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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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9話 なんで僕に?

 もつ鍋での宴会から十日、ヨーテボリの復興は順調に進み、そして順調に進み過ぎた結果、まだ捕まえていなかった周辺の盗賊達も潰して吸収。ヨーテボリの犯罪奴隷の数が爆増していく。そのことに不安を覚えた僕は冒険者ギルドのギルマスに話を聞きに行く。僕の不安は杞憂だったようで、ギルマスはその対策もしっかり考えていた。これで安心して復興に集中できる……はずだ。




「ワタルさん、少し確認したいことがあるのですが、良いですか?」


 ギルマスとの話し合いが終わり港に戻ってくると、ドナテッラさんが待ち構えていた。


 ヨーテボリに来てから、日が登っている間にドナテッラさんと会うのって意外とレアなんだよね。


 一緒に行動する約束や書類仕事の時間は別だが、それ以外は様々な場所を飛び回っているからすれ違うことすら稀だ。


「何かありましたか?」


 そんなレアな事象が起こったということは、何かが起こった可能性がある。せっかく落ち着いてきたのだから、面倒事はもう沢山なんだが?


「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ、ただ方向性の確認をしておきたいだけですから」


 思考が顔に出てしまっていたらしい。 


「あはは、えっと、それで方向性とは?」


「御存じのとおり人手が増えています。その人手を活かして、この国だけではなく他国にも支店を開設することが可能になっています」


「他国にも支店ですか?」


 まあ、捕まえた犯罪奴隷も全員が戦闘員ではないから、幹部候補生を増やせば人手は問題ないのだろう。


「はい、戦勝国であるこの国でさえこの現状です。他国の港町も厳しい状況であることは間違いないでしょう。人手を活かしてこの大陸の主要な港町に支店を開設することが可能です」


 支店を増やすとしたら僕の場合は確かに港町になる。


 戦勝国がこの現状だし、他の国も厳しいという想像も否定できないどころかその通りだと思う。


「えっと、状況は理解できますが、支店を開設する必要があるんですか?」


 商売の神様の依頼は南の大陸の商売網のフォローだが、大陸の各港に支店を開設したらフォローどころか商売網の再構築になりそうな気がする。 


「いえ、必要はありませんが、実行すればトヨウミ商会が南の大陸を代表するような商会になれますので、一応確認しておくべきかと思いまして」


 南の大陸を代表する商会って、そんなことが可能なのか? 


 ……商売に疎い僕でも可能な気がするな。


 空路が無く陸路と海路が中心なこの世界。まあ、海路も帆船が中心で航路も陸沿いが中心だけど、だからこそ港町の重要性は高い。


 そんな重要な港町だから余所者が簡単に参入できたりはしないのだけど……今ならよほど保守的な場所以外は参入し放題な気がする。


 大金が掛かりそうだが、その辺りも抱え込んでいる貴重な魔物をや財宝を活用すれば賄えるだろう。


 つまり不可能ではないどころか、割と可能性が高そうな提案な気がする、まあ、ドナテッラさんが博打みたいない提案を持ちかけてくるわけがないので当たり前なんだけどね。


「ですがその場合だと、活動の拠点を南の大陸に移さないといけないのでは?」


 状況が安定してからならともかく、支店を増やしている間は南の大陸を離れられなくなるだろう。


「そうなりますね」


「では、その方向は無しでお願いします」


「やはりですか、分かりました」


 ドナテッラさんもそうなるのを分かっていての確認だったんだな。まあ、僕の性格を理解していたら当然か。


 でも、少し残念そうなんだよな。


 前にも国うんぬんで残念そうな顔をしていたし、ドナテッラさんって野心とまではいかないが大きくなるチャンスがあると挑戦したくなるタイプなようだ。


 商人としては当たり前かもしれないが、僕の元で働くのはつまらないのかも……いや、そんなことはないな。


 一瞬、平凡な僕の部下であることに苦痛を感じるかもと思ったが、僕は平凡でも船召喚が特別だ。


 豪華客船の運営に定期航路の開設、獣人の町に加えて南の大陸に支店まで出している。


 上を目指せばきりがないが仕事は腐るほどあるし、新たな仕事を生み出そうと思えばいくらでも生み出せる。


 うん、ドナテッラさんが退屈で苦痛を感じる暇はないだろう。


 野心が強い人なら、僕を踏み台にして国を支配したいとか、大陸の流通網を支配したいとか考えて不満を覚えるかもしれないが、幸いドナテッラさんはそこまで強い野心は抱いていない。


 大きな仕事にやりがいを覚えるタイプではあるけどね。


 まあ、方向性の確認だけで特に問題が起きた訳ではなかったのは助かったな。後は地道に復興を続けて、女神様方とのご褒美タイムだ。




 ***




「どうかお助けください!」


 なんて気楽なことを考えていたこともありました。というかついさっきまで、魔物の運搬を続けながら女神様方をどうおもてなしするか考えていたんだけどね。


 なのになんでこういうことになるのかな?


 これ、絶対に面倒ごとに巻き込まれるパターンじゃん。


 そのうえで断ることもできない悲しいパターンだ、絶対。


 目の前で額を地面に押し当て土下座している人を見て、悲しい現実を覚る。


「……えーっと……とりあえずお話はお聞きしますので、顔を上げてください。というか、場所を移動しましょうか。フェリシア、お爺さんを支えてあげて。まずは冒険者ギルド、いや、先に病院に行こうか」


「分かりました。念のためにご主人様に結界を張っておきますね」


 こんなところでボロボロの格好で、今にも衰弱死しそうな老人に土下座されている絵面を世間に晒し続けるのは辛い。


 というか、土下座をするにしても場所を選んでほしかった。


 いや、僕が陸に上がった瞬間流れるように土下座をして叫んでいたから、場所を選ぶとか世間体とか僕側の被害とかを考えている余裕がなかったのは理解できるのだけど、本当にそこら辺は考えてほしい。


 日本では土下座の強制は罪に当たると聞いたことがあるが、いきなり土下座されて世間体がピンチな僕は被害者にはならないのだろうか?


