9話 ベルガモでの1日とバルレッタへ出発
船に戻り貯金船に40白金貨置いて送還する。全部で66白金貨か、首都でも30白金貨下ろせれば96白金貨になる。フェリーの誘惑が強くなるな。
「ねえ、ワタルさん、秘密なら別に答えなくてもいいのだけど。そんな大金をなんで現金で持っているの?ギルドカードに入れておいた方が便利よ?」
「うーん、まあ、殆ど話しているので秘密にしてもしょうがないですね。僕の船召喚のスキルは、現金で購入した船じゃないと召喚できないんですよ。だから次の船を買う為に、今のうちから現金を用意してるんです。秘密ですよ」
女性陣全員が頷いてくれた。
「ルト号でもハイダウェイ号でも十分凄いと思うんだけど、まだ船を買うの? どんな船を買うのかしら? 買ったら私達ものせてくれる?」
あれ? どうなんだろう? 豪華客船や、フェリーを買って、ジラソーレのメンバーを乗せての船旅……物凄く楽しそうだ。
でも、さすがに豪華客船やフェリーを見たら、異常過ぎるとか思われるよね。異世界の物も溢れてるんだから異世界人ってバレるし……ユニークスキルは話したけど、異世界人って事まで話して大丈夫なのか?
映画やアニメを見たら、さすがに異世界人って事を隠すのは無理だろうし……どうしよう?
でも豪華客船のプールサイドで、イネスとフェリシア、ジラソーレのメンバーの水着姿を堪能しながらお酒を飲む……夢だよね。
「あの、ワタルさん、駄目だったらいいのよ。無理しないでね……駄目ね聞こえてないわ、どうしたらいいのかしら?」
「大丈夫よ、ご主人様は、あなた達を乗せてからの事を考えてると思うわ」
「ええ、特に問題は無いと思いますよ、アレシアさん」
「そうなのかしら?」
スケートリンクで巨乳美人のお姉さん達と遊ぶ未来。美味しい食べ物を一緒に食べて喜ぶ未来……
異世界に来て、こんな光景が見られる可能性を、自分から捨てるなんてありえない。駄目だったら引き籠ればいいんだ。なら水着が見れる選択をするべきだろう。
「ええ、もちろんですよ、アレシアさん。少し驚く事があるかもしれませんが、楽しい船旅が送れる船ですので、楽しみにしていてください」
「そ、そう。ありがとう、楽しみにしているわ」
「ワタルさん、その船を買ったらもっと美味しい物が食べられるようになる?」
「ええ、沢山食べられるようになりますよ。カーラさんも楽しみにしていてくださいね」
「うん、たのしみ」
勢いで選択しちゃった、でもあの眩しい笑顔のカーラさんを見れたんだ、間違っていないはずだ。
「じゃあ、この後は自由行動ですね。イネスとフェリシアとリムは行きたい所はある?」
「私は特に行きたい所はないわね、ご主人様に任せるわ」
「そうですね、私も特にないです」
『わかんない』
「じゃあ、僕達は市場やお店を見に行こうか。あっ僕は弓を買わないといけないし、先に武器屋に行こう」
「「はい」」
「ついでにイネスとフェリシアの装備を良い物に買い替えよう」
「ワタルさん、武器の買い替えなら首都に行ってから買った方が良いわよ」
「そうなんですか?」
「ええ、やっぱり良い物は、国の中心に集まるわ。後はダンジョンか生産地ね」
「そういう事なら、武器屋は首都で行く事にして、予定通り市場に行こう」
「「はい」」
「ワタルさん市場ならご一緒してもいいですか?」
「私も行く」
「いいですよ、クラレッタさん、カーラさん、ご一緒しましょう」
市場を見て回る、うーん港町だからか? 南方都市と変わらない品揃えっぽい。なんか面白い物はないのか。
「皆さん、パレルモの名物って何か知ってますか?」
「「「「知りません」」」」
「うーん、南方都市とあんまり変わりませんよね? お土産はどうしよう」
「あのーワタルさん、お土産もここで探すより、首都で探す方が良いと思いますよ」
「あー、そうですね。今日は美味しそうな食べ物を探しましょうか」
「美味しい物食べたい」
『りむも』
「あはは、色々食べてみましょう」
市場や屋台を回り、気になった物を片っ端から食べてみる。味付けはちょっと違うな、使ってるハーブが違う。
一通り市場を巡り、宿に戻る。
「楽しかったですが、そこまで珍しい物は見つかりませんでしたね」
目新しい物は無かったけど、4人の美女とお買い物、楽しくない訳ないよね。周りの視線は怖かったけど。
