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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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4話 ジャンクな気分と新たな……

 町の外に野営訓練に出た護衛部隊から陸地の魔物や採取物が届けられるようになり、復興は順調に進んでいる。そこで僕は装備品での更なるヨーテボリの強化を思いつき何故かそこから権利を得る方向に話が進んだ。現金的な利益ではないので、慈善事業費として計上できると信じたい。




「ふむ……たしかにこちらからの依頼、商売網のフォローの一環と捉えることもできるが、フォローとしては逸脱している部分が大きいことも確かだ。よかろう、航が使用した費用を慈善事業費と認める」


 え?


「何をそんなに驚いている?」


「あ、いえ、こう言ってはなんですが、ここから交渉が始まると覚悟していたので、少し驚いてしまいました」


 ドナテッラさんとメアさんとの話し合いの後、僕はすぐさま教会に赴き、機嫌が良い光の神様を介して商売の神様との面会にこぎつけた。


 後回しにしていると、またやらかしてしまうという自覚が強かったからだ。


 そして、今回の僕のお願いはそれなりに怪しい部分があり、契約に厳しそうな商売の神様に否定される恐れがあることも理解していた。


 だから、頑張って交渉しよう、たぶん僕の交渉術では厳しい物があるから、泣きついてでも慈善事業費として認めてもらおう。


 全部は無理だとしても、せめて半分くらいは……なんて心構えでお願いしたら、まさかの即受理、驚くのも無理はないと思う。


「たしかに、ただ贅沢をして白金貨をバラまいた、等では慈善事業と認める訳にはいかんが、本来の目的は存在が宙に浮いてしまった白金貨を下界に戻すことだ。ちゃんと下界の民の一助になっているのであれば、私もそこまで厳しく追及するつもりはない。航は私のことをどのように思っておるのだ?」


 呆れた様子の商売の神様。


 言っていることは理解できるし、商売の神様が本当にそう思っているのは真実なのだろう。


 でも、その言葉を真に受けて、気軽にあれこれ慈善事業費として計上することはできない。


 だって、そのラインをうっかり踏み越えてしまうと、商売の神様は情もこれまでの付き合いも排除して、徹底的に追及してくるタイプだからだ。


 今回は偶々そのラインを踏み越えていなかった。それだけのことでしかない。だから毎回悩むし緊張してしまう。


「あの、慈善事業と普通の事業のラインを明確にすることはできませんか?」


 その部分さえわかれば、それなりに気楽に慈善事業を行える。


 まあ、金額が金額なので、心配事が少し減る程度でしかなく、慈善事業を行えば行うほど僕にも負担が増えるから気休め程度でしかないが、それでも楽になるのは確かだ。


「基準は確かにあるのだが、その基準は状況により細かく分類される。航では覚えきれないだろう。昔であればその基準を植え付けることも可能であったが、それは下界への強い干渉になってしまう」


 植え付けるって、そんな情報量を植え付けられたら脳ミソがパンクしてしまうんじゃないか?


 うん、無理だな。


「ふむ、航の船に滞在する時に基準について教えることは可能だが、かなり時間がかかるぞ? 学んでみるか?」


「いえ、さすがにそれは難しいです。お手数をかけて申し訳ありませんが、微妙な場合はその都度お伺いして構いませんか?」


 せっかくの気楽な生活。しかも商売の神様が豪華客船に滞在している時って、光の女神様方も滞在しているということ、気になって勉強が手につかないに決まっている。


 そもそも、その基準を学び終えるまでに何十年どころか何百年もかかるんじゃないか?


 ……寿命が延びているから、不可能じゃなさそうなところが少し怖いな。


 まあ、不可能ではないだけで、それだけの根気が僕にあるのかと言えば無いので無意味な想像でしかないのだけどね。


「まあ、その方が無難だろう」


 商売の神様も僕の性格を理解しているらしく、あっさり納得してしまう。


 僕は幸運にも神様方と意思疎通ができるんだ。チートともいえるその利点を活かさない手はないよね。


 まあ、恩を感じてはいるが、怨も感じていないこともない創造神様との関りは、チートと判断していいのか疑問だけどね。恩恵は確かにあるんだけど……あるよね?


 商売の神様との会話が終わり、上機嫌な光の神様にも挨拶をして下界へ意識を戻してもらう。


 ちなみに、光の神様が上機嫌な理由は、創造神様のコントロールが上手くいっていることと、近いうちに休暇が決定したこと。


 その休暇は僕にとっての御褒美なのだけど、楽しみにしていると文字通り輝く笑顔で言われた。これは頑張らずにはいられない。いくつかプランを用意しておかないとな。


 なにせ一週間、しかも他の神々が居ない僕と光の神様、森の女神様、美食神様だけの時間。ワクワクするよね。




 ***




「ワタルさん、こちらの書類の処理をお願いします」


「あ、はい……」


 現実に戻ると、それなりの量の書類が待ち構えていた。下界は世知辛い。


 本来であれば書類仕事は少なくて済むという話だったのだが、僕が余計なアイデアを出してしまい、書類仕事が増えてしまった。


 僕がアイデアを出す前までは、本当に申し訳程度の書類仕事でまったく苦じゃなかったのでドナテッラさん達の言葉が嘘だった訳じゃない。



 ただ、装備品の提供や、その見返りとしての利権、これらは公の取引でしっかり取引記録を残して、国に対しての証明としなくてはならないので、どうしても書類仕事が増えてしまう。


