2話 リバーシとクリームシチューとプリン
昼食を屋台の物で済ませて、のんびり紅茶をすする。紅茶もいいけどコーヒーも飲みたいな。フェリーには缶コーヒーが売ってたし、やっぱりフェリーも欲しい……悩む。
イネスとフェリシアは操船に戻り、ジラソーレも既に防具を外して思い思いにくつろいでいる。思い切りがいいよね。
そして防具を外したら、皆さんのお胸様がより鮮明に……とても素晴らしいのです。
こっそりドキドキしていると、ドロテアさんと、マリーナさんに遊んでもらっていたリムが近づいて来た。
『りばーし』
「ん? リムはリバーシがしたいのかな?」
『うん、りばーし』
「そっかーじゃあ皆でしようね」
『うん』
「みなさん、ゲームがあるのでお付き合い願えますか?」
「ゲームですか?」
「ええ、単純なんですが奥が深いゲームです。リムも出来るのでお付き合い願えますか?」
「リムちゃんも出来るんですか、ぜひ教えてください」
「私も」
リムに注目していたドロテアさんと、マリーナさんが直ぐに食いついて来た。2人にルールを教えながら対戦してもらう、後ろから他のメンバーも見ている。
「ここには置けますよね?」
「あっ、マリーナさん、そこもひっくり返りますよ」
「えっ? ああ、斜めもひっくり返るんでしたね」
単純なルールなので、2人とも直ぐにルールを覚えて交互に石を置き合っている。
「意外と簡単そうね、奥が深い所が分からないわ」
「アレシア、リーダーなんだからよく考えないと駄目よ」
「イルマは何かわかったの?」
「簡単な事だけね。まだまだ理解できてない事が沢山ありそうね」
「どんな事なの?」
「秘密よ、やってみないと正解してるか分からないわ」
「もう、言うだけ言って、教えてくれないのはずるいわよ」
「うふふ、ごめんね、でも秘密よ」
アレシアさんもイルマさんも興味を持ってくれてるな。カーラさんとクラレッタさんも話し合ってルールを確認しているし、気に入ってくれそうだな。
この勝負、勝ったのはドロテアさん。マリーナさんは悔しそうにリバーシの盤面を見つめている。マリーナさんって、あまり感情を表に出さないと思ってたんだけど、意外と負けず嫌いなのかな?
「次は誰がやりますか?」
『りむ』
「ああ、そうだったね、リムがやりたいんだよね。だれかリムのお相手をお願い出来ますか?」
「じゃあ私が」
「ちょっと、ドロテア、連続でやるのはズルいわ。リムちゃん私が相手よ」
アレシアさんが相手か、リムは昨日結構学習してたからな。勝っちゃいそうなんだけど……プライドとか大丈夫かな? うーん、まあいいか、どうなるのかなんて分かんないんだし。
「それじゃあアレシアさんお願いします」
「ええ、わかったわ、リムちゃん手加減しないからね」
あっ、これってアレシアさんが負けるパターンだ。これもフラグが立ったって言うのかな? 対局が進む、現在アレシアさんの白石が多いが、リムは明らかに後半戦を意識して石を置いている。リム、凄いよね。
アレシアさんは、石が多くひっくり返る所に置くだけだ。何も考えてない……イルマさんも気が付いているのか、可哀想な子を見る目でアレシアさんを見ている。
「えっ、ちょっと待って、なんでそんなにひっくり返るの? あっリムちゃん、ちょっと……」
フラグ通りにアレシアさんが負けた……
「リムは天才なのかな? 凄いね、リムが勝ったよ、リム強いね」
『りむてんさい? りむつよい?』
「そうだよー、リム強い」
『りむつよい』
アレシアさんに勝ったリムを褒め称えていると、ドロテアさんと、マリーナさんも合流。3人でリムを褒めまくる。背後には後半あっさり逆転されて、へこむアレシアさん、ポヨンポヨンと勝利を喜ぶリム、明暗がくっきりだね。
「そんな……私……スライムに負けたの?」
ドロテアさんとマリーナさん以外のメンバーに、憐憫の眼差しを送られるアレシアさん。ショックが大き過ぎて周りの視線に気が付いてない所が更に憐れだな……
ジラソーレのメンバーは、アレシアさんの事をそっとしておく事にしたようだ。残りのメンバーで対戦を繰り返している。
1番強いのはイルマさんで、2番目はドロテアさん、後は横並びだ。そこにリムも混ざって楽しそうにはしゃいでいる、あと2セットぐらい作って置けばよかったな。
イネスとフェリシアの様子を見に、紅茶を持ってフライングブリッジに上がる。
「イネス、フェリシア、紅茶だよ。そろそろ交代しようか?」
「ありがとう、ご主人様、でも夕食まで私達で大丈夫よ」
あー、これは、魔物が襲ってこなくて不完全燃焼っぽいな。明らかに魔物の襲撃を待ちわびている。
「うふふ、ご主人様、中はとっても楽しそうね」
「うん、リバーシで盛り上がってるよ。なかなか好評で嬉しいよ」
「リバーシは面白いわよね。誰が一番強いのかしら?」
「今の所、イルマさんが一番だね。でもリムもドンドン強くなってるし、イネス、フェリシアも、昨日のようにはいかないかもね」
「怖いわね」
「いくらリムちゃんと言えど負けられません」
うーん、アレシアさんのショックを見てると、リムに負けてしまった時の2人が心配だな。でもムキになってリムを悲しませたんだからしょうがないよね。
「どうかな? 2人がリムに敗れる日は意外と……まあ、疲れたら交代するから、無理はしないでね」
言うだけ言ってサロンに戻る。後ろで何か言っているが気のせいだろう。戻ると今は、カーラさんとクラレッタさんの対戦か、2人とも勝負にはあまりこだわらないのか、楽しそうに対戦している、和むな。
