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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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7話 楽しい宴会

 悩みに悩んで博多屋台船を購入。そして翌日に博多屋台船を堪能するべく宴会を開催する。選んだメニューは〝もつ鍋〟、この世界では内臓を食べる文化がないので、強いインパクトと内臓の美味しさを伝えるチャンスだと思ったからだ。まあ、そのチャンスを伝えるタイミングで、僕がもつ鍋に夢中になり女性陣を放置しちゃったのだけどね。




「……失礼しました。それで、えーっと、お味はいかがですか?」


 女性陣を放置してしまったことに気が付き、失敗を取り返そうと味の感想を尋ねる。


「私達はまだ食べていないわね。カーラを除いて」


「うふふ、ワタルがあまりにも美味しそうに食べるから、見入ってしまったわ」


 アレシアさんとイルマさんが僕の質問に答えてくれる。どうやらみんなは僕が食べる様子を見てからにしようと考えていたらしい。端的に言って毒見役だな。


 信頼を勝ち得ていると思っていたが、内臓料理にはまだ負けるレベルだったらしい。カーラさんを除いて。


 それで、僕から感想を聞いて自分達も食べようと思っていたのに、僕が一杯目を完食するまで止まらなかったから今の状況ということだな。


 ちなみにカーラさんは隣にサポラビを従えて、醤油、味噌、醤油、味噌の順番で取り皿を次々に空にしている。


 感想を聞くまでもなく気に入っているのだろう。口に入れてモグモグと咀嚼する時に、体をブルブル震わせているのは脂の旨味か野菜の旨味に体が反応しているからかな?


 なんだか妙に色っぽくて目のやり場に困る。まあ、食べるスピードが凄まじいので、その色気もかすんでしまっているけどね。


 ただ、かなり気に入った様子で、交互に食べながらも注がれたもつ鍋を汁まで完食している。


 歯ごたえがあって咀嚼にそれなりに時間がかかるはずのもつ鍋なのに、わんこそばみたいなペースで平らげられていく様は、何故かファンタジーを強く感じてしまう。


「あはは、久しぶりだったのでつい夢中になってしまいました。申し訳ありません。ですが、そうなってしまうほどに美味しい料理ですから、みなさんも楽しんでください」


「ええ、楽しませてもらうわ。みんなも頂きましょう」


 アレシアさんの言葉に女性陣も箸をとり、もつ鍋に挑戦していく。僕も夢中になっていたし、カーラさんも鍋を空にしそうな勢いで食べているから、既に美味しいことを確信していたのだろう。


「え? 脂が甘い。ご主人様、なんで脂が甘いの?」


 僕の隣に座っていたイネスが、いきなり難しい質問をしてくる。そんなこと言われても……。


「えーっと……脂が甘い理由は分からないけど、下処理をしっかりしているから臭みとかが無くて脂の味がハッキリ理解できるのだと思うよ……たぶん……」


「失敗しました。こんなに美味しい内臓を捨ててしまっていたなんて。内臓が食べられれば、みんなもっと生活が楽になったはずなのに……」


 森の奥に隠れ住んでいたフェリシアが悲痛の表情で呟く。食料を得るために狩りをしていたと言っていたから、確かに新鮮な内臓を手に入れる機会は沢山あったはずだ。


 まあ、大部分が魔物だろうし、牛や豚や鶏のように内臓が美味しいかは分からないけど。


 でも、一種類でも内臓が美味しい獲物が居れば、確かにそれなりに楽になったはずだ。


 フェリシアの弓の腕を見るに、ダークエルフもやはり弓が得意な種族なのだろう。獲物はそれなりに確保できていたはずだが、森の奥に引っ込んでいると生活物資は不足する。


 食べる料理の種類も味も限定されていたことだろう。そこに脂の旨味がたっぷりの食材、しかも歯ごたえも心地良く目新しいとなったら、食の楽しみはそれ以前と比較にならないほど充実したはずだ。


 残念がるのも理解できる。焼くだけでもモツは美味しいからね。


「ですが、まだ遅くはありません。ご主人様、内臓の処理の仕方を教えていただけますか。ダークエルフの島の皆に教えてあげたいんです」


 ダークエルフの島に引っ越しをして、今までと比べると段違いに生活しやすくなったはずだが、楽しみが増えることは悪いことではないか。


「私も知りたいです」


 そして当然クラレッタさんも話に加わってくる。ここで物知りなワタル君を演出して二人の好感度を高めたいところなのだが……残念なことにモツの処理方法なんて小麦とか塩で揉むくらいしか知らない。


 でもそれって、下処理の最後の方の工程だよね?


 フェリシアとクラレッタさんが知りたいのは、おそらく狩りをした獲物から内臓を取り出すあたりの、初期の初期の知識……そんなの知らないよ。


 もしかしたら豪華客船の図書館にその辺りの知識が書かれている本があるかもしれないが、そんなマニアックな知識を書いた本が、厳選されているはずの豪華客船の図書室にあるとは思えない。


 どうしたものか。ここでの好感度は諦めて……ん?


 視界の隅っこでサポラビがなにやらパントマイムをしている。意識を解放したからか、奇行に走るようになってしまったのか?


 いや、なにやら厨房を指して……ああ、もしかして、スタッフ任命でモツ処理の方法がある程度知識として得られるのか?


