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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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12話 話し合いは?

 突然現れたお爺さんのお願いにより、僕達は火の古竜を討伐することになった。無論簡単に受け入れた訳ではなく、色々と抵抗しては見たものの、最後はなんかゲーム的な思考に影響され、古竜討伐を決断してしまった。自分でもそれでいいのかと思わなくもないが、決断したからには頑張ろうと思う。




「もうすぐ到着です」


 お爺さんに助手席に乗ってもらい道案内に従って、夜が明けはじめた頃に目的地に到着した。


 道中は何もなかった。


 それも当然で食事と簡単な休憩以外は走りっぱなしだったので、南の大陸の旅を楽しむ暇がなかったからだ。


 まあ、切羽詰まった現状でのんきに観光なんてできないから仕方がないが、少し残念ではある。


 そんなことを考えながら進むと、田舎という言葉がピッタリの村に到着した。


「……静か、人の気配はしない」


 一番に降りたマリーナさんが、周囲の気配を探って報告してくれる。


 村なのに人の気配がしないのは普通なら問題だが、今回はそれが正常な状態。


 古竜が近くで起きようとしているのに、のんきに日常生活を送るほどこの世界の人達は危機感を失ってはいない。


 みんなちゃんと避難をしていて、戻ってきている人も居ないということだ。


 さて、ここからが古竜討伐の本番、僕はすでに疲労困憊だが直接戦う訳ではないし、アレシアさん達は移動中にしっかり仮眠をとっているので急な戦闘になっても大丈夫だろう。


 いかん、緊張してきた。


 村を確認した後、マリーナさんがレンジャー号に乗り込み、再びレンジャー号を発進させる。


 村で戦う訳ではないから当たり前だが、少し休憩したかったという気持ちがない訳はない。


 お爺さんの案内でしばらく進むと、山道への登山道? に到着。獣道レベルというか確実に獣道なので流石にレンジャー号では無理だと判断し下車。まあ、禁足地なので獣道があるだけありがたくはある。


 ちなみにお爺さんの村では、この山を一応監視しながら隣の山で木材を確保、炭を焼き山の恵である山菜やキノコ、そして狩猟で肉や魔物素材を得ながら暮らしているらしい。


 一応農業もやっているそうだが、税以外は全て村で消費しているそうだ。


「この獣道に沿って進めば、中腹あたりで古竜が眠っているんですよね?」


「はい、目覚めてどこかに移動していないかぎり、発見するのは難しくないはずです」


 僕の質問にお爺さんが真剣な表情で答える。


「分かったわ。マリーナは偵察をお願い。ワタルも予定通りにね」


「了解です」


 マリーナさんは頷いて山の奥に消えていき、女性陣は最後の戦闘の打ち合わせを始める。


 そして僕は念のための護衛のフェリシアを連れて、お爺さんを避難場所に送り届けに出発する。


 最初はお爺さんも同行したいと言っていたのだが、アレシアさんの足手纏いという言葉に素直に納得してくれた。

 

 商売の神様の契約を介して守秘義務契約を結んでいるが、内緒にできるならその方がいいよね。




 ***




 お爺さんの村の村人たちが避難している村に到着すると、武器を持った人達がワラワラと集まってくる。


 古竜の情報はこの村にも当然伝わっているので、厳重に警戒していたのだろう。そこにこの世界では珍しい魔導車がエンジン音を響かせながら近づいて来たのだから、古竜の襲来と勘違いしたのかもしれない。


 早朝から申し訳ないことをしてしまったな。


「村長!」


 そんな空気の中、お爺さんがレンジャー号から降りると、村人が驚きの声を上げる。


「心配いらん。これは魔導車で魔物ではない。私の訴えを聞き入れてくださったヨーテボリの聖商様が、古竜討伐に乗り出してくださったのだ。みな、武器を下ろしてくれ!」


 お爺さん、なぜ僕の黒歴史になりそうなあだ名を大声で叫ぶのですか?