「そうですね、美味しい物もありましたが、あまり南方都市と変わりませんでしたね」
「首都に期待する」
「そうですね。首都でも食べ物屋巡りをしましょうか」
「たのしみ」
『りむも』
「リムも楽しみなんだ。今日みたいに沢山食べようね」
『たべる』
暫くするとアレシアさん達が帰って来た。
「ワタルさん戻ってたのね、夕食はどうするの?」
「僕は市場で食べましたので、今日はもう止めておきます。イネス、フェリシアはどう?」
「私もいらないわ」
「私も大丈夫です」
「そう、カーラとクラレッタはどうする?」
「私はいいです」
「食べる」
カーラさん、食べるんだ……何となくそんな気がしてた。
『りむも』
「えっ? リムも食べるの? 市場で沢山食べたでしょ? まだ食べれる?」
『たべれる』
「リムちゃん、夕食をたべるんですか?」
「ええ、食べるそうです」
「そうですか、ワタルさん達は夕食を食べないんですよね? 私がリムちゃんを連れて行ってもいいですか?」
「ちょっと、聞いてみますね」
「はい」
「リム、ドロテアさんが、一緒にご飯を食べに連れて行ってくれるって。一緒に行ってくる?」
『どろてあ、いっしょ』
「一緒に行くそうです、ドロテアさん、お願いしてもいいですか?」
「はい、リムちゃん、こっちにおいで」
僕の腕の中から、手を広げたドロテアさんのお胸様に飛び込むリム。可愛いけど羨ましいな。
「あっ、ワタルさん、食事が終わったら、お願いがあるの。部屋で待ってて貰える?」
「分かりましたアレシアさん。お待ちしてます」
なんだろう?
部屋に戻って、イネス、フェリシア、クラレッタさんと雑談しているとアレシアさん達が戻って来た。
飛びついて来たリムを受け止める。癒される。
「リム、ご飯は美味しかった?」
『おいしかった、うれしい』
「ドロテアさん、リムが嬉しいそうです。ありがとうございました」
「いいんですよ、私もとっても楽しかったんですから」
「ありがとうございます」
「ワタルさん、お願いなんだけど、シャワーを使わせて欲しいの、いいかしら?」
「ええ、もちろんですよ。直ぐに行きますか?」
女性陣は全員シャワーを浴びるそうなので、みんなで船に向かう。
「ありがとうワタルさん。でも1日シャワーを浴びないだけで、落ち着かなくなっちゃたわ。知ってしまうと探索中が辛いわね」
ん? 考えてみたらそうだよね。毎日、お風呂や、シャワーを使用してたら、無くなると辛い。……良い物を沢山使って貰って、僕(船召喚)から離れられなくなれば……行けるか? ハーレム!
「私もよ。ワタルさんに責任を取ってもらわないとね」
イルマさんも来た、喜んで責任を取りたいんだけど。ここで話に乗ったら大惨事な未来しか見えない。
「ねえ、ワタルさん」
イルマさんが被せてきた、逃がす気は無いみたいだ。無難な回答をしないと、言質を取られたら弄繰り回される。
「あはははは、そうですか? そんなに気に入って貰えたのなら嬉しいです。責任を取った事になるのか分かりませんが、シャワーを使いたい時は言ってください。使用出来る時ならいつでも大丈夫ですから」
「ありがとう、ワタルさん」
「嬉しいわ」
やり過ごせたか? イルマさんは突然、含みを持たせた質問をしてくるから危険だな。しかも色っぽい声音と妖艶な雰囲気で聞かれるから、フラフラと痛い事を言いそうになる。
ルト号に到着して順番にシャワーを浴びる。
「ふー、スッキリしたわ。シャワーってやっぱり気持ちがいいわ」
ゴクゴクと差し出したリンゴジュースを飲みながら言う、アレシアさんの笑顔、最高です。
ジラソーレが、自由に過ごしながら、流れるようにシャワーを浴びていく。
色っぽい湯上り姿を堪能しながら、サロンで今後の予定を話し合う。
「ワタルさんのこの街での予定は、全部終わったのよね?」
「はい、終わりました」
「なら、もう明日出発するか、宿を取った分だけこの街でのんびりするか、どっちかかしら? 何か要望がある人はいる?」
イネスとフェリシアに聞いてみると、何もないそうだ。
「アレシアさん、僕達はどっちでもいいので、皆さんに合わせます」
「分かったわ。こちらも特にやりたい事も無いみたい。今までも休日みたいなものだったし、明日、出発出来るなら出発しましょうか」