「……僕もそれほど詳しくはないのですが、この船の調理スタッフに任命すると知識を得られるかもしれませんね」


 まあ、モツの下処理は食肉加工の分野だから、料理人もさすがに最初からモツ処理を行うことはないと思う。


 思うのだが、鮮度の良いモツを見極めるために加工方法やらなんやらかんやらの知識を得られる可能性は低くない。


 だって、フェリーでも豪華客船でも調理スタッフに任命すると、素材に関する基礎知識まで頭に流れ込んでくるもん。ふぐ料理に関してもそれを狙っている。


 モツを扱う船ならその辺りの知識をインストールされる可能性は割と高いと思う。まあ、その知識を覚えておけるほど身に染み込ませるのは難しそうだが、二人ならなんとかするだろう。


 僕の詳しくない発言で、ガッカリした様子を見せた二人だが、後半の言葉でやる気をみなぎらせている。


 あと、サポラビが、それでいいのだと言った様子で頷いている。意識を解放したサポラビ、地味に優秀なんだよな。


「ご主人様、スタッフ任命をお願いします」


「私もお願いします!」


「……今は宴会中ですから、食事を楽しむことに集中しましょう。心配しなくても、これから何度でも機会はありますよ」


 別にスタッフ任命をしても構わないと思うのだが、周囲で料理人の目で食事をされたら落ち着かない気がするので、今は却下だ。


 宴会中だと思いだしたのか、二人も納得した様子で頷いてくれる。


「ワタル、おかわり! あと、サポラビがスープを呑ませてくれない」


 気が付くとカーラさんが醤油味と味噌味の鍋を空にしていた。早い。


 あと、なにやら焦った様子でサポラビがカーラさんに訴えているが、どうやら理解できずにカーラさんも困惑している様子だ。


 ……スープを飲ませない……なるほど。


「カーラさん、サポラビが言いたいのはスープを飲み干すのではなく〆はいかがですか? と言っているのだと思いますよ。もつ鍋は最後にラーメンの麺やうどん、ご飯をスープに入れると美味しいんです。僕のお勧めはチャンポン麺ですが、試さずにお代わりしますか?」


 メニューを見せて〆の部分を指せばカーラさんも理解できたはずなのだが、サポラビもカーラさんのあまりの食事スピードに焦ったのか、対応が上手くいかなかったらしい。


 意識を解放していなかったら冷静に対処できていた気がするな。もしくはなんとも思わずにお代わりを用意していた気がしないでもない。


 融通が利きすぎることでの混乱、それがサポラビの意識の解放の最大のデメリットかもしれない。


「〆! まだ〆ないけど、〆も食べたい! 全部!」


 〆ない上に全部食べるのか。まあ、カーラさんなら食べられるだろう。


 僕のお勧めのチャンポン麺も食べてくれるなら、それはそれで嬉しいしね。もつ鍋を食べているのに、なんか長崎チャンポンが食べたくなってきた。


 フェリーのメニューを見比べれば、チャンポンを販売しているフェリーもあるかな? なんか航路によってフェリーでも売店や食堂に違いがあるようだし、探せばみつかる気がするな。


 問題は、チャンポンの為にフェリーを買うかどうかだが、これも牛丼自販機と同じ悩みだ。料理の為に屋形船でも贅沢だと思うのに、フェリーになっちゃうからな……さすがに贅沢が過ぎる。


 まあ今はもつ鍋に集中だな。みんなもつ鍋を気に入ってくれている様子だし、僕ももつ鍋を堪能させてもらおう。次は味噌味だ。


 サポラビに味噌味のもつ鍋をよそってもらい、醤油味の時と同じく汁を軽く啜る。


 脂味噌なんていうご飯がいくらあっても足りなくなる罪深い味噌や、豚の脂身が溶けだし抜群の旨さを表現する豚汁の存在から分かるように、味噌と脂の相性は抜群。


 つまり、丸腸から溶け出した脂と濃厚な味噌のコク、そこに野菜の旨味が加わった汁が不味い訳がなく、強い旨みとコクに、何故か体がホッとして力が抜けていく。


 やはり味噌と脂のマリアージュは最高クラスだ。


 そういえば味噌ラーメンにバターも美味しいもんな。脂味噌は沖縄の定番だし、北海道の味噌バターラーメンも抜群に美味しい。


 つまり、日本の北から南まで味噌と脂の相性が抜群だと証明されている訳だ。味噌味のもつ鍋が不味い訳がない。


 ただ、僕としてはここに一味か鷹の爪を投入したい。


 醤油味の時は必要ないのだが、味噌の時はピリッとした辛味が加わると更に美味しくなると思う。


 自分の欲求に素直に従い、横に添えられていた薬味の鷹の爪を投入。これで最高の味噌もつ鍋が完成した。


 あとは味噌味と醤油味を繰り返しながら生ビールで流し込み、適度なところで焼酎に切り替えたい。


 そして最後の〆にチャンポン麺。


 僕にはカーラさんのように無限とも思える胃袋は備わっていないので、チャンポン麺を醤油味と味噌味、どちらに投入するのかが問題だ。


 最近、楽しくも悩ましい二択を迫られることが多いな。でもまあ、〆までにはまだ時間がある。


 今決めるのではなく、最後の最後に自分が食べたいと思う方がその日の最高の〆になるのだろう。それまではこの賑やかで楽しい宴会を楽しむことにしよう。


読んでいただきありがとうございます。

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