 たしかに口止めはしなかったけど、先程までワタル殿って呼んでいたよね? 様付けすら拒否したのだから、その辺りの空気は読んでほしかった。


「ヨーテボリ?」


「村長、なぜ、ヨーテボリが関わってくるんだ? 領主様は?」


 お爺さんの言葉に集まってきていた村人達が騒ぎ出す。ここで領主に見捨てられたとか伝わったら騒ぎになりそうだし、僕は早々に退散させてもらおう。


 聖商って紹介されたのが恥ずかしいから逃げるんじゃないよ?


「お爺さん、僕は急ぐので出発します。こちらも全力は尽くしますが、何かあった場合は早めの避難をお願いします」


 避難場所に選ばれただけあって山裾の村からそれなりに離れているが、何があるか分からないから心構えだけは先にしておいてほしい。


「では!」


 断わりを告げてレンジャー号を発進させる。


 お爺さんが何か言っていたようだが、まあ、大丈夫だろう。こちらの作戦もお爺さんに対するアドバイスも、事前にちゃんとアレシアさん達が打ち合わせしてくれているので今更何か必要になるということもないはずだ。


 頭上のリムと首元のペントは分からないが、フェリシアが少し苦笑いをしている。僕が逃げ出したの、間違いなくバレているな。


 でもまあ、フェリシアはイネスと違いからかってきたりしないから気は楽だ。一応の護衛でフェリシアに来てもらったのは正解だったな。



 心地良い沈黙の中、レンジャー号を走らせアレシアさん達のところに戻ってきた。


「お待たせしました」


 別に時間を決めていた訳でも寄り道をしたわけでもないのだが、既に準備万端整っている様子なので謝罪しておく。みんなの気合の入り具合が尋常じゃないので少し怖い。


「それで、どうだったんですか?」


 マリーナさんも戻ってきているので、偵察は無事に済んでいるはず。古竜の姿が無かったらもう少し慌てているはずなので、おそらく状況はお爺さんに聞いた話とあまり変わっていないと思うが……。


「古竜はまだ寝ているわ。ただ、聞いた話よりも見える部分が大きくなっているようね。目覚めが近いのは間違いないみたい」


 古竜の起床前には間に合ったか。お爺さんが村を出てから十日近く経っているはずなので、凄まじく寝起きが悪い竜なんだな。


 まあ、寿命が僕達とは桁が違う存在らしいから、十日やそこらが僕達の五分程度の感覚かもしれないけどね。


「そうですか、では、予定通りに?」


「ええ、作戦を変更する必要はなさそうだから、打ち合わせ通り行くわよ」


「了解です」


 いよいよか。僕の出番は船を召喚するのとドナテッラさんの作戦だけなのだが、緊張してきた。


「じゃあ出発よ」


 僕が頷くとアレシアさんが出発を宣言し、マリーナさんを先頭に歩き始める。


 獣道で歩きづらいが、それなりに高レベルなので地球でなら驚かれるレベルで進んでいく。それに古竜の偵察のために村の人が手を入れたのか意外と歩きやすい。


 走って逃げることも考えたのか、足をとられそうな草や枝、石なんかも取り払われている感じだ。


 レンジャー号は無理だがアッド号なら移動できるかもしれない。まあ、今回は奇襲する気満々なのでエンジン音を響かせるアッド号を利用するのは無理だけどね。


 それにしても古竜か、地竜よりもさらに上な存在……そういえば竜って高位になると知性に目覚める種が居るんだよね。


 龍は確実に知性があるけど、竜はどのくらいで知性に目覚め、どのくらいまで発達するのだろう? ん?


「みなさん、少し止まってください」


「ワタル、どうしたの?」


「足を止めてすみません、ふと思いついたのですが、古竜に知性があるなら説得は無理なんですかね?」


 いきなり奇襲を叩き込んだら会話での解決は無理になるので、先に確認しておきたい。

 

 それに地の龍あたりに出張ってもらって、お説教してもらって反省という手段も考えられる。なぜ今まで思いつかなかったのだろう?