のんびり紅茶を飲みながら、美人が楽しそうに騒ぐ光景を眺める……幸せだ。
1度だけ魔物の襲撃があったが、問題無く対処できた。少し早いが明るい間にハイダウェイ号を見せたかったので、早めに今日の操船は止める事にする。
「みなさん、今日は夜になったら休む船を案内しますので、早めに停泊します。今から案内したいのですが大丈夫ですか?」
「夜に休む船は別なの? この船でも十分に休めそうなんだけど」
そうなんだよね。ルト号での生活を満喫してから、ハイダウェイ号に移ろうかとも考えたんだけど……ジャグジーが楽し過ぎた。
ジラソーレが船旅や僕の能力に慣れて落ち着く前に、色々説明して暗くなってジャグジーになだれ込めば……一緒に入れるかも? との計算もある。
上手に事を運べれば、パレルモに着くまでの船旅は、楽しい物になるだろう。僕、本気で頑張るよ。
「ええ、アレシアさんの言う通り、この船でも大丈夫とは思うのですが、もう一つの方が、ゆっくり休めるので、夜は船を移ります」
「この船でも凄いのに、それよりゆっくり休める船があるなんて、ワタルさんって凄いのね」
「はは、まあ、凄いのはスキルなんですけどね。問題無いなら案内しますがどうですか?」
「ああ、そうだったわね、荷物も持って行った方が良いかしら?」
「そうですね、着替えと、先日案内した店で作った服……甚平と言うのですが、その甚平と、武器……後は泊まりで必要な物があればそれを持って行った方が良いですね」
「分かったわ、準備をするから、時間を貰ってもいい?」
「ええ、準備が終わったら声を掛けて下さい」
「ええ、ありがとう」
うん、甚平の事を言えて良かった。みんなの準備が終わるまで、紅茶のおかわりでも……
「ワタルさん、お待たせしました」
はやっ、もう?
「いえ、全然待っていませんよ。皆さん準備が早いんですね」
「そうですか? まあ、冒険者ですからね」
そういえば、この人達って美人なんだけど、凄腕の冒険者なんだよな。美人で戦いとか関係なさそうなのに、実際は信じられない位強いとか、レベルって怖いよね。
「で、では、後方デッキに行きましょうか」
全員で、外に出て見守られる中、ハイダウェイ号を召喚する。大きな光の魔法陣にジラソーレのメンバーが息を呑む。
「皆さん、これがハイダウェイ号です」
「大きな船ね……このハイダウェイ号? も中に入ったら凄いのかしら?」
……あれ? 反応がイネス達と違う。……ああ、船偽装してたんだった。そうだよね、今の外見はちょっと変わった中型船ぐらいにしか見えないんだ。それなら驚きはしないよね……やり直したい。
「ええ、中は凄いですよ。案内しますので、皆さん乗り移ってください」
乗船許可を出し、ハイダウェイ号に乗り移る。船偽装をした外部を越えると、独特のデザインの船にジラソーレが驚く。
「ワタルさん、外側と内側の雰囲気が違い過ぎだと思うのだけど。どうしてなのか聞いても良い?」
「ええ、アレシアさんが仰った通り、ルト号もハイダウェイ号も、外観で目立ち過ぎるので、スキルの力で外観を目立たない様に変えているんですよ。今度、本当の外観をお見せしますね」
「そうなの、教えてくれてありがとう。本当の外観を見るのが楽しみだわ」
「結構凄いので、驚くかもしれませんね。では、内部の案内をしますね」
まずサンデッキを案内すると、期待通り、ジラソーレはお風呂に食い付いてくれた。
「ワタルさん、あのお風呂は入れるの?」
「ええ、アレシアさん、入れますよ。ちょっと特殊なので、夕食の後に説明しますね」
「はい、お願いします」
ジラソーレ、島でもお風呂が好きだったからな。楽しそうにお風呂を見ている。緊張して来た。
「次は中を案内しますね」
「はい」
一通り内部を案内して、ソファーに座り紅茶を飲みながら休憩する。
「だいたい、こんな感じですね。質問はありますか?」
「そうね、よく分からない物もあったし、気になった時に質問させて貰ってもいい? 今は考えが纏まらないわ」
「ええ、では気になった時にその都度質問してください。ああ、部屋は2部屋を僕達が使いますので、残り4部屋を使ってください」
「4部屋も使って良いの? 2部屋でも何とかなるわよ?」
さすがに1部屋3人は狭いだろう……僕はイネス、フェリシアと3人で使ってるけど、それは別の話だ。
「部屋が余ってもしょうがないので、4部屋全部使ってください」
「ありがとう、使わせてもらうわね」
「ええ、じゃあそろそろ夕食にしましょうか」
「うん」
カーラさんの返事が早い、もう立ってるし。夕食を楽しみにしてたからな。バーカウンターの側が食堂みたいだから、ここで食べよう。移動して料理を並べる。
「皆さん、ミルクを使っていますので、苦手な方、口に合わない方は別の料理をお出ししますので、遠慮なさらず言ってくださいね」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
「では、いただきます」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
「ミルクを使った料理? はじめてね」
「あっ美味しいわ」
「ジャガイモが好き、ホクホク」
皆の声を聞いてみると、なかなか好評のようだ。受け入れられて良かった。一番料理を楽しみにしていてくれたカーラさんは……うん一心不乱に食べてる。気に入ってくれたみたいだ。
大鍋で作ったのに皆のおかわりが殺到して、直ぐに空になってしまった。なんか凄く嬉しい。デザートのプリンがあるんだけど、食べられるかな?