「分かりました。でしたら帰りに商業ギルドに寄って、馬車を2台借りられたら出発しましょう」
「ええ、それじゃあ行きましょうか」
商業ギルドに寄って、聞いてみると、馬車2台を問題無く借りられるそうなので予約と費用を先払いして、明日の朝、出発に決まった。
宿に戻って、女将さんに訳を話すと、1泊分の宿代を返却してくれた。久々の陸路の旅になるな……陸路で旅した事ってあったか? ……ああ、南方都市に向かう時、川に着くまで陸路で移動したな。
明日の早朝に出発が決まったので、もう部屋に戻って休むことになった。おやすみなさい。
朝か、目が覚めてじっくり朝の日課をする。毎日でも飽きない物なのですね。美人は3日で飽きると聞いた事があるけど、全然飽きないよ。まあ最後まで出来てないからかもだけど。
さて今日からバルレッタに出発だな。身支度を整え食堂に向かう。すでに集まっていたジラソーレと挨拶をして、朝食を取る。
「では、僕達は船で出航して、送還してから、門の前で待っています。馬車はお願い出来ますか?」
「ええ、分かったわ。ワタルさん達の方が時間がかかりそうだから、少し遅れて宿をでるわね」
「ええ、よろしくお願いします。では、出発しますね」
「ええ、気を付けてね」
船に戻り、係留所で1日早く出航する事を告げると、ここでも1日分の料金を返却してくれた。返却してくれるのなら、多めに払っておくのもいいかもな。先に確認してからじゃないと駄目か。
出航して、人目の無い所まで船を走らせる。陸地に寄せて降りてから送還する。
「ふう、後は待ち合わせの西門に向かうだけだね。意外と遠くまで来ちゃったし、戻るのに時間が掛かりそうだから、急ごう」
「「はい」」
30分程歩いて西門に着くと、ジラソーレがすでに待っていた。
「みなさん、お待たせしました」
「ふふ、そんなに待ってはいないわ、それで馬車に分かれて乗るんだけど、ドロテアとマリーナがリムちゃんと一緒が良いみたいなの。そちらに乗せて貰っていいかしら?」
「はい、構いませんよ。では、出発しましょう」
手早く2台の馬車に分乗して出発する。
イネスも御者が出来るそうなので、こちらの馬車はイネス、ドロテアさん、マリーナさんの3人で御者を交代する事になった。フェリシアもこの機会に、御者の勉強をするそうだ。
ガタガタと揺れる馬車に、最初の5分で挫けそうになる……お尻が痛い。
「ワタルさん、辛そうだけど、大丈夫?」
「馬車は、初めてなんですが、予想以上にきついです。ドロテアさんは平気なんですか?」
「ええ、何度か乗ると慣れますよ」
「そっ、そうですか」
こんな時こそ知識チートだ! ……板バネとか懸架式馬車だっけ? 板バネは何処に差し込めばいいのか分かんない。懸架式は……吊り下げればいいだけなのか?
まずい、ふんわり、知っているだけで、まるで役に立たない……機会があったら相談しよう。まずはお尻の痛さを何とかしないと。
幸い商業ギルドの馬車で、荷物を積み込むために椅子等はついてなくて床は平だ。船召喚で何とかしよう。
「すいません、ドロテアさん、馬車を止めるように言ってもらえますか? ちょっと試したい事があるので」
「分かりました」
馬車を止めて貰い、外に出る。後ろを走っていたアレシアさん達も、馬車を寄せて、外に出て来た。
「ワタルさん、どうしたんですか?」
「すみません、アレシアさん、初めての馬車で振動が思った以上だったので、ちょっと何とかしようかと」
「なんとかですか?」
「ええ、見ていてください」
馬車の荷物を降ろしてもらい、平のスペースに座る場所が付いているゴムボートを購入、召喚する。ズレない様に馬車に縛り付けて完成だ。
座ってみると空気を入れた椅子なので柔らかい。これなら、揺れはともかくお尻のダメージは軽減されるはずだ。
「ワタルさん、良いわね。本当に凄いスキルね。私達の馬車にもお願い出来る?」
「ええ、もちろんです」
アレシアさん達の馬車にもゴムボートを設置して、再び出発する。
「ワタルさん、この船はいいですね。柔らかいですし、座る所もついています。とっても楽です」
「ええ、これなら僕でもなんとか耐えられそうです」
バルレッタ到着まであと3日……なんとか耐えられそうだ。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。