 あ、でも、地の龍は一応創造神様の使いだし、こういう仕事に駆り出すのは駄目か。でも、説得の方はなんとかならないかな?


「ワタルの言うように古竜の説得は不可能ではないわ。相手が火属性で単独行動でなければだけどね」


 僕の疑問にイルマさんが答えてくれた。


 イルマさんの説明によると、まず、火竜は基本的に気が荒く会話が通用し辛い。


 それでも、火竜の群れを率いる古竜などは話し合いに応じたことがあると伝承に記されているらしいが、単独行動をする火竜は特に気が荒く自分以外を無価値と判断する竜である可能性が高いらしい。


 古竜になるほど時を重ねていながら、いまだに群れに戻ることも新たな群れを作ることもなく、ツガイすらいないということは、本物の暴君であり、話し合いを試みるだけ無駄ということだそうだ。


 本物の暴君がどのような存在なのか想像しかできないが、筋金入りのワガママ竜だというのは伝わってきた。


 うん、万が一くらいの可能性で、その火の古竜が穏やかで話し合いが通用する性質かもしれないが、眠りにつく前に大暴れした伝承が残っているのだから、万が一どころか億が一程度の可能性すらない気がする。


 それだけ低い可能性の為に奇襲の機会を失うのはバカらしいな。足を止めさせたことを詫びて再び出発する。



 かなりの距離、昔の自分であれば三時間くらいかかりそうな道のりを、一時間も掛からずに踏破し、目的の場所に到着した。


 山肌から朝日に照らされ、キラキラとルビーのように輝く古竜の鱗。


 お爺さんのところの村人が、宝石の鉱脈と間違えてしまうのも納得の美しさだ。


 まあ、現在は土が崩れ落ちて半分以上古竜の姿が見えているので、今なら絶対に間違えないけどね。それにしても凄い迫力だ。


「マリーナの報告通りね。全員、準備が終わり次第所定の位置に。ワタルの船召喚を合図に一斉攻撃を仕掛けるわよ」


 火の古竜が見える位置で最後の準備。


 フェリシアが全員に強力な結界を張り、その上からイネスが炎虎の守りという魔術を重ね掛けする。これは熱や火に対する耐性が爆増する、イネスの種族、炎虎族の魔術らしい。今回の討伐で初めて知った。


 僕達ってほとんど厳しい戦闘をしていないから、結構付き合いも長くなってきたのに、フェリシアの結界のこともそうだが戦闘面で知らないことが多々あるんだよね。


 これを結界の上に重ね掛けすることで、火や熱による結界へのダメージを最小にできるらしい。凄く便利だ。


 イネスからその魔術の話を聞いた時、そんなのあったんだ、なんで教えてくれなかったの? と聞いたら、使う機会が皆無だと思っていたとの返答。


 ……たしかに船召喚の結界があれば、耐性とか関係なしに全部防いじゃうもんね。


 ただし、今回は今までのように結界に引きこもって遠距離攻撃だけに専念する訳にはいかない。


 なぜならここは陸地で、しかもそれなりに近くに人里が存在する。つまり引き籠ったまま攻撃し、倒せなくて逃げられたら仕方がないという緩い考えが惨事を招くかもしれないからだ。


 僕達が古竜を逃がしてお爺さんの村や、他の人里が襲われたら寝覚めが悪すぎるので、アレシアさん達戦闘班は、接近して戦う。


 ……いかん、今更だけど、凄く心配になってきた。僕の合図で戦闘開始とか、プレッシャーが酷すぎるだろう。


今年最後の更新となります。

一年間、皆様の温かい応援に支えられ、更新を続けることができました。

本当にありがとうございます。

来年も頑張って更新を続けていきますので、お付き合いいただけましたら幸いです。

みなさま、良いお年をお迎えください。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
どう戦うのか楽しみ コミック7巻事前購入しました、こっちも楽しみ
戦闘班が戦闘狂に見えたわ、びっくりや
Feliz Año!
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