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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十六章
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2話 異世界のふぐ

 ヨーテボリを出港し、毎日の仕事から解放されたことを楽しむために何もせずに豪華客船の船旅をしばらく楽しんだ。そして十分に心と体を休めた後に、僕は動き出す。三女神様方との素晴らしい休暇を楽しむために。




 急がないと出迎えの準備の時間が足りない。


 早くふぐの捕獲に行きたいところだが、基本を蔑ろにしてしまってはせっかくふぐを用意できたとしても光の神様と森の女神様に十分に楽しんでいただけないかもしれない。


 なにごとも基礎を疎かにしたらあとで困るし、まずはこちらに注力して、ふぐはいざとなったら徹夜をしてでも捕獲することにしよう。


 といっても三女神様との時間を余さず楽しむには体調管理も大切になる。できるかぎり早めに準備を終わらせてしっかり睡眠がとれるように頑張ろう。



 さて、急いだ結果、サポラビに最初に出した指示はほぼ熟せた。ほぼというのは、手を抜いたわけではなくセンスの問題。


 光の神様と美食神様の部屋はともかく、おそらくというか間違いなく一流デザイナーがプランニングしたであろう豪華客船の最高級のお部屋、それに素人が手を加えるのだからバランスが非常に難しい。


 それでもインテリア関係の本を参考に緑を増やしたので、たぶん森の女神様も気に入ってくれると思う。


 あとは女神様方が良く利用する施設も女神様方ができる限り使いやすいようにカスタムして……ん?


「どうしたの? 何かミスでも見つかった?」


 ふぐの捕獲に出向かないといけないのでミスは嬉しくないのだが、本番で突然ミスが発覚するよりも対処可能なこの時にミスが発覚するのはありがたい。まあ、そもそもミスが無い方が嬉しいのだけどね。


 スッと提出される書類。


 なんかデジャブ。


 というか、あの三匹以外にも書類を活用するサポラビが現れただと? サポートが優秀なのはありがたいことのはずなのだけど、それでもなんか引いてしまうのはなぜだろう?


 まあ、なぜもなにも僕が殺して売り払ったことが確定している魂が入ったサポラビだから復讐や下克上を恐れているだけなんだけどね。


 スキルなんだから心配し過ぎだと思わなくもないが、何せ角兎の魂をサポートに選んだのは創造神様だ。


 うっかり復讐や下克上が可能な設定ミスをしている可能性もあるし、なにより、その方が面白そうだという理由で隠れた部分にとんでもない設定が埋め込まれている可能性が否定できない。


 とはいえ疑っていてはキリがないので、素直に書類を受け取り目を通す。


「これは……」


 サポラビから渡された書類の内容を理解し、船長の知識と照らし合わせる。


 いまだに船長の知識が必要なのかと思うかもしれないが、その知識は意識して繰り返さないと身につかない。


 しかも船長に必要な知識は基礎ですら膨大なうえ、乗船している船の知識や寄港地でのあれやこれやなどインストールされる知識が膨大すぎて全ての知識を活用するなんてことは不可能に近い。


「え? あ、本当に可能なんだ。そういえば豪華客船を手に入れた最初の頃、目を通して少し利用したことがある気もする」


 思い返せば最初の頃に開いた豪華客船のパーティーはこの仕組みを活用したような?


 僕も船長職だけではなく、興味がある分野のスタッフに気分で職業を変えているから、その間にすっかり忘れてしまっていたらしい。


「あはは……凄くもったいないことをしていたね。いや、そうでもないか? いまだに豪華客船を楽しみつくしたとは言えないから、楽しみを後にとっておいたと考えれば……」


 もったいないのは確かだが、今までも不満を覚えていなかったのだから大きなミスではない。


 サポラビの書類の内容は、イベント機能の活用提案。


 船長権限で様々なイベントを開催可能らしい。当初、この機能で船上パーティーだったかパレードを開催した覚えがある。


 だが、それは大きな問題ではない。


 イベントにはショーから何からの開催や、服装を限定してのイベントなど様々だが、フォーマルイベントや服の色を指定したイベントなどは少人数で開催しても面白くないからだ。


 僕が失敗したと思ったのは、国系や地域系、食事系のイベントを見過ごしていたこと。


 世界一周クルーズなんて豪華なことをしてしまうのが豪華客船の醍醐味。


 その寄港地に合わせたレストランイベントなんかも当然開催されている。地中海系イベント、中華系イベントなど様々な種類があり、そうなると当然、その国の料理が豪華客船クオリティで提供される。


 つまり、豪華客船のオーソドックスなメニューに加え、そのイベントを開催すればその地域地域の料理が食べられたということだ。


 とうぜん、日本のイベントも一覧の中に含まれている。


 まあ、日本のイベントはね、特化型の船の方が面白いから構わないし、中華やフランス料理なんかは通常レストランでも食べられるから、そこまで損した気分ではない。


 無論、特化したほうがメニューの種類や品質も上がるだろうから、後々利用するのは確定だが、僕が特にもったいないと感じたのはアジア系のイベント。


 タイ料理やベトナム料理、韓国料理、トルコ料理にインド料理とイベントも様々……今の豪華客船のメニューに不満が無いとしても、もったいないという感情は否定できない。


 トムヤムクンやフォー、サムギョプサルやケバブにインドカレー……僕が思いつく代表的な料理でもこれだ、フェアで出される料理は僕が知るメジャーな料理以外も当然あるだろうから……ふふ、僕って豪華客船の機能、全然使いこなせていないんだな。


