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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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5話 究極の選択

 商売の神様に慈善事業費の質問に行き、無事に今回ヨーテボリで投資したお金を経費として認めてもらえることになった。そのことに安心して、僕は新しい船を購入する決意を固める。まあ、色々と欲しい船があり、悩みが深く決定まで時間がかかりそうだが……。




「うーん、決まらない。どう考えても決まらない。この際、買う船を一艘、いや、二艘増やすか? 資金的には十分に足りているのだし……」


 マッサージチェアに癒されながら自分に都合のよいことを考える。


「いや、駄目だ。必要だから、欲しいから船を買う、それは構わない。だが、娯楽の為に購入するのであれば、制限は設けておくべきだ。でなければ喜びが薄れ、選んだ船が全力で楽しめなくなる。それは船に対して申し訳ない」


 申し訳ないけど、でも……いやいや今回購入するのは一艘。自分に激甘な僕だからこそ、この制限を破ると確実に歯止めが利かず慈善事業費に押しつぶされることになる。


 ふー、落ち着くんだ僕。


 まずは選択肢の中から選んだ購入候補を見比べ、最善の選択肢を掴み取るんだ。


 気になる候補、第一。


 海外の船上レストラン船。


 いつの間にか特殊船の中に追加されていたカテゴリー。屋形船とは別のジャンルにカテゴリー分けされていた。


 この船のアピールポイントは本場の外国料理が食べられるところだ。


 何種類もある中で気になった国の船上レストランは、アメリカ、フランス、イタリア、タイ、ベトナムの五ヶ国。


 アメリカの船上レストランはオイスターバーやオマール海老、そしてアメリカらしい巨大な肉、おそらくアメリカドラマのホームパーティーみたいな食事が楽しめる船上レストランだと思う。


 続いてフランス。こちらは言うまでもなく、本格的なフランス料理が食べられる。豪華客船でもフランス料理は食べられるが、フランス料理に特化しているであろう船上レストランのフランス料理に興味を惹かれる。


 三つ目はイタリア料理。船上で本格ナポリ料理が楽しめるという触れ込みなので、間違いなく美味しいだろう。


 最後に、タイとベトナム。料理は違う分類だが、興味がある理由が似ているからひとまとめだ。


 タイ料理もベトナム料理も、僕が購入している豪華客船では弱い系統になる。本格的なアジア料理を好きな時に楽しめるのはとても大きな魅力になる。


 この四艘の中で考えるなら、アメリカ料理とフランス料理とイタリア料理は脱落……かな?


 豪華客船でもお肉や海鮮、フランス料理やイタリア料理は力を入れている分野に思えるので、大きな質の差はないと考えられる。


 いずれは味わってみたいが、優先順位はタイ料理とベトナム料理になる。


 この二択であれば、話は簡単だ。どちらを選んでもワクワクと後ろ髪が引かれる思いを残すことが確定しているので、気分で選択しても問題はない。


 ならばなぜ悩んでいるのかというと、候補となるジャンルが他にもあるからだ。


 そのカテゴリーは二つ。


 一つは屋形船。


 こちらもひっそりと屋形船が追加されており、魅力的な選択肢が増えまくっていた。


 その中で悩みに悩んで選び抜いた屋形船は二艘。


 一艘目は東京の高級屋形船。


 こちらは東京の各種名店が日替わりで提供されるらしい。焼肉、天ぷら、鮨、日本料理の名店の味が楽しめるとか、もはやパラダイスと言っても過言ではない気がする。


 二艘目は博多の屋台船。


 メニューが豊富で特色があり、凄まじい魅力を発揮している。博多寄せ鍋、博多もつ鍋、炭火焼、天ぷら、ふぐ鍋……もんじゃ焼きの屋形船でも天ぷらは食べられるが、船ごとの味の違いを堪能できるなら悪くない。


 そして、イメージでしかないが、博多と名前が付いているだけで魅力度がグンと上がる気がする。


 そして、寄せ鍋とふぐ鍋はもちろん堪能したいが、もつ鍋……本場博多のもつ鍋が食べられるというのは、あまりにも大きな魅力。こんなの選べるわけがない。


 屋形船系統のこの二艘の魅力があまりにも高すぎる。


 そして最後のカテゴリー。


 こちらは一艘しか登録されていないので、他の選択肢はない。


 その名は沖売り船。


 どうやら大型船やタンカー船のような着岸しにくい船相手に商売をする船のようで、見た目は漁船のような感じ。


 正直、船としての魅力はそれほどではない。漁をする訳ではないので漁船が必要な訳ではなく、移動に活用するならルト号の方が居心地は良い。


 だが、沖売り船にはそんな欠点を補って余りある利点が有る。


 大型船相手に商売をする関係上、新鮮なフルーツや野菜にお肉、お酒にジュースに調味料、お菓子にインスタント食品に衣類などの日常品が商品として積まれているのだ。


 ただ、この販売されている商品の大半はフェリーでも手に入らないこともない。お菓子やジュースやお酒、野菜の品目が増えることは魅力的だが、正直それほど心惹かれるものはなかった。とある品物が目に留まるまでは……。


 あまりにも僕の心をひきつけてやまないその商品は、固形のルー各種。


 固形のカレールー。固形のシチュールー(ビーフ&クリーム)。ハヤシライスの固形ルーまで販売されていた。


 カレーは豪華客船でもフェリーでも食べられるし、なんだったらインスタントのカレーもフェリーの売店で売っている。


 ただ、固形ルーとなると話が変わってくる。


 固形ルーがあれば僕手作りの料理を女性陣に振舞うことができる。これは大きい。なんだったらこの後の女神様方とのバカンスで、美食神様と一緒に料理をすることも可能かもしれない。


 クリームシチューも好きだし、ハヤシライスも大好きなので、目先を変えて何度も女性陣に料理を振舞えるのも嬉しい。


 あと、カレールーもメジャーどころが揃えられているので、ミックスしてアレンジを楽しむことも可能。これも夢が広がる。


 ただ、沖売り船を買う目的の大部分が固形ルーを手に入れる為というのはどうなのだろう?


