２１話 閑話 創造神の要求と神様達の反論
「ねえ、光の神、最近の航君って凄いよね？」
「そうですね、相変わらず自ら戦う事はありませんが。ダークエルフの移住、胡椒貿易の成功、頑張っていますね」
「だよね、僕が正しい事が証明されたよね。戦神達も僕の与えたスキルの選択ミスなんて言ってた事を反省させないとね。創造神に文句を言った自分達の不見識を認めさせて土下座だよね」
「はあ、戦神達も航さんの頑張りは認めてますが、創造神様の事は認めてませんよ？」
「えっ？ なんで認めてないの？ っていうか、なんであいつらが僕を認める認めないの話になってるの？ 僕は創造神、この世界を作ったこの世界で一番偉い神様だよ。有り得ないよね」
「今までの創造神様の適当な行動で、創造神様に対する尊敬の念を完全に失っています。ですので有り得ると思いますよ」
「えっ？ 尊敬の念を完全に失ってたの？ 創造神たる僕に、僕が生み出したと言ってもいい神が？」
「はい、ちなみに私もです」
「えっ、なんで？」
「なんでと言われましても、尊敬する部分が見つからないとしかお答え出来ません」
「あはははは、光の神も冗談が上手くなったね」
「そうですか？」
「うん、僕を尊敬していない神などいないよ。でも一瞬やばいかもって思っちゃったよ」
「あなたに対する尊敬など皆どうでも良いと思ってますよ？ ですが、違うと仰るのならアンケートを取ってみますか？」
「どうでも良くはないんだけど……アンケートはしなくていいかな。だって尊敬されてるって分かり切った事だもん、無駄な事はしなくていいよね。
それより戦神達に、船召喚を馬鹿にしてごめんなさいって言わせないとね。光の神、あいつらを呼んで来てよ」
「呼んでくるのは構いませんが本気ですか？」
「当たり前だよ、間違えたのは戦神達なんだから、あいつらも今頃後悔してるだろうし、謝らせてあげるんだよ。やさしいでしょ？」
……………
「……っと創造神様が仰っています」
「光の神よ、創造神は正気なのか？」
「魔神の言いたい事はよく分かりますが、残念な事に正気です」
「そうか……戦神、お前ならあいつを殺れるか？」
「残念ながら無理だな、出来るならとっくに殺ってる。質の悪い事に創造神としても飛びぬけた力を持ってやがる、俺達全員でも敵わんな」
「そうか……不愉快だな」
「うむ、異世界人が頑張っているのは認めるが、創造神のスキル選択が正しいとは今でも思わん。謝る事など何もないな」
「そうだね娯楽神としても豪華客船には期待してるけど、もっと面白くなるスキルが沢山あったと思うよ。まあ異世界人君が本気で望んだスキルは透視とスライムとの五感の共有ぐらいだけどね。スケベなのに望みのスケールの小ささが小者感満載で残念だよね」
「そうだな、あれだけ引き籠りに適したスキルならしょうがないかもしれんが、未だに直接倒したのは角兎とゴブリンだけなのはどうなんだ？」
「うむ、訪れた国で内乱が発生するかもしれんと聞いただけで、即座に撤退を考えおったからな。別に内乱を止めろとは言わんが、少しはこれを機に成り上がろうとか考えてもよさそうなんだが」
「みなさん、航さんに対しての不満に話が変わってますよ」
「光の神よ、そうでもないぞ、異世界人の行動に不満があるのは創造神のスキル選択のせいだからな。唯でさえ臆病なのに引き籠れるスキルを与えてどうするんだ？」
「今の異世界人は臆病なりに行動している事は認めている。もう少し安心して行動出来るスキルを創造神が与えてやれば問題無かったのだ」
「確かに魔神の言う通りかもしれません。船召喚と、陸上でも身を守れるぐらいのスキルがあればもっと活発に動けたかもしれません、ですが優遇のし過ぎになりませんか？」
「そうか？ 与える力を抑えてからも、船召喚よりは強く使い勝手の良いスキルを与えていたと思うがな。それを考えるとまだ何か与えても問題無いと思うぞ」
「うーん、ですが創造神様が言ったようにあのスキルは大器晩成型だと私も思います。異世界の物が買える、使えるのは大きなメリットです、そうではありませんか？」
