表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
571/577

2話 幹部候補生

 捕まえた犯罪奴隷のうち、二百名をトヨウミ商会南の大陸支店で確保し、パワーレベリングを行うことに。その話が発展して国盗り物語に移行しそうになったが、たぶん冗談だと思う。とにかく、ヨーテボリの復興は着々と進んでいる。




「ワタル様、この六名が私が選んだトヨウミ商会南の大陸支店の幹部候補生になります」


 ドナテッラさんとメアさんから確保した犯罪奴隷の強化計画を聞いた翌日、冒険者ギルドの会議室で僕の前に見知らぬ人物が六名並んでいた。メアさんも仕事が早いタイプなんだな。


「この六名を各店舗に二名ずつ振り分け、その統括を私が担う予定です」


 二つの店舗で四人、倉庫街に二人か。他にも従業員を増やしていくことになるのだろうが、現在はまだそれほど難しい仕事がある訳でもないから、五十人の事務員補佐部隊で十分だろう。


 本当はもう一人幹部候補生候補が立候補していたのだけど、無情にもその候補者は落選してしまった。


 落選者の名前は、サイモンさん。


 メアさんにホの字の商業ギルドの優秀な職員だ。


 おそらくメアさんと共に働きたい、そしてあわよくばメアさんと恋仲に……なんてサイモンさんの気持ちは同じ男として痛いほど理解できた。


 僕もサイモンさんの気持ちと真面目さを理解しているので働いてほしかったのだが、そこでメアさんのシビアな判断が炸裂する。


 サイモンさんがトヨウミ商会南の大陸支店で働くよりも、商業ギルドとの橋渡し役として出世してくれる方がありがたいという判断だ。


 そしてメアさんはサイモンさんの目を見ながら、そのことをしっかりとサイモンさんに説明した。


 メアさんに恋心を抱くサイモンさんがその言葉に抗えるわけもなく、あえなく落選となった。


 おそらくサイモンさんはこれから出世の道に邁進することになるのだろうが、そうなると失恋した時が怖い。


 商業ギルドとの関係が壊れたりしないかな?


 いずれはメアさんも落ち着くとは思うのだけど、今のところ恋愛に意識がまったく向いていない気がするから結構危険な気がする。


「各自ワタル様に自己紹介をお願いします」


「はい、私はペトルスと申します。戦争で潰されてしまいましたが、ペトルス商会の代表をしておりました」


 商会名と名前が同じということは、一代で商会を築いた優秀な人物なのかもしれない。


 見た感じ五十歳程度で人が良さそうに見えるが、妙な迫力を感じるので修羅場をいくつも潜り抜けていそうだ。


「ペトルスさんは行商人から商売を中規模商会にまで育て上げた優秀な方なんですよ」


 メアさんの言葉に軽く頭を下げるペトルスさん。仕草が紳士というよりも、ビジネスマンといった雰囲気だな。


「クレメンスと申します。行商人をしておりました」


「ラザルスと申します。同じく行商人をしておりました」


「二人とも商業ギルドから将来を嘱望されていた行商人なんですよ」


 クレメンスさんはなんとなくだが三枚目臭が漂うイケメンさんだな。コミュニケーションが得意そうなので、行商人には向いていそうだ。


 そしてラザルスさん、この人は正直怖い。


 ガッチリとした体格で四角い顔の強面で、夜道で不意に出会ったら悲鳴を上げてしまいそうな見た目だ。


 よく行商人が務まったなと思うが、鋭い目つきの奥から優しさが垣間見えるので、たぶん良い人だと思う。


「クラウディアと申します。一生懸命働きますので、どうぞよろしく申し上げます」


 凄い美人が来た。


 妖艶な美魔女、色気がムンムンでなんというか、お世話してほしいタイプの影があるお姉さんだ。


「クラウディアさんはとある商会の商会長の奥さんで、商会長と共にお店を切り盛りされていた優秀な方なのですよ。ただ、今回の戦争でお店と旦那様を亡くされてしまって、今はお子さんを育てるために頑張っていらっしゃるんです」


 ……そんな人に色気凄い、お世話してほしいとか不謹慎なことを考えて申し訳ありません。


 そうだよな、戦後なんだから新しく仕事を探しているのであれば、それなりの理由があって当然だ。


 というか保身に長けた商人が店を潰されるって、今回の戦争の酷さが如実に分かる事例だよな。まあ、今回の事例を見なくても町の現状からとてつもなく今回の戦争が酷かったのは丸分かりだけどね。


「ヘレナと申します。メアさんの後輩で商業ギルドに勤めていたのですが、戦争中は避難していて難を逃れました。戦争が終わり、戻ってきたところでメアさんに声を掛けていただきました」


「モニカと申します。ヘレナと幼馴染で同じくメアさんの後輩で商業ギルドに勤めていました」


 ヘレナさんとモニカさんはメアさんの後輩なのか。


 関係が近かったのなら、彼女達の優秀さや性格を見極めてのスカウトなのだろう。かなり信用できそうだ。


 あと、容姿も受付嬢をしていただけあって、好感が持てる容姿をしている。


 二人とも美人というよりも可愛らしい系だが、商人相手からも可愛がられそうな雰囲気をしている。


「トヨウミ商会の代表のワタルです。色々と大変な状況ですが、できる限り頑張りますのでよろしくお願いします」


 僕が頭を下げると、六人も頭を下げてくれる。


 ……で、これから僕はどうすれば? 面接なんてやり慣れていないから、次の行動に困る。


「ワタル様、この六人、全員の雇用で問題ありませんか?」


 問題のあるなしをこの短時間の僕に見極めろと?