 現実逃避しながら土下座の是非を考えていると、フェリシアがお爺さんを支えて歩き始める。


 一緒に居るのはイネスとフェリシア、運搬が終わったらすぐにストロングホールド号に戻る予定だったから護衛が心もとないが、フェリシアが結界を張ってくれたから大丈夫だろう。


 ストロングホールド号で作業を続けているカーラさん達に戻れないことを伝えたいが、今の状況だと流石のイネスも僕の傍から離れられない。


 病院か冒険者ギルドにジラソーレの誰かが居るはずだし、そこで説明して伝言を届けてもらうことにしよう。


 それにしても、助けてくださいか……助けるにしても僕にどうにかできる問題なのか、どうにかできるとして、それはどれくらいの労力が必要になるのか……。


 人助けに労力を考えている自分の薄情さに思うところがないわけではないが、この大陸はそれこそ助けを必要としている人達がそこかしこに存在している。


 聖人でもない僕は、全てを助けることはできないし、人助けにも労力を考える。


 そもそも僕でなんとかなる問題なのか?


 お爺さんが持ってきた問題を解決できるのかという根本的な疑問。


 お爺さんが僕めがけて一直線だったということは、噂を聞いてやってきた可能性が高い。


 そうなると盗賊関連か病人関連かな?


 ヨーテボリ周辺の治安は護衛部隊や犯罪奴隷達の活躍である程度復活しているらしいが、その範囲を超えたらまだまだ治安は悪いはず。


 まあ、それなら僕が資金や食料を提供して護衛部隊と犯罪奴隷部隊を派遣すればなんとかなりそうだ。


 もう一つは怪我人とか病人かな? こちらは結構難しい話になりそうだ。ヨーテボリにも大勢の怪我人や病人が集まってきているから、クラレッタさんやリムを派遣するのは厳しい。


 でもまあ、レンジャー号などの移動手段があるから、日帰り、もしくは一泊程度なら対応は可能かな?


 難しいのは未知の疫病が流行っていたりする場合……これはクラレッタさんやリムでも手に負えないかもしれない。


 最悪、神様に相談案件かな?


 下界に干渉することが許されていなくても、僕が神界に行けばヒントくらいなら与えてくれるはずだ。


 お爺さんの目的を推測していると病院に到着した。


 中に入り受付で診察をお願いすると、僕のことを知っている受付さんが個室に通してくれた。


 確実に特別待遇だが、現場の混乱を防ぐためでもあるので素直に受け入れる。


 迂闊に動くと本気でお礼の嵐に飲み込まれることになるから、余計な遠慮はむしろ病院側の迷惑になる。


 部屋に落ち着いている間にイネスにお使いに出てもらう。とりあえず、何かしらの面倒事は確定しているのだから、全員を集めて話を聞いた方が早いからだ。


 お、騒がしさが近づいてくる。


 病院の静けさを破って許されるのはクラレッタさんやリムへのお礼くらいだから、もうすぐ到着するはずだ。


 とりあえず診察を終わらせてから話を聞くことになるだろう。




 ***




「古竜ですって!」


 診察が終わったお爺さんから告げられた話は、想像とは違いとてもファンタジーな内容だった。


 凄く場違いな気がする。いや、場違いというか筋違いか、なんでそれを臆病な僕に相談するんだ?


 クラレッタさんの診断結果は、極度の疲労、栄養失調、睡眠不足、他にも加齢からくる様々な問題を抱えているというものだった。


 とりあえず休息が必要と判断されたのだが、お爺さんは休んでいる暇などないと休息を拒み、集まってきた女性陣を加えて話し合いを始めた。


 そうしたらまさかの竜、しかも古竜が目覚めるとかなんとかなファンタジー満載なお言葉。


 僕が違和感を覚えてもしょうがないだろう。だって僕、一応、商人だし。


 詳しい話はまだ分かっていないのだが、既に一つ確実に失敗したことがある。


 女性陣を集めてしまったことだ。


 古竜に関わるか関わらないかの選択権は僕に任せてくれると思うが、既に冒険心をくすぐられているのは間違いない。


「あの、古竜ともなると個人の問題ではなく国が対応する案件なのでは?」


 迂闊に話を進めると逃げ出せなくなりそうなので、国に丸投げの方向でお願いした。


 お爺さん、なんでそんな問題を僕のところに持ち込むの? 自衛隊案件を町内会の議題に持ち込むようなものだよ?


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
山のような病人・けが人を全快させ5千人の山賊を無傷で一蹴したとなるともはや 勇者とか聖者扱いされるのも仕方ないのかな だったら古竜もついでに倒してくださいってか まあ古竜と思ったら古龍だったみたいな話…
 ダメ人間としては「勘弁してください」と、しか言いようがないですねw  そもそもワタルの能力を、どの程度知られているんでしょう?  古竜って、ノータッチが基本で。遭遇したら逃げるか、引っ越しするか…
>戦勝国じゃなく敗戦国ですよね? この街は戦勝国の植民地だから戦勝国で間違いない
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