 ようするに自業自得ということだ。


 まあ、それでも獣人の町での地獄の書類仕事と比べると、お遊びにも思える量なので、苦痛は感じるが余裕をもって処理していく。


 獣人の町の書類仕事が二十四時間戦える系のサラリーマンの仕事量だとすると、今の仕事量は少し忙しい時期のバイトレベルの苦労なので当然と言えば当然だ。




「ふいー、終わった」


 書類仕事で肩が凝ったし、今日はスパにでも行って……いや、なんだか今日はジャンクに決めたい気分だな。


 ストロングホールド号でお風呂に入って、自販機コーナーで缶ビールと自販機メニューを堪能するか。


 その後にマッサージチェアでまったりしよう。




 ***




 いやー、昨日は楽しかった。


 普段と変わらない何気ない日常なはずだけど、僕が今晩はジャンクに決めると伝えるとみんなが乗り気になってくれて、ジャンクな宴会が開催される。


 唐揚げとポテトをビールで流し込み、たこ焼きをつまみながらチューハイ、カーラさんなんかはカップ麺を制覇しながらハンバーガーとホットドックに焼きおにぎりなんて無茶をしていたが、それはそれで楽しい時間だった。


 体には良くないけれど、偶になら心の栄養になるから許容範囲内だと思う。


 まあ、そこで飲み過ぎてマッサージチェアでマッタリするところまではたどり着けなかったが、それは今晩にでも楽しめばいい。


「ご主人様、今日は休憩の合間にずっとステータスをご覧になっているようですが、何かお悩みでも?」


 魔物の運搬をしながら物思いにふけっていると、同行してくれているフェリシアが話しかけてきた。


「いや、悩みと言えば悩みだけど、辛い悩みではなく楽しい悩みだから心配しなくても大丈夫だよ」


 商売の神様とお話をして、費用が慈善事業費として認められることが確定した。


 余裕が出来たら少しくらい贅沢がしたくなるのが人間の心理。


 僕の場合は煩悩が食欲と性欲に偏る単純な思考回路なので、船の購入に意識が傾く。


 性欲に関してはね、イネスとフェリシアが居るし、アレシアさん達の手前もあるし、光の神様方とのイベントも控えているから無茶はできないしするつもりもない。


 そうなると、欲求が食欲に向くのは当然のことだ。


 そして食欲を満たすとなると、僕の場合は船を買うという普通なら頭がおかしい流れになる。


 でも、その悩みはとても楽しい悩みで、この船も欲しい、あ、こちらの船も、でも、この船は……という思考が表に出てしまい、フェリシアに心配を掛けてしまったのだろう。


「そうでしたか。安心しました」


 深刻な悩みではないと分かり、安心した様子のフェリシア。ここでガツガツと何を悩んでいるか聞いてこないところがイネスとの違いだね。


 まあ、イネスにガツガツこられるのは嫌いではないのだけど……。



「さあ、始めるか」


 今日の仕事を終わらせ、お風呂と夕食も済ませてリムとペントをイネスとフェリシアに預けて準備万端。


 マッサージチェアに癒されながら船購入画面を開く。


 予算は白金貨三十枚前後だけど、無理をしてそのすべてを使う必要もないし、沢山船を買って、一つ一つの楽しみを薄れさせてしまうのはもったいない。


 まあ、本来の予算の上限は白金貨三十枚どころではないのだけど、大金を使うと慈善事業費という借金プラス労働に繋がるから無理ができない。


 でも、欲しい物を選ぶ時は、それくらいの制限があった方が楽しいものだ。制限が無ければ、気になった物を全部買っちゃえばいいだけだもんね。


 船購入画面を開くと、まずは見知らぬ船が増えていないかをチェックする。


 購入できる船の数が多いから、見逃しも多いし、シレっと新しい船がリストに追加されていることもあるので油断できないからだ。


 おそらくだけど、映画や売店の新商品のように、地球で増えた船がリストに追加されていっているのだと思う。


 知らない間に日本のフェリーやラグジュアリークラスの豪華客船が増えていたこともある。日本のフェリーや豪華客船は料理が本当に美味しそうでかなり魅かれるのだけど、インパクトを考えると海外の船に目が向いてしまう。僕はとてもミーハーなのだ。


 有名な牛丼チェーンの自販機が設置されているフェリーを見つけた時とか、三日くらい悩んで夢にまで出たくらいだ。


 さすがに牛丼の為にフェリーを買うのは……ということで保留になっているが、今でも偶に購入したくなって困るくらいだ。


 ただ、全ての船が追加されているのかというと、そうでもないように思える。豪華客船なんて簡単に増えるものではないだろうから分からないが、小型の船ならもっと沢山リストに追加されてもおかしくないからだ。


 とはいえ、船購入画面もAIのように学習するのか、僕好みの船を推測して追加してくれているようで、屋形船などの日本の船が増える傾向にある。


 まあ、その推測が正しいから、欲しい船が多くて選べないという嬉しい悩みを抱えている訳だが……それはそれで楽しいので問題はない。


 さて、今日のうちに購入する船を決めることができるだろうか?


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
浚渫船を買えば良いのに、喫水の深い大型船が直接接岸出来る用に成るし、スエズ運河の深掘り拡張に使えたりするぐらいの大型船浚渫船とか。 フェリーとか直接接岸出来れば車両甲板からの大型ランプドアで直接出し入…
光の神様うっきうきとは珍しいなぁ まぁでもあの創造神様がそんないつまでも後手に回っているとは到底思えないな…
豪華客船だけでなく特殊船にもスポットライトを当てて欲しいな。 船召喚も次の進化があっても良いのでは? 初めて豪華客船を購入して特殊船が開放されてから、創造神様が言ってた次の段階がなかなか来ない。後どの…
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