 第一印象は悪くないけど、それくらいしか分からないよ?


「……はい、問題ありません」


 自分の人を見る目を信じた訳ではなくメアさんを信用しただけだが、信用できる人を信用したほうが僕の人を見る目を信用するよりも確かだと思う。


 何より、周囲で待機してくれている女性陣が何も言わないということは問題がないということのはずだ。


 僕がなんとか威厳を保とうと姿勢を正している間に、メアさんが六人を連れて会議室から出ていく。   


 別の部屋で商売の神様の契約を結んでから、本格契約となるようだ。


 労働力とそれを管理する人材が集まった。少しずつヨーテボリの復興が僕の手から離れていっている気がして、少し嬉しい。




 ***




 面接から二十日、計画は順調に進んでいる。


 最初は魔物を確保するために外海に出る時に同行してもらい、徐々にレベルアップしてもらう予定だった。


 ただ、時間がかかりそうなのでアレシアさん達と相談した結果、強化合宿を敢行することに。


 犯罪奴隷契約と守秘義務契約を商売の神様との契約を介して結んでいるので、フォートレス号で外海にでて、集中強化を行うためだ。


 まあ、それでも用心は必要なのでフォートレス号の内部は船偽装で、そこまで目新しくならないように偽装したけどね。


 最初にメアさんと新たに雇用した六人、そして事務員の補佐をしてもらう予定の犯罪奴隷五十人のレベルアップにとりかかった。


 護衛部隊を鍛えるのは当然だが、一応守られる側に入るであろう事務員補佐部隊もある程度レベルが上がっていた方が守るにも楽だし体力が増えてしっかり働いてもらえそうだからだ。


 この事務員補佐部隊は、全員六十程度までレベルを上げた。同時に基本的な狙われた時の守られ方や避難方法も習得させたそうなので、たとえ狙われたとしてもそれなりに対処できるようになったらしい。


 そしてメアさんとメアさんが選んだ幹部候補生六人と、護衛部隊隊長格の四人は専任で外海でのレベル上げを続け、護衛部隊百五十人は半分に分け、片方は郊外の倉庫予定地で戦闘訓練、もう片方は外海でレベル上げとローテーションを組んで鍛えていった。


 その甲斐あって、なんとメアさんはレベルを二百三十台にまで上げ、他のメンバー達も予定通りのところまでレベルを上げられたそうだ。


 そして訓練の方も順調で、思いのほか早く形になったと報告を受けている。


 まあ、僕はレベル上げに付き合ったり魔物の運搬をしたりと地味に大変だったので聞いた話でしかないのだが、おそらくその報告は間違っていないはずだ。


 なぜなら……。


「全員、気をつけ!」


 なぜなら、アレシアさんの言葉に、優秀な軍隊のごとく気をつけをする護衛部隊員達から、戦闘員の気配が漂い始めているからだ。


 正直、とても怖い。


 なぜこんなことになってしまったかというと、僕が迂闊にも、訓練と言えばこういう感じの訓練も有るんですよね、と、某国海軍の訓練をリスペクトしたであろうアニメを見せたからだ。


 無論、ピー音で規制が入りまくるほどではないが、それを気に入った女性陣がそれに近しい訓練を護衛部隊に施したことで、訓練を受けた護衛部隊に規律が生まれた。


 無論、短期訓練の促成栽培なので、本物の軍人のように鉄の規律とまではいかないが、集団行動が抜群に上手くなった。


 これは成功なのか? と思わなくはないけど、トヨウミ商会、ひいてはヨーテボリを守る集団なのだから集団行動は必ず役に立つはずだ。たぶん。


「トヨウミ商会、商会長のお言葉を頂く。総員、傾聴せよ!」


 いやん、帰りたい。


 倉庫予定地の広い空間、そこに並ぶ百五十の人間の視線が、僕に集中する。


 なんでこんなことに……いや、僕がアニメを見せたせいであることや、初期訓練が終わったから陸地での訓練を開始すると聞いて、じゃあちょっと見学に……なんてことを言ってしまったのが原因だと重々承知しているが、それでも言わせてほしい。


 僕はこんなことを望んでいない。


 なんで見学が出兵前の激励みたいなことになっているの?


 ……たぶん、アレシアさん達は、『諸君、君達は本日をもって〇〇を卒業した!』 的な演説を期待しているのだろう。


 アニメだとそうだったもんね。


 でも、アニメを現実に持ってくるのは駄目だと思うの。


「……諸君、君達は本日をもって――――」


 集まる視線のプレッシャーに負けて、アニメの演説を丸パクリしてしまった。


 頭を捻り文脈を考えた地球の先生方に申し訳ないとしか言えない。


 でも……めちゃくちゃ盛り上がった。


 名言というのは、異世界でも名言として通用するのだな。僕のパクリ演説を聞いた護衛部隊員達が、訓練なのに外の魔物を殲滅しかねない勢いで出発していったよ……。


 ちなみに今回は女性陣は同行せず、総隊長と三人の隊長が護衛部隊を率いている。男所帯に囲まれての野営は嫌なのだそうだ。


 ……護衛部隊は元盗賊の集団なのだけど、盗賊って基本的に野営が日常だよね? 野営訓練って必要なのかな?

 


読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ガンホー!ガンホー!ガンホー!
ランクA〜Sの高レベル冒険者は何人ぐらいそれぞれの大陸にいるんだろう
ちょっと疲弊した国の軍なら叩き潰しかねない高レベル高規律集団を一ヶ月で錬成するのは本当にヤバいのよ レベリングを魔物狩りで代用した場合、彼らを教官としてさらに下部組織が増殖する未来が見える見える
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