「うむ、それはわし等も分かっている。だから豪華客船まで様子を見ると言ったんだ。それなのに創造神は今の状況で謝れなどと、とち狂った事を言い出しやがった。それなら今の異世界人で判断するしか無いだろう。大器晩成した姿など見てないしな、魔神もその視点で話をしてるんだろ」
「戦神の言う通りだ、大器晩成型など今この時には関係ないからな。今現在の力で考えるのなら与えた力は少なすぎだと光の神も思うのではないか？」
「あなた達の言う通りだと私も思います。しかし航さんはいずれ豪華客船を手に入れるでしょうし。今力を与えては後々与え過ぎた事になります。
私も今は見守るのが一番だと思うのですが、創造神様は今でも十分に船召喚の有用性は示せたとお考えなのです」
「創造神の考えなど知らんな。異世界人の実績は胡椒貿易とダークエルフの移住ぐらいだ。あと料理もあったか？ それぐらいならユニークスキルでなくても出来る者はおるし、船召喚の正しさを証明した事にはならんと思うぞ」
「そもそもなんで大器晩成型なのだ？ いままでなら与えた時点である程度強力な力を持っていた。だからこそ、不慣れな世界でも何とかなったのだ。たいした説明も無くゴブリンに逃げ出すような無様な思いをさせてまで大器晩成型の必要があったのかすら疑問だな」
「戦神と魔神の意見に賛成、まあ知らなかったとはいえ、ドラゴンすらも弾き返す結界を持ってるのにゴブリンから逃げた時は面白かったから良いんだけどね。
でも僕達に謝れってのは違うでしょ？ だって僕達が文句言わないと異世界人君は角兎を狩って一生を終えたかもしれないんだよ？ だから創造神も異世界人君を此処に呼んでお話したんでしょ？ なのに謝れってどうなの？」
「はー、あなた達の言いたい事も分かります。何方かと言うと私もあなた達に賛成したいのですが、創造神様は拗ねると面倒なんです。何とか謝ってもらえませんか？」
「光の神の大変さもよく分かるがな、わし等が謝ったら創造神は調子に乗るぞ。そこから異世界人が豪華客船まで手に入れた時のどや顔を考えると迂闊に謝れんな」
「まあそうでしょうね、航さんが豪華客船を手に入れて更に活躍したら、ここぞとばかりにあなた達に自慢しまくるでしょうね」
「そんなわけで光の神には悪いが、創造神にお前が土下座しろと伝えておいてくれ」
「私はメッセンジャーではないんですが、しょうがないですね」
……………
「え？ なんで僕が土下座なの？ 航君の活躍ちゃんと伝えたんだよね？」
「はい、彼らは………っと言っていました、ちなみに私も彼らに賛成です」
「あいつらに言われなくても航君を呼び出して話する気だったのに、あいつらが勝手に騒いだだけじゃん」
「それは今となっては証明出来ませんし、何より呼び出す必要もないスキルを与えておけば問題は起こらなかったんです。彼らに言われた後に呼び出して話した事で、彼らの言い分を認めた事になりますね。土下座しますか？」
「する訳ないでしょ、うーんどうにかあいつ等をぎゃふんと言わしたいな、何とかならないかな？」
「まあ、様子見でしょうね。航さんが活躍してこの世界に良い影響を及ぼせば、彼らも納得すると思いますよ」
「そしたら土下座するかな？」
「しませんね」
「それじゃ駄目なんだよ、創造神に対して暴言をはいたんだ。土下座ぐらいさせないと示しがつかないでしょ」
「うーん、そう言われましても、ここからの挽回は難しいですよ。私には考えつきません、創造神様が自力で頑張ってください。でもルール違反は駄目ですからね」
「えー、僕が頑張るの？ 光の神は手伝ってくれないの？」
「はい」
「創造神の命令でも？」
「思いつかないので命令でも協力しようが無いですね」
「そっかー、じゃあ航君の活躍を願って様子見かな？ 時間が経てばいい事思いつくかもしれないしね、光の神も何か思いついたら教えてね」
「はい、では、思いつくまで頑張ってお仕事しましょうね」
「えー」
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