 他に色々と日本製の品目が増えるというメリットもあるが、固形ルーの為に漁船を購入するというのはさすがに躊躇う。


 まあ、もんじゃ焼きの為に屋形船を購入したことがあるから今更なんだけど……。


 そして何より、この五艘の中から一艘だけを選択しなければならない。事件だったら迷宮入りを疑うレベルの難問だ。


 


「もう分からん」


 マッサージチェアに座り続けて癒しなはずなのに、体が痛くなってきた気がする。


 最初は悩むことが楽しかったが、さすがにここまで結論が出ないと辛くなってくる。


 思い切って一艘を選択できないのであれば、とりあえず数を減らすことから始めるか。



 再びの長い思考の後に、ようやく二艘にまで選択肢を減らした。


 最初に選択肢から外したのは船上レストラン。タイとベトナムの船だ。


 かなり迷ったが、タイ料理やベトナム料理は偶に楽しむ程度で十分であり、そういう楽しみは後に回して、まずは日常で楽しめる船を優先するという結論を出したからだ。


 続いて屋形船の二艘。


 こちらは船上レストランを選択肢から外すよりも悩んだ。どちらの料理もおいしそう過ぎて選べない。


 片方に好みのメニューが固まっていれば話は楽だったのだが、お互いに引き付けるメニューがあって困る。


 博多屋台船はもつ鍋とふぐ鍋、東京屋形船は焼肉と鮨。


 鮨は豪華客船でも食べられるが、東京の名店の鮨となると話が違ってくるし、同じく焼肉も東京の名店ということならブランド和牛が食べられそうだ。


 東京側は高級と名が付くだけあって質が高い食事を日常に組み込むことができる。


 もう一方の博多屋台船は、もつ鍋とふぐ鍋という唯一無二なメニューが僕の心を捉えて離さない。


 もつ鍋は内臓の下処理、ふぐ鍋は毒の除去、というかこの世界でまだふぐ料理を見たことがないので、博多屋台船を買わなければ食べることができない可能性が高い。


 悩みに悩んだ末、僕はもつ鍋とふぐ鍋を選んだ。


 これで残りは沖売り船と博多屋台船の二艘。


 選べない。選べない。選べない。


 もつ鍋とふぐ鍋は確実に美味しいし、女性陣も確実に喜んでくれる。沖売り船での固形ルーゲットはキャンプライフの充実、美食神様の興味を引き付けることが確実。


 ただ、ふぐ鍋ともつ鍋も美食神様の興味を引き付けることも確実。


 どちらを選んでも女性陣も女神様方も喜んでくれる光景が思い浮かぶので、どちらも決定力に欠けている。


「うん? 美食神様と一緒に料理……それってふぐを捌く時の知識ともつ鍋を用意する時の知識が物凄く喜ばれるのでは?」


 家庭のカレーを作るのも楽しんでくれると思うが、屋台船の調理スタッフになればふぐともつに関するそういった知識が手に入る可能性が高い。美食神様がそのことを喜ばないはずがない。


 そして、ふぐ相手にこそ、オリハルコンの包丁と人魚の国で購入した包丁が輝くのでは?


 その上、この世界で唯一ふぐが料理できるという特大のメリットがある。


 悩み過ぎて最終的にコイントスででも決めようかと思ったが、今回購入する船は決まったな。


 他の船、特に沖売り船にはいまだに後ろ髪が引かれるが、今回購入する船は決定した。博多屋台船だ。


 屋形船は白金貨一枚あれば購入できるので、慈善事業費の余裕はまだまだある。この余裕は追加で船を購入する時に回すか、獣人の町に追加で資金投入する時に使える。


 まあ、獣人の町の場合は追加投資する場合は白金貨三十枚では足りないだろうから、新たな船を購入しないといけなくなりそうという、今回の悩みがなんだったのか、という事態になりかねないが、それはそれだ。


 今回選択肢に上がった船は比較的金額が安い部類だから、獣人の町に追加投資する場合はもっと巨大船を狙うことになるだろう。


 まあ、獣人の町の話は置いておいて、今は博多屋台船だ。


 今晩はもう夕食を済ませているから、お披露目は明日だな。というか、悩み過ぎて深夜零時を過ぎているからもう今日だな。


 今日も運搬の仕事があるから、お披露目は夜が無難。


 やはり最初は特別なメニューから試してほしい。そうなるとふぐ鍋かもつ鍋だが……両方とも同時に提供するのはもったいない。熟考しないといけないな。


 嬉しい悩みが多すぎて困る。まあ、最後の方は嬉しいを通り越して苦悩しちゃったけど……。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
船の中に毒の持ち込み禁止されてるからフグの内蔵とかも食べれたりするのかな。船の結界のおかげで毒や寄生虫もないだろうから生でも食べれそう。
フグ鍋かぁ スタッフ任命で処理知識が手に入れば異世界にいる毒魚も場合によっては調理できるようになるのかな? しかし中華特化の船がなかったのが意外
博多ならアラ鍋かと思ったが、よく考えたらアラ鍋って関東人だと魚のアラ(骨やヒレ周りの部分)の鍋だと勘違いしてそうだなと『美味しんぼ』で思い出してた
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