「皆さん、まだデザートが残ってますけど、食べられますか?」
全員問題無いそうだ。太る心配とか無いのか? まあ、冒険者の運動量ならこれ位平気なんだろう。プリンはお皿にひっくり返して、プルンプルン感を楽しんで貰いたかったが、上手く出来る自信が無かったのでそのまま出すことにした。
「このデザートはプリンと言います。どうぞ、食べてみてください」
「柔らかくて、変わった感触ね。あっなにこれ美味しい」
「私、この苦みが微かにある、甘いソースが好きです」
「え? 何処にあるの?」
良かった、好評だ。バニラエッセンスが無いので香りが足りない気がするけど、それ以外は満足できる味になってる。
次は作り置きも考えて多めに作ろう。あっ、カーラさんが食べ終わって、悲しそうな顔でカップを見ている。おかわりは無いんだよね。
「カーラさん、僕の取って置きはどうでしたか?」
「ワタルさん、とっても美味しかった。おかわりはある?」
感想を聞いたら、おかわりの要求が付いて返って来た……
「おかわりは無いんです。今度は沢山作るので我慢してくださいね」
「うん」
失敗するかもって最小限で作ったのが裏目に出たな。未だにカップを見つめているカーラさんを見ると、ここでプリンのおかわりを出せれば喜んでくれたのにね。失敗したな。
他のメンバーもおかわりが無いのを聞いてがっかりしてる。でもクラレッタさんは一緒に作っておかわりが無い事は知っていたのに、なんでがっかりしてるの?
「では、ちょっと後片付けをしますので、休憩していてください」
「後片付けは私達がするわ、ワタルさん達が休憩していて」
「大丈夫ですよアレシアさん。ここのキッチンに慣れている僕達の方がはやく終わりますから」
「うーん、お世話になりっぱなしで申し訳ないんだけど」
「気にしないでください」
「じゃあ、人数が多くても問題ですし、私がお手伝いします」
「私も」
「んーそうですか? ではお願いします」
「「はい」」
皆でキッチンに食器を運んだ後、僕と、イネス、フェリシア、クラレッタさんとカーラさんで食器洗い、後片付けをする。
「お2人とも、ありがとうございました」
「いえ、私達が食べたんですから、手伝うのは当然ですよ、ね、カーラ」
「そう、洗い物ならお手伝いできる。またプリンが食べたい……沢山」
「もう、カーラ、お手伝いに報酬を求めてはいけませんよ」
「だって、プリン食べたい」
「あはははは、良いんですよクラレッタさん。今日は失敗するかも知れなかったので、少ししか作りませんでしたが、次からは多めに作るのでおかわりもできますよ」
「ほんと?」
前から思ってたんだけど、カーラさんはクールビューティーに見えるけど、食いしん坊キャラなんだよね。予想外だ。
「ええ、本当です」
「ワタルさん、すいません」
「クラレッタさんも気にしないでください。美味しい、沢山食べたいって言ってもらえるのは、嬉しいんですから」
「その気持ちは分かるんですが、Aランク冒険者がこれでいいのでしょうか?」
「いいんじゃないですか? 凄い人だって普段の生活まで、そんな事を気にしてたら疲れますよ」
「そうですか? ……そうなのかもしれませんね」
食堂に戻り、ついにジャグジーの説明だ……緊張するが、上手く事が運べば混浴だ。ムッツリで申し訳ないです。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。
今回出て来たブラジャーに関する意見は他作品に対する批判ではなく。
あくまで個人的な考えです、ご不快に思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、何卒ご容赦頂けたら幸いです。