子を運んでいく……そうだよね、あの穴、相当深いもんね。
僕達はお役御免なのかと思っていたら、最初の1回は一緒に中に入って説明して欲しいそうだ。僕は当然居残りをして。アレシアさん、マリーナさん、クラレッタさんが中に入り説明をしていた。
後でアレシアさんに聞いたら、震えながら縄梯子を下りて来た薬師ギルドの職員は、下りた時にはへたり込んでいたのに、植物を見た瞬間、奇声をあげながら突撃して、周辺の説明の間いっさい戻って来なかったそうだ。
一通りの案内を終えて、僕達は2日掛けてバルレッタに戻った。もちろん帰りの食事は、船召喚でたっぷり出した。
カーラさん、リム、ふうちゃん、はいつもの2倍は食べていたが、他のメンバーも1.5倍は食べていた。うん、携帯食って美味しくないもんね。
街に戻って、商業ギルドに報告に行く。ギルドマスターに報告すると、今回の事は依頼扱いになって依頼料が出るそうだ。1人1金貨と太っ腹な依頼料だった。
ついでに龍の鱗の事を聞くと、献上する鱗は、鱗を大通りで見せびらかしながら運び、教皇様に直接献上する事は決まっているが、時期はまだ決まっていないそうだ。この時に僕は参加しない事をお願いした。
商業ギルドの人間がいなくなるので少し渋られたが、Fランク商人がそんな晴れ舞台で目立っても碌な事にならないと力説したら何とか納得してくれた。
オークションに関しては7ヶ月後に開かれる、この大陸最大のオークションに出品してみないかと打診された。商業ギルドが大陸中に宣伝して煽りに煽ってくれるそうだ。
手数料は落札額の1割だが損はさせないっと鼻息荒くお願いされたので、アレシアさんが許可していた。オークションに来れなくても、出品して代金はギルド口座に振り込んでくれるそうだ。
依頼料を受け取り、ソレーヌの宿屋に戻る。部屋が取れたのでお湯を貰って体を拭いて、のんびり休むことにした。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。