 でも、このシステムを利用すれば美食神様の興味をますます引き付けられる……いや、今回はこのイベントシステムの活用はなしだな。


 今回は僕の調理道具自慢と博多屋台船がメインな予定だ。ここに他のイベントを開催してしまえば本来の目的が薄れてしまう。


「……サポラビ、良く教えてくれた。今回はすでにやることが決まっているから活用はしないけど、追々試していくから、その時には協力を頼む」


 コクコクと頷くサポラビ、どうやら直ぐに活用しないことに不満はない様子だ。こういうシステムがあるんだけど、君、忘れていない? という注意喚起みたいなものだったのかもしれない。


 まあ、自分で気がつけなかったのは情けないが、船の可能性が広がったのは大きなメリットだ。サポラビに感謝しよう。



 でも、とりあえずふぐだ。


 前に何かの拍子で見た覚えがあるんだけど、海の魚だし人魚の国でかな? 今から北の大陸にある人魚の国にふぐを買いに行く時間はないし、ふぐがどのような場所に生息するのかを調べて、なんとか自力での捕獲に挑戦するか。


 豪華客船は文字通り船なので、図書館には海洋生物の書籍も沢山置かれている。そこで調べたらすぐに生息環境くらい調べられるだろう。




 ***




 僕は今、前言を翻してガレット号をぶっとばしている。


 一人でパワーボートに乗るのって怖いなんて思っていたが、ふぐを捕獲するのに普通に移動するのでは時間がかかり過ぎると判断したからだ。


 図鑑で調べたところふぐという魚種が生息している場所は意外と広範囲な様子だったが、僕のテンプレートなイメージではふぐといったら〝とらふぐ〟なので、とらふぐが生息していそうな場所を探したら意外と距離があったからだ。


「……この辺りなら居るかな? エッグ号、召喚!」


 図鑑で見たとらふぐが生息していそうな場所、まあ、異世界なのでとらふぐが存在しているかは分からないが、似た生息地域には似た魚が居るという推測だ。


 エッグ号の魔法陣に飛び乗り、お手軽にコックピットに着席。すぐに船体を潜航させ、海中を探索する。


 環境汚染が少ないこの世界、しかも人里から離れているから視界には美しい海が広がっている。魔物さえいなければ最高のダイビングスポットなのだが、魔物の存在が全てを台無しにしているよね。


 地球でも危険なサメが居る海域ではダイビングなんてしない……いや、なんかテレビで頑丈な檻に入って危険な海域でダイビングをしていたような……まあ、とにかく普通なら危険なサメが居る場所でダイビングなんてしないはず。


 ましてやサメ以上に危険な魔物がゴロゴロしているこの世界ではダイビング文化は発展しないだろう。


 まあ、安全を確保できる僕としてはしばらく海中散歩を楽しんでもいいのだが、目的はとらふぐだから魚を探すことに集中する。


「見た感じここには居ないな。次に行くか……」


 魚影の中にふぐっぽいフォルムが確認できないので、移動を決断する。


 趣味の釣りなら邪道な行いかもしれないが、漁と考えるなら潜水艇を活用できるのは大きなアドバンテージだ。


 まあ僕の場合はだけどね。本来の漁で潜水艇を持ち運び、いちいち潜航させていたら色々と無駄が多すぎる気がする。




「……お?」


 場所を変えつつ海中探索すること六ケ所目……僕の視界にそれらしいフォルムの魚影が飛び込んできた。


 近くで確認しようとエッグ号を発進させる。


「あれ? ……なんか思っていたのと違うんですけど……いや、模様なんかは似ているんだけど……」


 しっかりシルエットが確認できたので、エッグ号を接近させていくがドンドンシルエットが大きくなっていく。


 これだからファンタジーは……。


 なんでこの世界はふぐまで巨大化しているんだよ。まあ、理屈は分からなくもないけど。


 この世界には魔物が居るから、それに対抗するために生物も様々な進化が必要になるのだろう。そして大きさは力になる。だから生物が巨大化する。


 そんな感じか?


 単純すぎる気もするが、あながち間違っていない気がする。普通のサイズだと毒だなんだ言う前に一飲みされそうだもんな。


 ……模様はとらふぐに似ているが、サイズがエッグ号と同程度……もしかしてとらふぐじゃなくて魔物だったりするのだろうか?


 そうなると食べられるのか? アレシアさん達が捕獲してきてくれた巨大蟹は美味しく食べられたから、食べられないということもないと思うが……ふぐだもんな……。


 でも……食べられたら凄いよな。


 魔物だと更に美味しくなっているパターンもあるから、ただでさえ美味しいふぐがもっともっと美味しくなっているかもしれない。


 ただ……捕獲するとして、そもそもどうやって捕獲すればいいんだ?


 この大きさは想定外。


 ふぐは動きがゆっくりだから、エッグ号のアームで捕まえられると思っていたが、さすがにエッグ号と同程度の魚体を掴むのは無理だろう。


 あ、ふぐの巨大で真ん丸な目がこちらをギョロリと睨んだ。小さいふぐの目って真ん丸で可愛らしいと思わなくもなかったのだが、大きくなると無機質に感じて怖い。


 ……というか戸惑っている間にふぐの体が大きくなっているのですが? もしかしなくてもお怒りですか?


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
殺して売り払った…まあ角兎なんだが字面だけ見ると結構なパワーワードだな
フグは釣り針食いちぎるからなー
アンディーなフグかもしれない
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